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ベトナムのオフショア開発:現状の分析と見通し

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オフショア開発とは何か

オフショア開発は、英語では「Offshore Development」であり、「Off」は「~から離れる」、「Shore」は「海岸」、転じて国を意味する。つまりオフショア開発とは、Webシステムやソフトウェア等のIT関連開発業務を、海外に移転・委託する手法のことである。

オフショア開発の目的

企業がオフショア開発を行う目的は大きく2つある。

安い人件費による開発費用の削減

システムやソフトウェアの開発コストのほとんどは、エンジニアの人件費である。そのため、人件費の安い国へ開発をアウトソーシングすることにより、開発費用を大きく削減することが可能となる。

国内で不足している人材の補完

日本国内では高い技術力を持ったIT人材はコストが高いだけでなく、そもそもの絶対数が不足している。一方で特に若年層の人口が多い発展途上国では、大学等で高いレベルの教育を受けた優秀な人材が豊富に存在する。そのため、日本で確保が難しいIT人材を国外で補充するという目的で、オフショア開発を行う企業も多い。

オフショア開発の歴史

1980年台頃から、日本企業は人件費が廉価な発展途上国におけるオフショア開発を実施してきており、2000年台からその案件数・実施規模は急激に増えてきた。オフショア開発黎明期における主なアウトソーシング先は中国とインドであった。

オフショア開発黎明期に中国・インドが選ばれた理由

2007年に総務省が実施した調査によると、日本企業がオフショア開発の相手国を選ぶポイントのトップ3は人件費が安いこと、日本語を使える人材が多いこと、そして高い技術力を持つ人材が多いことであった。

中国とインドはどちらも、人件費が安いという条件を満たしており、また中国は日本語の学習者も多かったため、日本語を使える人材も多かった。一方でインドは、日本語が使える人材は多くないものの、英語でコミュニケーションを取ることが出来るため、中国に次ぐ人気があった。また、中国政府もインド政府も、自国内のIT人材の育成に注力していたため、高い技術力を持った人材が労働市場に豊富に存在した。

上記のような理由により、1980年~2000年台は中国・インドに多くの注目が集まっていた。

オフショア開発市場におけるベトナムの台頭

しかし、2000年台後半になると、経済発展に伴い、中国・インドの人件費が徐々に高騰し始めた。また、中国・インド国内でもシステムやソフトウェアの開発需要が高まったことで、以前ほどIT人材が労働市場に豊富にいる状況ではなくなってきた。

また、一つの国にアウトソーシング先を集中させてしまうリスクも存在する。たとえば中国における2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)および2020年の新型コロナウイルス(Covid-19)等の感染症における経済活動の停止、2005年の反日運動による企業活動の縮小等が挙げられる。さらに、中国では2017年に発覚した「LINE問題」等に代表される、情報漏えいのリスクがあることも無視できず、委託側の日本企業にとって重大な影響を与える可能性もある。

このような、一国集中リスクを回避するために、チャイナ+1(チャイナプラスワン)として、別のオフショア開発相手国を探索する動きが活発になった。その中で特に注目されたのが「ベトナム」であった。

以下にて、なぜベトナムが注目されるようになったかの理由を解説していく。

ベトナムのオフショア開発のメリット

以下で、オフショア開発でベトナムが選ばれるようになった理由を、メリットとともに解説していく。

若くて優秀な人材が豊富

(画像)ベトナムの若者たち (出所)https://cand.com.vn/

ベトナムは9,700万人の人口を有しており、平均年齢は31歳。2026年までには人口は1億人を突破する見込みである。大学進学率も年々高まっている。特に情報・IT関連の専攻への進学者数が多く、高い知識を有する若い人材が豊富に存在する。

日本語を使える人材が豊富

(画像)日本語学習は中学校でもカリキュラムに取り入れられている (出所)https://khosachngoaingu.com/

ベトナムでは日本語の学習者は非常に多く、日本語は英語に次いで2番目に人気の高い第二外国語となっている。また昔から製造業を中心とした日本企業の進出が多く、日本政府もベトナムに対してODA等の国際協力を数多く実施していることから、ベトナム人の日本に対するイメージが非常に良い。

親日で、日本語話者が多いというポイントは、オフショア開発を実施していく上で大きなメリットとなっている。

ベトナム政府がIT人材育成に注力

(画像)プログラミングを学ぶ学生 (出所)https://tuoitre.vn/

ベトナム政府はITを国の重要産業の1つとして位置付けており、大学におけるIT学科の増設、職業訓練学校におけるIT関連コースの新設ならびにトレーニングセンターの設置を始めとするIt人材育成に力を注いでいる。また、すでに大学で理系分野を専攻していた学生をIT分野に転向させるために大学の卒業生がIT専門学校や大学に再入学するための支援を官民が協力して行っている。こうした政策が功を奏し、現在は毎年5万人の学生がIT専門の教育課程を終えて卒業している。

