半導体分野でベトナムの注目度が高まる
近年、スマートフォンや自動車、人工知能(AI)、クラウドコンピューティング、IoTなどが急速に成長し、半導体への需要が急増している。一方で、半導体分野で働く人材は、最新の製造プロセスやデザイン技術を習得する必要があり、高度な技術が求められるため、企業側も適切な教育や訓練等の人材教育が必要である。
これらの要因から、半導体分野では人材不足が深刻な問題になっている。そのため、多くの国や企業において、人材教育プログラムを整備し、必要な人材を確保することを目指している。
現在、半導体分野においてベトナムへの注目が高まっている。米中貿易摩擦の影響で、多くの企業が中国から拠点を移転する動きがみられる中、世界の半導体メーカーがベトナムへの投資を拡大している。
現在ベトナムでは、Hana Micron Vina(韓国)、Amkor Technology(韓国)、Hanmi Semiconductor(韓国)、Infineon Technologies AG(ドイツ)、Synopsys(米国)、Victory Giant Technology(中国)など多くの大手外資企業が、半導体工場への積極的な投資を行っている。
2023年9月には、米国とベトナムが関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げし、科学、技術、イノベーションの分野での綿密な協力について対談を行った。特に半導体分野では、多くの米国半導体企業がベトナムの半導体産業の発展に協力、支援したいと考えている。Marvell Technologyも、ホーチミン市に半導体設計センター及びIC設計センターを設立すると発表した。
また、ベトナムは半導体分野における人材教育に関しても、重点的に取り組む方針である。この一環として、ダナンに半導体分野における研究・教育センターを設立することが発表されており、以下、詳細をご紹介する。
半導体・AIの研究・設計センターがダナンに設立
1月26日、ダナン市人民委員会は、ダナン市にマイクロチップの設計と人工知能の研究・教育センター(DSAC)を設立することを決定した。
DSACは、半導体やAI分野における人材育成や研究促進、スタートアップ企業の育成のほか、投資誘致の支援を目的としている。
2024年から2025年に、DSACは組織構造や運営体制に関する法的枠組みを整え、半導体やAI分野における研究開発政策や国際協力、企業支援に関する政策提言を行う仕組みづくりに焦点を当てる。
ベトナム・情報通信省のグエン・フイ・ズン次官は、遅くとも2025年までに、ハノイ、ダナン、ホーチミン市に、それぞれ半導体に関する研究・設計センターを稼働させる予定であると述べた。
今後の展望
ダナン市が半導体や人工知能の研究・教育センター(DSAC)を設立することを決定したことは、ベトナムが高度技術分野への投資と成長を重視していることを示している。また、世界的に半導体人材が不足している中、ベトナムは半導体人材の供給国として、日本にとっても大変重要な存在となることが見込まれている。
2030年までに、ベトナムではチップ設計エンジニアが約5万人、電子半導体エンジニアが20万人、半導体産業の労働者が50万人になるとされている。また、この分野での人材育成を担当する教育機関として、ハノイ国立大学、ホーチミン市国立大学、ハノイ工科大学、FPT大学、ダナン工科大学の5つが選ばれている。
半導体やAIなどの分野は、国際経済において非常に重要な分野であり、この分野への研究開発に積極的に取り組むことで、ベトナムは技術革新や産業の多様化を促進し、国内外の投資家・専門家を引き付けることが期待されている。また、DSACが人材育成や投資誘致の支援など多岐にわたる任務を担うことで、ベトナムの経済発展における新たな原動力になることが見込まれる。