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【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き

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【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • 日本からベトナムへ輸出可能な果物はリンゴ、日本ナシ、温州ミカンの3品目
  • 輸出にあたっては植物防疫の基準を満たし、登録生産園地の申請等の手続きが必要
  • ベトナムへの輸出にあたっては適切な通関手続き、検査を受けることが必要

はじめに

ベトナムでは南国の暖かい気候の下で、非常に多くの果物が栽培されている。日本のスーパーマーケットでもベトナム産のマンゴー、ライチ、ドラゴンフルーツ等の果物を良く見かけるようになってきた。

一方で、日本産果物のベトナムへの輸出も近年盛んになっている。特に経済発展が著しいベトナムではアッパー層やミドルアッパー層が増大しつつあり、現地物価と比較すると高価な日本産果物も大きな人気を集めている。また2021年10月からは新たに温州ミカンの輸出も解禁され、注目を集めている。

今回は日本からどのような果物をベトナムへ輸出することができるのか、そして果物の輸出に必要な条件、輸出手続きについて解説していきたい。

ベトナムへ輸出が可能な果物

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:ベトナムへの輸出が可能な果物

現在、ベトナムへ輸出が可能な果物は、リンゴ・日本ナシ・温州みかんの3種類である。以下でそれぞれの果物について解説していきたい。

リンゴ

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:ふじリンゴ
(画像)ベトナムのスーパーで販売される日本産リンゴ (出所)現地新聞 TinTuc新聞

リンゴの輸出は2015年9月17日から解禁となり、初めて日本からベトナムへ輸出された果物となった。解禁された当時は、ベトナムへの病害虫の侵入を防ぐ目的から、収穫まで袋掛けを行う等の植物検疫条件を満たす必要があった。しかし、2019年12月15日からは袋掛けの条件が免除され、代わりに低温処理施設における1.1℃以下での28日以上の保存という条件がついた。

ベトナムでの輸入リンゴの人気は高まっている。ベトナム国内で栽培されたリンゴもあるが、海外産のリンゴと比べると甘さも少なく、大きさも小さい。現地報道によると2020年のリンゴ輸入量は10万トンにも達し、世界で5番目に多くのリンゴを輸入している国となった。

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:輸出量輸入量ともに伸びている
(グラフ)ベトナム向けリンゴ輸出量・輸出額の推移 
(出展)財務省貿易累計のデータよりonevalueが作成

上の図表はベトナム向けの輸出量と輸出額の推移を表している。リンゴ輸出解禁の2015年から右肩上がりに伸び続けているのが分かる。2020年はリンゴの収穫が不作だったため、現象していた。

また、日本産リンゴがベトナムへ輸出される際の関税は日ベトナム経済連携協定(VJEPA)によって0%となっており、今後ますますの輸出拡大が期待できる果物である。

日本ナシ

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:日本産の梨
(画像)スーパーで販売されている日本産ナシを眺めるお客さん (出所)現地新聞 女性新聞

日本ナシの輸出は2017年1月16日から解禁された。輸出の条件として、シンクイガという害虫の侵入を防ぐ目的から、低温処理、防除措置、袋掛けのいずれかの措置を取ることが求められている。

ベトナムの梨市場はほとんど国外からの輸入に頼っており、主な輸入国は韓国、中国となっている。その中で、中国産のナシは安価であり、トラディショナルトレードと呼ばれるローカルな市場、パパママショップ等で売られていることが多い。一方で日本や韓国のナシは、モダントレードと呼ばれるスーパーマーケットやショッピングセンター等で売られている。

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:収穫量が減る
(画像)ベトナム向けなしの輸出量・輸出額の推移 
(出所)財務省貿易累計のデータよりonevakueが作成

上の図表は、日本ナシのベトナム向けの輸出量と輸出額の推移を表している。こちらもリンゴと同様に輸出が解禁した年から順調に伸びていたが、2019年と2020年は不作が影響で減少している。

