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ベトナム一般概況

ベトナムと日本の友好関係の歴史

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はじめに

2023年9月21日、ベトナムと日本は外交関係樹立50周年を迎えた。このベトナムと日本の半世紀に及ぶ深い外交の歴史には、多くの出来事が見られた。

一方で、日越外国関係樹立50周年の2か月後である11月27日には、ベトナムと日本は2国間関係を「アジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」から「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げした。このパートナーシップについては後述するが、これは日越の外交関係における大きな進歩と言え、今後の日越関係においても更なる友好的な発展が期待される。

本レポートでは、日越の50年の外交関係を振り返り、両国の歩みを整理しつつ、今後の展望について考察する。

日本とベトナムの外交関係の始まり

ベトナムと日本の交流は、8世紀に僧侶による文化的・宗教的な交流があったことが始まりとされている。ベトナムと日本の体系的な外交関係の始まりは、16世紀の朱印船交易とされている。

16世紀後半、日本は中国(明)の海禁政策により新たな貿易相手を東南アジアに求めた。この時期、幕府や権威者によって許可された正式な貿易船である朱印船が活躍した。朱印船制度が確立されてから鎖国までの間に、350隻を超える船が東南アジアへ向かい、そのうち130回以上がベトナム地域への渡航であった。

多くの日本の商船がベトナムのホイアン港に入港し、交流や商取引を行い、日本人街を形成した。特にベトナム中部のホイアンは国際貿易港として栄えた。1635年の海外渡航禁止令により日本船の海外渡航が禁止された後も、ホイアンの日本人町には数十年にわたって日本人が住んでいたと伝えられている。

20世紀初頭のベトナム民族運動指導者のファン・ボイ・チャウ(Phan Bội Châu:潘佩珠)が東遊運動(Phong trào Đông du)を指揮し、人材育成のために約200人のベトナムの青年を日本に留学させた歴史がある。

2000年以前:ベトナムと日本の公式な外交樹立と両国トップの初訪問

ベトナムと日本の現代における公式な外交関係は、1973年にパリで行われた署名によって樹立された。本章では、そこから2000年以前までのベトナムと日本の外国の歴史を紹介していく。

パリでの外交樹立 出所:tuoitre.vn

1993年:ベトナム首相の初めての来日

ベトナム社会主義共和国首相として当時のボー・ヴァン・キエット首相(Võ Văn Kiệt)が、1993年に初めて来日した。当時の日本の首相である宮沢喜一は「日越新時代の幕開け」と歓迎した。また、ドイモイ政策について言及し、高く評価した。以来、両国は継続的に協力を促進し、強化してきた。

日本は現在、政治、経済、防衛、安全保障、文化、教育、観光などのあらゆる分野においてベトナムの主要な重要パートナーとなっている。

ベトナム社会主義共和国首相として初来日 出所:baochinhphu.vn

1994年:日本首相の初めてのベトナム訪問

当時の村山富市首相は、日本の首相として1994年に初めてベトナム社会主義共和国を訪問した。

この訪問では、ベトナムのインフラや産業基盤整備に寄与するために77億円にものぼる新規無償資金援助の提供を決定した。
また、ベトナムは翌年の1995年にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟することが事実上決定していた。

村山富市首相(当時)が日本の首相として初めてベトナム社会主義共和国を訪問
出所:国立公文書館

1995年:ベトナム書記長の初めての来日

当時のド・ムオイ書記長(Đỗ Mười)は、ベトナム共産党の書記長として1995年に初めて日本を訪問した。日本は、ベトナム共産党書記長が公式訪問した最初のG7諸国でもある。

日越外国関係が樹立された1973年以来、ベトナム共産党書記長は4回、国家主席は4回、首相は22回、国会議長は4回日本を訪問している。日本は1992年にベトナムへのODA援助を開始し、現在、日本はベトナムにとって最大の政府開発援助(ODA)供与国であり、労働協力において第2位、のパートナーとなっている。また、貿易においても最大のパートナーの1つであり、日本はベトナムにとって重要な国際パートナーとして位置づけられている。

天皇陛下とムオイ書記長との会談 出所:vovworld.vn

2000年以降:ベトナムと日本の戦略的パートナーシップの発展

ベトナムと日本間の戦略的パートナーシップは、経済、政治、文化、安全保障など多岐にわたる分野で顕著に発展してきた。

ベトナムと日本のパートナーシップは2009年に結ばれ、2023年現在まで複数回パートナーシップの格上げ・強化が行われており、ベトナムと日本の関係性が時間と共に強固になっていることを表している。

