はじめに
みなさん、ベトナムに行ったことはありますでしょうか?ベトナムは日本と大きく異なる交通状況で、初めて行く方は驚きを隠せないと思います。
ベトナムの移動手段は、主に以下の通りになります。
・バイク
・車
・タクシー
・バス
・電車
・配車アプリ
・飛行機
・自転車
旅行やビジネスでベトナムを訪れる際には、移動手段の確保は欠かせません。日本の公共交通機関は時刻通りに運行されますが、海外では交通事情は異なります。
ベトナムでは様々な交通手段があり、交通インフラも年々発展しています。この記事では、そんなベトナムの移動手段を解説します。
配車アプリ
本章では、ベトナムで主に利用されている「配車アプリ(ライドシェアサービス)」を紹介します。
ベトナムでは、「配車アプリ(ライドシェアサービス)」が最も便利な移動手段となっています。車だけでなく、バイクタクシーもアプリを使って利用することができます。
日本では、許可を受けないで自家用車やレンタカーを利用してお金を貰う「白タク」は禁止されていますが、ベトナムでは多くの人が自身の所有しているバイクや車をタクシーとして利用してドライバー業務を行います。ドライバーはアプリに登録することで、アプリが近くの乗客を探してマッチングし、乗客を迎えに行き、目的地まで送ります。
現在、ベトナムでは主にGrab・be・Gojekという配車アプリが利用されており、これらのアプリのドライバーは合わせて60万人いると言われています。この人数はベトナムの人口の約 0.6%に相当します。
配車アプリを利用するメリットとしては、タクシーを探したり予約したりする必要がなく、使いたい時にすぐにドライバーが到着してくれる点が挙げられます。また、料金が事前に確認できるため、利用者はぼったくりの心配をする必要がありません。ただし、いくつか問題も存在します。例えば、ドライバーが出発地(利用者の現在地)にスムーズに到着しない場合や、言語の問題からコミュニケーションが取れない場合があります。また、ラッシュアワー時には料金が高騰することや、ドライバーによって運転技術が不十分で、運転が荒かったり、到着が遅れたりする場合もあります。
Grab(グラブ)
「Grab(グラブ)」は2012年にマレーシアで創業され、その後シンガポール、ベトナム、タイなどへ事業拡大し、現在は東南アジア8カ国に展開しています。ベトナムでは「Grabfood(グラブフード)」というデリバリーサービスや「GrabExpress」という宅配サービス、「Grabmart(グラブマート)」という買い物代行サービスも提供しています。
グラブはベトナムで最も利用者の多い配車アプリであり、2022年時点で約20万人のバイクと車のドライバーが登録しており、そのうち50%はハノイのドライバーです。ベトナムでは、多くの道路で「Grab」と書かれた洋服やヘルメットを身に着けたドライバーが活動しています。グラブドライバーの日々の収入は、30万ドン(約1500円)から120万ドン(約6000円)程度で、彼らの多くはグラブの収入を主要な収入源としています。慣れてくると、ドライバーは効率的に乗客とマッチングし、空いた時間も有効活用できるため、収入も増えていきます。料金は時間帯によって変動しますが、基本料金が設定されています。例えば、ハノイとホーチミンでは、グラブカー(4人乗り)の最初の2kmまでが2万9000ドン(約180円)、それ以降は1kmあたり1万ドン追加されます。グラブのバイクの場合、ホーチミンでは最初の2kmまでが1万2500ドン(約63円)であり、ハノイでは1万3500ドン(約68円)となります。(為替レートによる変動あり)
be(ビー)
「Be(ビー)」は2018年から、ベトナムでバイクと車のライドシェアサービスやフードデリバリーサービスを展開している企業です。ベトナムには他の国から進出した企業も多い中で、ビーはベトナム発のライドシェアサービスです。現在、ビーには10万人以上のドライバーが在籍し、1日に約35万回の乗車とマッチングが行われています。
ビーは「ドライバーファースト」の方針を掲げており、バイクタクシーを利用する乗客だけでなく、ドライバーの給与や保険などの制度充実にも力を入れています。
Gojek(ゴージェック)
「Gojek(ゴージェック)」は2010年にジャカルタを拠点とするライドシェアアプリです。最初は2018年ごろからベトナムで「Goviet(ゴーヴィエット)」という赤い文字のロゴで進出していましたが、2021年7月に「Gojek」と名前を変更し、インドネシアの親会社と統一されました。Gojekは約20万人のドライバーを抱え、アプリのダウンロード数ではグラブに次いで2番目に多いです。
Taxi-Group(タクシーグループ)
「Taxi Group(タクシーグループ)」はハノイでよく利用されるタクシー会社であり、アプリを通じての配車も可能です。タクシーグループは運転手の教育・指導を徹底しているため、運転技術や運転手の態度も比較的評判が良いです。そのため、安全性と信頼性が高いタクシー会社としてのメリットがあります。ただし、その分、他のタクシーアプリに比べて料金が高いというデメリットもあります。
