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政治ベトナム一般概況

ベトナム政治|トー・ラム国家主席がチョン党書記長の職務を代行へ

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はじめに

2024年7月19日、ベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン党書記長(80)が病気と老衰のため、ハノイの病院で亡くなった。チョン書記長は、2011年の共産党大会で初めて党書記長(任期5年)に選出され、2021年には党の規約が定める任期の「連続2期10年」を超え、異例の3期目を務め、注目されていた。チョン書記長が亡くなる1日前には、療養に専念するため、党序列2位のトー・ラム国家主席が党書記長の職務を代行することが発表されていた。トー・ラム国家主席は、今年3月のボー・バン・トゥオン前国家主席の辞任に伴い、5月22日に国家主席に就任したばかりであった。 

党書記長の職務を代行するトー・ラム国家主席
出所:rfi

以下は、トー・ラム国家主席の経歴である。

生年月日:1957年7月10日
出身地:北部紅河デルタ地方フンイエン省
学歴:法学博士
共産党入党:1981年8月

– 1974年~1979年: ベトナム人民安全保障アカデミー

– 1979年~1990年: 内務省(現公安省)勤務

– 1990年~1993年: 内務省(現公安省)治安総局長

– 1993年~1997年: 公安省治安総局勤務

– 1997年~2006年: 公安省治安総局長

– 2006年6月~2009年12月: 公安省治安総局副総局長 

– 2009年12月~2010年8月:公安省治安総局第1政治保護局副総局長

– 2010年8月~2011年1月:公安省副大臣

– 2011年1月~2016年1月:第11期党中央委員会委員、公安省副大臣

– 2016年1月~2016年3月:第12期政治局委員、公安省副大臣

– 2016年4月~現在:第12期及び第13期政治局委員、公安省大臣、第14期及び第15期国会議員

– 2024年5月22日:ベトナム国家主席就任

-2024年7月18日:ベトナム共産党書記長の職務を代行

注:ベトナムは他の社会主義国同様、政治的に共産党が国家に対して優位にたち、共産党の役職が国家の役職よりも意味を持っている。共産党には4名のトップがおり、序列順に、党書記長、国家主席、首相、国会議長という4つの役職を担っている。この4名が務める4つの役職は、「政治4役」 と呼ばれている。

今後も党書記長の職務を務め続ける可能性が高い

上記の経歴から見て分かるように、トー・ラム国家主席は一貫して公安畑のキャリアを歩んできた。近年、チョン党書記長は、ベトナムで深刻な社会問題になっている汚職の撲滅に向け、反腐敗運動を積極的に行い、多くの政府高官、元政府高官が処分された。2023年に捜査機関が摘発した汚職事件の総数は967件に達し、被告人は2,552人に上った。グエン・フー・チョン党書記長の反腐敗運動を推進し、これらの摘発の陣頭指揮を執ったのが、当時のトー・ラム公安相だった。シンガポールのISEASユソフ・イサーク研究所のベトナム専門家グエン・カック・ジャン氏によると、「現状では、トー・ラム氏が2026年まで共産党のトップ代行を務める可能性が最も高い」という。元々、高齢であるチョン書記長の健康状況を不安視する声がある中、2026年の共産党大会で行われるチョン書記長の後任選定においても、ラム氏が最有力後継候補との見方強かった。 

当面は経済政策よりも治安維持が優先される可能性も

ベトナム共産党の体制として政治4役は、チョン党書記長の死去により、現在は3名になっているが、その内、トー・ラム国家主席とファン・ミン・チン首相は公安畑の出身である。政治4役は、ベトナムで政治4役に次ぐ指導的地位の高い職務に当たる政治局員から選出され、現在政治局員には15名いるが、その内、公安・軍出身が8名を占めている(政治局員には政治4役も含まれる)。以前からも、ベトナムの政治の指導的職務に当たる公安・軍出身の多さが懸念されていたが、今回、公安省出身のトー・ラム国家主席が、実質的なベトナムの最高指導者になることに対して、経済発展よりも治安維持が優先されるようになるのではとの声がある。

まとめ

ベトナムでは、ここ1年半足らずの間に、2人の国家主席と1人の国会議長が辞任している。今回は党書記長の死去という不可避的な側面があるが、ベトナムの政治の不安定化が増している印象を外資系企業がさらに強く抱くことに繋がりかねない。また、トー・ラム国家主席が最高指導者になることで、反腐敗運動は今後も続き、短期的には政治状況が安定しない状況は続くかもしれない。

一方で、長期的に見れば、ベトナムから汚職がなくなり、外資系企業が投資し易い環境が生まれるかもしれない。市場経済制度の下、順調な経済発展を遂げていることがベトナム共産党が一党独裁を敷く、正当性にもなっている。ベトナム共産党も外資系企業がベトナムの経済発展を牽引していることは強く認識しており、今後トー・ラム国家主席による党書記の職務代行が外資系企業の投資環境に及ぼす影響を引き続き注視していく必要がある。

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