電気供給の見通しについて
ベトナムの北部地域を中心に、今年の5、6月に深刻な電力不足が見られた。主な原因としては、まず猛暑による電力消費量の増加が挙げられ、他にもエルニーニョ現象の影響、発電燃料の不足、一部の石炭発電所のトラブルなども挙げられる。
国営ベトナム電力グループ(EVN)の代表は、2024年から2025年の電気供給の見通しについて次のとおり言及した。
電気の需要が年々増加しており、年平均で約9%増加する見込みである。それに対応するためには年間4,000〜4,500MWの発電容量を追加する必要があるが、2024年の追加予定発電容量は約1,950MW、2025年は3,770MWと、必要量に届かない見込みである。また北部の発電所は中部・南部と比較して総発電容量が低いのにもかかわらず、北部の電気需要量は年間10%増加している。
なぜ北部地域中心として電力不足に陥るのか?
EVNハノイによると、5月の平均電力消費量は約7,540万kWを記録しており、6月4日には約8850万kWに達している。
猛暑により、水力発電所の貯水池の水位が低下し、水力発電所が制限下での運転を強いられため、過去の同時期と比較して発電量が約12-15%減少している。この水力発電所は北部地域の電力供給の約43%を占めているため、北部地域の電力供給に大きな影響を及ぼした。さらに、石炭火力発電の発電量の減少も原因となっている。石炭火力発電は、北部地域での電力供給の約48%を占めている。このよに、北部地域の発電は、主に水力発電と石炭火力発電で賄われており、この2つの発電量が同時に減少したことが、北部地域の深刻な電力不足を引き起こした。
そのため、ラオスや中国からの電力供給に大きく依存しているのが現状である。また、新しい発電所の開発プロジェクトの進捗が遅れており、電力の供給量が消費量に追いついていない。また、北部の送電システムが不安定であるため、地域全体の送電網に負荷がかかっている。特定の地域では送電網が過負荷となり、異常が発生するリスクがある。
上記の要因により、ベトナムの北部地域では引き続き電力不足が懸念されている。来年度の猛暑の時期にも電力不足に備える必要がある。

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