Vinasun(ビナサン)
「Vinasun Taxi(ビナサンタクシー)」はホーチミンで最も車両数の多いタクシー会社です。赤と緑のロゴマークはホーチミン市内でよく目にします。同社のアプリを利用することで、事前に料金を確認でき、早くにピックアップしてもらえるというメリットがあります。運転手の多くは穏やかな方が多く、比較的信頼できるタクシー会社として評価されています。
タクシー
ベトナムでは配車アプリが広く利用されていますが、タクシーを直接ピックアップすることも可能です。配車アプリで近くのドライバーが見つからない場合や、目的地に急いでいる場合など、状況によっては直接タクシーを利用することもあります。ベトナムでよく知られているタクシー会社は以下の通りです。
- Vinasun taxi(ビナサンタクシー)
- MAILINH(マイリン)
- VinaTaxi(ビナタクシー)
ベトナムでは、偽物のタクシーに注意が必要です。稀に見かけますので、注意しましょう。また、空港では客引きをしてくるドライバーにはなるべく注意した方が良いでしょう。配車アプリが使えない場合やタクシーが見つからない時にやむを得ず利用する場合でも、料金をしっかり確認することをおすすめします。
アプリを介さないタクシーを利用するメリットは、アプリを使用せずにその場で乗車できることです。ベトナムのタクシーは日本に比べて価格が安いです。例えば、ビナサンタクシーの初乗り料金は1万1000ドン(約55円)で、その後1キロメートルごとに1万4500ドン(約73円)ずつメーターが上がります。一方、日本のタクシーでは初乗りが約1キロメートルまでで420円、その後233メートルごとに80円ずつ料金が上がります。(為替レートにより変動)初乗り料金の違いには驚かれるかもしれませんね。さらに、ベトナムのタクシーと日本のタクシーとの異なる点としては、自動ドアがないことが挙げられます。乗車時には自分でドアを開ける必要があります。また、目的地を伝える際には建物の名前ではなく、「建物の番号と道の名前」で伝える必要があります。住所の読み方がわからない場合は事前に調べておくと良いでしょう。ベトナムのタクシーを直接利用する際は、料金の確認や運転手とのコミュニケーションに注意が必要になります。
バス
ベトナムでは、電車の普及はあまり進んでおらず、通勤や通学には主にバイクやバスが利用されています。バイクはベトナムで一般的な交通手段であり、道路上では多くのバイクが行き交っています。バスも頻繁に運行されており、市内や都市間を移動するのに利用されています。
また、長距離の移動が必要な場合には、寝台バスや夜間バスが非常に便利です。これらのバスは快適な寝台や座席を備えており、長時間の移動に適しています。特に観光地間の移動や夜行移動に利用されることが多いです。
ローカルバス
ベトナムのローカルバスは、地域の人々の移動手段として多くの人が利用しています。ベトナムは、日本のように電車の普及が進んでいないため、短距離のみならず、中距離間でもバスが走っています。
メリットとしては、安価で移動が可能なことです。バスの料金は、基本的に車掌さんに直接渡します。料金を渡すとチケットのような小さな紙をくれます。大体5000〜6000ドン(約25〜30円)ほどです。
一方、バスのデメリットとしては、時刻通りに運行されないことや、乗客が少ない場合には早めに出発してしまうことがあります。また、混雑していることも多いため、日常的な移動手段としては使いにくい面もあります。ベトナムのローカルバスを利用することで、地元の雰囲気を味わうことができますが、生活の一部として取り入れるには適さないかもしれません。バスを利用する際には、時間に余裕をもって利用することをお勧めします。
長距離バス
ベトナムでは、長距離バスが国内旅行において非常に便利な交通手段です。現地のベトナム人も、長期休暇であるテト(旧正月)などに故郷へ帰る際に、高速バスを利用する人が多く見られます。
北部のハノイからは、複数の人気の観光地へ行くことができます。避暑地のサパや、中国雲南省との国境に位置するハーザン省、カットバー島や中部のダラット、観光地として知られるムイネーなどに行くことが可能です。また、南部のホーチミンからも多くの観光地へのバスが運行されています。有名なリゾート地であるニャチャンやダナンなどへ行くことができます。
長距離バスを利用することで、ベトナム国内の様々な地域を手軽に旅行することができます。バス予約にはVe Xe Re(英語・ベトナム語対応)やBao Lao(英語・タイ語・スペイン語・フランス語・日本語対応)がお勧めです。また、日本のバス会社であるWILLER EXPRESS株式会社が現地のマイリンタクシーと合同会社を運営しており、ハノイとタインホア間を運行するバスや、目的地までの交通サービスも提供しています。
- Wiilereexpress:http://www.willer.co.jp/business/overseas/
