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ベトナム金融:完全ガイド

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ベトナム金融システムの全体像

ベトナムの金融システムの構造

ベトナムの金融システムは、中央銀行であるベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam:SBV)を頂点とする階層構造で構成されている。SBVは通貨発行、金融政策の策定、金融機関の監督という3つの主要機能を担い、ベトナム経済の安定と成長を支える役割を果たしている。

商業銀行セクターは、国有商業銀行、株式会社商業銀行(民間銀行)、外国銀行支店の3つに大別される。国有商業銀行は政府が過半数の株式を保有し、国の経済政策の実施や特定セクターへの資金供給を担っている。一方、民間銀行は市場原理に基づいた経営を行い、効率性と収益性を重視したサービスを提供している。外国銀行支店は、主に外資系企業や貿易金融のニーズに対応している。

ノンバンク金融機関も金融システムの重要な一翼を担っている。保険会社、証券会社、リース会社、ファイナンス会社などが、それぞれの専門分野で多様な金融サービスを提供している。特に保険セクターは、中間所得層の拡大とともに急速に成長しており、生命保険と損害保険の両分野で市場が拡大している。

近年最も注目されているのが、フィンテックと決済サービスの台頭である。MoMo、VNPay、ZaloPayなどの電子ウォレットが急速に普及し、QRコード決済が日常的な決済手段として定着しつつある。2022年の決済法改正により、決済仲介機関も正式に金融システムの一部として位置づけられ、規制の枠組みが整備された。

ベトナム金融市場の規模と成長性

ベトナム経済は過去10年間、年平均6〜7%という高い成長率を維持しており、金融セクターもこれに呼応して拡大を続けている。2024年のGDP成長率は約7%と予測されており、東南アジア地域でも屈指の成長性を誇る。コロナ禍においても、ベトナムは2020年にプラス成長を達成した数少ない国の一つであり、経済の底堅さを示した。

銀行セクターの総資産は2024年時点で約15兆円規模に達しており、2019年の約10兆円から50%以上の増加を記録している。貸出残高も同様に拡大しており、特に製造業、不動産、個人向け融資が伸びている。中間所得層の拡大により、住宅ローンや自動車ローンなどの消費者金融市場も活況を呈している。

株式市場も目覚ましい成長を遂げている。2025年11月時点で上場会社数は720社、店頭公開市場を含めると1,500社以上の株式が流通している。時価総額は約50兆円と、2019年の約27兆円から倍増した。この成長の背景には、国内投資家の増加と外国人投資家の関心の高まりがある。

金融包摂率の向上も特筆すべき成果である。2024年時点でベトナム成人の87%以上が銀行口座を保有しており、2017年の30%台から劇的に改善した。この変化は、デジタルバンキングの普及、給与の銀行振込義務化、政府の金融包摂政策などが複合的に作用した結果である。証券口座数も2019年末の約230万口座から2024年には1,130万口座に達し、国民の投資意識の高まりを反映している。

ベトナムの主要銀行と金融機関

4大国有商業銀行

ベトナムの4大国有商業銀行は、Vietcombank(ベトナム外国貿易銀行)、BIDV(ベトナム投資開発銀行)、Vietinbank(ベトナム工商銀行)、Agribank(ベトナム農業農村開発銀行)である。これらの銀行は、政府が過半数の株式を保有し、国の経済政策の実施において中心的な役割を果たしている。

Vietcombankは、国内外に600以上の支店を持ち、約23,000人の従業員を擁する最大級の商業銀行である。2011年にみずほ銀行と資本・業務提携を結び、株式の15%をみずほ銀行が保有している。国際業務に強みを持ち、貿易金融や外国為替取引で高いシェアを誇る。2022年のThe Banker誌のランキングでは、ベトナムの信用機関の中でトップの評価を受けた。

BIDVは1957年に「ベトナム建設銀行」として設立され、ベトナム北部の社会主義経済の発展に貢献してきた歴史を持つ。3回の改名を経て現在のBIDVとなり、2022年末までにカンボジア、ラオス、ロシア、台北などに海外駐在事務所を設置している。2019年には韓国第3位のハナ銀行が定款資本の15%を取得し、戦略的協力関係を構築している。

Vietinbankは1988年に設立され、主に組織や個人からの預金受入、融資、決済サービス、外貨取引、国際貿易金融サービスなどを提供している。2012年に三菱UFJ銀行と業務提携契約を結び、株式の約20%を三菱UFJ銀行が取得している。この提携により、日系企業向けサービスの強化が図られている。

Agribankは国が定款資本の100%を保有する唯一の商業銀行で、1988年に農村部や農業部門の開発を目的として設立された。農業と農村の発展に重要な貢献をしており、2023年には従業員数を4万909人から4万2,083人に増員するなど、拡大路線を続けている。

主要民間商業銀行

民間商業銀行セクターは、効率性と革新性において国有銀行を上回る成長を見せている。特にTechcombank(テクコムバンク)、VPBank(VPバンク)、MB Bank(軍事商業銀行)、ACB(アジア商業銀行)などが市場をリードしている。

Techcombankは1993年に設立され、資本金200億VNDでスタートしたが、現在ではベトナム最大の株式会社商業銀行の一つとなっている。2023年の顧客数は1,340万人に達し、総営業利益は40兆6,100億ドン、総資産額は849兆4,820億ドンを記録した。デジタルバンキングへの積極投資により、オンライン取引とモバイルバンキングで高い評価を得ている。

