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ベトナム経済動向

【最新版】2025年までのベトナム経済を見通す5つのポイント


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指導部新体制発足:政治・経済の基本路線は変更なし

1月25日から2月1日にかけてベトナム・ハノイで第13回共産党全国代表者大会が開催されました。共産党全国代表者大会は5年に一度開催され、今回が第13回となります。この大会は過去5年間の政策実施評価と今後5年間の党および経済を含む国家の方針、指導部の新体制を決定するベトナムで最も重要な政治行事です。ベトナムで、コロナウィルス感染拡大を防止し経済成長を達成するのに、決め手となったのは政府のトップダウンによる一定の強制力を伴った国民の行動制限と感染者の追跡であり、共産党独裁体制の制度的優位性を国民に知らしめた中での開催となりました。 

本大会では、実質的なベトナムの最高権力者である共産党書記長にはグエン・フー・チョン氏の続投が決定した他、国家主席、首相、国会議長が内定し、4月5日の国会で正式な就任が決定されました。今後5年間のベトナム政治の中枢である指導部新体制4役の顔ぶれは次のようになりました。 

  • 党内序列第1位 共産党書記長(共産党のトップ、最高指導者)  
             グエン・フー・チョン(再任3期目) 
  • 党内序列第2位 国家主席(国家元首。儀礼的な役職で、党や政府への実権はない)           
    グエン・スアン・フック(前首相)        
  • 党内序列第3位 首相(政府代表。内閣・行政の運営)  
             ファム・ミン・チン(前共産党中央組織委員長) 
  • 党内序列第4位 国会議長(国会の運営・司法・立法) 
            ヴォン・ディン・フエ(前副首相) 

ベトナム共産党の特徴として、個人による独裁ではなく集団指導体制が敷かれていることが挙げられますが、政治4役(党書記長、国家主席、首相、国会議長)による権限の分散と均衡がその象徴といえます。 

特にチョン書記長の異例ともいえる3期目の続投もあり*、ベトナムの対外政策は基本的に大きな変更はなく、今後もドイモイ政策を基調にした市場経済の促進及び全方位外交を維持すると思われます。これを受け、日本の各新聞社は、「米中いずれにも偏らないバランス外交を堅持し、日本重視の方向性も変わらないとみられる」と報道しています。ファム・ミン・チン新首相(62)は日越友好議連会長でもあることから、日本にとっては政治・経済におけるベトナムとの貴重なパイプ役として今後の役割が期待できます。 

*ベトナム共産党規約第17条は「書記長の任期は連続して2期を超えない」と規定しています。 

今後5年間のマクロ経済の展望は明るい 

本章では、2025年までのベトナムのマクロ経済の展望を紹介します。

 2025年までの目標指標を概観する

党大会で決まった新体制の下、今後2021年~2025年のベトナム経済に関する目標に関して、以下の指標が設定されました。 

  • GDP成長率は今後5年間で平均6.5~7.0% 
  • 2025年の1人当たりGDP4,700~5,000ドル 
  • 経済成長に占める全要素生産性(TFP)寄与率約45% 
  • 労働生産性上昇率年平均6.5%超 
  • 都市化率約45% 
  • GDPに占める製造業割合25%超 
  • GDPに占めるデジタル経済割合約20% 

2020年は新型コロナウィルス感染拡大の中、多くの国の経済が停滞しGDPマイナス成長となるなか、感染拡大防止に成果を上げたベトナムは、2020年のGDP成長率は2.9%とプラス成長を維持しました。ベトナム国家社会経済情報予測センターは、今後、2021年のGDP成長率を6.17%~6.72%、2021年~2025年の平均年間GDP成長率を6.3%~6.8%と予測しています。世界銀行の発表では、ベトナムの2021年のGDP成長率は6.6%と予測しています。 

2021年~2025年、今後も経済成長が期待される要因は何?