温州ミカン

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:温州ミカン
(画像)実った温州ミカン (出所)現地オンライン新聞 VnExpress

温州ミカンの輸出は2021年10月1日から解禁された。輸出の条件としては、生産園地にてミカンバエが発生していないことを確認することが求められている。現在は香港や台湾などの中華圏に輸出されることは多い温州ミカンであるが、今後はベトナム向けの輸出も拡大していくことが期待されている。

ミカンはベトナム国内でも多く栽培されている果物である。温州ミカンと似ている品目としては「Quýt hồng」と呼ばれるマンダリンオレンジがメコンデルタ地方で栽培されている他、「cam sành」と呼ばれる緑色のオレンジも多く栽培されている。柑橘類はベトナム人が最も好む果物の1種であるため、ベトナム産のオレンジ・ミカンとの差別化を行い、日本産ミカンというブランディングを成功させることで、販売拡大のポテンシャルが高いと言えるだろう。

輸出が認められていない品目

リンゴ、日本ナシ、温州ミカン以外の品目は、現在日本からベトナムへの輸出が認められていない。とはいえVJEPAの締結以後、農林水産物の両国間の貿易はますます盛んになっている。今後の農林水産省とベトナム当局との交渉によって、輸出可能な果物の品目が拡大される可能性は高い。

日本産のリンゴとナシが人気の理由

なぜベトナムで日本産のリンゴとナシの需要が拡大しているのか、高価格の裏にある人気の秘密について解説していく。

ベトナムでの販売価格とは

2019年にJETROが主要都市で行ったりんごの市場価格調査では、1kgあたりの米国産りんごは8万6000ドン(約410円)で、韓国産が11万3000ドン(約540円)、青森県産ふじは25万9000ドン(約1180円)と、米国産、韓国産の2倍以上の価格差がある。ベトナム産、中国産になるとさらに安く、1kgあたり6万ドン(270円)くらいである。

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:こみつのリンゴ
(画像)日本のリンゴ (出所)現地記事 

梨に関しては統計はないが、1kgあたり日本産の梨、大体20万ドン~25万ドン(約950円~約1,190円)であるのに対し、韓国産の梨は6万ドン~10 万ドン(約270円~約480円)とこちらも約2倍くらいの価格差がある。

これらのベトナムで売られているりんごや梨は運搬コストなどにより、日本で売られているものよりも、どうしても割高になってしまう。では、なぜ日本よりも所得が低いとされるベトナム人が日本より高い値段の果実を買うのだろうか。

高いのに人気な訳

ベトナムは良質のりんご栽培の条件である平均気温14度を上回ることから、小ぶりで収穫高は限られ、これまで中国から多くを輸入してきた。このため、ベトナムはりんごの輸出において潜在的に有望な市場と見られ、日本政府も粘り強くベトナム政府と輸出解禁に向けた交渉を行ってきた。

ベトナムが他国から輸入しているりんごと比較し価格は高いが、玉が大きく、美味で、包装が綺麗な日本産のりんごは贈答用としてニーズが高く、その他では富裕層が日常生活食として購入のターゲットとなる。

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:こみつのリンゴ
(画像)甘そうな日本のリンゴ(出所)現地オンラインサイト 

ベトナムの大手果物販売会社であるKLEVER FRUITは、今年4月にホームページの見出しで「世界で最も価格の高い日本のりんごである”サンふじ”をKLEVER FRUITで販売開始」と栽培の様子を含め、紹介している。

日本のりんごの価格が高いということを前面に出したこのプロモーションの仕方からも分かるように、日本のりんごであれば価格が高くてもベトナムの消費者を呼び寄せることができるという確信が販売側にはあるようだ。 

