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【2021年版解説】ベトナムの再生可能エネルギー市場の現状と今後の見通し

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1億人規模の人口を有し、経済発展が著しいベトナムでは電力需要が年々拡大している。ベトナムは日射量や風況の条件が良好で、バイオマス資源も豊富に存在しているため、近年は多くの投資家がベトナムの再生可能エネルギーへの投資に注目している。

このレポートでは基礎的な部分から、ベトナムの電力市場・再生可能エネルギー市場の動向を詳しく解説していきたい。ベトナムの電力・再生可能エネルギー市場に関わるビジネスマン向けに最新動向を詳しく整理した。

  • ベトナム再生可能エネルギー市場の最新状況と今後の見通し
  • セグメント別分析:太陽光、風力、バイオマス、廃棄物
  • O&M市場の発展、補助金の活用、CO2クレジット取引

ベトナム電力・再生可能エネルギー市場の現状

ベトナムのGDPは2010年以降、6~7%の高成長を維持しており、これが電力需要の増加の大きな要因となっている。人口も増え続けており、既に1億人規模に達している。2040年頃には日本の人口数を上回る見込みだ。

こうしたベトナムのマクロ経済の成長が電力市場の拡大につながっている。あまり知られていないが、東南アジア各国の年間電力消費量(2018年時点)において、ベトナムは首位のインドネシア(275TWh)に次ぐ、第2位の規模(227TWh)に及んでいる。これは、タイ(195TWh)、マレーシア(195TWh)の電力消費量よりも大きい規模だ。

こうした電力需要の増加に対して、ベトナム政府はこれまで、大型の石炭火力発電での対応を進めてきたが、最近になり、再生可能エネルギー電源の積極的な開発に舵を切った。

ベトナムの電力市場

まずはベトナムの電力市場の動向について、ベトナム政府機関である商工省やベトナム電力公社(ベトナム電力公社)の統計や公表データを基に分析を進めていきたい。ベトナムの電力市場であるが、発電については外資系企業の参入が認められているものの、送電、小売については原則、外資系企業の参入が認められていない。また、国内電源設備の大半はベトナム電力公社グループ傘下企業が所有している。ベトナム電力公社は国営企業であるが、ベトナム電力市場の統計やレポートを公表しており、分析の際には非常に役に立つ。

電力需要の推移

ベトナム電力公社の年次統計によれば、ベトナムの電力需要は2000年以降、一貫して増加を続けていることが分かる。2020年実績値として、年間電力需要は216TWh至っており、2030年には491TWh、2045年には877TWhまで拡大すると予測されている。

ベトナムの電力市場の成長スピードはアジア諸国のなかでもトップクラスである。「実質GDP成長率に対する一人当たり電力消費量の成長率の倍率」はベトナムが1.41倍でトップであり、これは東南アジア諸国で最も電力消費量が大きいインドネシアの1.1を上回る数値である。

こうした電力需要の伸びに対して、供給側である電源開発が追いついていない問題が現状としてある。

電源構成比

ベトナムの電源構成比を見ると、石炭火力(43.6%)、再生可能エネルギー(21.0%)、水力(16.9%)、ガス火力(14.7%)の順序で構成比が大きいことが分かる。再生可能エネルギーは2017年頃は僅か数%程度の規模であったが、現在までに全体の2割を占めるまで拡大した。

ベトナム政府は今後、順次再生可能エネルギーの比率を高めていく開発計画をを立てている。第8次国家電力マスタープラン草案によれば、全体に占める再生可能エネルギーの比率は2030年までに29%、2045年までに45%まで引き上げる計画であることが分かる。

電力事業体制(発電・送電・小売)

ベトナムの発電事業においては外資規制が存在しないため、外資系企業も参入可能である。但し、現状では送配電事業、小売事業に外資系企業が参入することはできず、Eベトナム電力公社の垂直統合になっている。

一方で、今後の自由化に備えて、送配電事業、小売事業はベトナム電力公社本体から分社化済みである。具体的には、ベトナム電力公社直轄企業(※ベトナム電力公社が100%保有し、予算もベトナム電力公社が割り振る)、ベトナム電力公社独立採算企業(※ベトナム電力公社が100%保有するが、独立採算形式をとる)で構成されている。

あくまで憶測でしかないが、ベトナムでは送電市場、小売市場も将来的には自由化される見通しではあるものの、現時点で政府からの公式なアナウンスはない。

ベトナムの再生可能エネルギー市場の動向

ベトナム政府が固定価格買取制度(FIT制度)及び税優遇を中心とした投資奨励制度を適用している再生可能エネルギーは太陽光、風力、バイオマス、廃棄物に分類できる。

再生可能エネルギーの種類の中でも、優遇制度の内容は異なっているため、最新の法規定を詳細に確認する必要がある。

太陽光

ベトナムの太陽光発電であるが、ベトナム国内では中部から南部にかけて日射量の条件が良く、特にBinh Thuan 省、 Ninh Thuan 省は特に日射量の条件が良好であるため、多くの太陽光発電プロジェクトが集中している。これらの一部の地域では、送電線の容量不足といった問題も生じており、 ベトナム電力公社による出力制御も想定される。建設地の選定においては留意する必要があるだろう。

2020年12月末を期限としていた固定価格買取制度を前に、屋根置き型太陽光発電の開発が進む、僅か数か月で9GWhの新たな電源設備が送電網に接続された。今後はFIT価格の引き下げと入札制度の導入が検討されており、政府の動きが検討される。

また、商業運転開始済みの太陽光発電所を売買するセカンダリー市場も発展している。

風力

東南アジア諸国のなかでも、ベトナムは風況の条件が良い国の1 つだ。アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)、アメリカ国立再生可能エネルギー研究所( NREL )の統計データによれば、ベトナムでは 311GW の風力発電ポテンシャルがあるとされており、これは東南アジア域内ではミャンマーの 482GW に次ぐ規模である。