ベトナム国立社会経済情報予測センターによると、今後2021年~2025年までの間、ベトナムの経済成長は以下の5つの要因によって支えられると報告しています。 

1つ目の要因は、ベトナムはコロナウィルス感染拡大を食い止め、マクロ経済の安定に成功していることです。困難に満ちた2020年を振り返ると、ベトナム経済は素晴らしい回復力を見せ、コロナウィルス感染拡大の経済的困難に対処する模範例となりました。感染をコントロール下に置くことに成功し、これまで蓄積してきた経済成長の推進力が実を結んだ結果でもあります。 

2つ目の要因は、今後は主要な貿易相手国の市場の経済回復も期待でき、この回復が、ベトナムの輸出の増加につながることです。多くの国際機関の予測によると、米国、EU、中国、日本、韓国など、ベトナムの主要な貿易相手国は2021年には高い経済成長率を達成するということです。特に、EVFTA(EUベトナム自由貿易協定)とCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)およびRCEP(地域的な包括的経済連携)の締結・発効は、今後2021年から2025年のベトナム経済の回復を支えるプラスの要因と見なされています。 

3つ目の要因はベトナムの「ナショナルブランド」の向上です。ベトナムは、コロナウイルス感染拡大の問題を克服し、今後の経済回復に向けた力強いイメージが浸透しつつあり、FTA締結によるビジネスチャンスも拡大しているため、国際投資家にとって魅力的な投資先となっています。実際、2020年のFDI登録額は約15%減少していますが、実行額は2%の僅かな減少にとどまっており、ベトナム経済に与える損失も限定的です。 

4つ目の要因は、国内消費と公共投資が今後の経済成長の回復に依然として重要な役割を果たすという点です。ベトナムGDPの約68〜70%を占める国内消費は、市場環境と所得状況が上向くことで今後回復することが予想されます。投資効率の向上や各経済セクターでの投資を推奨していく各政府機関や経済界の努力とともに、公共投資は、今後も引き続き推進されることが予想されます。  

5つ目の要因は、今後ベトナムの消費者の内需回復により、産業サービス部門が来年以降は(2020年の低水準から)もっと高い経済成長率を達成できる見込みです。特に、加工、製造、卸売、小売、輸送、倉庫業は今後力強く回復し、2021年以降には経済成長の牽引役に再びなると予想されます。また農業関連の産業も今後着実に成長し続けると予想されます。 

積極的な外国投資誘致策を取りながらも、今後は投資の質を重視する

本章では、ベトナムにおけるFDIを振り返りつつ、政府の今後の方針を紹介します。

2020年以前の傾向を振り返る 

1986年の第6回党大会で発表されたドイモイ政策、および外国投資法の施行後から30年以上が経った現在、FDIはベトナムの社会経済の発展に重要な役割を担っており、ベトナムのGDPの約20%を引き上げています。下の図表は、過去30年弱のベトナムのFDI額と認可件数を示しています。ここ15年は順調な伸びを示していましたが、コロナウイルス感染拡大による経済への影響のため、2020年は減少に転じています。計画投資省によると、2020年12月20日時点で、2020年のベトナムへの外国投資額の合計は、新規資本登録、資本登録の修正、資本拠出、および外国投資家の年間の株式購入額を含めて、285億米ドルで、 2019年と比較して25%の減少となっています。コロナウイルス感染拡大を受け、ベトナムへの外国投資家の渡航は大幅に制限されましたが、外国投資によるプロジェクトの実施は199.8億米ドルに達し、同期間の98%に相当します。他の国々の外国投資額は経済状況と伴に大きく減じているのに対し、ベトナムでは軽微な減少で済んでいます。 

ベトナム政府が考える今後の外国投資誘致の方針は?

経済に影響する大きな外的要因の変化がない限りベトナムへのFDIは、コロナウイルス感染拡大の沈静化とともに、今後は2021年以降再び増加に転じると考えられています。ベトナム政府は、2021年~2025年のFDI合計額として1,500億ドル~2,000億ドルを目指しています。   

コロナウイルス感染拡大防止の他、特に次の経済的理由により今後5年間、ベトナムへのFDIは増え続けると予想されています。1つは多国籍企業が、「世界の工場」である中国から工場を今後移転させ、サプライチェーンの多様化を加速させる動きを見せていることです。特に人権や領土、歴史問題を抱えている日本や韓国、欧米諸国の企業は、今後も中国政府の恣意的な懲罰や人民のデモ・ボイコットの対象となり易く、中国は必ずしも政治的・経済的に安定した投資先ではなくなってきています。それに代わって、政治、経済、社会、宗教などのマクロ要因が安定している近隣のベトナムが、今後の最も有望な投資先として浮上しています。その他、地理的位置、土地、生産コスト、労働力などの経済的利点も見過ごせません。例えば、JLLベトナム(Jones Lang LaSalle Vietnam)のデータによると、ベトナムの工業用地のリース費用は、中国と比較して安価です。中国の工業用地のリース費用の平均価格は、180〜200米ドル/ m2 /月ですが、ベトナムの平均はわずか99ドル/ m2 /月です。また、ベトナムの製造業労働者の賃金は2020年時点で252米ドル/月で、これは中国の968米ドル/月やマレーシアの766米ドル/月と比較しても、比較的低い額となっています。  

