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ベトナム経済にコロナ直撃:企業8万社撤退も株価は最高値圏

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はじめに

本記事では、新型コロナウイルスの大規模な感染拡大に苦しむベトナムの現況と、既に現れている回復の兆しを4つ紹介する。

ベトナムは、2021年5月まではコロナウイルスの抑え込みに成功していた。事実、2020年には世界でも有数のGDPプラス成長を遂げており、報道機関や経済評論家からは「コロナ抑え込みの優等生」と評されることが多かった。
しかし新型コロナウイルスのデルタ株発生以降、ベトナムの抑え込みは崩れてしまっていると言わざるを得ない。現状のベトナムは、感染拡大により経済が麻痺しており、大きなダメージを負っている。しかしその中にも、今後の回復を示唆する兆しが確かに存在する。
まずはベトナムにおけるコロナウイルス流行の現状を様々な視点から紹介し、最後に今後の回復の兆しをまとめて紹介する。

ベトナムでの感染防止の現状

新型コロナウイルスの感染拡大により、ベトナムの多くの地域や都市は、感染の蔓延を防ぐために首相支持16号を適用していた。 それにより、多くの工業団地が生産を停止することもあった。
また、ワクチンの供給が不足しており、接種率がやや低くなっている。 2021年末までに1回目のワクチン接種を終えるのは、ベトナム人口のうち30%未満という予測もある。ベトナム政府は一部地域を除き、今年は海外からの観光客を受け入れないと計画している。

ベトナムのワクチン接種率は省・地域によってばらつきがある。全国の人口と比較した際の接種率は低いが、外資系企業が多く操業している都市部での接種率は高い。

専門家の見通し

世界銀行(WB)は、2021年前半にベトナムGDPが5.6%成長したことを評価したが、現在のベトナムが深刻なリスクに直面しており、4月末から多くの地域に感染が拡大していた。 世界銀行は、ベトナム経済に比較的回復力があるとしつつも、ワクチン接種率が低い状況を鑑み、2021年全体におけるベトナムのGDP成長率予測を4.8%に引き下げた。
VNDIRECT証券会社の専門家は、ベトナムの感染第4波が長く続くという仮説に基づいて、2021年のベトナムのGDPは5%しか成長しない可能性があると予測している。
ベトナム経済政策研究所(VEPR)は、2021年のGDP成長率の予測を第1四半期の予測と比較して1〜1.5%に引き下げた。
加えて、ベトナム国内最大手のファンドであるドラゴンキャピタル (Dragon Capital) はGDP成長予測を3.7%に引き下げ、Rong Viet証券会社(VDSC)も、ベトナムのGDP成長率が4%に低下すると予測している。

企業の生産活動が再開し、足元の輸入が急増か

ベトナムの貿易が発達したのはここ10年前後の話である。特に2016年以降は、途切れず連続して黒字を計上してきた。しかし2021年の8月末に、ベトナムの貿易が久々に赤字になっていることが判明し、新型コロナウイルスによって受けたダメージの大きさを垣間見ることとなった。しかしこの現象については悲観的な見方だけでなく、反対に楽観的な見方も見られる。

悲観的な見方

貿易赤字を解消する解決策がない場合、長期的な貿易赤字、特に消費財の輸入は、経済に部分的な悪影響を及ぼす。消費財の中でも、特に高級な消費財の輸入が多くなると、国産品の競争力が成長しづらくなり、国内の生産活動が鈍化する可能性がある。また、ベトナムはコメ輸出大国であるにもかかわらず、2021年に入りインド産の安価なコメの輸入が急増しているので、注意しなければならない。
貿易赤字により、外貨の獲得額が減少し、ベトナム中央銀行の外国為替準備金に影響を与えるため、外国為替に影響を及ぼす恐れがある。

楽観的な見方

貿易赤字は国内企業が生産を再開したことを反映しており、原材料の輸入が一気に増えていることが赤字の原因である。また、一部の外資系企業はベトナムでの操業を開始しているため、初期基盤を構築するための設備などの輸入を増やしている場合もある。
そのほか、消費財の輸入が増加することは、ベトナム人の消費が回復しているからだとみられている。

ベトナム国内での企業の動き

事業登録局によると、2021年8月に市場から撤退する企業の数は8.5万社(に達し、2020年同時期に比べて24.2%増加している。その中で、ホーチミン市には24,000の企業があり(市場から撤退する企業の総数の28.1%を占める)、前年比6.6%の増加だった。
また上記の8.5万社には、内資・外資両方の企業が含まれている。この8.5万社のほとんどが中小企業とされている。

流通麻痺は共通の課題

ベトナム南部における移動制限は、国内のサプライチェーンと輸送を困難にし、間接的に物流コストを増加させている。
ベトナムのとある日用品生産大手は、政府の移動制限発効により、労働者、特に荷積みと荷降ろしの労働力が不足していると考えられる。また新型コロナの蔓延防止のため、政府が推奨する工場従業員を住み込みで勤務させるという方法を実施した結果、同社のコストは月に数百億ドン増加した。

ベトナムの主要3産業を評価する指標

GDPの成長を相対的に評価し、傾向を推定するために、ベトナムの3つの重要な経済セクター、すなわち貿易・サービス(通常はGDPの40%以上を占める)、工業(通常はGDPの約40%を占める)および農業(通常はGDPの10%未満を占める)といった主要な指標を見る必要がある。

