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ベトナム駐在員必見:共産党・社会主義を知る者がビジネスを制する


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  • ベトナムは社会主義達成の過渡期として市場経済を導入している
  • ベトナムのトップは共産党の政治4役であり、これは思想や出自のバランスを取って選出されている
  • ベトナム政府は外交において、特にアメリカと日本との関係構築に力を入れている

はじめに

国として経済発展をめざす日本とベトナムは文化的に近く、国民性も似通っていると言われるが、二国間の大きな違いとして、日本は資本主義国、ベトナムは社会主義国であることが挙げられる。資本主義国の国民である私たち日本人が、ベトナムを社会主義国としてその特徴を理解しようとしても、何が社会主義でその政治・経済の実態はどうなっているのか、漠然としたイメージにかれる人も少なくないかもしれない。社会主義という言葉の定義が明確でなく、時代の潮流によって変化していることも、私たち日本人の理解を難しくさせている。世界にはベトナムの他に、中国、北朝鮮、ラオス、キューバの計5カ国の社会主義国があるが、これらの国においても社会主義の解釈や政治体制に相違が見られる。

民主主義、資本主義、社会主義、共産主義の違いとは?

社会主義を理解しようとする場合、民主主義、資本主義、社会主義、共産主義との比較での違いも混乱を生じさせる。民主主義は政治用語で、資本主義、社会主義、共産主義は経済用語である。従って、民主主義の対義語は社会主義や共産主義ではない。政治用語である民主主義の対義語としては、「君主制」や「独裁制」が挙げられる。
一方、経済の仕組みを表す資本主義の対義語が、社会主義や共産主義である。社会主義や共産主義の定義は国や時代により変わる部分はあるが、「みんなが平等で公正な社会を実現する」という思想の根幹は共通している。

民主主義

社会主義諸国も、政治体制として民主主義を肯定している。民主主義の原則は、「国民が主権を持ち、自らの意思で、政治の決定に関与する」ことである。この原則を尊重したうえで、実態には国ごとに違いがあるものの、社会主義国の公式の組織原理として、民主主義と中央集権主義的要素が混在した民主集中制がある。資本主義国が民主主義の条件として主張する自由に開かれた選挙制度、複数政党制、三権分立などは、必ずしも優れた民主政治体制ではなく、社会主義諸国では下部の人民が選んだ上部の指導者の決定(実際には党内の意思決定の手続き)には皆が従う民主集中制を自国の状況に合わせて適用していると主張している。

資本主義

個人で資本を持って自由に生産活動を行うことができ、資本家は労働者を雇い、得た利益を労働者にどのように配分するかの権限を持ちる。自由な競争が行われ、多くの富を得る人が現れる一方で、低収入や失業で苦しむ人もおり、貧富の格差が生じる。

社会主義

会社や工場などの生産手段を国・政府が主導し管理しる。自由競争は行われず、国が建てた計画に沿って生産活動が行われる。労働者の生産から得られた利益を、国が各人の働きに応じて再分配する。

共産主義

社会主義を深化させ、さらに平等な社会の実現を目指しる。社会主義は国・政府(統治者)が資産・富を管理し、個人(被統治者)の財産の保有も一部認めるが、共産主義では、国・政府という管理者がいません。個人による財産の保有は認められず(統治者・被統治者の同一化)、階級も廃絶される。資産や生産活動から得られる利益を分配するのではなく、人民全員で管理・共有することで、全ての人が経済的に平等になる。しかし、今では社会主義諸国の中でも、この思想は方向性として尊重されるものの極端であると見なす傾向があり、実際は一部の共産主義者の理想の域に留まっている。

上記の「社会主義」と「共産主義」の思想を基盤に結成されるのが共産党であるが、これらの思想に、各国の特有の思想*が加わり、それぞれの共産党が究極的に目指す国家像が創造されている。

*例えば、中国では毛沢東思想、北朝鮮では主体思想、ベトナムではホーチミン思想がある。

ベトナムは社会主義達成の過渡期として市場経済を導入している

ベトナムを訪れた外国人の中には、共産党が主導する社会主義国ベトナムになぜ大きな貧富の格差が存在するのか、と疑問に思う人もいる。「みんなが平等で公正な社会を実現する」はあくまで思想・理念であり、現実は異なる。アメリカとのベトナム独立戦争に勝った後、ベトナムはこの思想・理念を追求した社会主義計画経済を実施してした。しかし、次第に行き詰まり、1987年のドイモイ政策実施以降は市場経済を導入し、個人間の平等よりも国全体の経済発展に重点を置き、実質的に豊かになれる人から豊かになっていく経済体制へと変わっている。 ベトナム共産党が主張するところでは、ベトナムの社会主義は末達成であり、達成の過渡期として市場経済を組み込んだ社会主義志向型市場経済が実施されている。ベトナムの国営テレビ局ベトナムテレビジョンの記事によると、ベトナムの社会主義志向市場経済とは、「社会主義的法治国家の管理の下、市場機能を通じて需給調節と価格調節が行われる経済のことであり、『豊かな国民、強固な国、公平で文明的かつ、民主主義的な社会作り』という目標達成へ向けての社会主義を志向するもの」であり、社会主義と市場経済は相容れないという一部の外部勢力の主張は正しくないとしている。