本章では、2000年以降のベトナムと日本の関係性として、パートナーシップの発展を主に紹介していく。

2009年:「アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」に関する共同声明

当時のベトナム共産党であるノン・ドゥク・マン書記長(Nông Đức Mạnh)は、2009年に来日した。ノン書記長と当時の麻生太郎首相は、「アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」に関する共同声明に署名した。日本はG7諸国として初めてベトナムと戦略的パートナーシップを結ぶこととなった。

日本は、ベトナムとの間で日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)、ベトナム・日本経済連携協定(VJEPA)をはじめ、多くの二国間および多国間協定を締結している。これには、環太平洋パートナーシップのための包括的及び先進協定(CPTPP)や地域包括的経済連携(RCEP)などが含まれる。

両国は1999年以来、互いに優遇税制を敷いており、2023年9月時点で、ベトナム日本間の貿易総額は約329億ドルに達した。

「アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」に関する共同声明に署名 出所:sggp.org.vn

2014年:「アジアの平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」樹立に関する日越共同声明

当時のチュオン・タン・サン国家主席(Trương Tấn Sang)は2014年に日本に来日し、安倍晋三首相(当時)と「アジアの平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ樹立に関する日越共同声明」を発表した。2009年に結ばれたパートナーシップに「広範な」という文言が追加されているとおり、より高い水準で両国間のパートナーシップを発展させる目的で一致した。

2023年9月までの累計で、日本のベトナムへの外国直接投資(FDI)は件数ベースでは約5,198件に達し、金額ベースでは約713億ドルに達している。これは、ベトナムに投資している143の国と地域の中で第3位である。今年の9月までで、日本のベトナムへのFDI総額は約29億ドルに達し、前年同期比50%増加している。

「アジアの平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ樹立に関する日越共同声明」出所: baotintuc.vn

2015年:「日越関係の共通ビジョンに関する重要な声明」

ベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長は2015年に来日し、当時の安倍晋三首相と共に「日越関係の共通ビジョンに関する重要な声明」を発表した。これまでの日越間の外交成果に基づき、「アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」関係を促進し、さらに深化させていくために発表された。

ベトナムは、2003年から中等教育、2019年からは小学校に日本語の授業を導入した世界初の国である。日本はベトナムの産業発展における最大の支援国の一つであり、ODAプログラムを通じてベトナムの教育訓練に貢献している。

現在、日本には約5万1,000人以上のベトナム人留学生がおり、日本はベトナムの4つの大学を質の高い大学に格上げすることを支援している。また、科学技術、技術、経営、サービス分野で高度なベトナム人材を育成するための日越大学の設立・運営にも協力している。

チョン書記長と安倍首相 出所:nld.com.vn

2017年:天皇皇后両陛下のベトナム訪問

天皇皇后両陛下は2017年に、ベトナムへ初めて訪問された。この歴史的な訪問は、日本とベトナムの関係強化において特別な意義を持つものである。

訪越中、天皇皇后両陛下は、ベトナムの古都フエを訪れ、フエ宮廷音楽の鑑賞をされた。また、ベトナムの愛国者であるファン・ボイ・チャウの記念碑にも足を運んだ。この訪問は、日本とベトナムの友好関係をさらに深める重要な一歩となり、両国間の文化的交流と相互理解の促進に寄与した。

天皇皇后両陛下のベトナム訪問 出所: vnexpress.net

2021年:「広範な戦略的パートナーシップ」の新たな段階の開始に向けた共同声明

ベトナムのファム・ミン・チン首相は2021年に日本へ訪問した。両国は、「アジアの平和と繁栄に向けたベトナムと日本の広範な戦略的パートナーシップの新たな段階の開始に向けた共同声明」を発表した。

本パートナーシップでは、首脳レベルでの年次訪問の実施や、政府間の関係省庁による協議および協力の強化が確認されている。また、国会、政党、地方自治体を含む各レベルでの交流促進も合意された。これらの取り組みは、両国関係をより密接にし、多角的な協力を促進することに寄与する。

さらに、南北高速道路、南北高速鉄道、ホアラック・ハイテクパークなどの重要プロジェクトに対する連携も継続される。文化、科学技術、教育・訓練、青少年交流の分野での協力も強化され、両国の伝統文化を尊重し、文化財保護に関する協力も進められることになっている。