VPBankは1993年に設立され、従業員数は29,000名を超え、ベトナム全域に250以上の支店を展開している。2023年に三井住友銀行と業務提携契約を結び、業務面における提携関係を強化することで、ベトナムでの事業拡大を目指す日系企業の支援体制を整えている。リテールバンキングに強みを持ち、個人向け融資やクレジットカード事業で高いシェアを維持している。

MB Bankは軍隊系の銀行として設立されたが、現在は一般向け商業銀行として幅広いサービスを提供している。特に中小企業向け融資に強みを持ち、製造業や流通業の企業から高い支持を得ている。

ACBは国内49省に支店と取引オフィスのネットワークを持ち、13,000人を超える従業員を擁している。2015年にはJCBと提携してベトナムでプリペイドカードの発行を開始し、決済サービスの多様化を図っている。

日系銀行のベトナム進出動向

日本の大手銀行は、ベトナムの経済成長とビジネス機会を見込んで、2000年代から積極的に進出を進めてきた。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは、いずれもベトナムに支店を設置し、日系企業向けサービスを中心に事業を展開している。

これら大手銀行の進出形態は主に2つある。一つは現地法人設立や支店開設による直接的な事業展開、もう一つはベトナムの大手銀行との資本・業務提携である。前述の通り、みずほ銀行はVietcombankと、三菱UFJ銀行はVietinbankと、三井住友銀行はVPBankと、それぞれ提携関係を構築している。これらの提携により、日系企業は日本語でのサポートを受けながら、現地銀行の広範なネットワークを活用できる体制が整っている。

近年の特徴的な動きとして、地方銀行のベトナム進出が挙げられる。りそな銀行、福岡銀行、大垣共立銀行、十六銀行、きらぼし銀行などが駐在員事務所を設立し、地方の中小企業のベトナム進出を支援している。伊予銀行と愛媛銀行は2022年にHD Bankと業務提携を締結し、ベトナムにおいて日本語での金融サービスや情報提供等の各種サポートを可能にした。

日系銀行の進出拡大の背景には、ベトナムに進出する日系企業数の増加がある。2024年時点で約2,000社の日系企業がベトナムで事業を展開しており、製造業を中心に今後も増加が見込まれている。これらの企業は、現地での資金調達、決済サービス、貿易金融などのニーズを持っており、日系銀行はこれらのニーズに対応するため、コンサルティング業務や取引先企業への支援、市場調査などのサービスに力を入れている。

最近では、みずほ銀行が2023年にベトナム大手キャッシュレスサービスの「MoMo」を運営する「Mサービス」に出資するなど、デジタル金融分野への投資も活発化している。これは、ベトナムの金融市場が伝統的な銀行業務だけでなく、フィンテックやデジタル決済といった新しい領域でも成長が期待されていることを示している。

外資系銀行・フィンテック企業

外資系銀行は、主に外資系企業や国際貿易に携わる企業向けのサービスを提供している。HSBC、スタンダードチャータード、シティバンク、ANZなどの欧米系銀行、韓国のKEB ハナ銀行、シンハ銀行(タイ)などのアジア系銀行が進出している。これらの銀行は、グローバルなネットワークと専門性を活かし、貿易金融、プロジェクトファイナンス、為替取引などで強みを発揮している。

フィンテック企業の台頭は、ベトナム金融市場における最も劇的な変化の一つである。電子ウォレットのMoMoは2024年時点で3,000万人以上のユーザーを抱え、ベトナム最大のフィンテック企業となっている。VNPayは決済ゲートウェイサービスで高いシェアを持ち、多くのECサイトや実店舗で利用されている。ZaloPayはメッセージアプリZaloと連携し、SNS上での決済を可能にしている。

これらのフィンテック企業は、単なる決済サービスにとどまらず、少額融資、保険販売、投資商品の販売など、総合的な金融プラットフォームへと進化している。特に若年層や地方在住者など、従来の銀行サービスにアクセスしにくかった層への金融包摂に大きく貢献している。

政府もフィンテックの発展を積極的に支援しており、2022年の決済法改正では決済仲介機関を正式に金融システムの一部として位置づけ、規制の枠組みを整備した。一方で、マネーロンダリング対策やサイバーセキュリティ強化も求められており、成長と規制のバランスが模索されている。

ベトナムにおける金融規制の枠組み

金融関連の主要法令

ベトナムの金融システムは、複数の法令によって規制されている。最も基本となるのが信用機関法(銀行法)であり、商業銀行、協同組合銀行、ノンバンク信用機関の設立、運営、監督に関する包括的な規定を定めている。同法は2010年に制定され、2024年に大幅な改正が行われた。改正の焦点は、不良債権処理の強化、資本要件の厳格化、コーポレートガバナンスの改善などである。

証券法は、証券市場の発展と投資家保護を目的としている。2019年に大幅改正が行われ、「2030年までのベトナム証券市場発展戦略」の法的基盤となった。同法では、情報開示の強化、コーポレートガバナンスの改善、ファンド市場の改革、外国人投資家の利便性向上などが盛り込まれている。

2022年マネーロンダリング防止法は、金融犯罪への対応を強化するため、2012年法を全面改正したものである。同法では、報告主体の範囲を拡大し、フィンテック企業や決済仲介機関も対象に含めた。また、顧客確認(KYC)やデューデリジェンス(CDD)の要件を厳格化し、疑わしい取引の報告義務を強化している。金融活動作業部会(FATF)の勧告に準拠することで、国際的な金融システムとの整合性を高めることを目指している。