長距離バスを利用するメリットとしては、航空機よりも安価であることや、空港への移動が不要であることが挙げられます。一方、デメリットとしては、バスの休憩所までの間にトイレがないことや、道路が整備されていないために揺れを感じやすいこと、また運転手によってはブレーキを頻繁に踏むことがあり、乗客が酔いやすい場合もあります。
長距離バスの予約に使えるサイトとしては、以下のものがあります。
- Vexere:https://vexere.com/vi-VN(英語・ベトナム語)
- Baolau:https://www.baolau.com/ja/transportation/(日本語あり)
電車
ベトナムでは2021年にハノイで都市電車が開通しました。この都市電車の建設は2011年から中国政府の融資を受け、中鉄六局集団が担当しました。約10年の歳月を経て、ハノイ中心部のドンダー区カットリン駅からハドン区イエンギア駅まで、南西に約13キロメートルの路線が開通しました。
都市電車の運賃は、8000〜1万5000ドン(約45円〜75円)であり、1日乗車券は3万ドン(約150円)、定期券(1ヶ月)は20万ドン(約1000円)です。工業団地で働く労働者や高齢者、障がい者、6歳未満の子どもは無料で利用することができます。
ホーチミンメトロ(ホーチミン地下鉄)
ホーチミンでは、2012年から「ホーチミン第一都市鉄道会社(HURC1)」が地下鉄の建設を進めています。計画では、都市鉄道8線、路面電車1線、モノレール2線を建設し、総計176駅が予定されています。当初、着工時には2017年に完成し、2018年に運行を開始する予定でしたが、現在の見通しでは2023年以降の完成が予定されています。
現在、建設が進められている路線は、ベンタイン市場からスオイティエン駅までを結ぶ1号線と、ベンタイン市場からタンソンニャットを経由してタルムオンの車両基地まで延びる2号線です。
長距離鉄道
ベトナムの鉄道は「統一鉄道」として知られ、1905年から1910年にかけてフランス植民地時代に建設が始まりました。最初の路線は中国の昆明市からハノイまでの鉄道であり、フランスの影響が強く反映されました。
1935年に南北鉄道の建設が進んだものの、戦争の勃発により運行が中断されてしまいました。
1996年になって南北鉄道が再開され、ハノイとホーチミンを結ぶ鉄道路線が再び利用可能となりました。現在、ハノイ駅からホーチミン駅までの移動には統一鉄道を利用することができます。この路線は片道の移動で約32時間半を要し、運賃は106万3000ドン(約5300円)です。航空機に比べると安いですが、長時間の移動や強い揺れによる乗り物酔いに注意が必要です。
統一鉄道を利用する際には、運行スケジュールやチケットの予約について事前に情報を確認することが重要です。また、快適な旅行をするためには飲食物の準備や予備の乗り物酔い対策なども考慮しましょう。
飛行機
ベトナムには22の空港があり、そのうち10か所で国内線が利用出来ます。ベトナムエアライン、パシフィックエアライン、バンブーエアライン、ベトジェットエアの4つの航空会社が、ベトナム国内で運航を行っています。
国内線を利用する際のメリットは、他の交通手段に比べて費用が安く、移動時間が短いことです。例えば、ハノイからホーチミンまでの移動にかかる時間は約2時間10分で、料金は通常で約5000円から1万円程度です。一方、国内線のデメリットとしては、航空会社によって遅延が頻発する場合があるため、時間に制約がある場合には国営企業であるベトナムエアラインが安心です。また、空港への移動やチェックインなど、手続きに時間がかかることもあります。国内線を利用する際には、航空会社の選択や運行状況の確認が重要です。旅程や予算に合わせて最適な航空会社を選び、スムーズな移動をできるように計画しましょう。
自転車
ベトナムでバイク免許を持っていない、学生たちがよく利用する移動手段として、自転車や電動自転車があります。2021年に、ベトナム・ホーチミン市では公共自転車(シェアサイクル)の試験導入が初めて始まりました。このシェアサイクルサービスは、現地の人々の移動手段としてだけでなく、観光客にも利用されています。料金は驚くほどリーズナブルで、30分で5000ドン(約25円)、1時間で1万ドン(約50円)となっています。
シェアサイクルの利点は、出発地と目的地の間にステーションがある場合、非常に安価で迅速に移動できることです。しかし、デメリットも存在します。ベトナムでは、自転車は必ず車道を走らなければならないため、事故や怪我のリスクが高くなります。特に、バイクの多いベトナムでは、時折荒い運転をするバイクと共に走る必要があるため、十分な注意が必要となります。
まとめ
本レポートでは、ベトナムの様々な交通手段について取り上げました。住む地域や移動する時間帯によって、最適な交通手段は変わってくるでしょう。そしてそれはベトナムでも例外ではありません。もし興味がある方は、ベトナムの様々な乗り物を試してみるのも楽しい体験かもしれません。ぜひ、ベトナムの交通網を自分自身で体験してみてください。
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