2025年8月、韓国LG Electronics傘下のIT企業LG CNSは、ベトナムで人工知能(AI)向け大規模データセンターを建設するため、ベトナム郵政通信グループ(VNPT)および韓国投資資産運用会社KCCIと覚書を締結した。これはジャカルタにおけるAIデータセンター計画に続く海外展開であり、同社のAIインフラ事業戦略が韓国外に本格拡大したことを示している。
プロジェクトは「ハイパースケール」級データセンターの開発を目的とし、VNPTとの協力により電力・通信網や各種行政手続きを迅速に確保する計画である。背景には、ベトナムがデータセンター需要の新興拠点として浮上していることがある。調査会社の報告によれば、ハノイ・ホーチミンを中心に今後数年でデータセンター容量が数倍に拡張し、外資・不動産ファンド・域内事業者の投資が加速すると予測される。
しかしLG CNSには課題も多い。最大の懸念は電力である。AI向けGPUと冷却設備は大量電力を消費し、安定供給と再エネ導入が不可欠である。ベトナムは再エネ政策(PPA、優遇制度)の整備が途上であり、同社は電力コストと供給安定性を確保する必要がある。また、高性能GPUの調達リスクや国際輸出規制、地政学的リスクも不確定要因である。さらに、運営には経験豊富なエンジニアやセキュリティ専門家が必要であり、ベトナム国内人材育成と技術移転が不可欠となる。
一方で、競合環境も激化している。VNPTやViettel、FPTといったベトナム国内大手に加え、海外データセンター事業者や不動産ファンドが市場参入を狙う。特にFPTはNvidiaと提携してAIファクトリーを計画しており、ベトナムは東南アジアにおけるAIインフラ競争の主要舞台となりつつある。
本案件は、ベトナムに高度ITインフラと雇用をもたらし、AI技術のエコシステム形成に寄与する可能性が高い。しかし、その実現には再エネ確保、規制整備、人材育成といった政策的支援が不可欠である。今後、計画具体化と並行して課題克服が鍵となる。
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