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ベトナムのICT産業が注目を集めるワケ:今後発展していく5つのセクター

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ベトナムのICT産業は、ベトナム経済の重要な柱へと成長しつつある。2021年1月12日、ベトナム情報通信省のNguyen Manh Hung大臣は新しい年の発展戦略を決める会議において、2020年はコロナ感染拡大にも関わらず同産業の生産額、輸出額ともに大きく成長したことを称賛し、2021年以降は海外からのアウトソーシング事業だけでなく、「Make In Vietnam」の理念の下、ベトナムでシステム・サービスの設計から開発、販売までを一貫して行うような企業を育てていくと明言した。本レポートでは、現在ベトナムにてどのようなセクターがICT産業の中でも特に注目されており、今後の発展のポテンシャルを秘めているのかについて明らかにしていきたい。

ベトナム政府のデジタル開発目標

2020年5月、ベトナム政府はデジタル経済の開発について本格的に着手することを発表した。その内容の大枠は「2030年までの第4次産業革命(インダストリー4.0)に関する国家戦略」の草案に記されている。そこではGDPに対するデジタル経済の比率を2025年までに約20%、2030年までに約30%にすること、2025年までにインダストリー4.0の技術導入に対応する人材需要に90%以上応えるようにすること、2025年までにグローバルイノベーション指数(GCI)においてASEANでトップ3となること等の明確な目標が定められている。
またこれに沿った形で、行政手続きをデジタル化する方針を定めた「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラム及び2030年までの方針」が政府議定: 749/QĐ-TTgにて定められ、人口、土地、事業登録、金融、保険に関する全データベースのオンライン化・共有を2025年までに100%にすることや、電子政府ランキング(EDGI)で世界トップ50入りをする等の内容が承認された。
上記の国家戦略、政策方針に呼応するように、ベトナムの各地方自治体や行政機関は情報通信(ICT)産業の発展を促進することに積極的に取り組んでいる。具体的にはハイテクパークの新設、外国投資家の誘致およびそれとセットになった優遇税制、ハイレベルな人材需要に応え得るIT技術者の育成プロジェクト等が挙げられる。
今回のレポートでは、ベトナムのICT産業に焦点を当て、その中でも特に注目すべき5つのセクターについて取り上げていきたい。

年々増加する海外からのICT産業への投資

ICT産業におけるベトナムのFDI案件数の推移を見てみると、2015年から2019年までは全産業の総数の増加に比例する形で増加している。2020年はコロナウイルスの感染拡大により全体の投資案件数は大きく減少したが、ICT産業の減少率は全体のそれよりも低く抑えられている。

ベトナムにてポテンシャルのある5つのセクター

フィンテック

2019年の時点で、2020年までにはベトナムのフィンテック産業の収益は78億米ドルに達すると予測されていた。コロナウイルスが発生したことにより現金の直接のやり取りが減少しフィンテックの需要がより高まったため、実際の収益はこの予測を上回っていると考えられる。この成長の要因は主に、ベトナムにおける中産階級の増加、若い人口の増加、インターネット利用(特にスマートフォン)の増加によるものだ。
もともとベトナムは現金主義が強く残っていた。しかしベトナムは行政を含めたあらゆる手続きをデジタル化することを大きな方針として定めており、決済に関してもベトナムは、2020年末までに現金決済の割合を10%未満とし、キャッシュレス決済をスーパーマーケットなどで100%、都市部の個人店などで50%にする政府目標を設定、推進している。2019年第1四半期(1~3月)のインターネットバンキングとモバイルバンキングの取引件数は、ベトナム銀行協会(VNBA)によると、それぞれ1億100万件超(前年同期比65.8%増)と、7,600万件超(同97.7%増)であった。また取引額は、インターネットバンキングが4兆5,810億ドン(約215億円、1ドン=約0.0047円、前年同期比13.4%増)、モバイルバンキングが9,240億ドン (同232.3%増)であり、キャッシュレス化が急速に進んでいると言える。
現在、ベトナムには少なくとも120のフィンテック関連企業があり、デジタル決済だけでなく資産管理、ブロックチェーンから暗号通貨までのサービスをカバーしている。とはいえその中でも最も大きな割合を占めるのは、デジタル決済のセグメントである。以前のコラムでも紹介した通り、ベトナムではフィンテックの総投資額の実に99%が電子決済サービスに集中している。

Eコマース

ベトナムのEコマースの売上高は2020年末までに100億USDに達していると推定されており、国民の30%以上がオンラインによるショッピングを利用していると考えられている。ベトナムの人口はまもなく1億人を突破しようとする勢いで増加しており、今後人口の増加に加えてインターネットを利用する人口の比率も増加していくため、同業界の売上高は今後さらに増加していくと考えられている。