IT事業者に対する優遇税制

ベトナム政府は、IT産業を国の基幹産業とすべく、手厚い優遇政策を実施している。その中の1つが法人税の優遇税制である。ベトナムの法人税率は通常20%であるが、ソフトウェア開発事業者に対しては、優遇税率10%が15年間に渡って適用される。

カントリーリスクの低さ

(画像)ベトナムの国会の様子 (出所)https://tuyengiao.vn/

ベトナムを選ぶメリットとして、地政学的リスクの低さ、さらに政治の安定性も挙げることができる。例えば、同じくオフショア開発相手国として注目されていたミャンマーでは、2021年2月に軍事クーデターが発生し、状況が一変してしまった。またフィリピン等の他の東南アジア諸国でも、首相や大統領の交替により、政策が大きく方向転換し、企業活動に影響を与える可能性もある。

一方でベトナムは、 共産党による一党独裁体制が長く続いており、政治は安定している。また東側・西側双方の国々とも良好な関係を築いており、国際的な対立に巻き込まれるリスクも低いといえる。このように、内政・外交の面での安定性が高いという点が、多くの企業をベトナムに引き付ける要因となっている。

日本との地理的近さ

ベトナムと日本が地理的に近いことも、オフショア開発相手国として選ばれる要因の1つとなっている。日本からベトナムへの直行便は東京(羽田・成田)、大阪(関西国際空港)、名古屋(中部国際空港)の3都市から出ており、それも5~6時間と短い時間で移動することができる。オフショア開発を行う上では、日本からベトナムへ出張が必要となる場面が出てくるかもしれない。こうした際に、日本・ベトナムの地理的近さが有利に働くだろう。

また、日本とベトナムの時差は2時間しかなく(日本はベトナムより2時間早い)、打ち合わせ等を行う際にも大きな支障とならない。

ベトナムのオフショア開発の課題

一方で、ベトナムでオフショア開発を行う際には、留意すべき課題もある。

コミュニケーションリスク

ベトナム人エンジニアを含むベトナム側とコミュニケーションを取る際には、コミュニケーションに齟齬が生じるリスクを考慮する必要がある。そのため、曖昧な表現を避け、明確かつ簡易な表現を心掛ける必要がある。またどうしても言語化が難しいイメージを伝えたい場合は、類似例や図などを用いて説明するのが良い。

最近のオフショア開発では、ブリッジエンジニアという、日本側とベトナム側のコミュニケーションの橋渡しを行う担当者がアサインされることが多い。ブリッジエンジニアは日本・ベトナム両方の言語に精通していることはもちろん、開発に関する知識も有しており、日本側の顧客との窓口となりベトナム側のエンジニアに指示を伝達するともに、ベトナム側からの相談事項を日本側の顧客に伝える役割も果たす。

ベトナム・日本間のオフショア開発の実績も多くなってきたため、経験豊富なブリッジエンジニアの数も増えてきている。そのため、コミュニケーションリスクは以前と比べてかなり低くなってきているだろう。

デザインのアウトソーシングはオフショアには向かない

開発を行う中で、デザインの要素を含むUI/UXはオフショア開発には向かないと言われている。デザインの嗜好は国によって異なるため、日本人が好むデザインをベトナム人がデザインするのは難しいためである。また、デザインの中ではテキストの入力等も含まれるため、日本語を母語としないスタッフによるデザインはハードルが高い。

実際の事例では、デザインまでを日本側で行い、コーディングをオフショアで行うケースが多い。

アウトソーシング先の内部統制の確認が必要

先述した中国の「LINE問題」では、日本企業が業務を委託していた中国企業がデータにアクセスしていたことが問題となった。業務を外部委託(アウトソーシング)するにあたっては、委託先企業のコンプライアンス、内部統制にも気を配らなくてはならない。

また発注側においても、個人情報を含むデータには委託先企業にアクセス権を与えない等の対策を講じる必要がある。

オフショア開発の種類

オフショア開発は、その形態によりいくつかの種類に区分できる。

活用リソースによる区別

オフショア開発というと、ベトナムにあるベンダーに開発業務をアウトソーシングするイメージが一般的であるが、自社のベトナムにあるリソースを活用する方法もある。

アウトソーシング型オフショアリング

自社の社員や、自社のグループ企業を含まない、全くの第三者へ業務を委託する形態を、アウトソーシング型オフショアリングと呼ぶ。例えば、ベトナムに現地子会社等がなく、現地のITベンダーに開発を委託するケースがこれに当たる。

インハウス型オフショアリング

自社のベトナム拠点(駐在員事務所を含む)やベトナム子会社等の、自社グループのリソースを活用して、海外に業務を移転する形態を、インハウス型オフショアリングと呼ぶ。例えば、開発以外にも運用・保守等の業務を中長期的にオフショアリングする場合に、選択される形態である。ベトナム現地に子会社を設立し、現地人材を採用して自社のオフショア拠点を立ち上げるようなケースがこれに当たる。