ベトナム政府は、今後ともFDIを積極的に呼び込むための経済政策を実施しています。例えば、各工業団地では最初の1年間は法人所得税20%の免除、次の4年間は50%の減税となる「2年免4年減」などが実施されています。また、 政府が優先する産業分野のプロジェクトに対しては、最初の4年間は免除、その後の9年間は50%の減税になる「4年免9年減」が実施されており、ベトナムはアジアで最も経済競争力のある税制優遇策を取っています。 

現地報道によると、首相直轄の経済諮問委員会のメンバーであるグエン・ジン・クン氏の発表では、今後ベトナムの経済規制改革では、新しい製品やサービス、ビジネスモデルの開発と伴に、特にイノベーションやデジタルトランスフォーメーションの推進に重点的に取り組んでいくということです。今後ベトナムは、低コストの労働力供給地からハイテク産業の中心地にバリューチェーンを引き上げたいと考えており、FDIの誘致においてもこれらの分野の経済成長を重視する選択的な戦略を取ろうとしています。また、計画投資省外国投資庁のド・ニャット・ホアン長官は、「ベトナムは、量より質を重視した新たなFDI戦略を導入すべきで、高付加価値製品を生み出し近代的な経営手法を用いたプロジェクトや、国内企業だけでなくグローバルサプライチェーンにつながるプロジェクトを優先すべきだ。大規模プロジェクトや戦略的投資家、多国籍グループを誘致するため、競争力のある優遇措置が採用される予定だ。時代遅れの技術であったり、環境汚染を招いたり、天然資源を集中的に使用するようなプロジェクトは拒否されるだろう」と述べています。 

ベトナムの人口動態は経済発展に何故有利か? 

経済動向を語る際に、人口は外せない要素です。本章ではベトナムの人口動態について紹介します。

労働力供給源として期待できる

ベトナムの人口は約9,760万人、平均年齢は約32歳、一人当たりGDPは2,777ドルです。労働人口比率(全人口に占める15歳~64歳の割合)は約70%で人口ボーナス期を迎えており、下の図表のように25歳~34歳の層が多く、今後の経済発展に有利な人口構造をしています。今後2060年頃までに人口は1億1,500万人に増加し、その後はゆるやかに減少していくことが予想されます。若い労働力が豊富なベトナムは、今後とも労働力供給源としても企業にとっては魅力的な投資先です。日本の高度経済成長期の後半、1970年の一人当たりGDP は2,037ドル、人口は約1億人で、その人口動態は現在のベトナムと似た状況でした。

今後は消費市場としても期待できる 

ベトナム経済は今後も暫くは年GDP成長率6%~7%で推移していくことが予想されています。年成長率7%を10年間続けば、その国のGDPは倍になります。IMFの推計値によるとベトナムの2020年の一人当たりのGDPは3,498ドルで、今後2025年には5,211ドルになります。近年は中間所得層の増加が顕著で、ユーロモニターの統計によると、全人口に占める中間所得層(世帯所得5,000~34,999ドル)の割合は、2000年の11.7%から、2020年には51.9%にまで上昇しています。特に、上位の中間所得層(10,000ドル~34,999ドル)の割合が、1.2%から17.7%に増加しています。世帯収入増加で、内需拡大に期待する海外企業にとっても、今後ベトナムは経済的にメリットのある進出先となってきています。

日本企業とベトナムの今後の関係を推察する

日本とベトナムは、経済的に非常に密接な関係にあります。内需に不安を抱く日本企業と、先進国の技術・知見を欲しているベトナムのニーズは合致しています。本章では、今後の日本とベトナムの経済的関係について紹介します。

ベトナムは魅力的な投資先であり続ける

日本はベトナムでFDIの実行額が3番目に高い国としてランクされ、今後はさらなる投資が期待されています。 2019年末時点で、ベトナムで登録されている日本のFDIプロジェクトの数は4,385件に達し、593.3億米ドルに相当します(ベトナムで登録されているFDI額全体の16.4%を占める)。 ベトナムでの新型コロナウィルス感染拡大抑制の成功は、他国のケースと比較し、進出している日本企業の経済環境にもポジティブな結果を示しています。下の図表は、昨年6月にJETROが4カ国で行った、コロナ過における日系企業の売り上げに関する調査結果です。ベトナムは他の3カ国と比べ、売り上げが減少した日系企業が少ないことが分かります。これは、他国と比べ、ベトナムは安定した経済・生産拠点の投資先であることを示しています。また同機構が、2020年に海外事業に関心の高い日本企業を対象に実施した「海外事業展開に関するアンケート調査」では、今後海外で事業拡大を図る対象国・地域では、ベトナムが2位となっています。 

日本企業のビジネス、今後の展望は?