ベトナム国内の風力発電有望地域は、中南部沿岸地域、中部高原地域(内陸)、南部沿岸地域だ。これらの地域は国内でも風況が特に良い地域である。また、日射量の条件が良い Binh Thuan 省、 Ninh Thuan 省は風況が良いエリアでもあるため、送電線の過負荷が一部の地域では生じており、留意する必要がある。

バイオマス

ベトナムは世界でも有数のバイオマス資源が豊富な国であり、バイオマス発電のポテンシャルが非常に高い。ベトナムは農業、林業が盛んであり、その副産物として多種多様なバイオマス燃料が国内で発生している。大きく分けて林業系、農業系に分類される。林業系は主に森林木材(薪等)、間伐材・林地残材、工場等残材、木材ペレット・チップで、農業系は稲わら、もみ殻、サトウキビ残渣、カシューナッツ殻、コーヒー殻、トウモロコシ残渣、キャッサバ残渣が主要な燃料としてあげられる。

ベトナム国内のバイオマス燃料の動向を把握する上で、有用となる資料がベトナム商工省傘下のエネルギー研究所(IE:Institute of Energy)のレポートである。 エネルギー院は国家の電源開発計画を定める「国家電力マスタープラン」等を立案している機関であり、ベトナムのエネルギー政策を担う重要な機関であるとともに、バイオマス燃料について詳細な調査を実施している。バイオマス燃料に関わる政府統計においても最も信頼性が高い情報源であると考えられる。

IEの統計によれば、ベトナム国内で発電に使用可能なバイオマス燃料の年間発生量は 2035 年にかけて増加する見通しだ。

長期的にバイオマス燃料を安定調達することがバイオマス発電投資への成功の鍵となるだろう。

廃棄物

現在、ベトナムでは、急速な経済発展、人口増加により廃棄物の排出量が増加している。これに加え、都市部に人口が集中するという都市化が 2000 年以降、急速に進んでおり、都市部の人口過密が進むことで都市部における廃棄物の排出量の増加につながり、廃棄物処理インフラを逼迫させる事態が生じている。

長期的には、2050 年にかけて一貫して都市化が進む見込みだ。 2000 年時点での都市化率は僅か 24.4% で、全人口の 75.6% が農村部に居住していた。しかし、 2020 年時点では都市部に住む人口の割合は 36.8% まで増加し、このまま都市化が進めば、 2045 年には都市人口が農村人口を上回り、都市化率は 51.1 %まで高まると予測されている。その後も都市化は続き、 2050 年には都市化率が 53.8% まで高まる見込みだ。これにより、ベトナム国内での生活廃棄物、産業廃棄物の排出量が増加し続ける。

ベトナムにおける都市ごみの主な処理方法は直接埋立である。ベトナム政府は排出源でのリサイクルや分別を廃棄物管理の原則として掲げているものの、依然として達成度は低い。廃棄物処理の流れ図を見ると、発生する固形廃棄物の全体量を 100 とすれば、都市環境公社による収集が全体の 85 %を占め、リサイクル業者等の個人での収集が 6 %、不法投棄等が 9 %となっている。埋立処理される割合は全体の 63 %となっており、リサイクル (10 %)、コンポスト処理(4%)、焼却 (14%)は低い水準に留まっている。

ベトナム電力・再生可能エネルギー市場の今後の見通し

ベトナムの再生可能エネルギー市場は将来的に成長性が高いセクターであると考えている。幸いなことに、ベトナムは東南アジア地域の中でも特に風況と日射量に恵まれた国であり、農業と林業が盛んであることから、多様なバイオマス燃料が長期的に発生し続ける見通しだ。

単なる電力不足に対応するだけでなく、環境汚染が深刻化しており、脱炭素の動きが世界規模で拡大している中で、クリーンエネルギーである再生可能エネルギーの社会的ニーズは非常に高いと考えている。持続可能な発展を遂げていくうえでも、重要なセクターになることは間違いない。

今後の市場動向を掴むポイントは3つ

一方で、ベトナム再生可能エネルギーの市場の変化も見られる。2017年頃から急速の開発が進んできたベトナムの再生可能エネルギーであるが、太陽光発電や風力発電は開発が進められてきた一方で、バイオマス発電や廃棄物発電の投資は比較的進んでいない。

こうした市場環境の変化の中で、今後のベトナムの再生可能エネルギー市場の参入にあたっては3つのポイントがあると考えている。

O&M需要の増加

今後、発電所のO&Mニーズが拡大する可能性が高い。既に多くの発電所が商業運転開始をしている太陽光発電であるが、現状として、O&Mは日本と同じレベルまでには重視されていない現状がある。

補助金の活用

脱炭素の取り組みが世界的なトレンドになるなかで、様々な補助金の活用が検討される。環境省、経済産業省、JICAなどが多くの補助金メニューを取り揃えており、日本の事業者や投資家は検討が推奨される。

CO2クレジットの取引

環境省による二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism :JCM)の活用が進んでいるが、将来的には企業間同士のクレジットのやり取りも盛んに行われるようになるだろう。

結論:日本企業に求められるアクションプラン

ベトナムの再生可能エネルギー市場での事業展開や投資を検討している日本企業におかれては、開発に必要な手続きの実施、許認可の取得、法規定のクリア、現地パートナーの探索・協議・パートナーシップの締結、事業方式の決定(IPP等)、進出方法・戦略の策定(自社による開発、案件買収、案件出資)等、クリアすべきステップは非常に多い。これらを詳細に検討し、1つずつクリアすることが事業成功の大きな要因になるだろう。

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