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M&A動向

2021年は日本企業によるベトナム企業M&Aが大幅増加か

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人口減少を背景として、多くの日本企業は事業拡大のため、海外展開が重要な課題となっている。展開先においては、ASEAN地域は日本企業が最も有望視する地域の1つであり、ASEAN10ヵ国の合計は既に人口約 6.5 億人、名目GDPは 3 兆米ドル越という巨大市場に成長していて、今後の持続的な成長も見込まれている。この記事では、日本企業によるASEAN地域でのM&A動向について最新の動向を分析し、特に日本企業によるベトナムM&A動向に焦点を当てて考察していきたい。

コロナ禍の2020年もベトナムでのM&A実行に大きな変化はない

コロナ発生以前におけるASEAN地域では経済活動、投資活動が活発に行われていたものの、2020年初めに発生した新型コロナウイルスにより、ASEAN地域の取り巻く環境が一変した。新型コロナウイルスによるサプライチェーンへの影響から、日本企業を含めた世界中の企業がグローバルサプライチェーンや投資ポートフォリオを見直しせざるを得ない状況になった。

2020年前半期(1月から6月)までのASEAN地域におけるM&Aは、公表されている限りでは131件、総額で約261億米ドル(約2兆8千億円)となった。四半期別に見ると、第1四半期は、前年第4四半期から続いていたASEAN地域全体における経済活動の活発化の勢いが残っていたが、コロナによる影響は第2四半期において顕著となり、件数ベースで前四半期比約30%減の約28億米ドル(約2,990億円)と非常に低い水準となった。

コロナ発生後における政治、経済、社会、技術、規制、環境に対する不確実性への懸念が高まり、コロナ以前から検討されていたM&A案件が不成立、延期となったことが推測される。企業の心理としても、案件規模が大きければ大きいほど、その傾向は顕著であったと考えられる。

国別では、2019年度通期でASEAN地域の約1/3を占めていたシンガポールでM&A件数が減少したことにより、ASEAN全体のM&A件数は、2019年後半期比で31件減の131件となった。一方、インドネシア、マレーシア、ベトナムでのM&A件数は、第1四半期、第2四半期ともに安定的に推移し、2020年上半期のM&A件数を牽引する結果となっている。セクター別では、M&A件数が減少するセクターが多い一方で、コロナの影響が比較的少なかったと考えられるITセクターにおいて、2019年下期の件数を上回る結果となった。

日本企業によるベトナム企業の買収が年々増加

2010年以降のトレンドとして、日本企業によるASEAN企業の買収件数は増加を続けている。2010年以降は年間100件の買収が実行されており、2018年時には140件程度が実行されている。国別でみると、シンガポールが各年大きなシェアを占めており、2018年時でもシンガポールが53件と最多となった。年にも依るが、買収件数でベトナムは概ねシンガポールに次ぐ2番手の位置であり、2018年時でもベトナムは22件とシンガポールに次いで2番目の買収件数となった。

ベトナムでは事業拡大を目的とした企業売却が多い傾向

シンガポールでは、日本同様に事業承継問題による企業売却が多い。既にアジアの中で最も高齢化が進んでいる国であり、後継者不在の課題を抱えている企業が既に存在する上、今後も増加が見込まれている。一方で、ベトナムの場合はそうではない。平均年齢が若く、GDPで経済が年率6~7%台で成長を続けているベトナムでは、事業拡大が目的のM&A案件には多いのが特徴的であると言える。ベトナム企業(売り手)にすると、事業拡大資金を得ることがやはり多い。

また、業種別に見ても、シンガポールでは建設、建物管理(ファシリティマネジメント)、取付工事(M&E等)関連が多いという特徴がある一方で、製造、食品・飲料関係が多いという傾向がある。DoMandA社によれば、東南アジアのM&A売却案件に関するデータを分析した結果、ベトナムでは、製造(23.6%)、食品・飲料(20.0%)、サービス(12.7%)、医療・医薬品(7.3%)、取付工事(5.5%)、再生可能エネルギー(5.5%)といった業種において売却ニーズが高い傾向がある。

ベトナム計画投資省(MPI)が公表しているデータによれば、2019年、海外からの資本拠出や株式買収の件数は9,842件に及んだ。また、登録資本の合計額のうち株式買収額の割合は年々増加傾向にあり、2017年は17.2%、2018年は27.9%、2019年は40.7%と増加傾向にある。

韓国、シンガポール、中国といった国からも多くの投資を集めているベトナムであるが、日本企業はベトナム企業にとっても好印象であることが多く、日本企業による技術を取り入れたい等、M&A実行後も大きな衝突も生まれにくい構造にあると考えられる。

ベトナムは日本企業が最も事業展開として有望視する国の1つである。日本貿易振興機構(JETRO)が毎年海外ビジネスに関心の高い日本企業に対して行っている「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によれば、事業拡大先として中国を検討する企業が減少する一方で、ベトナムを検討する企業が増加を続けていることが分かる。

中国は日本企業が事業拡大を検討する国として依然としてトップの位置を守り続けているものの、2011年以降、その企業の割合は減少が続いており、2011年の67.8%から、2019年には48.1%まで大幅に後退した。一方で、ベトナムは2019年の調査結果で初めて40%を超え、中国との差は2018年の19.9%からわずか7.1%にまで縮小した。

また、日本政策金融公庫が海外現地法人を持つ中小企業に実施したアンケート調査結果では、今後3年間の事業展開での有望国」として、ベトナムが6年連続でトップになった。有望な主な理由としては、「労働力が豊富」(61%)、「現地市場の将来性が高い」(43.7%)、「優秀な人材の確保が可能」(31%)が挙げられている。

次に、国際協力銀行が実施する「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、ベトナムを有望として考える理由は「現地マーケットの今後の成長性」(70.1%)、「安価な労働力」(52.1%)、「優秀な人材」(25.0%)として挙げられている。

傾向として、以前は「安価な労働力」をベトナム市場の魅力として挙げる企業が多かったが、ベトナムでは近年、賃金の上昇が見られ、安価な労働力を魅力として考える企業は割合としては低くなっている。事実、ベトナムでの事業展開の課題としても「労働コストの上昇」(34.6%)は最も多くの企業が課題として認識している。

まとめ

こうしたことから、今後は日本企業によるベトナム企業の買収は拡大していく傾向にあると考えられるだろう。特に製造業は中国からの製造拠点の移管先として注目されるほか、製薬、食品においては進出先だけでなく、内需もターゲットに事業展開もポテンシャルが高い。ベトナムへの進出方法において、M&Aは検討すべき有望な進出方法の1つとして2020年も引き続き、注目されるだろう。

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