外国為替管理規制は、政令および通達によって詳細に定められている。外貨の流入・流出、外貨口座の開設、外国為替取引などが規制の対象となっている。近年は段階的に規制緩和が進められているが、依然として許認可が必要な取引も多く、実務上の注意が必要である。

外貨規制と資本移動制限

ベトナムの外貨規制は、東南アジア諸国の中では比較的厳格な部類に入る。基本原則として、ベトナム国内での取引はベトナムドン建てで行うことが求められている。外貨の使用が認められるのは、国際取引、外国人との取引、法令で特別に認められた取引に限定されている。

外貨口座の開設には、明確な事業上の必要性を示す必要がある。輸出入業務を行う企業、外国からの借入を行う企業、外国人投資家などは外貨口座を開設できる。個人の場合も、海外からの送金受取、海外勤務の給与受取などの理由があれば外貨口座を開設できる。ただし、外貨口座に預け入れた資金の使途には制限があり、ベトナムドンへの両替や海外送金には正当な理由と証明書類が必要となる。

国際送金には、送金目的を証明する書類の提出が求められる。商品代金の支払いであれば契約書や請求書、配当金の送金であれば株主総会議事録や納税証明書、ロイヤリティの支払いであれば技術移転契約書などが必要となる。金額が大きい場合や頻度が高い場合は、税務当局や外為管理当局による審査が入ることもある。

資本取引についても規制が存在する。外国からの直接投資は原則として歓迎されているが、業種によっては外資比率の制限がある。配当金や利益の送金は認められているが、投資資本の回収には一定の条件がある。海外への投資については、投資計画の承認を得る必要があり、手続きは煩雑である。

近年、ベトナム政府は外貨規制の段階的な緩和を進めている。企業の外貨口座保有要件の緩和、送金手続きの簡素化、外国人投資家向けの規制緩和などが実施されている。しかし、急激な資本流出を防ぐため、規制は慎重に緩和されており、完全な自由化にはまだ時間がかかると見られている。

外国人投資家に対する規制

外国人投資家に対する規制は、業種や企業の形態によって異なる。最も重要な規制が外国人持株比率制限である。多くの業種では外資比率100%が認められているが、銀行、保険、証券、通信、メディア、教育などの業種では制限がある。

銀行セクターでは、外国人投資家による株式保有比率は原則として30%までとされている。個別の外国人投資家は最大15%、外国人投資家全体では30%が上限となる。ただし、ベトナム首相の承認を得れば、この上限を超えることも可能である。実際、Vietcombank、Vietinbank、BIDVなどの大手銀行では、外国の戦略的パートナーが15〜20%の株式を保有している。

証券会社や保険会社にも同様の制限がある。証券会社では外資比率49%まで、保険会社では外資比率51%までとされている。これらの制限は、金融システムの安定性と国家安全保障の観点から設けられている。

上場企業への投資については、証券口座の開設が必要となる。外国人投資家は、ベトナムの証券会社に口座を開設し、取引コード(Trading Code)の発行を受ける必要がある。口座開設には、パスポート、居住証明書、投資登録証明書などの書類提出が求められる。

M&Aによる企業買収についても、金融当局の審査が必要となる。特に金融機関、重要インフラ、国家安全保障に関わる業種の買収には、厳格な審査が行われる。買収比率が51%を超える場合や、買収額が一定金額を超える場合は、首相の承認が必要となることもある。

FTSEラッセルの市場区分が「フロンティア市場」から「第二新興国市場」に格上げされたことを受けて、外国人持株比率規制のさらなる緩和が期待されている。政府は国際資本市場との統合を進める方針を示しており、段階的な規制緩和が見込まれている。

日系企業のベトナム金融実務

法人口座開設の手順と要件

ベトナムで事業を行う日系企業にとって、法人口座の開設は最初の重要なステップである。口座開設には通常2〜4週間程度を要するため、事業開始スケジュールを考慮して早めに手続きを開始する必要がある。

口座開設に必要な書類は、投資登録証明書(IRC)または企業登録証明書(ERC)、定款、法定代表者の身分証明書またはパスポート、取締役会決議書(口座開設と署名権限者を承認するもの)、署名権限者の身分証明書とサンプル署名などである。これらの書類は公証・認証が必要な場合もあり、準備には相応の時間がかかる。

銀行選定のポイントは、企業の業種や規模、事業内容によって異なる。製造業で輸出入取引が多い企業は、貿易金融に強い銀行を選ぶべきである。Vietcombank、BIDV、Vietinbankなどの大手国有銀行は、貿易金融のノウハウと海外ネットワークを持っている。サービス業や小売業など、国内取引が中心の企業は、支店網が充実している銀行が便利である。

日系企業の場合、日系銀行の現地支店や、日系銀行と提携している現地銀行を選ぶケースが多い。これらの銀行では日本語でのサポートを受けられることが多く、コミュニケーションの障壁が低くなる。また、本社の取引銀行のネットワークを活用できる利点もある。

中小企業の場合、民間銀行も選択肢となる。Techcombank、VPBank、MB Bankなどは、意思決定が速く、柔軟な対応が可能である。特にVPBankは三井住友銀行と提携しており、日系企業向けのサービスに力を入れている。

口座開設後は、インターネットバンキングの導入、支払限度額の設定、署名権限者の追加などの手続きが必要となる。複数の銀行に口座を開設することも可能であり、リスク分散や取引条件の比較のために複数口座を持つ企業も多い。

