はじめに
近年、ベトナムでは電子商取引(EC)が急速に発展し、国民にとって重要かつ一般的な消費チャネルとなっている。Shopee、Lazada、Tiki、SendoなどのECプラットフォームは、売り手と買い手をつなぐ仲介役を果たしている。一方で、ソーシャルメディアやECプラットフォームを通じて、偽造品や模倣品が広く出回るようになり、消費者の信頼を損なう事例が増える。
本レポートでは、こうした偽造品問題の現状を把握し、政府や業界団体の取り組み、そしてテクノロジーを活用した対策について紹介する。ベトナム市場への参入や事業展開を検討する外国企業にとって、必要な知見を提供することを目的とする。
偽造品の拡大と信頼喪失:消費者と企業が直面する課題
電子商取引やソーシャルメディアが急速に発展する中、消費者はこれまでになく多様で便利な商品にアクセスできるようになっている。しかし、オンラインショッピングプラットフォームの急成長とともに、特にソーシャルメディアや電子商取引サイト上で偽造品や模倣品の流通も増加している。
消費者の立場から見ると、本物と偽物の区別がつきにくいため、低品質で安全性に欠ける商品を購入してしまうケースが多発している。特に化粧品、健康食品、電子機器といった分野では、そのリスクがより顕著である。販売者側の情報が不透明で、商品出所の追跡が困難なことも、消費者にとって大きな不安要素となり、オンラインショッピングへの信頼を徐々に損なわせている。
企業の立場からすると、正規ブランドは偽造品との不公平な競争に直面しており、それにより売上やブランドの信頼性が損なわれている。多くの企業は、パッケージデザインの変更、偽造防止策、ブランド保護のための広報活動といった対策に追加コストをかけざるを得ず、本来なら市場拡大や製品開発に充てられるはずのリソースが削がれている。長期的には、こうした状況が経済的損失をもたらすだけでなく、デジタル市場全体の健全な成長を妨げる要因となり得る。

偽造品問題への対応提案
本章は偽造品問題への対応提案について解説する
商品のトレーサビリティの実施
ベトナム科学技術省は現在、「製品・商品の品質法」の一部改正に関する意見募集を行っている。注目すべき点として、第1条第35項では、ECプラットフォームが運営前および運営中に商品のトレーサビリティを実施することを求めている。この規定は、デジタル環境における偽造品の蔓延を背景に、消費者保護を強化することを目的としている。
しかし、ベトナム電子商取引協会(VECOM)は、この規定がECプラットフォームの中立的な立場にそぐわず、法的にも技術的にも実行が困難だと指摘している。プラットフォームには調査や検査、認証の権限がなく、売り手から提供された情報を収集・保存し、必要に応じて関係機関に提供することしかできない。
さらにVECOMは、国内プラットフォームと海外プラットフォームの間で規制の不均衡が生じることも懸念している。ベトナムに法人を持つ国内企業は法令を順守しなければならない一方、海外企業には同様の義務が課されず、「逆差別」や不公正な競争の障壁が生まれてしまう。
ECプラットフォームにおける販売者の本人確認
ベトナム消費者保護協会副会長のヴ・ヴァン・チュン氏は、販売者の明確な身元確認がないために、トラブル発生時の責任追及が困難になっていると指摘している。販売者は簡単に偽のアカウントを作成し、不正確な情報を提供して管理の目を逃れることができる。
そのためチュン氏は、VNeIDによる販売者の本人確認の早期導入を提案している。これにより、透明性を高め、消費者の信頼を醸成し、当局による違反行為の取締りを円滑にすることが期待される。
現在では、メールアドレスと店舗名さえあればオンライン店舗を開設できる。そのため、偽情報や他人の書類を使って責任を回避する販売者も少なくない。販売者が明確に特定できれば、商品の情報管理やトレーサビリティも容易になり、偽造品が見つかった際に迅速かつ効果的な対応が可能になる。これは消費者保護だけでなく、ECへの信頼向上やこの分野の持続的発展にもつながる。

出所:https://vneconomy.vn/nguoi-ban-tren-san-thuong-mai-dien-tu-se-phai-dinh-danh-tren-vneid.htm
「消費者」アプリの導入
ベトナム消費者保護協会は、「Nguoi tieu dung(消費者)」というアプリを導入した。このデジタルプラットフォームは、政策へのアクセス、法的アドバイス、違反の通報、商品情報の検索などをサポートするもので、10の主要機能を備えている。たとえば、相談、苦情申請、偽造品警告、正規品確認、評価アンケートなどがある。
特に、情報へのアクセスが限られている農村部や遠隔地に住む人々にとって有効な支援手段となっている。今後もこのアプリの機能を拡張・向上させ、消費者のさらなる利益につなげる予定である。

出所:https://baodongnai.com.vn/kinh-te/202502/ra-mat-ung-dung-ve-bao-ve-quyen-loi-nguoi-tieu-dung-b9b3c6a/
結論
偽造品の問題は、消費者の権利を侵害し、正規企業のブランド価値を損なうだけでなく、市場全体の健全な発展を妨げる。ベトナム政府は、商品のトレーサビリティを義務化し、販売者の本人確認を強化し、「消費者」アプリの導入などを進めて、オンライン市場の透明性を高めようとする。
これらの取り組みは、外国企業にとってもビジネスの信頼性を確保し、持続的に成長するための基盤となる。今後は、政府・企業・消費者が連携して、安心して利用できるデジタル市場を築くことが求められる。外国企業は、制度や規制の動向を注視しながら、品質保証やブランド保護の取り組みを強化することが必要となる。
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