ベトナムの外交方針
ベトナムは、外交の基本方針として「全方位外交」をとっている。相手国の政治・経済体制に関わりなく、今のベトナムは対外的に開かれている国であり、国を超えての人や物の移動が活発である。
アメリカとは、1990年代頃より政治的・経済的交流を積み重ね、現在ベトナム共産党とアメリカ政府は良好な関係に至っている。近年では、2017年11月にトランプ大統領(当時)が、2023年9月にはバイデン大統領がベトナムを訪問している。日本との関係も良好であり、2023年はベトナムと日本の外交関係樹立から50周年の節目を迎え、9月に秋篠宮ご夫妻がベトナムを訪問された。
アメリカや日本と良好な関係を構築すると同時に、中国との関係も強化している。2023年12月に中国の王毅外相がベトナムを訪問し、両国関係を強化することで一致した。会談において、ベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長は、両国の友好関係の重要性を強調し、中国との関係はベトナムにとって最優先であると述べた。王毅外相は両国関係を「運命共同体」と表現し、引き続き、各分野でベトナム側と協力を深めるとしている。
インドネシア大統領がベトナムを公式訪問
2024年1月11日から13日、インドネシア ジョコの・ウィドド大統領がベトナムを公式訪問した。ベトナム・インドネシア両国間で、エネルギーシフト、炭素貯蔵、再生可能エネルギー開発、持続可能なグリーン経済開発などの分野において、新たな協力関係を開拓するとしている。
在インドネシアベトナム大使館のタ・バン・トン大使は、ベトナム・インドネシア両国関係は、近年急速に発展しているとし、今回のインドネシア・ジョコ大統領のベトナム訪問の意義を強調する。近年の両国関係の例としては、グエン・フー・チョン書記長とインドネシア大統領・ジョコ大統領の電話会談(2022年8月)のほか、グエン・スアン・フック国家主席のインドネシア公式訪問(2022年12月)、ファム・ミン・チン首相のASEAN首脳会議参加(2021年4月、2023年5月、2023年9月)、ヴォン・ディン・フエ国会議長のインドネシア訪問(2023年8月)などが挙げられる。
※肩書は当時のもの
ジョコ大統領がベトナムを公式訪問するのは、2018年9月に続き2回目である。両国が戦略的パートナーシップを深化させ、70年以上におよぶ友好関係を強化する機会となる。
今後の展望
今回の公式訪問で、ベトナム・インドネシア両国は、2028年までに両国間貿易額を150億ドルに増やすことを目指すとした。両国がAFTA(ASEAN自由貿易地域)およびRCEP(地域包括的経済連携)の締結国である点も好材料である。国際経済が低調な中、両国間貿易は約10%のペースで拡大を続けており、両国間貿易額150億ドルの目標達成は現実的であると考えられる。
双方向の貿易を強化するため、両国は早急に第8回経済貿易合同委員会を開催し、経済貿易協力の促進策を提案する予定である。さらに、農業・漁業等の伝統分野に加えて、デジタル経済やグリーン経済、エネルギー転換、気候変動対策などの分野においても、協力文書を作成予定としている。
世界経済の見通しが不透明な中、ベトナムとインドネシアが著しい成長率と強力な二国間関係を維持していることは、ASEAN全体の経済的な自立性を強め、レジリエンスを高めることにつながると考えられる。