共産党:集団指導制

現在、ベトナム共産党の党員数は約510万人である。ベトナムの人口が約9,700万人であることから、国民の5%弱が党員だ。ベトナム共産党は一党独裁の下、マルクス・レーニン主義とホーチミン思想を堅持、時には創造的に応用し、党の理論・指針を発展させ、国の政策・政治決定を行ってきた。他の社会主義国同様、政治的に党が国家に対して優位にたち、党の役職が国家の役職よりも意味を持っている。5年に1度、全国の党員の代表者1,200人が招集され開かれるベトナム共産党全国代表者会議がベトナムで最も重要な政治行事であり、そこで選出される約200人からなる中央執行委員会(以下、中央委員会)が実質的なベトナム政治の最高指導機関となっている。 中央委員会の上位機関である政治局のメンバー17人は中央委員会約200人の中から選出され、党大会や中央委員会の決定を基に、党の政策や方針を明確・具体化し、その実施状況をチェックする。ベトナムの国家方針と施策は、実質的に政治局で決定されており、国家運営を司っている。政治局のトップが共産党の書記長で、国の最高権力者となる。

*中央執行委員会からは、政治局17人の他、書記局9人が選出される。書記局は党の日常活動の実務処理や党内間の人事組織調整など行う。

共産党の政治4役

ベトナム共産党の政治的特徴として、集団指導体制が敷かれていることがあり、中国や北朝鮮ほど個人に権力が集中していない。その象徴と言えるのが、政治4役(党書記長、国家主席、首相、国会議長)による権限の分散と均衡である。これら政治4役は、保守派と改革派のバランス、地域間のバランス(北部、中部、南部、どこの出身か)、権力のバランス(共産党、軍部、政府)を考慮して選出されることが慣例となっている。

現在の、ベトナム政治の中枢である指導部新体制4役は次のようになっている。

  • 党内序列第1位 共産党書記長(共産党のトップ、国の最高指導者) 
    グエン フー チョン(再任3期目、北部ハノイ市出身)
  • 党内序列第2位 国家主席(国家元首。儀礼的な役職で、党や政府への実権はない)           グエン スアン フック(前首相、南中部沿岸地方クアンナム省出身)       
  • 党内序列第3位 首相(政府代表。内閣・行政の運営) 
    ファム ミン チン(前共産党中央組織委員長、北中部地方タインホア省出身)
  • 党内序列第4位 国会議長(国会の運営・司法・立法)
    ヴォン ディン フエ(前副首相、北中部地方ゲアン省出身)

出所:JETRO

*ベトナムは地理的形状として南北に長く、北部、中部、南部で話されるベトナム語のなまりの違いが強いうえ、郷里に対する思いが強いと言われる。また、1954年~1975年に北緯17度線(地図上の30.クアンチ省にある)を境に、共産主義国家の北ベトナムと親西側諸国の南ベトナムとに分断された歴史があり、国を一つにまとめるためにも、ベトナム政治では特に地域間のバランスに注意を払った政策・人事が執行されている。

国会:各決定は共産党の指導下にある

国会は主権者である人民の最高の政治代表機関であると伴に、ベトナムの憲法では、国会が国家政治の最高権力機関と規定されており、内閣、司法機関は国会直属の機関と位置付けられている。ただし、国会は共産党の指導下にあり、中央委員会が決定する政治的指針の下、法律の制定や社会経済計画の策定、国家主席や国会議長、首相、最高人民裁判所長官の選任や解任などを行う。国会議員は国民の直接選挙により選出され、国会議員の中から国家主席が選出される。一院制(500名)で、任期は5年である。国会議員は党員でなくても立候補でき、2021年7月時点で500人の議員のうち、21人が党員ではない (しかし、立候補の際、党関連の組織による事前審査を受ける)。

内閣:共産党指導下の、国会の決定事項を執行する

内閣は国会の決定事項を執行する機関であり、国レベルの行政機関である。政治、経済、文化、国防、諸外国との対外業務などの国政を司る。また、各地方レベルの行政機関である人民委員会を統括、指導、監督する。内閣のトップは首相で、国会が任免権を持ち、任期は5年である。

