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環境・再生可能エネルギー

ベトナムの水力発電:なぜ水力発電が注目されるのか?

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • ベトナムの水力発電は、電源構成の30%を占める非常に重要な産業である。
  • 水力発電を含む再生可能エネルギーは、今後さらに注力されて開発される見込み。ベトナム政府は、2050年までに温室効果ガスの実質排出0を目指している。
  • ベトナムにはまだ活用しきれていない水資源が多くあり、電力需要も増加し続けているので、水力発電は有望な市場である。

はじめに

本ページでは、ベトナムの水力発電について網羅的に解説していく。

ベトナムにおける水力発電の概要

ベトナムの水力発電のポテンシャルは大きい。ベトナムの年間平均降水量は約1,800〜2,000mmと比較的多く、水力発電に適した地形も見られる。例えば、西北部の3/4は山岳地帯となっていて、3,450以上の水系と密集した河川系がある。このような背景から、ベトナムの水力発電は有望視されており、ベトナムでは昔から水力発電が開発されている。

2022年時点では、水力発電はベトナムの電源構成において一定のシェアを占めているが、ベトナムの水資源を活かしきれておらず、今後ますます注目される見込みである。

水力発電発電の定義

国によって水力発電案件の分類は異なるが、ベトナムでは2006年9月1日に産業省(現在は商工省)が発行した「決定No.2394/QD-BCN」によって、次のように出力(MW)ごとに定義されている。

  • 中・大規模水力発電所:30MWを超える
  • 小規模水力発電所:1MW~30MW
  • 極小規模水力発電所:1MW未満

開発動向

本段落では、ベトナムの水力発電のこれまでの開発と、現状を解説する。

これまでの開発実績:

ベトナムにおける最初の水力発電所は、Lam Dong(ラムドン)省で1942年に建設が開始された。2018年時点では、ベトナム国内でCOD済みの水力発電所が385ヶ所あり、総設備容量は18,564MWに達した。建設中の案件数は143で、総設備容量は1,848MWである。また、投資に向けた調査実行中の案件数は290件あり、全部で2,770MWである。

2020年時点では、ベトナム国内で稼働中の水力発電所の総設備容量は20,685MWであり、ベトナムの電源構成の30%を占める。

Ankroet水力発電所はベトナムにおける最初の水力発電所である。(出所:ベトナム通信社

今後の開発計画(PDP8)

商工省のPDP8の草案によると、ベトナム政府は「基本シナリオ」と「エネルギー原変換シナリオ」の2つのエネルギー開発の方向性を検討しているが、いずれの計画においても水力発電の開発を推進している。同計画によると、2025年までにベトナム全国の水力発電の総設備容量を26,795MWに増加させ、電源構成の27%を占める見込みである。2045年には水力発電の総設備容量が35,139MWに達し、電源構成の9~10%を占めることを目標にしている。

具体的には、水力発電は以下のように開発する見通しである。

  • 中・大水力発電

商工省のPDP8草案(2022年4月版)によると、2021年~2030年の間、中・大規模水力発電の34案件が開発され、新規案件の合計の設備容量は3,873.9MWを達する。2031年~2045年の時期には、11案件(合計設備容量は1,947MW)が新規に建設される見込み。

  • 小水力発電

今後、ベトナム政府が既存の中・大規模水力発電所を拡大する以外にも、水資源のポテンシャルを活かしきるために、小規模水力発電も開発する傾向にある。

現在では、国家のMaster Planに追加された小規模水力発電案件の総設備容量が11,486MWに達した。そのうち、北部における案件が65%を占め、7,430MWに達する。次いでは北中部であり、17%を占め、総設備容量は1,962MWに相当する。第3位は中部高原地方であり、10%を占める。

2020年10月時点で、PDP8に追加された北部の水力発電案件は491件であり、全国の総設備容量の49%を占め、13,720MWに相当する。Thac Ba、Hoa Binh、Son La、Lai Chau、Huoi Quang、Ban Chat、Tuyen Quang、Nam Chienなどの大規模水力発電所のほか、稼働している中・小規模水力発電所が194ヶ所ある。総設備容量は9,585MWに達し、PDP8に追加した容量の70%を占める。水力発電は、北部の各省の経済発展に大きな役割を果たしている。

なぜベトナムの水力発電が注目されるのか?

本章ではベトナムの水力発電が注目される理由を挙げていく。

水資源(雨)が多い

ベトナムには100以上の流域があり、合計の長さが10kmを超える3,500近くの河川がある。 地表水の年間平均総量は約8300〜8600億m3である。 現在、利用されている水は約810億m3であり、利用可能な平均総水量のほぼ10%である。 また、ベトナムの地下水の総埋蔵量は約630億m3/年とされている。

水資源に基づいて計算すると、ベトナムにおける水力発電の潜在的な総設備容量は、理論上約35,000MWである。そのうち、60%が北部、27%が中部、13%が南部に分布している。

技術的なポテンシャル(潜在的に開発可能)は約26,000MWで、計画されたプロジェクトの約970件に対応し、年間発電量は1,000億kWh以上を生産できる見込みである。970案件のうち、小規模水力発電所は約800ヶ所で、総発電量は約15〜20億キロワット時/年でと見込まれる。