貿易・サービス業

貿易・サービス産業の成長の評価には、RSI(消費財とサービスの総小売売上高)が用いられる。 2021年の8月のRSIは33.7%減少し、7月は19.8%減少しました。 ポジティブなシナリオでは、9月のRSIは2020年9月同期と比較して減少しないと想定する。したがって、第3四半期の平均RSIは減少すると予想される。

※第3四半期の平均RSIの成長 =(9月(0%)+ 8月(‐33.7%)+ 7月(‐19.8%))/ 3 = -17.8%

工業

工業の評価には、IIP(産業生産指数)が用いられる。 8月のIIPは7.4%減少し、7月は0.3%減少した。 良いシナリオでは、9月のIIP は2020年9月同期と比較して減少しないと想定する。したがって、第3四半期の平均IIPは減少すると予想される。

※第3四半期の平均IIPの成長 =(9月(0%)+ 8月(‐7.4%)+ 7月(‐0.3%))/ 3 = -2.6%

農業

ベトナムには、農業セクターを評価する具体的な指標はまだない。このセクターは安定してゆっくり成長しており、GDP予測にあまり影響を与えないため、政府の計画に沿った最新のデータを使用する。そうすると農業セクターの第3四半期の平均成長は4.5%と想定する。
上記のデータに基づき、各セクターのGDPに占める比率が40%、40%、20%であることから、第3四半期のベトナムのGDPは、昨年の同時期と比較してマイナスに成長すると予測できる。 ただし、金融政策や金利など、GDPに影響する変数は他にもあるため、第3四半期のベトナムのGDP成長を数字で正確に予測することは非常に難しい。

ベトナム経済回復の5つの兆し

ベトナムの社会と経済は、新型コロナウイルスの流行によって大きな影響を受けていることがわかる。 しかし、これは短期的な影響に過ぎず、中長期的にはワクチン注射による集団免疫を達成した後、ベトナム経済は比較的早期に回復し、力強い成長軌道に戻ると予測される。

上記の評価は、以下のマクロ経済的要因に基づく。

金利を引き下げる余地がある

ベトナムの現在のインフレ率(CPI)は過去5年間で最低の水準に上昇している。これは、ベトナム中央銀行が経済を刺激するために、貸出金利を引き下げる余地を十分に持つための基盤である。

大規模な金融支援を実施する余地がある

他の国と違って、ベトナムの企業に対する現在の支援政策は、主に税金、電気代、通信料金などの延期であり、政府の予算収入に影響を与えないと考えられる。 したがって、今後、ベトナム政府は景気回復を促進するために多額の予算をかける可能性が高い。

ベトナムの主要輸出先での需要回復

主要国でのワクチン接種促進により、米国、EU、日本などベトナムの主要な輸出市場での商品、サービス、食品の需要が徐々に回復していくと考えられる。それにより、ベトナムの輸出量も増加し、関連産業も回復していくという見通しもある。

外資系大手の躍進

8月(ベトナムでの流行のピーク)に、韓国のLGグループはハイフォンへの14億USDの追加投資を発表した。加えてサムスングループも、今後3年以内にベトナムに2,056億USDを増資すると発表した。 スイスのネスレは、ドンナイの工場に2021年中に1億USD以上を投資することを決定した。 一部の外資系企業は、コロナ禍においてもベトナムに大きな信頼を置いていることが見てとれる。

株価の好調

国の経済動向について考える際には、GDPだけでなく株価も欠かせない要素である。ベトナムの株価を表す代表的な指数として『VN指数』というものがある。
ベトナムがコロナウイルスの抑え込みに成功していた2021年第1四半期まで、VN指数はほとんど右肩上がりで推移していた。ベトナムが新型コロナのデルタ株の影響を強く受けた7月には一度大幅に下降したが、その直前には過去最高値を更新していた。その一度下降したVN値も、下降後すぐに持ち直し、2021年9月現在も最高値付近で推移している。
このことから、市場関係者は既に経済回復を織り込んでいると考えられる。

まとめ

本記事ではここまで、ベトナムの苦しい現況と回復の兆しについて紹介してきた。
まず喫緊の課題として、ワクチンの接種率が低いことが挙げられた。これは供給不足によるものである。世界銀行などの金融機関は、ベトナムのGDP成長率予測を軒並み引き下げたが、良い言い方をするとプラス成長は継続すると見られている。
もう一つ懸念点として、ベトナムが久しぶりに貿易赤字に陥ったことが挙げられる。しかしこれに関しては悲観と楽観で意見が分かれており、必ずしも悪い兆候とは言えない。 ベトナムの主要3産業を見ると、どうしてもベトナムの第3四半期はマイナス成長に陥ると思われる。
本記事は、どちらかというとネガティブな要素を紹介する方が多くなった。しかし何度も言及しているが、ベトナム経済には既に4つの回復の兆しが見てとれる。1つ目は金利を引き下げる余地があること、2つ目は大規模な金融支援の可能性があること、3つ目は輸出先先進国での需要回復、4つ目は外資系大企業の躍進である。そして5つ目には、株価の好調を挙げた。

ベトナムとコロナウイルス流行については、他の記事も是非参照いただきたい。

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