司法府:共産党指導下の国会がトップの任命権を持つ

司法府は、人民裁判所と人民検察院に分けられる。最高人民裁判所は日本の最高裁に相当し、その他各省・市、郡、村レベルで裁判所が設置されている。人民検察院も同様に各行政単位・区画ごとに設置されており、各機関、団体、個人が法律を遵守した運営・活動を行っているかを、指導・監督する。最高人民裁判所長官、最高人民検察院長官ともに国会が任免権を持ち、任期は5年である。

出所:JETRO

*計画投資省は、日本の内閣府、経済産業省、国土交通省の投資関連部局が統合されたような機関。

**工商省は、日本の経済産業省に相当。

***農業・農村開発省は日本の農林水産省に相当。

****労働・傷病兵・社会問題省は、日本の厚生労働省に相当。

*****各級とは、国→省・市→郡→村のことを指す。

共産党政治体制下での関係主要国とはどのような関係か?

アメリカ:現在は良好な関係を構築している

1975年にベトナム独立戦争は終結し、200万人以上のベトナムの民間人が亡くなったが、現在、ベトナム人の多くはアメリカを嫌っていることもなく、特に若い世代は親米的である。ベトナム独立戦争終結後、アメリカによる経済制裁が暫く続いたのに加え、1980年代にはソ連などの社会主義陣営からの支援が激減し、中国との対立や国内での計画経済の失敗もあり、ベトナムは政治的にも経済的にも苦しい状況に追い込まれた。それを打破するため、西側諸国のかつての敵国らと歩み寄る実利外交にベトナム共産党が方針転換をした頃から、アメリカとの政治・経済関係も改善されていった。アメリカ側からしても、1990年代頃からアジア安全保障戦略の枠組みの中でベトナムと軍事面の協力関係を構築したいと考えていたこと、及びベトナム進出を目論む経済界から関係改善を望む声が高まっていたことから、ベトナムとの政治・経済関係の改善を望んでいた。その後、政治的・経済的交流を積み重ねた結果、今のベトナム共産党とアメリカ政府は良好な関係に至っている。ベトナムは領土問題を抱える南シナ海で中国の強権的な侵入に対抗するため、アメリカの積極的な軍事介入に期待をしている一方、アメリカも中国の覇権主義に対抗する前線としてベトナムに期待している。2017年11月、ベトナムでグエン・スアン・フック首相を訪問した当時のドナルド・トランプ大統領が、出迎えた子どものベトナムの国旗を手に取り、アメリカ国旗を手にしたフック首相と、互いに振り交わした場面は両国の良好な関係を象徴していました。

ベトナムを訪問したトランプ大統領を出迎えるフック首相

資本主義国、社会主義国として体制・イデオロギーの違いから且つて戦争をした両国が、今はその違いを超えて、相手国の国旗を手に取り友好関係をアピールしている。

中国:協力できるところは協力し、譲れないところは断固抵抗する

ベトナムと中国における共産党の発足は両国の関係を「兄弟」と定義付け、1946年~1954年にベトナムの再植民地化を試み侵入してきたフランスとの戦争では、中国共産党が積極的にベトナム共産党を支援するなど、政治・軍事面で特別な関係にあった。しかし、その後、中ソ対立におけるベトナムのソ連寄りの姿勢に中国は不満をもつ一方、ベトナム独立戦争中の1972年、ベトナムにとっては敵国アメリカのニクソン大統領の訪中を受け入れ関係改善を図る中国にベトナムは不信感を抱き、続いて1978年のベトナム軍のカンボジア侵攻による親中派ポルポト政権の打倒、それに対する懲罰としての1979年の中国軍によるベトナム国境超え・紛争の勃発により、両国は国交断絶に至りました。1990年代に入り、ソ連の崩壊により後ろ盾を失ったベトナムは全方位外交に乗り出し、改革開放路線を歩む中国との経済的利益が一致し、両国は関係を改善していきるが、それは以前のような「兄弟」のような関係ではなく、それぞれの政治的・経済的国益をベースとした通常の2国間関係の枠内での関係改善だった。現在、中国との南沙諸島での領土問題に加え、中国人のベトナムでの不法就労なども政治問題化し、ベトナム国民の中国に対する感情はそれ程良好とは言えません。しかし、中国は国境を接し、経済的にベトナムに大きな影響を及ぼし、軍事的にも対抗できない大国であることから、ベトナム共産党にとって中国と友好的・互恵的な関係を維持することは死活問題である。一方で、ベトナムの国益・人民の幸福を侵害する試みには断固として抵抗する「協力しながら闘争する」外交方針は、特に中国の拡張主義に対し、利害関係国を巻き込み、一歩も譲ろうとしないベトナム共産党の姿勢を表している。