資金調達の選択肢

ベトナムで事業を展開する日系企業の資金調達手段は、大きく分けて現地銀行からの融資、親会社からの借入・増資、その他の代替手段の3つがある。

現地銀行からの融資は、最も一般的な資金調達手段である。短期融資(1年以内)は運転資金に、長期融資(1年超)は設備投資に利用される。融資の際には、担保の提供が求められることが多い。不動産、機械設備、在庫、売掛金などが担保として認められる。親会社保証や銀行保証も担保として利用できる。

融資金利は、ベトナムドン建てで年率8〜12%程度、米ドル建てで年率4〜6%程度が一般的である。ベトナムの金利水準は日本と比べて高いため、資金調達コストを考慮した事業計画が必要である。融資審査では、事業計画、財務諸表、担保評価などが精査される。新規設立企業の場合、親会社の財務状況も審査対象となる。

親会社からの借入は、現地融資よりも低金利で調達できる利点がある。ただし、借入には外為管理当局への登録が必要であり、借入条件(金利、返済期間など)が市場水準と大きく乖離している場合は、税務上の問題が生じる可能性がある。また、元本返済や利払いの際の海外送金には、契約書や取締役会決議書などの証明書類が必要となる。

増資は、返済義務がないため財務の安定性が高まる。ただし、投資資本の回収には一定の制約があり、配当による回収が基本となる。増資手続きには、投資登録証明書の変更、企業登録証明書の変更などが必要であり、時間とコストがかかる。

ファクタリングやリースなどの代替手段も利用可能である。ファクタリングは、売掛金を売却することで早期に資金化する手法であり、キャッシュフローの改善に有効である。リースは、機械設備を購入するのではなく賃借することで、初期投資を抑えられる。

社債発行は、大企業や上場企業にとっての選択肢である。ベトナムの社債市場は急速に成長しているが、チュオン・ミー・ラン事件のような詐欺事件の影響で、投資家の警戒感が高まっている。社債発行には、格付け取得、発行登録、情報開示などの要件があり、手続きは煩雑である。

日常的な資金管理の実務

ベトナムでの日常的な資金管理において、最も重要なのが給与支払いである。ベトナムでは、従業員への給与支払いは銀行振込が一般的であり、現金支給は例外的である。企業は従業員の給与口座を一括管理し、給与支払日に銀行を通じて振込を行う。多くの銀行が給与振込サービスを提供しており、オンラインで一括振込が可能である。

外貨とベトナムドンの使い分けも重要な実務である。原則として、ベトナム国内での取引はベトナムドン建てで行う必要がある。従業員給与、事務所賃料、水道光熱費、通信費などの経常的な支出はベトナムドンで支払う。一方、輸入代金、機械設備の購入、海外への技術料やロイヤリティの支払いなどは外貨で行うことができる。

為替リスクのヘッジも考慮すべき事項である。ベトナムドンは比較的安定しているが、長期的には対米ドルで減価傾向にある。輸出入取引が多い企業は、為替変動による損益が大きくなるため、先物為替予約などのヘッジ手段を検討する必要がある。主要銀行は為替ヘッジ商品を提供しているが、手数料や担保要件などの条件を比較することが重要である。

キャッシュマネジメントシステム(CMS)の活用も、効率的な資金管理には欠かせない。CMSは、複数の口座を一元管理し、資金の集中と配分を自動化するシステムである。ベトナムでは、大手銀行がCMSサービスを提供しており、グループ企業間の資金管理を効率化できる。ただし、外貨規制の関係で、国境を越えたCMSには制約がある。

現金管理も重要である。ベトナムではキャッシュレス化が進んでいるとはいえ、地方や小規模事業者との取引では現金が必要となることも多い。企業は適切な金額の現金を手元に保持し、大口の現金取引については記録を残す必要がある。マネーロンダリング防止の観点から、2億ドン(約120万円)を超える現金取引は報告義務がある。

国際送金・本社間取引の実務

国際送金は日系企業の日常業務において頻繁に発生する。送金目的としては、輸入代金の支払い、ロイヤリティや技術料の支払い、配当金の送金、借入金の元本返済や利息支払い、サービス料の支払いなどがある。

送金手数料は銀行や送金額によって異なるが、一般的に送金額の0.1〜0.5%程度である。最低手数料が設定されている場合もあり、少額送金では相対的に手数料率が高くなる。送金には為替手数料も加算され、TTSレート(銀行が外貨を売るレート)が適用される。所要日数は、主要通貨であれば1〜3営業日程度である。

送金には目的を証明する書類の提出が必須である。輸入代金であれば輸入契約書、インボイス、通関書類など、配当金であれば株主総会議事録、監査済み財務諸表、納税証明書など、ロイヤリティであれば技術移転契約書とその登録証明書、請求書などが必要となる。書類に不備があると送金が遅延したり、差し戻されたりするため、事前に銀行に確認することが望ましい。

トランスファープライシング(移転価格税制)への対応も重要である。親会社や関連会社との取引価格が市場価格と乖離していると、税務当局から指摘を受ける可能性がある。特にロイヤリティ、技術料、マネジメントフィーなどの無形資産に関する取引は、価格設定の合理性を説明できる資料を準備しておく必要がある。ベトナムは移転価格文書化を義務付けており、一定規模以上の関連者間取引を行う企業は、移転価格レポートを作成し税務当局に提出しなければならない。

利益送金の際には、前年度の繰越損失を清算してからでなければ送金できないという規制がある。また、法定準備金の積立義務も果たす必要がある。これらの要件を満たさない場合、配当金の送金が認められないため、計画的な資金管理が求められる。

