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【解説】ベトナム消費市場の罠:当てにならない統計データ?

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本記事ではベトナム消費者向けに販売事業を展開する際に統計データを用いることによる留意点を解説し、実態として統計データがベトナム消費者の動向を精確に反映していないこと、及びその対処法について具体的に述べていきたい。

結論:ベトナム消費市場の統計データを鵜呑みにしてはならない

 結論から言えば、ベトナム消費市場を理解するには1次情報の取得がポイントとなる。そこで得られた1次情報は消費者への定量調査やデプスインタビュー、企業や有識者へのインタビュー等多岐にわたる。その1次データを活用し、異なる手法で分析することで精度の高い消費市場の規模の把握、売上予測の策定を行うことが可能となることを強調したい。

 近年、ベトナムの消費市場が注目されている。コロナ発生以前はベトナムのGDPは年率6~7%の高水準で安定的な経済成長を示し、コロナ禍の中では外国直接投資や貿易は落ち込んだものの、国内の消費市場は全体としてはあまり落ち込んでおらず、2021年もGDPはプラス成長を遂げた。こうした経済成長を背景にベトナム国内での中間層、富裕層が急速に増加しており、ベトナム国内の消費者向けの業界が多くの日本企業によって有望視されている。具体的には健康食品、化粧品、食品小売、ヘルスケア、アパレル、スポーツ用品、教育サービス等が挙げられる。

ベトナム消費市場の動向

小売市場の動向

 ベトナムの総人口は約1億人規模に及んでおり、その7割が15歳から64歳という比較的若い年齢層が占めている。また、国民の平均年齢も32歳程度である。今後も人口は増え続け、若い年齢層も7割程度を維持することから、幅広い商品、ブランド、商品カテゴリーへの需要が増していくことが考えられる。2040年代にはベトナム人口が日本人口を上回ると予測されている。

 図表はベトナムの一人当たりGDPと小売市場の売上高の推移を示したグラフであるが、一人当たりGDPが初めて1,000ドルを上回った2008年以降は、特に小売市場の売上高が急成長している。2008年から2019年までの18年間における一人当たりGDPの年平均成長率は8.12%であるが、同期間における小売市場の売上高の年平均成長率は15.3%に及んだ。2019年時点で小売市場の売上高は約17兆円の規模に達している。

消費者の動向:中間層の増加

 ベトナム国民の可処分所得はこの近年急激に増え続けている。実際にベトナムの世帯所得分布をみると、中間層が拡大していることが分かる。中間所得層(世帯所得5,000~34,999US$)の割合は、2000年の約10.4%から、2018年には約47.2%にまで上昇しており、上位中間所得層(10,000~34,999US$)の割合が2000年時点では0.0%であったが、2018年には14.9%まで増加している。

 イギリス市場調査会社ユーロモニターによれば、ベトナムでは2030年までに全世帯の49%が中間層となり、1世帯当たりの年間の可処分所得が5,000~1万5,000米ドル(約55万~164万円)で、2018 年と比べて+33.8%増加すると見込まれている。

 また、2021~2022年頃にベトナムの一人当たりGDPが3,000ドルを上回る見込みだ。一般的に国民1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると、国民の自動車や大型家電、家具といった耐久消費財の購入意欲が急速に高まると言われている。

ベトナム消費市場の統計データの罠と回避方法

 日本企業がベトナム消費者に対してモノやサービスを販売する事業参入を検討する際に、平均所得や人口動態といった消費者に関する統計データを用いて売上予測や市場規模、事業のポテンシャル評価をするケースが非常に多いだろう。しかし、ベトナムでは統計データと消費市場の実態との間に乖離がみられることが多々ある。以下ではベトナム消費市場で販売事業を行う際の留意点と対象法を整理した。

所得に関するデータはあてにならない?

 ベトナム政府(ベトナム統計総局)が公表する国民の消費動向や平均所得のデータは実態よりも低く計算されていると考えられる。ベトナムに限った話ではないが、新興国では統計手法に課題が残っており、ベトナムでもこれまでGDPの再計算が何度も行われてきた。2017年にはGDPが従来の統計を26%上回り、再公表されたことも過去にあった。

 ベトナムは副業が非常に盛んな国であり、収入の経路が複数あることも通常のことである。そのため、統計データで表される統計値以上に、ベトナム消費者は所得が多いと考えられる。実際、ベトナム国内でもベンツ等の高級車、高級レストラン、高級化粧品、食品を使用している消費者を目にすることが多々あるのではないだろうか。ベトナム市場のポテンシャルを評価する際に、統計値による平均所得の水準だけをあてにすることは推奨されない。

消費者関連の様々な情報ソースを活用する

そのため、消費者動向に関する様々な情報ソースを活用することが推奨される。ベトナム政府や業界団体が算出するデータだけでなく、国際機関や民間の市場調査会社が公表するデータを用いることで同じ指標でも様々な情報ソースを重層的に活用することがよいだろう。

複数の分析手法で消費市場を把握する

異なる分析手法で消費市場を把握することが非常に重要となるだろう。例えば、売上予測を立てるうえでも、売上の構成要素となる単価と数量にブレイクダウンすることも可能であるし、購買力と市場での獲得シェア率を乗じて売上を算出することもできる。このように同じモデルでも異なる構成要素を基に売上予測を立てることができる。また、有識者や企業へのヒアリング調査を通じてボトムアップ的に各企業の売上予測を積み上げて売上予測を立てることも可能だ。様々な切り口で売上予測を立て、比較することでより精度の高い予測ができる。

1次情報取得のために、消費者向けの調査を実施する

最重要となることは既存の消費者に関する統計データ(二次情報)を用いることではなく、自らが主体となって消費者向けに定量調査・デプスインタビューを行い、1次情報を取得することである。例えば、ベトナム消費市場での販売事業を検討しているのであれば、ベトナム人消費者数百名を対象に定量調査を行うことが考えられる。統計データでは現れない消費者の購買力や所得が見えてくる。また、デプスインタビューによって販売を検討する商品やサービスに対する意見や考え、嗜好、購買行動、選定基準についての消費者の貴重な情報が取得できる。1次情報は市場にいる消費者の生の意見であり、非常に重要である。

正確な売り上げ予測を立てる

ベトナム進出の際には、正確な売り上げ予測が不可欠である。それが出来なければ、在庫管理、人員配置、予算管理など、あらゆる基盤がぐらつくことになるだろう。前述の通り、売上予測には複数の手法があるが、ベトナムの統計データはあまりあてにならないため、困難である。例えば商圏内の人口、平均所得、支出の内訳などから算出する手法があるが、特に所得のデータはあてにならないため、しっかりと精査しないと見当違いの結果に繋がる恐れがある。ベトナムでの売り上げ予測は、日本での予測より遥かに困難だと言えるだろう。そこでベトナムで売り上げ予測をする際には、専門機関に依頼することを積極的に検討すべきである。

まとめ

以上、ベトナム消費市場の罠として、統計データをそのまま活用すべきではないことを述べてきた。ベトナム消費市場を理解するには1次情報の取得がポイントとなる。そこで得られる1次情報は消費者への定量調査や有識者へのインタビュー等、多岐にわたる。そのデータを活用し、異なる手法で分析することで精度の高い消費市場の規模の把握、売上予測の策定を行うことが可能となるだろう。そしてこういった1次情報の取得や売上予測の際には、専門機関の力を借りることを選択肢の一つに加えるべきである。

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