2025年6月13日、ベトナム政府はダナン市に国内初の「自由貿易区(Free Trade Zone:FTZ)」を設立する決定を発表した。首相による決定第1142/QĐ-TTgに基づき、このFTZは「特別な制度設計」「高度なインフラ」「国際基準に即した発展モデル」の三要素を統合した先進的経済区域として構築される。管理運営はダナンハイテクパーク・工業団地管理委員会(DSEZA)が担い、「一元管理・現地完結型」の運用モデルにより、行政手続きの迅速化と効率的な投資環境を提供する。
本自由貿易区は単なる開放経済地域ではなく、「制度実験ラボ」としての役割を果たす。税制、投資政策、通関、金融、科学技術、人材育成、そしてデジタル転換に関する政策実験がここで行われ、成功例は全国への水平展開が想定されている。また、AI、半導体、データセンター、再生可能エネルギーといった次世代産業の集積拠点として機能することが期待される。

ダナンが選ばれた理由は、すでに高度な都市インフラを有していることに加え、東西経済回廊の中心に位置し、中部地域や西方のラオスへの物流連携に優れている点にある。さらに、IT特区、ハイテクパーク、国際空港、港湾施設、物流拠点が連結され、産業クラスターとしてのポテンシャルを備えている。
法制度面でも、ダナン市は国会や政府から複数の特別決議(例:43-NQ/TW、136/QH15)を通じて高い自治権を付与されており、新制度導入や地方分権型ガバナンスの試行に最も適した都市とされる。
FTZダナンでは、従来の「安価な労働力・土地」の提供に依存した投資誘致から脱却し、「行政品質・手続きスピード・市場アクセス・技術力」による新たな優遇モデルを採用する。また、行政サービスセンターや多言語チャットボット、デジタル統合型FTZデータベースなどが整備され、国際的な投資家にとっても透明性と予見可能性の高い運営が期待できる。
今回の設立は、ベトナム政府の制度改革と国際競争力強化に向けた決意表明でもある。FTZダナンが成功すれば、ホーチミンやハイフォンなど他の経済中心地への波及効果も見込まれ、ベトナムが中所得国の壁を突破し、より深くグローバルバリューチェーンに統合される一歩となる。
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