はじめに
「F&B業界の空白地帯」とも言われていたメコンデルタ地域(ベトナム西南部)は、現在では多くの現代的な飲料チェーンにとって戦略的な進出先となりつつある。人口の多さ、所得の向上、そして消費嗜好の変化により、この地域はスターバックスをはじめとする有名ブランドから注目を集めている。本稿では、メコンデルタ地域への進出の傾向と、スターバックスがどのような戦略で市場参入を進めているかを分析する。
メコンデルタ地域におけるF&B市場の背景
長年、メコンデルタ地域は現代的な消費の地図において「空白地帯」とされてきた。この地域は伝統的な消費文化、価格に対する敏感さ、そして親しみやすく温かいサービススタイルが特徴である。1杯1万~1万5千ドンの路上アイスコーヒーは、この地域の日常風景の象徴と言える。地元の人々は、国際基準で個人の自由を重視するサービスよりも、会話や交流を大切にする接客を好む傾向がある。
しかし近年、特にコーヒーや飲料分野において、この地域は著しい変化を見せている。インフラの発展や若年層の増加とともに、メコンデルタ市場には大手F&Bチェーンが参入し始めている。都市ランク1・2に分類されるミトー、ロン・スエン、カントーなどの都市では、所得の向上や現代的な消費傾向が明らかに見られるようになった。地域経済の評価とビジネスチャンスの大きさから、多くのF&Bブランドが2025年に向けてこの市場への投資を決定し、今後さらに多くの省への展開を計画している。
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