小水力発電は再生可能エネルギーの1つ

水力発電は温室効果ガスの排出量を削減し、環境を保護できるメリットがある。水力発電からのGHG(温室効果ガス)排出量は石炭火力発電所の25分の1である。また、中小規模の水力発電案件に関しては、建設に必要な土地面積は平均して1.9 ha / 1 MWであり、商工省の通達No.43/2012/TT-BCTが定める規定の10 ha/1 MWに比べて、非常に少ない。

ベトナム政府は「2050年までのGHG排出実質0」を国の目標として公言しているため、水力発電を始めとした再生可能エネルギーは今後より注力される見込みである。

ベトナムの電源構成で大きな割合を占めている

EVN社(ベトナム電力公社)によると、2021年のベトナムの電源構成において水力発電は28.5%を占める。石炭火力発電を次いで、2番目に割合が高い電源である。2021年の水力発電の発電量は78.605Mil KWhであり、各電源の総発電量の約30.6%に達する。

ベトナムでは電力需要が増加している

2010年~2020年期の間、ベトナムにおける電力需要は年々に増加しており、年間平均成長率は10%である。年間の商用電力出力は2010年の84.6TWhから、2020年には214,3TWhにまで増加した。2025年にはベトナム全国の電力需要は325~347TWhを達し、2045年には733~1,101TWhに上がると予測されている。

経済発展に伴い電力需要は急速に増加しており、近年の北部の電力需要の平均年間成長率は10%を超えており、15〜20%増加している地域もある。2021年には、いくつかの省の負荷増加率が非常に高くなっている。例えば、ハイフォン市は15.8%、タインホア省は13.59%、フンイェン省は11.3%、ヴィンフック省は11.25%である。

小規模水力発電は経済発展に貢献する

小規模水力発電は、多くの地域、特に山岳地帯で社会経済開発に重要な役割を果たしている。ベトナムの山岳地帯では送電システムがあまり発達していないので、電力を利用できない住民は少なくない。小規模水力発電所の開発によって、国の送電網システムがまだ届いていない遠隔地の孤立した少数民族が住んでいる地域、農村部の地域などが電力を利用できる機会を創出できる。このように、地方における小規模水力発電の展開を通して、ベトナムの地方・山岳部のライフラインを確保する役割を果たしている。

輸入燃料に依存しない

2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争は、世界の石油とガスの価格を押し上げた。それに伴って、石炭、バイオマス燃料、LNGなどの燃料の価格も増加している。輸入燃料に依存する国々にとって大きな問題になっている。

ベトナムも毎年、稼働している発電所の燃料需要に応えるために一部のLNG・石炭を輸入する必要がある。価格上昇を契機に、ベトナム国内で水力発電を始めとする再生可能エネルギーの開発を進め、輸入燃料への依存度を下げることが期待されている。

水力発電に関する法制度

ベトナム商工省は毎年、水力発電案に対する売電価格帯の上限を定める決定を発行する。2022年4月29日、商工省は決定No.820/QĐ-BCTを発行し、2022年の水力発電案に対する売電価格帯の上限を1.110 ドン/kWhと定めた。その価格は2020年と同じであり、太陽光、風力発電などの売電価格に比べれば、かなり低い。

回避可能費用

小規模水力発電案件に対して、ベトナム商工省は回避可能費用を適用する。

国の電力システムの中で最も高い生産コストの電力システムから1kWhを生産するコストに対して、その代わりに電力購入者が小規模水力発電所から1kWhを購入した場合に、回避可能費用に基づいて計算される。

2017年~2022年の間の小規模水力発電に対する回避可能費用(単位:VND/kWh)

2017年2018年2019年2020年2021年2022年
2.2422.3062.3061.9321.9321.932

2017年から2019年までは回避可能費用が増加したが、以降3年は減少してから変更がない。

ベトナム政府の方針

PDP8草案によると、COP26会議で首相が約束した2050年までのカーボンニュートラルを達成するために、ベトナムは揚水式発電、灌漑用貯水池上の水力発電の新規開発を推進する方向性である。

一方で、既存の案件、特に多目的水力発電案件に対しては最大限に活用する。全国的に灌漑用貯水池上の水力発電所、低落差水力発電所を新たな土地で、中小規模の案件を選択し開発する。また、PDPに追加した案件は開発し続けられる。

ベトナム人の温室効果ガス対策については以下の記事で詳しく紹介しています。

代表的な水力発電のプロジェクト

本章ではベトナムの代表的な水力発電プロジェクトを紹介していく。

ベトナム企業が主導する太陽光発電案件

ソンラ(Son La)水力発電所は、ベトナムだけでなく東南アジアで最大の水力発電所である。2006年12月2日にソンラ省、ムオンラ(Muong La)区、イットオン村(It Ong)で建築され、長さ約980kmの紅川の最大の支流であるダー川(Song Da)に位置する。予定より3年早く、2012年に商業運転を開始した。