新聞紙での紹介

人気の理由は現地の新聞紙が取り上げたことも挙げられる。リンゴとナシのそれぞれを述べていく。

リンゴ

ベトナムの主要新聞紙の一つThanh Nienでは2021年1月12日付で「なぜ青森県産のりんごは世界で一番美味とされているのか?」という見出しの記事を掲載し、栽培過程を説明した。もう一つの主要新聞 Dan Triでは、「日本の蜂蜜りんごは100万ドン/kg(=4,760円/kg)します。それでも、ベトナム人民は急ぎ買いに行きます。」という見出しで、「日本の蜂蜜りんごは、常に在庫切れのため、現在、多くのベトナム人女性の『ターゲット』となっています。」と、青森県産のこみつを紹介していた。

同記事で、ハノイとホーチミン市で輸入果物の販売を専門とするチェーン店のオーナーは、日本産のリンゴが人気を博している理由として、「日本産の蜂蜜りんごは真っ赤な皮をしていて、特に芯に甘い蜜が集中しており、香りがとても良く特徴的です。独特で不思議な美味しさから、あっという間に売り切れます。」と述べている。国産りんごの輸出の9割は青森県産であることから、ベトナムでは青森ブランドが確立しつつある。ベトナムのテレビ番組でも日本の産地でのりんご栽培や出荷の様子が放送され、ベトナム人向けの日本旅行ツアーではりんご狩りが旅程に組み込まれていることもある。 

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:リンゴ狩り
(画像)日本でのリンゴ狩りツアーの様子 (出所)現地旅行サイト

ナシ

一方、梨もベトナムで栽培されているが、りんごと比べベトナムでは浸透していません。ベトナムへの梨の輸出が解禁されたのは2017年1月。福島では、福島ベトナム友好協会が梨を輸出することを提案したのが始まりだ。

その後、梨農家やJAの福島県関係者によるベトナムへの現地視察・調査が行われ、ベトナムへの輸出条件を満たすため生産園地の登録・検査などを経て、調達・輸出を担うイオンリテール株式会社へ出荷され、販売を担うイオンベトナムに届けられた(イオンは、ベトナムに6店舗を展開中)。また、現地視察・調査から、生産、販売に至るまで県庁やJETROによるコーディネート、販売プロモーションの協力も得ている。現在は、福島県、茨城県、広島県、大分県などから輸出されている。 

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:日本の梨
(画像)日本の梨 (出所)現地オンラインサイト

ホーチミン市の新聞Phumuは2017年10月14日付のネット記事で、「多くの消費者は日本の梨はとても高いと思っています。しかし、その品質と日本の農産物の安全性を信じています。」と報道し、2017年9月23日には国営のラジオ放送局VOV(Voice of Vietnam)は、ホーチミン市のイオンで茨城産の梨 (豊水)が販売を開始された様子を、「日本の巨大な梨はベトナムの主婦を『熱く』させています。」と見出しで報じ、ベトナム産の梨の2倍~3倍の大きさがあることを説明している。日本ブランドが梨にも浸透しつつあることを含め、梨の人気が高いことも伺える。

ベトナムへ果物を輸出するための条件

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:ベトナム向け果実を出荷する条件

ベトナムへ果物を輸出するためには、全ての果物に関して共通で求められている条件と、各種類の果物で個別に課されている条件がある。

共通の条件

リンゴ、日本ナシ、温州ミカンの全てを輸出するにあたって、以下の3つの条件を満たしている必要がある。

生産園地の登録

ベトナム向けに果物を輸出するには、各基準を満たした「ベトナム向け果物の生産園地」として植物防疫所において登録される必要がある。

登録を希望する事業主は、都道府県の管轄部署に対して「栽培地検査申請書」を提出する必要があり、都道府県は提出された申請書を取りまとめた上で、毎年3月31日までに当該地域を管轄する植物防疫所に提出することとなる。

選果こん包施設及び選果技術員の登録

ベトナム向けに果物を輸出するには、選果・こん包を行う施設および担当の技術員が植物防疫所において登録されている必要がある。

登録を希望する希望主は、都道府県に対して「選果こん包施設登録申請書」を提出する必要があり、都道府県は提出された申請書を取りまとめた上で、毎年4月20日までに当該地域を管轄する植物防疫所に提出することとなる。