近年、銀行のオンラインシステムが発達し、送金手続きの多くがインターネットバンキングで完結できるようになった。ただし、初回送金や高額送金の場合は、銀行窓口での手続きが必要となることもある。また、書類の電子提出が認められている銀行もあれば、原本提出を求められる銀行もあり、銀行によって対応が異なる。

ベトナム株式・証券市場の概要

証券取引所と市場区分

ベトナムの証券市場は、ホーチミン証券取引所(Ho Chi Minh Stock Exchange:HOSE)、ハノイ証券取引所(Hanoi Stock Exchange:HNX)、店頭公開市場(Unlisted Public Company Market:UPCoM)の3つに分かれている。

HOSEは2000年に開設され、ベトナム最大の証券取引所である。大型株や優良企業が上場しており、時価総額の大部分を占めている。2024年時点で約400社が上場し、銀行、通信、不動産、製造業など多様な業種の企業が含まれている。取引は月曜日から金曜日の午前9時から午後3時まで行われ、昼休みはない。取引方式は連続オークション方式で、価格優先・時間優先の原則で売買が成立する。

HNXは2005年に開設され、主に中小型株が上場している。2024年時点で約300社が上場している。HOSEよりも上場基準が緩やかであり、成長段階にある企業が多い。一部の企業はHNXで実績を積んだ後、HOSEに上場替えを行う。

UPCoMは2009年に開設された店頭公開市場で、公開会社ではあるが取引所に上場していない企業の株式が取引されている。2024年時点で約800社が登録されている。流動性は低いが、上場を目指す企業のステップとして位置づけられている。

2025年10月、ベトナムはFTSEラッセルの市場区分において「フロンティア市場」から「第二新興国市場」に格上げされた。これは、ベトナム証券市場が国際基準に適合し、市場の透明性、流動性、アクセス性が向上したことが評価されたものである。この格上げにより、FTSE新興国指数に連動する投資資金の流入が期待されている。MSCIの新興国指数への組み入れも、今後の重要な目標となっている。

上場企業と投資機会

ベトナムの上場企業は、銀行、通信、不動産、製造業、小売業、エネルギーなど多様な業種にわたる。時価総額トップの企業には、Vietcombank、Vinhomes(不動産)、Vingroup(コングロマリット)、Masan Group(消費財)、FPT(IT)などがある。

銀行セクターは時価総額の大きな割合を占めている。Vietcombank、Techcombank、VPBank、BIDVなどの大手銀行が上場しており、安定した収益性と高い配当利回りで投資家の人気を集めている。ベトナムの経済成長に伴い、銀行の融資需要も拡大しており、今後も成長が見込まれる。

不動産セクターも注目されている。Vinhomes、Novaland、Dat Xanh Groupなどの大手デベロッパーが上場しており、都市化の進展と中間所得層の拡大により、住宅需要が旺盛である。ただし、不良債権問題や社債スキャンダルの影響で、2023年以降は株価が調整局面にある企業もある。

通信セクターでは、Viettel、VNPT、MobifonなどがIT・デジタルサービスへの転換を進めている。5G網の整備やデジタル経済の発展により、通信インフラへの投資が拡大している。

製造業では、ビナミルク(乳製品)、サビコ(ビール)、ホアファット(鉄鋼)などが有力企業である。外資系企業のサプライチェーンに組み込まれている企業も多く、輸出志向の企業が多い。

証券口座数の急増は、個人投資家の増加を示している。2019年末の約230万口座から2024年には1,130万口座に達し、人口の10%以上が株式投資を行っている計算になる。この背景には、銀行預金金利の低下、不動産投資の敷居の高さ、オンライン証券口座開設の簡便化などがある。

外国人投資家も積極的にベトナム株式市場に投資している。外国人の売買代金は全体の10〜20%を占め、市場の流動性向上に寄与している。ただし、外国人持株比率制限があるため、人気銘柄では外国人の買い余力(Room)がゼロになることもある。市場格上げに伴い、持株比率制限の緩和や撤廃が期待されている。

債券市場の発展

ベトナムの債券市場は、国債、地方債、社債の3つに分けられる。国債市場は最も規模が大きく、財務省が発行する国債が銀行や機関投資家に保有されている。国債利回りは年率2〜4%程度で推移しており、安全資産として認識されている。

地方債市場は発展途上であり、ハノイ市やホーチミン市などの大都市がインフラ整備のために地方債を発行している。格付けが低いため、利回りは国債よりも高い。

社債市場は2018年以降急速に拡大したが、2022年以降は調整局面に入っている。不動産会社を中心に社債発行が急増したが、返済能力に疑問のある企業も多く、デフォルトが相次いだ。チュオン・ミー・ラン事件では、約31兆ドン(約1兆8,000億円)もの詐欺的な社債が発行され、35,000人以上の投資家が被害を受けた。この事件を受けて、政府は社債市場の規制強化に乗り出し、発行要件の厳格化、情報開示の強化、格付け取得の義務化などの対策を講じている。

社債市場の健全化は時間を要すると見られているが、長期的には企業の資金調達手段の多様化に寄与すると期待されている。銀行融資に依存しない資金調達が可能になれば、企業の財務の柔軟性が高まり、経済全体の効率性も向上する。

フィンテックとデジタル金融の進展

キャッシュレス決済の普及状況

ベトナムのキャッシュレス化は、東南アジアの中でも急速に進展している。2020年のコロナ禍を契機として、非接触決済への需要が高まり、QRコード決済が爆発的に普及した。2024年時点で、都市部ではキャッシュレス決済が日常的に利用されており、小売店、飲食店、タクシー、屋台などでもQRコード決済が可能である。