2023年現在、日本には約52万人のベトナム人が居住しており、これは中国人に次いで第2位である。ベトナム人コミュニティは日本全国47都道府県に広がり、特に東京、大阪、千葉、埼玉、愛知、九州、福岡に集中している。

チン首相の日本訪問 出所:vnexpress.net

2022年:岸田首相のベトナム訪問

2022年に岸田文雄首相がベトナムを訪問し、ベトナムのファム・ミン・チン首相との間で首脳会談が行われた。首脳会談では、感染症対策、貿易投資、インフラ整備、人的交流、気候変動対策、安全保障など、幅広い分野での協力について意見交換が行われた。特に、技術革新、デジタルトランスフォーメーション(DX)、サプライチェーン多元化の協力を強化することが確認された。

岸田首相は、ASEANにおける日本企業のサプライチェーン多元化支援事業において、ベトナムでの事業が最多であることを強調した。また、DXによる両国の連携分野の広がりに期待を示し、「協力の可能性に限界はない」と述べた。

岸田首相のベトナム訪問 出所:vietnamplus.vn

2023年:日越外交関係樹立50周年

今年2023年は、ベトナムと日本の外国関係樹立から50周年の節目である。最後に、2023年にあった両国間のイベントを紹介していく。

秋篠宮ご夫妻がベトナムへ訪問

秋篠宮ご夫妻が2023年9月に、ベトナムを訪問された。この訪問はコロナ禍以後、秋篠宮ご夫妻による初の外国訪問であり、日本の皇族によるベトナム訪問は6年ぶりのことである。

秋篠宮ご夫妻がベトナムを訪問 出所:vnexpress.net

「アジアと世界の平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げ

2023年11月27日から30日まで、ヴォー・ヴァン・トゥオン国家主席(Võ Văn Thưởng)が日本に来日し、両国関係における重要な転換点となった。岸田文雄首相との会談を行い、両国関係を「アジアと世界の平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明が発表された。このパートナーシップはベトナムの外交においての最高位のパートナーシップである。同様の位置づけを有する国は、米国、韓国、インド、ロシア、中国の5カ国である。

ベトナムと日本は、安全保障・国防から経済、文化、観光、人的交流に至るまで多岐にわたる分野での協力を強化にすることに合意した。特に注目されるのが、エネルギー、環境、科学技術、GXグ(リーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、イノベーションなどの新分野でも協力である。

トゥオン国家主席は、このパートナーシップの格上げを「日越関係における新たな章の幕開け」と評価している。一方、岸田文雄首相は、ベトナム人人材が日本の社会経済発展において「欠かせない存在」であると強調した。これは、両国間の人的交流がさらに強化されることを示唆している。

この歴史的な進展は、日越関係の新たな段階を象徴し、両国間の友好関係をさらに深めることになる。今後、日本とベトナムは、共通の価値と利益を基盤に、多岐にわたる分野での協力を続けていくことが期待される。

「アジアと世界の平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明

トゥオン国家主席と岸田首相 出所:tuoitre.vn

ファン・ミン・チン首相と岸田首相の首脳会談

2023年12月16日、日ASEAN特別首脳会議に参加するために来日中のファン・ミン・チン首相と岸田文雄首相は首脳会談を行った。この会談では、政府開発援助(ODA)案件3件の文書の交換が行われた。

また、両国の関係を更に発展させること、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、人間の尊厳の確保に向けたASEANとの協力強化について言及された。加えて、両首脳は経済分野での協力に関するファクトシートを発出した。

岸田首相は、日本とASEANの信頼を次世代に繋ぎ、関係を更に強化することを願う旨を述べた。一方チン首相は、両国関係が包括的戦略的パートナーシップの下で幅広い分野で発展していることを喜び、この50周年を機に両国関係を一層強化したいと述べた。

チン首相と岸田首相 出所:baochinhphu.vn

おわりに

この50年間で、ベトナム・日本両国は相互理解と信頼を深めてきた。日本の皇室のベトナム訪問や、ベトナムの高官の日本訪問は、両国間の友好関係を象徴する出来事として特筆される。また、日本はベトナムの重要なODA供与国として、ベトナムの経済発展と社会基盤の強化に大きく貢献してきた。

今後も、ベトナムと日本は共通の価値と利益を基盤に、さまざまな分野での協力を続け、アジアだけでなく世界の平和と繁栄に貢献していくことが期待される。この長年にわたる友好関係は、両国の未来にとって不可欠な基盤であり、さらなる発展の可能性を秘めている。


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