また、選果こん包施設以外の保管施設(冷蔵庫)で果物を保管する場合は、上記と同じ流れで「保管施設登録申請書」も併せて提出する必要がある。

生産園地検査の実施

生産園地は、植物防疫所の防疫官による実地検査を受けなければならない。実地検査の内容は、登録申請書通りの栽培体制が整っているか、病害対策がどのように施されているか、どのような樹種が栽培されているか等のチェックである。

各種類の果物で個別に課されている条件

リンゴ、日本ナシ、温州ミカンの各種類の果物によって、それぞれ個別の条件が設けられている。

リンゴ

害虫防止として、以下のどちらかが実施されること

①結実から収穫30日前まで袋掛けが行われていること

②登録された低温処理施設および低温処理技術員によって、1.1℃以下で28日間の収穫後の低温処理が実施されること

ナシ

害虫防止として、以下のいずれかが実施されること

①結実から収穫30日前まで袋掛けが行われていること

②登録された低温処理施設および低温処理技術員によって、0℃以下で40日間の収穫後の低温処理が実施されること

③モモシンクイガ及びナシヒメシンクイに対して農薬登録上の適用がある交信かく乱剤を設置し、シンクイガ類に有効な農薬をその飛翔期間を含む栽培期間中に少なくとも5回(おおむね月に1回)使用すること

ミカン

生産園地が、ミカンバエが発生している地域から、地理的な障壁または緩衝地帯によって隔てられており、適切な園地管理が行われている等により、ミカンバエの無発生が証明されていること。

ベトナムにおける日本産果物の輸入手続き

【2021年版】ベトナムへの果物輸出の最新情報:輸出可能な果物と輸出手続き:ベトナムへ果実を出荷

ベトナム向けに果物を輸出する際には、輸入通関手続きを行い、輸入時の検査を受けた上でベトナムへ運ぶ必要がある。また品物がベトナムに入国した後は販売許可手続きを実施してはじめて、販売を開始することができる。

輸入通関手続き

通関申告は通関データ処理システム(VNACCS)上にてオンラインで行われる。輸出者はオンライン上にて申告書、インボイス、船荷証券、価値申告書、商品証明書といった書類を提出する。通関申告が承認された際に、今後どのような流れになるかがVNACSS上にて通知される。これまで実績がある事業者の場合は審査・検査がない場合もあるが、通常は書面審査または貨物審査のどちらかが行われる。

輸入時の検査

輸入時に食品安全検査が行われる。検査は3つのレベルがあり、状況に応じて3つのいずれかの検査が適用される。

前回も同様の検査が行われて合格していることや、GMP、HACCP、ISO22000、IFS、BRC、FSSC22000の品質管理基準を満たしている施設にて生産された場合などは簡易検査となる。また逆に過去の検査において不合格となった経歴がある場合には、厳重検査となり、サンプル検査が行われる。またどちらにも該当しない場合は通常検査となり、食品安全検査申請書、商品自己公表書、パッキングリストの写し等による書面審査が行われる。

販売許可手続き

果物の販売については、販売する事業所の条件等がベトナムの保健省によって定められている。そのため、輸入された果物は、販売許可を得た事業所にて正式に販売される必要がある。

まとめ

今回の記事では、ベトナムへの輸出が認められている果物、人気の理由、および輸出に向けて必要な準備、輸出までの流れを解説してきた。

ベトナム人の安心安全、高品質への意識の高まりと伴に、日本ブランドの認知度も高まっており、価格が高くても購入する人が増えてきている。ベトナム経済の発展により中間層、富裕層が拡大するにつれて、今後、この傾向はさらに強まってくることが予想される。この潮流に乗って、日本産のりんごと梨が販売チャネル拡大をし、温州みかんもそれに続くことを期待している。

 特に植物防疫に関する条件や、輸出の際の手続きは非常に複雑であり、頻繁に制度も改定されている。そのため、実際に輸出を行う際には専門家のアドバイスを受けながら準備を実施していく必要があるだろう。

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