電子ウォレットでは、MoMoが最大手である。2024年時点でユーザー数は3,000万人を超え、国民の約3分の1が利用している。MoMoはもともと送金サービスとしてスタートしたが、現在では決済、融資、保険、投資など、総合的な金融プラットフォームに進化している。セブンイレブン、ファミリーマートなどのコンビニ、Grab、Shopeeなどのプラットフォームと提携し、利用シーンを拡大している。

VNPayは決済ゲートウェイサービスで高いシェアを持つ。オンラインショッピング、公共料金の支払い、航空券の購入などで広く利用されている。多くの銀行や企業と提携し、決済インフラとしての地位を確立している。

ZaloPayはメッセージアプリZaloと統合されており、SNS上での送金や割り勘が簡単にできる。特に若年層に人気があり、友人間の送金やグループでの支払いに利用されている。

銀行アプリによるモバイルバンキングも普及している。ほとんどの銀行がスマートフォンアプリを提供しており、残高照会、振込、請求書支払い、定期預金の開設などがアプリで完結する。生体認証やワンタイムパスワードによるセキュリティ対策も講じられている。

政府もキャッシュレス化を推進しており、ホーチミン市では「キャッシュレスデー」イベントが開催され、キャッシュレス決済を利用した消費者への還元キャンペーンが実施されている。公共料金や税金の支払いもオンライン化が進み、銀行窓口に行かなくても支払いが完了する。

デジタル金融サービスの多様化

フィンテック企業は、決済だけでなく融資、保険、投資などの分野にもサービスを拡大している。

P2P融資プラットフォームでは、Tima、FE Credit、Home Creditなどが個人向け小口融資を提供している。銀行口座を持たない層や、銀行融資の審査に通らない層にも融資を行い、金融包摂に貢献している。審査はAIを活用して迅速に行われ、スマートフォンから申し込んで数時間で融資が実行されることもある。ただし、金利は年率20〜30%と高く、返済能力を超えた借入が問題となるケースもある。

保険テックも成長分野である。MoMoやGrabは保険会社と提携し、マイクロ保険を販売している。1日単位や1回単位で加入できる保険商品もあり、旅行保険、自動車保険、医療保険などが手軽に購入できる。従来の保険商品よりも安価で、手続きも簡単なため、保険未加入層への浸透が進んでいる。

投資アプリでは、Fmarket、VPS、SSIなどの証券会社がスマートフォンアプリを提供している。口座開設から取引まですべてアプリで完結し、投資初心者でも簡単に株式投資を始められる。投資教育コンテンツも充実しており、若年層の投資参加を促している。

ロボアドバイザーサービスも登場している。投資家のリスク許容度に応じてポートフォリオを自動構築し、リバランスも自動で行う。人間のアドバイザーよりも手数料が安く、少額から始められるため、投資の裾野拡大に寄与している。

ブロックチェーンと暗号資産については、ベトナム政府は慎重な姿勢を取っている。暗号資産を法定通貨として認めておらず、決済手段としての利用も禁止している。ただし、ブロックチェーン技術そのものは評価しており、サプライチェーン管理、不動産登記、電子政府などでの活用を検討している。民間企業の中には、NFTやブロックチェーンゲームなどの分野で事業を展開しているところもある。

金融包摂とデジタル化の課題

デジタル金融の進展は金融包摂を大きく前進させたが、課題も残されている。

地域格差は依然として存在する。都市部ではスマートフォンとインターネットが普及しているが、農村部や山間部ではインフラが不十分な地域もある。高齢者層はデジタル技術に不慣れであり、現金への依存度が高い。金融リテラシーの向上とデジタルリテラシーの向上が、今後の課題である。

サイバーセキュリティも重要な課題である。フィッシング詐欺、アカウント乗っ取り、不正送金などの被害が報告されている。電子ウォレットや銀行アプリのセキュリティ強化、利用者への啓発活動、被害発生時の補償制度の整備などが求められている。

マネーロンダリング対策も課題である。電子ウォレットは匿名性が高く、少額取引が多いため、マネーロンダリングに悪用されるリスクがある。2022年マネーロンダリング防止法では、決済仲介機関も報告主体に含まれ、顧客確認や疑わしい取引の報告が義務付けられた。フィンテック企業は、成長と規制遵守のバランスを取りながら事業を展開する必要がある。

データプライバシーも重要な論点である。フィンテック企業は膨大な顧客データを保有しており、そのデータの利用方法や保護体制が問われている。個人情報保護法の整備が進められているが、執行体制はまだ十分とは言えない。

ベトナム金融セクターの課題とリスク

不良債権問題

ベトナムの銀行セクターにおける不良債権(Non-Performing Loan:NPL)は、長年の懸案事項である。公式統計では、NPL比率は2%前後とされているが、実際の不良債権はこれよりも高いとの指摘もある。銀行が債権をリスケジュールすることでNPLとして計上されないケースや、資産管理会社に債権を移転することで帳簿上の不良債権を減らすケースがあるためである。

不良債権の主な要因は、不動産セクターへの過剰融資である。2010年代後半の不動産ブームの際に、銀行は不動産会社や不動産購入者に積極的に融資を行った。しかし、2022年以降、不動産市場が調整局面に入り、不動産価格の下落と取引量の減少により、返済困難となる借り手が増加した。チュオン・ミー・ラン事件に代表される不動産関連の大型詐欺事件も、銀行の資産健全性に影を落としている。