ソンラ水力発電所の貯水池の貯水容量は92.6億m3で、面積が224km2である。ソンラ水力発電所は特別に注力された工事であり、震度8の地震と48,000m3 / sの洪水が同時に発生した場合でも、ソンラ水力発電所は安全を保てる。ソンラ水力発電所は電力供給しながら、北西部地域の経済・文化・社会的発展を促進し、紅川デルタの水量調整の役割も果たしている。

ソンラ水力発電所の基本情報:

  • 案件名:ソンラ水力発電所
  • 場所:ソンラ省、ムオンラ区、イットオン村
  • オーナー企業:ベトナム電力公社(EVN)
  • 設備容量:2,400MW
  • 年間平均発電量:9,429Bil kWh
  • 総投資金額:約29兆円 (58,000Bil VND)
ソンラ水力発電所はベトナムにおける代表的な水力発電案件の一つである。(出所:EVN

日本が関わる太陽光発電案件

ダニム(Da Nhim)水力発電所はベトナムにおける最も古い水力発電所の一つであり、日本との協力の代表例と知られている。ダニム水力発電所はドンナイ(Dong Nai)川の水資源を開拓し、ドンズオン(Don Duong)湖の上に1961年から建設が開始された。1964年1月15日、ダニム水力発電所は、1号発電機と2号発電機を正式に稼働開始した。

毎年、ダニム水力発電所は約10億kWhを供給しており、電力供給に加えて、家庭用水とニントゥアン(Ninh Thuan)省におけるデルタ地域(約1万6千ヘクタールの面積)向けの農業用水を提供している。

ダニム水力発電所の基本情報

案件名ダニム水力発電所
場所ラムドン(Lam Dong)省、ドンズオン区、ラムソン(Lam Son)村
オーナー企業Da Nhim-Ham Thuan-Da Mi株式会社(ベトナム電力公社(EVN)の子会社)
設備容量160MW(1964年~2015年)
年間平均発電量約10億kWh

ダニム水力発電所は2015年にJICAからの補助金で、ダニム水力発電所の拡大工事が開始され、2018年に設備容量を240MWに拡張された。今後もダニム水力発電所の拡大は続けられ、2026年に設備容量が320MWに達する予定。

1961年、ダニム水力発電所で話し合うベトナム人と日本人 (出所:現地メディアBnews

ベトナムの水力発電開発に関する課題

  • 水資源は地域間・時間の経過とともに不均一に分布している。水量の60%はメコンデルタ地域に集中しており、40%は北部からホーチミン市まで分散している。 また、雨季は年間水量の70〜80%を占め、残りの時期は20〜30%しか占めない。北部、中部、南部の間では雨季の期間も異なり、北部は7月と8月に始まり、中部と南部は北部より数か月遅れる。ベトナム北部は5~7月にかけて降水量が少なく、水力発電量が減る傾向にある。
  • ベトナムの河川流域の水の3分の2は海外から流れてきたものである。 最近、中国、ラオスなどの川の上流の国々が多くの水力発電プロジェクトを建設しており、ベトナムに流入する水の量を減少している。上流国への依存が課題として浮かび上がっている。
  • 水質汚染は、特に都市部と工業地帯で、程度も規模も両面で悪化している。気候変動による海面上昇及び塩水侵入も、水資源に強い影響を及ぼしている。
  • 水力発電に適した場所は既に開発し尽されたと考える見方が強い。新しい土地が少ない。
  • 水力発電における外資系企業の参入事例が少ない。

水力発電における今後の見通し・まとめ

今後も、ベトナムの電力構造において水力発電は重要な電力源であり続ける。 発電の役割に加えて、水力発電は、特にベトナムのような農業生産国にとって、経済発展と環境に対して他の多くの大きな役割を果たしている。

今後、ベトナム政府は以下の方針で水力発電事業を開発する予定である。

  • 小水力発電:小水力発電の開発は引き続き推進されるが、水不足、干ばつ、魚資源の喪失、沖積層の喪失、洪水、地滑りに繋がらないように慎重に検討される。 さらに、新規案件は以前のように地域の省レベル人民委員会ではなく、商工省によって承認される見込み。
  • 大水力発電所の規模拡大:大規模な水力発電所に適した場所のほとんどは既に開発されたので、今後、政府が技術を慎重に選定して、既存の案件の規模拡大を企画している。経済面で新規開発に比べて、規模拡大への投資の方が経済効率は高い。PDP8草案には、頼ちゃう(Lai Chau)、イアリ(Ialy)、ホアビン(Hoa Binh)、チアン(Tri An)などの大水力発電所を拡大する予定がある。
  • 揚水式発電:現在、ベトナムでは風力・太陽光発電が急成長しているが送電システムはまだ未整備なので、いくつかの案件が出力抑制の状態に陥っている。そのため、ピーク時に電力を生産して送電システムに送電し、電力システムをより安定させ、過負荷を回避することができる揚水式発電の開発は今後推進されている。2020年、ベトナム初の揚水式発電所の建設が開始され、2028年には稼働する見込みである。PDP8草案によると、2021年から2045年までにベトナム国内に4つの揚水式発電所を開発する予定で、合計設備容量は4,500MWになる見込みである。
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