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環境・再生可能エネルギー

ベトナムのエネルギー事情:水素エネルギーの実用化とその可能性

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水素エネルギーとは

水素エネルギーは、脱炭素に資する新たなエネルギー源の一つとして注目されている。水素は製造を必要とする2次エネルギーであるが、製造過程で再生可能エネルギーだけを使用する場合、CO2や有害廃棄物の排出は基本的に無いため、環境への負荷が低いことが大きな特徴である。水素エネルギーは、2050年までの脱炭素の目標達成への貢献が期待されている。

水素エネルギーは、化石燃料の枯渇の懸念からも効果的な代替エネルギーとして位置づけられている。さらに、自動車への応用を考えた際、燃料電池方式は内燃機関と比べてエネルギー効率が高く、安全性も高いのが特徴である。また、水素エネルギーは貯蔵や輸送が可能で、既存の天然ガスインフラを利用できるため、実用化においても多くの利点が考えられる。

ベトナムにおける水素エネルギーの動向

水素エネルギーは、ベトナムのカーボンニュートラル達成の重要な手段であり、ポテンシャルが大きい領域である。ベトナム第8次国家電源開発計画(PDP8)では、2031年から2050年の期間において、水素エネルギーへの転換を進めることが強調されている。

ベトナム石油ガス研究所によれば、ベトナムでの水素エネルギー活用に向けて、2つの水素製造法が検討されている。

  • バイオマスによるガス化・熱分解 (Biomass gasification and pyrolysis)

この方法は、バイオマスを高温ガス化プロセスでガス状にして蒸気を発生させ、その蒸気を凝縮して熱化学的に水素を生産するものである。
この方法の原料は、農林業残渣(わら、トウモロコシの穂軸、乾燥葉、木材チップなど)、廃棄物、埋立地や廃水処理場からのメタンなどのバイオマス資源で、非常に種類が多い。この水素製造方法は、持続可能な、環境に優しいエネルギー製造方法と考えられている。

  • 水の電気分解

電流を使って水を水素と酸素に分解する方法はCO2を全く排出しないため環境に優しい方法とされているが、コストが比較的高い。
水を電気分解する製造方法は、太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーを電気分解の工程に組み込んで使用する。他の方法よりも高いコストを必要とするが、環境にやさしく、持続可能であり、将来の水素エネルギー製造の主流になると考えられている。再生可能エネルギーから製造される水素は「グリーン水素」と呼ばれている。

ベトナムは海岸線が長く、太陽光発電(平均日照時間:1,700~2,500時間)や風力発電(年間平均風速:10m/s以上)等の再エネのポテンシャルが高いため、グリーン水素製造のポテンシャルも高いと言えるが、大きな初期投資と継続的に発生する製造コストが高いため、検討が必要だと考えられる。

一方で、メコンデルタ地域ではバイオマスのガス化が可能であり、こちらもグリーン水素製造の高いポテンシャルを秘めている。特にベトナムは農業が盛んな国であり、農業廃棄物をバイオマスとして有効利用することが可能である。具体例として、5000頭の豚を飼育する工場が排泄物や廃水を利用して水素を生成し、工場のエネルギー源としているケースが挙げられる。しかし、ベトナム全体で見れば、未だ農業副産物を十分に活用できていない。

ドンナイにある農場は、農業廃棄物を利用して発電をしている 出所:tuoitre.vn

このような背景のもと、ベトナム政府は水素エネルギーの研究・開発と実用化に向けた取り組みを強化している。特に、国内の研究機関や大学との連携を通じて、新たな技術の開発や効率的な生産方法の模索が進められている。 国際的な協力も活発に行われている。日本や欧州諸国との間で技術移転や共同研究のプロジェクトが進行中であり、ベトナムの技術のさらなる向上が期待されている。特に、高度な技術を持つ日本との協力は、ベトナムの水素エネルギーの展開において大きな進展となる。

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