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加工食品

【解説】ベトナムの加工食品市場の最新動向とM&A動向

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【解説】ベトナムの加工食品市場の最新動向とM&A動向

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ベトナムの加工食品業界の現状

本レポートではベトナムの食品分野の現状と、M&Aの動向を紹介する。近年、ベトナムの食品分野は著しく発展しており、国内産業の活性化と経済成長に大きく貢献している。食品分野は、2016年から2020年までの年間平均の成長率が7%である。具体的には、2016年は8.2%, 2017年は6%, 2018年は8.2%, 2019年は7.9%と、安定した成長傾向にある。コロナ禍であった2020年には、4.5%の増加にとどまった。

2021年上半期にベトナムの感染状況は一旦落ち着き、業界全体で回復傾向にあった。2021年の最初の4か月で、食品分野は昨年の同時期に比べて7.1%の成長を遂げた。製品のカテゴリ毎の成長として、水産物および水産加工品は3.3%、生乳は5.6%増加した。

加工食品の生産額は、ベトナムの加工・製造業全体の生産額の19.1%を占めている。これは加工・製造業の業界中で、最も高い割合だ。また加工食品業界では、ブランドとして人気を集めているベトナム企業があり、外国企業と比較しても高い競争力を有している。市場の競争が激しくなると、企業は様々な製品を提供して、輸出向けの製品を増やす。その市場の競争の中で乳製品、飲料、調理油、菓子等は特に高い成長を示し、ベトナムの加工食品分野で最も生産性の高い製品カテゴリだと評価されている。加えてベトナムは多くの自由貿易協定(FTA)を締結しており、加工食品業は海外のより大きなマーケットに進出する可能性が高い。加工食品は比較的保存や輸送が容易なので、輸出に適しているからだ。

重要な分野

食品加工分野の企業数は多くないが(ベトナム国内の全企業のうち約1%のみ)、発展の可能性が高い先駆的な産業の1つだ。加工食品の年間純売上高は、加工・生産業全体の売上の20%以上に達している。果物および野菜の加工をする企業は、加工食品業の中で最も多い。しかし従事する労働者が最も多いのは、冷凍水産加工である。

果物

ベトナムは肥沃な土壌と温暖な気候に恵まれ、多種多様な種類の果物が栽培されている。特に生産量が多いのは、バナナ、マンゴー、ライチなどである。

ベトナムのバナナ1kg当たりの値段相場は1万5千ドン、日本円で約75円といわれている。https://vfo.vn/r/ta-cay-chuoi-lop-4-bai-van-mau-mieu-ta-cay-chuoi-buong-chuoi-hay-ngan-gon.127064/

現状

ベトナムの果物市場は、2019年に前年比8%の成長をし、販売量は670万トンに達した。特に人気の果物は、ベトナム産のバナナ、グレープフルーツ、スイカなどである。またアメリカ、ニュージーランド、日本などの先進国から輸入されたブドウやリンゴなどの果物は高品質で、高い人気がある。 2024年までに、ベトナムの果物市場は2019年と比較して55%成長すると予測されている。

市場の主要なプレーヤー

 会社名製品
Meko Star Co Ltd 生鮮果物、生鮮野菜全般など
U&I Agriculture Corp生鮮果物、パパイヤ、バナナ、マスクメロンなど
Tu Phuong service trading production private company 生鮮果物全般など

野菜

果物と同様、ベトナムでは多種多様な野菜が生産されている。特に生産量が多いのは、コメ、トウモロコシ、サツマイモなどである。地域別の生産量として、メコンデルタと紅河デルタがトップ2の生産量を誇っている。この2つの地域で、ベトナム全国の野菜生産量の過半数を占めている。

さつまいもは健康にだけでなく、美容にも良いとされている。https://giadinh.tv/khoai-lang-nuong/

現状

ベトナム産の野菜は、多くが国内で消費される。 2019年の売上は前年比で5.4%増加し、生産総量は1,300万トンとなった。2024年までに、野菜の加工食品は2019年と比較して38.8%増加すると予測されている。

市場の主要なプレーヤー

 会社名製品
Vietnam National Vegetable, Fruit And Agricultural Product Corporation., JSCカシューナッツ、生鮮野菜、缶詰、野菜の種など
Dalat GAP company生鮮野菜全般、きのこ類、生鮮果物など
VinEco Agricultural Investment, Development and Productions LLC.生鮮野菜全般、生鮮果物全般など

昨今のベトナムでは、肉や食品に限らず製品の透明性や安全性に気を遣う消費者が増加している。肉に関しては、明確な産地を確認できること、衛生的にパッケージされていることという2点が重要視され始めている。

ベトナムのスーパーでも、日本のスーパーと同じようなパック詰めされた肉を販売している

現状

2019年、ベトナムの肉消費量が400万トン以上となり、2018年と比べて4.8%増加した。2024年には約550万トンの肉が消費される見通しだ。

豚肉は日本と同じく手ごろな価格で流通しており、ベトナムで最も人気のある肉である。豚肉の小売価格は一般に約90,000〜120,000 VND / kg、鶏肉は約90,000〜150,000 VND / kg、牛肉は約250,000~350,000 VND / kg程度である。また、国内で生産されている肉のみならず、輸入品も多く流通しており、人気を集めている。