ベトナム政府は不良債権処理のために、ベトナム資産管理会社(Vietnam Asset Management Company:VAMC)を設立した。VAMCは銀行から不良債権を買い取り、回収を図る。しかし、VAMCの回収率は必ずしも高くなく、最終的な損失は銀行が負担することになる。

政府は不良債権問題への対応を強化しており、2024年の信用機関法改正では、不良債権の定義の厳格化、引当金の積み増し、不良債権処理の迅速化などが盛り込まれた。また、担保権の実行手続きの簡素化や、不良債権市場の整備も進められている。

マネーロンダリングとコンプライアンス

マネーロンダリング対策は、ベトナム金融システムの国際的な信認を維持するために不可欠である。2022年マネーロンダリング防止法の施行により、金融機関のコンプライアンス体制は大幅に強化された。

チュオン・ミー・ラン事件では、170億米ドル(約2兆5,000億円)を超える資金洗浄が行われた。彼女は複数のペーパーカンパニーを利用して資金の流れを複雑化し、銀行システムを通じて不正に得た資金を洗浄した。この事件は、ベトナムの金融システムにおけるマネーロンダリング対策の脆弱性を浮き彫りにした。

2024年に摘発されたJinbian事件も、国境を越えたマネーロンダリングの典型例である。中国を拠点とする犯罪組織が、ベトナム、カンボジア、フィリピンなど複数国にわたって詐欺とマネーロンダリングのネットワークを構築していた。偽の決済ゲートウェイを使い、詐欺で得た資金を暗号通貨に交換することで、資金の出所を隠蔽していた。

これらの事件を受けて、金融機関は顧客確認(KYC)とデューデリジェンス(CDD)を徹底するよう求められている。特に、実質的支配者(Beneficial Owner)の特定が重視されており、企業法の改正により実質的支配者に関する規定が導入される予定である。これにより、ペーパーカンパニーを使った資金洗浄が困難になると期待されている。

FATF(金融活動作業部会)は、ベトナムのマネーロンダリング対策を継続的に評価している。ベトナムがFATFのグレーリスト(監視対象国リスト)に掲載されると、国際金融取引に支障が出る可能性があるため、政府は対策強化に力を入れている。

規制強化と透明性向上

ベトナム政府は、金融市場の透明性向上とコーポレートガバナンス強化を推進している。

情報開示基準の国際化が進められている。上場企業には、国際財務報告基準(IFRS)に準拠した財務諸表の作成が求められるようになった。四半期報告や臨時報告の提出義務も強化され、投資家が適時に情報を入手できる体制が整備されている。

コーポレートガバナンスの強化も重要な課題である。独立取締役の設置、監査委員会の機能強化、関連者間取引の開示などが求められている。大株主による少数株主の利益侵害を防ぐため、少数株主保護の仕組みも導入されている。

中央銀行による監督体制も強化されている。オンサイト検査とオフサイト監視を組み合わせ、銀行のリスク管理体制を常時モニタリングしている。自己資本比率、流動性比率、大口信用供与規制などの健全性指標が設定され、基準を下回る銀行には改善命令が出される。

しかし、規制強化には副作用もある。過度な規制は金融機関の事業活動を制約し、イノベーションを阻害する可能性がある。また、規制遵守のためのコストも増加する。規制当局は、金融の安定性とイノベーションのバランスを取りながら、適切な規制の枠組みを構築する必要がある。

今後のベトナム金融市場の展望

2030年証券市場発展戦略

ベトナム政府は「2030年までのベトナム証券市場発展戦略」を掲げ、証券市場の量的・質的拡大を目指している。この戦略の主要な目標は、市場の国際化、上場企業の質の向上、投資家保護の強化、市場インフラの整備である。

市場区分のさらなる格上げは、最も重要な目標の一つである。2025年にFTSE「第二新興国市場」に格上げされたが、次の目標はMSCI新興国指数への組み入れである。MSCI指数に組み入れられれば、世界中の機関投資家からの資金流入が期待でき、市場の流動性と安定性が大幅に向上する。

外国人持株比率規制の緩和も検討されている。現在、多くの業種で外資比率に上限が設定されているが、段階的な緩和が見込まれている。特に、銀行や通信などの戦略的セクターでの規制緩和が実現すれば、外国人投資家の投資機会が大幅に拡大する。

上場企業の質の向上も重視されている。上場基準の厳格化、継続開示義務の強化、コーポレートガバナンス基準の引き上げなどが予定されている。質の低い企業の上場廃止も積極的に行われ、市場の健全性が高まると期待されている。

市場インフラの整備では、取引システムの高度化、清算・決済システムの効率化、投資家保護基金の充実などが計画されている。証券取引所の統合や民営化も検討されており、市場の効率性向上が図られる。

デジタル化・グリーンファイナンスの推進

ベトナム国家銀行は、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)の導入を検討している。CBDCは、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨であり、キャッシュレス決済のさらなる普及と、金融包摂の推進が期待されている。パイロットプロジェクトが進行中であり、技術的な検証と法的枠組みの整備が行われている。

グリーンファイナンスとESG投資も、今後の重要なテーマである。ベトナムは気候変動の影響を受けやすい国であり、再生可能エネルギーへの転換やカーボンニュートラルの実現が課題となっている。政府は2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言しており、そのための資金調達手段としてグリーンボンドやサステナビリティボンドの発行が期待されている。