VingroupやViettel、FPTなどベトナム経済を支える大企業による国産の電気自動車、5Gのネットワークサービス、RPAツールの開発など、ベトナムでも既に国内企業が自分たち自身で考案し、開発した国際的にも水準の高いテクノロジー製品が国内だけでなく、海外のマーケットに売り出されています。しかし、それでもさらなる経済・技術発展のため、ベトナムは先端テクノロジーにおいて、今後は日本企業を含むパートナーと情報を共有し協力を得て学ぶ必要があります。「Make in Vietnam*」はベトナム政府の重要な目標であるため、政府はこの戦略遂行のため、今後この分野に投資する外国資本には有利な投資環境を作りだそうとしています。これは、今後ベトナムで経済活動を行いたい日本企業にとってもチャンスです。高水準の科学技術に強みを持つ日本からの投資は、ベトナムにとって重要な資本流入の1つであり、(技術移転と管理スキルを通じて)ベトナム経済の変革に貢献しています。 

*「ベトナムの人々がベトナムで製品を能動的に開発、設計、組み立て、技術発展に貢献し、ベトナムで技術コミュニティを創出する」という、今後の国内ICT産業の振興を目的としてベトナム情報通信省が2018年末に掲げたスローガン。 

また上述したように、ベトナム政府は工業団地への誘致においても積極的な優遇政策を取っており、日本企業のように、製造業や生産業に強く、今後ベトナムで工場や生産ラインに投資をしたいと考えている企業に対して大きなインセンティブとなります。さらにベトナムでの日本のFDIの特徴は、鉱業、石油精製、産業機械、化学などの高度な技術を必要とする経済産業をターゲットとすることが少なくありません。ベトナムを含む海外の日本のFDIは、多くの場合、輸出業、又は製品組み立てや販売代理店経営の関連で行われており、ホスト国の資材および人件費の優位性を重視し、経済発展に貢献しています。また、下の図表にあるように、2018年時点での投資件数を業種別にみると製造、小売・卸、コンサル、ITなどが高い割を示しています。それでも他国との比較では、製造の割合は低く、特に近年はコンサル、IT、教育などが増えおり、今後もこの傾向は続くと予想されます。

しかし、日本のFDIの特徴として特にベトナムの地方では中国や韓国の企業に後れを取っているのが現状です。中国や韓国の企業などと比べ、日本のFDIは投資先が都市部或いはその近郊に集中しています。経済的に発展していない地方に行くとこれらの国の企業の工場や事務所、駐在員を見かけることが多い一方で、日本企業の人たちを見かけることはあまりありません。中国や韓国企業は、ビジネスチャンスがあれば駐在員の生活環境や地域インフラに多少の困難があっても前のめりで進出します。一方、日本の企業はこれらが整備されてから石橋を叩いて経済進出するため、地方では経済的プレゼンスが薄くなっており、今後の対策が望まれます。

まとめ

ベトナムは、経済発展の裏で、電力供給体制などのインフラ整備が追いついておらず、中間管理職や熟練技術者の不足、人件費の高騰などの問題も見られます。しかし、それを補って余りあるほどの進出による経済的メリットがベトナムにはあることから、今後も多くの外国企業が競ってビジネスを展開することが予想されます。また、経済・技能水準や労働習慣が先進国とは違うにもかかわらず、ベトナム人は勤勉で技術を吸収するのが早いと言われています。そのため、今後とも社会経済の発展とともに、人材の質は確実に向上します。 

   今後、日本企業には、ベトナムの経済状況の理解を深め、労働供給の現状や労働者の地域的特性、スキル、及び税制度とその他ベトナムでの外国投資に関連する法規制を正確に理解することが求められています。ベトナムと日本の協力関係は経済だけでなく、政治、文化においても包括的に深化しており、現在は歴史上最も良い状態にあるといえます。ベトナム人が最も良い印象を持っている国は日本であり、これも今後日本企業が経済活動を展開するうえでもアドバンテージとなり得ます。ベトナム政府とベトナムの人々は、日本の投資は常に歓迎しており、今後も魅力的な投資と経済環境を整備して待っています。 

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