市場の主要なプレーヤー

 会社名製品
Vissan JSC生鮮肉全般、ソーセージ、缶詰、冷凍食品など
CP JSC飼料、シーフード、生鮮肉全般など
Ngoc Ha Co Ltd冷凍シーフード、生鮮肉全般など

卵もまたベトナム人の食生活に欠かせない食品だ。 2019年の卵の消費量は57万5千トンで、2014年に比べて53.1%増加した。2024年には卵の消費量は78.7万5千トンとなる見通しである。

ベトナムでは鶏の卵だけでなく、アヒルの卵やウズラの卵などもよく食べられている。https://vhea.org.vn/chua-xuat-tinh-som-bang-trung-ga-1053.html

現状

昨今のベトナムでは、生卵だけでなく加工卵の流通が広がりつつある。今後は加工卵についても、他の加工食品同様拡大が見込まれている。

市場の主要なプレーヤー

 会社名製品
Ba Huan Corporation卵、卵を使用したソーセージ、鶏肉、鶏肉の肉団子など
Vinh Thanh Dat Co Ltd卵、ゆで卵、味付きゆで卵など
C.P. Vietnam Livestock Corporation卵、生鮮肉、ソーセージ等加工肉、肉団子等加工シーフード、飼料など

水産品

ベトナムの水産品は、ベトナムの輸出品目の中で7番目に多いカテゴリである。輸出においては、エビとバサが大部分を占めている。バサというのはナマズのことで、「白身魚」という名目で販売されていることが多い。

日本で流通しているバサのほぼ100%がベトナム産である。日本以外でも、アメリカやイギリスへの輸出も盛んである。

バサはナマズの一種で、超大型淡水魚として知られている。https://mamcomviet.com/cach-nau-lau-ca-ba-sa-ngon-nguyen-lieu-che-bien/

現状

魚は豚肉や牛肉などの肉よりも優れたタンパク質源と評価されており、健康志向の強い消費者は特に好む。2019年の魚の販売量は482千トンであり、2010年と比べて51%増加している。2024年に消費量は768.8千トンに達し、2019年より59.9%を増加すると予測されている。

現在、ベトナムの水産業は、品質を自然環境の状態に依存している傾向が未だある。またベトナムの大手企業は、販売拡大のため国内販売よりも輸出に注力している。先進国の輸入品質基準を満たすため、製品の品質改善が不可欠である。

市場の主要なプレーヤー

 会社名製品
Minh Phu Seafood Corp生エビ、ゆでエビ、調理済みエビ
Tan Hai Hoa Co Ltdサバ、サーモン、シシャモ、キャビアなど
An Vinh Trading service Co Ltdイカ、冷凍ナマコなど

ベトナムの食品分野共通の課題

ベトナムで食品の販売を行っている企業が直面している大きな課題として、物流システムの未発達が挙げられる。特に食品の新鮮さを保つためのコールドチェーンがほとんど利用されておらず、生鮮食品の多少のロスは容認される風潮がある。輸出業者は7割弱がコールドチェーンを利用しているのに対し、国内販売業者の利用率は1桁に留まる。コールドチェーンを利用しないことにより、製品がアクセスできるマーケットが増えず、新たな販売機会を得られない状況だ。ベトナムにおけるコールドチェーンの現状については、以下の記事を参照いただきたい。

ベトナムのM&A動向

ベトナムの食品分野は著しく発展しており、外国人投資家にとって非常に魅力的な産業と言えるだろう。 近年、食品業界で多くのM&A案件(加工食品会社の合併や買収)が行われており、この傾向は今後も続くと予想される。 例えば、CJ Group(韓国)はMinh Dat Food Company Limitedの65%の株式を購入し、Cau Tre Export Processing Joint Stock Companyの47.33%の株式を購入した。 Daesang Corp(韓国)はDuc Viet Food Joint Stock Companyの株式を100%購入し、 Earth Chemical(Japan)がA My Gia株式会社の100%株式を購入した。

欧州ビジネス協会によると、ベトナムの食品分野ではM&Aが活発に行われ、市場が急速に発展しています。 M&Aは多くの投資家にとって、ベトナム市場に参入し、事業を拡大するための最も効果的な方法である。ベトナムで行われたM&A取引数と取引金額は、近年着実に増加している。 EVFTAの発効もあり、M&Aは今後さらに増加していくと見られている。

加工食品のニーズは普遍的なもので、最もコロナ禍の影響を受けていないセクターの1つであると考えられている。専門家によると、加工食品や飲料の分野でのM&Aが活気に満ちているのは、市場が需要と供給の両方に有利な条件を生み出しているためである。

まとめ

ベトナムの食品分野は人口増に伴い、着実に発展している。近代化するベトナムの生活に合わせ、加工食品の種類や生産量、消費量も着実に増加している。食品の需要は不変的なもので、コロナ禍などイレギュラーな事態でも変動しにくい。
果物、野菜、肉、卵、魚に共通する傾向として、常に成長を続けていることが挙げられる。理由は上記の通り、人口増である。また共通の課題として、流通システムの未整備が挙げられる。特にコールドチェーンの未整備は販売機会の増加を阻害し、結果的に市場の発展をも妨げている。
ベトナムの食品分野では、多くのM&Aが行われている。ベトナムは昨年新しい自由貿易協定(EVFTA)を発効したばかりなので、今後食品分野でのM&Aはさらに増加すると考えられている。

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