銀行セクターでも、ESG評価を融資判断に組み込む動きが始まっている。環境に配慮したプロジェクトには優遇金利を適用し、環境負荷の高いプロジェクトには融資を制限するなど、金融を通じた環境政策の実現が図られている。

上場企業に対しても、サステナビリティ報告書の開示が段階的に義務化される予定である。企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みが可視化されることで、投資家の投資判断に活用され、ESG投資が促進される。

国際金融センター構想も推進されている。ホーチミン市とダナン市を国際金融センター(International Financial Center:IFC)として発展させる計画が進められており、法制度の整備、税制優遇、インフラ整備が行われている。シンガポールや香港に続く地域金融ハブとしての地位確立を目指している。

日系企業にとっての機会とリスク

ベトナム金融市場の発展は、日系企業にとって多くの機会をもたらす。

金融サービス需要の拡大は、金融機関にとってビジネスチャンスである。中間所得層の拡大により、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカード、投資商品などへの需要が増加している。日系金融機関は、日本で培ったノウハウを活用し、高品質な金融サービスを提供できる。

フィンテック分野でも機会がある。日本のフィンテック企業がベトナム市場に参入し、決済、送金、融資、資産運用などのサービスを提供している。現地企業との提携や、現地スタートアップへの投資も活発化している。

製造業や小売業など、金融以外の日系企業にとっても、ベトナムの金融市場の発展は重要である。資金調達の選択肢が増えれば、事業拡大のための資金を柔軟に調達できる。キャッシュレス決済の普及により、販売チャネルも拡大する。

一方で、リスクも存在する。規制変更への適応は常に課題である。ベトナムの法令は頻繁に改正され、実務への影響が大きい。法令の解釈が明確でない場合もあり、当局との事前相談や専門家のアドバイスが不可欠である。

金融市場の変動リスクも考慮すべきである。株式市場は急成長を遂げたが、ボラティリティも高い。不動産市場の調整や社債市場の混乱など、市場リスクは常に存在する。為替リスク、金利リスク、信用リスクなど、複合的なリスク管理が求められる。

競争の激化も避けられない。ベトナム企業の成長により、日系企業の競争優位性が低下する可能性がある。特にデジタル分野では、現地企業の方が市場ニーズを捉えやすく、意思決定も速い。日系企業は、技術力、品質、ブランド力などの強みを活かしながら、現地化を進める必要がある。

こうした機会とリスクを適切に評価し、戦略的に事業を展開するためには、現地の実情に精通した専門家のサポートが有効である。株式会社ONE-VALUEは、1,500件以上の支援実績を誇り、ベトナムビジネスに関するワンストップ支援を提供している。金融実務、法務、税務、人事など、多岐にわたる分野で日系企業の事業展開をサポートしており、ベトナム金融市場を活用した事業拡大を検討する企業にとって、心強いパートナーとなっている。

まとめ:ベトナム金融市場を理解するためのポイント

ベトナムの金融システムは、中央銀行を頂点とする階層構造で構成され、国有銀行、民間銀行、外資系銀行、フィンテック企業などが多様なサービスを提供している。過去10年間で市場規模は飛躍的に拡大し、銀行資産は約15兆円、株式市場の時価総額は約50兆円に達した。金融包摂率も87%を超え、国民の多くが金融サービスにアクセスできる環境が整った。

市場の成長を支えているのが、年率6〜7%という高い経済成長率と、政府の金融市場発展戦略である。2022年マネーロンダリング防止法、信用機関法改正、証券法改正など、法制度の整備も着実に進んでいる。2025年のFTSE市場区分格上げは、国際的な信認の高まりを示している。

日系企業がベトナムで事業を展開する上では、現地の金融実務への理解が不可欠である。法人口座開設、資金調達、日常的な資金管理、国際送金など、実務的な知識と経験が求められる。外貨規制、マネーロンダリング対策、移転価格税制など、コンプライアンス面での対応も重要である。

ベトナムの金融市場は、デジタル化とグリーン化という2つの大きな潮流の中にある。キャッシュレス決済の普及、フィンテック企業の台頭、中央銀行デジタル通貨の検討など、デジタル金融が急速に発展している。同時に、グリーンファイナンスやESG投資への関心も高まっており、持続可能な成長が模索されている。

課題も残されている。不良債権問題、マネーロンダリング対策、規制と イノベーションのバランス、地域格差、金融リテラシーの向上など、解決すべき課題は多い。しかし、政府の強いコミットメント、民間セクターの活力、国際社会との協力により、これらの課題は着実に克服されつつある。

日系企業にとって、ベトナム金融市場は大きな機会を提供する一方で、リスクも存在する。市場の成長性を活かしながらリスクを適切に管理するためには、現地の実情を深く理解し、専門家のサポートを活用することが有効である。

株式会社ONE-VALUEは、ベトナムにおけるビジネスの専門家集団として、1,500件以上の豊富な支援実績を有している。金融実務、法務、税務、労務など、ベトナムビジネスに関するあらゆる側面でワンストップ支援を提供しており、日系企業のベトナム展開を強力にサポートしている。ベトナム金融市場への参入や事業拡大を検討する際には、こうした専門家の知見を活用することで、より確実かつ効率的に目標を達成できるだろう。

ベトナムは今後も高い経済成長が見込まれ、金融市場のさらなる発展が期待される。中間所得層の拡大、デジタル化の進展、国際金融センター構想の実現など、将来の成長ドライバーは多い。この成長市場において、適切な戦略と実行力を持つ企業には、大きなビジネスチャンスが広がっている。

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