2016年から2019年までに4年間に、ベトナムのEコマース業界に対して国内外から10億USDの投資が行われた。またベトナムEC・情報技術協会は2025年までにASEANでECにおける流通金額をインドネシア・タイに次ぐトップ3に押し上げることを目標にしている。
Eコマースビジネスへの投資には主に2つの形が考えられる。まず1つはオンラインにて実際に商品を出品する小売業である。従来の店舗における商品販売とは異なり、オンラインで商品を販売することのより店舗の賃貸料、維持費およびスタッフの人件費を大きく削減することができる。特に海外の投資家にとって最初からベトナムに店舗を構えて商品を販売するのはリスクが高いため、まずはオンライン販売を通じてベトナムでそれらの商品がどのように受け止められるのかを知ることができる。
2つ目はオンラインマーケットプレイスの提供である。すでにベトナムで良く知られているオンラインマーケットのサイトはShopee、Lazada等が挙げられる。しかし他の先進国に比べてベトナムではまだまだオンラインマーケットプレイスの競争は大きなシェアを占めるプレイヤーが存在しないため、今後成長の伸び率が大きい業界であると考えられている。

教育テクノロジー

ベトナムの一般家庭はその家庭収入の40%を子供の教育のために支出していると言われており、総じて国民の教育に対する関心は非常に高い。しかし全国規模で質の高い教育サービスが提供されているとは言い難く、ホーチミン市、ハノイ市、ダナン市といった都市では多くの民間教育企業が様々な教育サービスを提供しているものの、地方ではそういったサービスを受けたくても受けられないのが実情であった。
教育テクノロジーはそういた地域による教育の格差を解決するための最良の手段である。オンライン教育プログラムやオンライン学習支援ツールなどのセクターは、今後人口がより増加していき、平均収入も上昇しているベトナムにおいては特にポテンシャルがあると考えられる。

人工知能(AI)

ベトナムの人工知能(AI)産業はまだ発展途上であるが、潜在力のあるIT関連産業の1つにもなっている。
現在政府・民間ともに教育、農業、ヘルスケア、運輸、人事、eコマースなどの多くのセクターにAIを活用するプロジェクトを進めている。インダストリー4.0が発展していく中でAIセクターがさらに注目されることは確実である。現在ベトナムではIT大手のFPT、アメリカ・サンフランシスコで開催された「スタートアップ・ワールドカップ2019」にて優勝したテクノロジー・スタートアップ企業「アビビン(Abivin)」など多くの企業が、世界レベルの開発を行っている。

ソフトウェア開発のアウトソーシング

2018年、ベトナムのソフトウェア業界は88億USDの収益を記録した。もともとソフトウェア開発はインドや中国が台頭していたが、両国の人件費の高騰により世界中の企業が開発のアウトソーシング先をベトナムへと移管している。
ベトナムでは国策としてIT教育を推進しており、年間50,000人の学生がIT系学部を卒業している。日本との国際関係の良好さを踏まえ、他のASEAN諸国に比べて日本語学習が盛んな傾向もある。ベトナムの理系大学で上位にあるハノイ工科大学では、日本のODAと連携した、日本語のできるブリッジエンジニア育成プログラム(HED SPI)も設けられている。エンジニア不足が叫ばれる日本のIT業界にとっては、コストの削減だけでなくエンジニアの確保という意味でもベトナムは魅力的である。
また、外国投資を誘致するためにソフトウェア分野における海外投資には減税・免税などのインセンティブを提供し、またハイテクパークなどの新設・拡大を急いでいる。

まとめ

今回は主に5つのセクターに焦点を当てて、ベトナムのICT業界のポテンシャルを見てきた。ますEコマースについては、ベトナムへの商品展開を狙う小売業者にとっては大きなポテンシャルがあると考えられる。現状、コロナウイルスの影響もあり直接ベトナムへ出向いての販促活動を行うことが難しい状況である。その中でEコマースを活用した販売であれば、初期投資を少なく開始することができ、売り上げの推移も管理しやすく、今後の販売活動の展開方針を検討しやすくなるだろう。

フィンテックについて、金融機関にとっては、ベトナムの現地金融機関と提携した技術面での協業の可能性が考えられる。またベトナム国内で活動するフィンテック企業は7割は外資系スタートアップ企業であるという統計もあり、今後フィンテック需要の伸びが大きいベトナムにおいては外資系企業も参入しやすいセクターであると言える。

教育セクターについては、海外の教育カリキュラムへのベトナム人の関心が高まっている。ただしこれまで行われてきた施設における直接対面式での教育は、ホーチミン市はハノイ市などの都市部に住む子供しか参加できないというデメリットがあった。今後は都市部以外の地方でも経済発展が進んでいくことで、所得も向上していき、より高いレベルの教育のニーズが高まっていくことが予想される。その中で、ICTを利用したオンライン教育等の新しいカリキュラムの形が関心を集めるのは間違いないであろう。

新型コロナウイルスの感染拡大は多くの業界に影響を与えたが、ICT業界においては業界の成長を後押しするような好影響もあったと考えられる。次回以降のコラムでは、取り上げた5つのセクターについてより個別に詳細分析していきたい。

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