業務形態による区別

オフショア開発は、リソースをどのように活用するか、業務をどのように切り分けるかによっても区別することができる。開発案件の内容、規模によって、これらの形態を使い分けていくことが必要である。

直接請負型

顧客が直接、海外の開発者と業務委託契約を行う形態を「直接請負型」と呼ぶ。この形態では、業務を直接海外に委託するというシンプルな形態であるため、コストダウンの効果が大きいというメリットがある。一方で、顧客が直接、海外の開発者に対して契約手続き、業務依頼、コミュニケーションを行う必要があるため、顧客にもある程度のシステム開発・オフショアリングの知識が必要となる。

そのため、ある程度オフショア開発に慣れた企業であれば効果的な形態であるが、まだ実績のない企業にとってはややリスクが高いと言える。

間接請負型

顧客は日本のITベンダーまたはコンサルティング会社と契約し、ITベンダーまたはコンサルティング会社が海外に業務を委託する形態を「間接請負型」と呼ぶ。この形態では、顧客と海外の開発者の間をブリッジしてくれる会社がいるため、顧客はオフショア開発であることを意識せず、通常の国内での業務委託のように依頼することが可能であり、複雑な契約手続きや、コミュニケーションも必要ない。

そのため、オフショア開発の経験がない企業にとっても、活用しやすい形態である。

ラボ型

上記2つの形態は「請負型」であるため、案件ベースでの発注となるが、請負型と同じくらい活用される形態が「ラボ型」である。ラボ型とはオフショア開発のサービスを提供している会社に所属しているエンジニアチームと契約し、顧客自身の指示で開発を行ってもらう形態である。オフショア開発企業にいるベトナム人エンジニアチームを、必要な人月に応じてレンタルするようなイメージである。この場合、業務指示は顧客自身が行うこととなるため、請負型よりも自分のイメージに近い開発を行うことが可能である。また、請負型は基本的にウォーターフォール型での開発のみとなるのに対して、ラボ型開発ではアジャイル型の開発が可能となるため、より柔軟な開発が可能となる。

オフショア開発のプロセス

オフショア開発において、どの範囲までの業務を海外にオフショアリングするかは案件によって異なる。ベトナムへのオフショアリングが始まった初期は、要件分析・定義、基本設計などの上流工程を日本側で行い、プログラミングなどの下流工程をベトナム側で行うケースが多かった。これは、上流工程が実施できるだけの知識とノウハウが、ベトナムのオフショア開発企業に蓄積していなかったことによる。しかし今日では、ベトナム側でプログラミングからプロジェクトマネジメントまで、つまり下流から上流までを一気通貫で実施できる能力をもったオフショア開発企業、および人材が増えてきている。

ベトナムのオフショア開発 今後の見通し

これまでベトナムのオフショア開発企業およびIT人材は、付加価値の低い下流工程のアウトソーシング先として実績を積んできた。しかしベトナム企業および人材は、長年の経験の中で知識とノウハウを身に付け、現在では日本のITベンダーにも引けを取らない高い技術力を武器に、上流から下流までの工程を一気通貫で行うことができるようになった。

またベトナムの開発企業は請負だけに止まらず、自社開発のアプリやサービスを展開するようにもなっている。今後、ベトナムのIT業界はオフショアだけに止まらず、自ら商品を生み出し、展開していく方向へ変わっていくと考えられる。

(画像)ベトナム大手IT企業 FPTグループが開発した日越翻訳アプリ「Speakdi(スピークディ)」(出所)FPTソフトウェア公式HP https://www.fpt-software.jp/fpt-ai-translation-application-speakdi/

変化する日本企業とベトナムIT開発企業の関係性

このようにベトナムのIT業界が成熟していくにつれ、日本企業もこれまでのように下流工程を委託するだけでなく、システムの初期設計や、開発を通じて実現したいビジネスモデルの構想段階から、ベトナム開発企業と相談し、開発を共に行っていくケースが増えてくるだろう。また、従来の委託・受託の形だけでなく、共同開発・共同出資といった、より高いレベルの関係性を築くような事例も増えてくると予想される。

まとめ

本レポートでは、オフショア開発でなぜベトナムが選ばれているのか、またベトナムのオフショア開発の現状・今後の見通しについて網羅的に解説を行った。

2020年から発生した新型コロナウイルスはグローバル経済に大きな影響を与えたが、遠隔にてオンラインで接続しながら案件を実施する形態がノーマルとなったことで、オフショアリング業界にはむしろ追い風になったと言えるだろう。

日々変化していくベトナムのIT業界において、日本企業がどのようなビジネスを展開することができるのか。多くの可能性が広がっている。

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本レポートはONE-VALUE株式会社の独自の調査及び
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