*2016年1月に開催されたベトナム共産党代表者第12回大会の政治報告の中で、党の一般的な外交方針として盛り込められた文言。

日本:歴史上、最も良好な関係を構築中である

日本は第二次世界大戦中、ベトナムを植民地化し、戦後は西側諸国の一員としてベトナムを含む東側諸国と対立関係にあったこともあり、1988年までのベトナム憲法の前文には「日本、フランス、アメリカの帝国主義者」という敵国としての歴史的記述があったほどだった。しかし、冷戦構造の崩壊に伴うベトナム共産党の外交方針の転換、1992年に日本が他の西側諸国に先駆けODAを開始したこともあり、日本政府とベトナム共産党の関係も急速に改善され、「緩やかな同盟関係」「自然な同盟関係」と評されるほど現在は歴史上最も良好な関係にあると言える。2020年10月に菅義偉首相が首相就任後初の外遊先としてベトナムを訪問したことも日本政府のベトナム重視の姿勢を示している。ベトナム共産党は、日系企業の投資、ODAによる支援、中国の覇権主義への対抗など、ベトナムの社会経済の発展・安定における日本の役割に期待している。

ベトナムが親日国である背景として、歴史と経済だけでなく、文化などの要素も欠かせない。以下の記事では、ベトナムが親日国である理由について、より身近で多角的な観点から解説しているので、是非参照いただきたい。

韓国: ベトナム経済の中で特別視されるほど急激に存在感を増している

概して、韓国との関係は良好である。ベトナム戦争中には韓国軍による住民の虐殺があったとも言われているが、ベトナム共産党はこの問題の追及に積極的でなく、過去に幾度も外国の侵攻を受け、酷い目にあってきたベトナムの国民の多くも、この出来事だけを問題視することはなく、両国の政治関係にもほとんど影響を与えていない。特に、韓国企業のベトナムの経済分野における存在感は大きく、2020年のベトナム向け海外直接投資(FDI)額は、シンガポールに次いで2位、認可数は1位となっている。近年では、サムスンだけでベトナム全体の総輸出額の4分の1を占めている。ベトナム共産党もサムスンを始めとする韓国企業はベトナムの経済成長に大きな貢献をしてきた認識しており、様々な政治的便宜を図っていると言われる。また、文化面においてはK-POPや韓流ドラマは人気で、特に若いベトナム人の韓国イメージの向上につながっている。

まとめ

以上、社会主義・共産党をキーワードとし、ベトナムの政治体制を概説した。ベトナムは社会主義国であることから、強権的な政治や個人の自由の制限、閉鎖的な社会体制というイメージを抱いている日本人もいるかもしれない。しかし実際は、外国人がベトナムで日常生活を送るうえで、役所での煩雑な手続き以外などで、ベトナムが日本と政治体制の違う社会主義国と感じることはほとんどない。

ベトナム共産党の外交基本方針は「全方位外交」である。相手国の政治・経済体制に関わりなく、今のベトナムは対外的に開かれている国であり、国を超えての人や物の移動は活発である。党は政治分野を含めて過度に情報を取捨選択して国民に流すということはせず、国民はネットやテレビなどを通して様々な情報にアクセスしており、世界情勢や国際社会におけるベトナムの立ち位置などを冷静で客観的に捉えている。それもあり、日本の経済発展や文化、日系企業のベトナム進出、ODAによる支援などをベトナム国民はよく知っており、親日感情の形成にも繋がっている。

また、一党独裁と言ってもベトナム共産党は現体制を維持し続けるために国民の支持は不可欠と考えており、世論の動向に敏感で、国民の意向を出来るだけ汲み取ろうとしている。特に今では、ベトナム国民の70%以上がベトナム戦争終了後(1975年)に生まれており、歴史に関心を持たない若者が増え、ITの発展で様々な情報に触れることができ、価値観も多様化している。こうした状況下で、共産党による統治を正当化するため、帝国主義勢力から独立を勝ち取ったという面ばかりを強調してもその説得力は弱まっており、経済成長に成功していることが共産党による統治が継続されている正当性を説明する大きな比重を占めてきている。そのため、開かれた国として外国からの投資を積極的に呼び込み、経済発展に繋げていくことは、党にとっても非常に重要な政策課題となっている。ベトナム共産党のイデオロギー、正当性を維持しながら、如何に国を豊かにしていくかが、今後も党が抱える最大の関心ごとであり、課題であり続ける。

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