はじめに
建設業は、今後数年間のベトナムで最も高い成長率が予測される産業の1つである。また、既に日本のゼネコン・建設会社もベトナム国内の大規模プロジェクトに参画し、ベトナム建設業界に大きく寄与している。本レポートでは、ベトナムの建設業界の動向と業界の主要なプレーヤーを中心に解説していく。
建設業に関するベトナムの法規程
ベトナムは社会主義国であり、土地・不動産・建設に係る法律は日本と異なる点が多い。本章では、建設業に関するベトナムの法規定を紹介する。
外資参入に関する法規定
2020年版ベトナム投資法によって、建設業は「条件付き経営投資分野」と定められている。建設業を細分化すると、多くの専門的な事業に分けられる。ベトナム投資法では、そのいくつかの建設業の専門事業を、条件付き経営投資分野に指定している。具体的には以下のとおりである。
条件付き経営投資分野に含まれる、建設業の事業活動:
- 大規模建設施行サービス事業
- 大規模建設工事投資プロジェクトの管理業務強化サービス事業
- 設詳細調査サービス事業
- 建設設計,建設設計評価サービス事業
- 大建設工事施行監察コンサルタントサービス事業
- 大建設工事施行サービス事業
- 外国投資家による建設活動
- 建設投資支出管理サービス事業
- 建設工事品質適合性の検定承認サービス事業
- 共通インフラストラクチャ―システム運行管理サービス事業
- 建設企画設計サービス事業
- 外国の組織,個人が実施する都市計画作成サービス事業
- アパートの管理運営サービス事業(新規)
等がある。(引用:日本国土交通省 建設業に関する外資規制)
許認可・品質に関する法規程
日本では、ほとんどの建設工事に建設業許可が必要であるが、ベトナムでは異なる。本段落では、ベトナムの建設業における許認可制度を紹介する。
建設許可に関係する法規程
日本の建設業法のような、包括的な建設業許可制度はベトナムには存在しない。
政府は各建設プロジェクトの規模・エリア等などの特徴を考慮して、プロジェクトを区分し、建設許可を交付するという形になっている。プロジェクトによって、地方政府(省や市)、または中央政府(建設省)が直接審査する場合もある。
建設安全管理基準
建築の安全管理基準は「ベトナム建築基準」(Vietnam Building Code)が適用される。
参考:【英語版】ベトナム建築基準(Vietnam Building Code)(建設省)
建築基準規格
建築基準規格は「ベトナム規格」 (Vietnamese Standards)のうち関連するものがベトナム建築基準の中で指定されることにより、義務基準として適用される。
ベトナムの建設業界の概要・動向
本レポートの以降の部分では、ベトナムの建設業界の概要、動向、主要なプレーヤーやプロジェクトを解説する。
ベトナム建設市場の市場規模
ベトナムにおける、過去10年間の民間建設工事の成長率は年平均12%である。また、2021年時点で、民間建設工事の市場規模は140億USDになると推定されている。(国際金融公社の調査)
また、2015年のベトナムにおける民間建設工事の市場規模は約68億米ドルであったので、2021年までに市場規模は2倍以上になっている。
世界銀行の調査によると、ベトナムは過去10年間で、世界で最も中間層が増加した国である。また、2030年までに、2300万人以上のベトナム人が中間層になると予測している。
ベトナムはこのような収入増だけでなく、人口増と都市人口比率の増加も起こっている。ベトナムの都市人口比率はコロナ禍の最中でも増加し続けており、都市部での住宅需要の増加を示唆している。
また、世界銀行は、2030年までに世界の建設プロジェクトの半分以上がアジア(特に東南アジア)で行われると予想している。
Mordor Intelligence社のレポートによると、ベトナムの建設工事市場(インフラ・治水工事・民間工事を含む)は2020年時点で575億米ドルの市場規模になっており、2026年には949億米ドルに達すると予想している。この場合の2021年-2026年の期間中の平均成長率は8.7%/年となる。
建設業はベトナムの発展に大きく貢献しており、過去10年間で年平均8%ずつ成長している。
建設・工業分野の付加価値
ベトナム統計局のデータには、建設分野のみの付加価値統計がないため、「建設・工業分野」のデータに基づき、考察していきたい。
建設・工業分野はベトナムの国内総生産(GDP)の約35%を占めている。
ベトナム統計局のデータでは、2021年の新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、建設分野の生産額は、前年(2020年)比5.1%増の1,938.9兆VND以上と推定されている。
コロナの影響により消費が完全に回復していない状況では、公共投資が重要な分野となる。政府は経済回復を促進するためのインフラプロジェクトに注力する方針を明らかにしている。
入札の仕組み
ベトナムにおける建設業の入札は、調査コンサルティング、商品購入、建設工事実施等のパッケージに分かれており、発注機関はパッケージ毎に個別に入札を行う。
また、入札方式として、一般競争入札、限定入札などがある。
発注機関の立場から、一般的な建設工事実施の入札を想定すると、以下のような流れになる。
建設業者の選定準備 ➞ 建設業者の選定 ➞ 入札書の確認及び評価 ➞ 契約の交渉 ➞ 入札結果の提出・審査・承認・公開 ➞ 契約締結
建設にかかるコスト
Plus PM Consultant SD,n Bhd.社による、ホーチミン市周辺の建設コストの調査結果を紹介する。ホーチミン市はベトナムで最も大きいの経済都市であるため、ホーチミン市周辺の建設コストがは他の地域より比較的高い。具体的には以下のとおりである。
参考:Plus PM Consultant SD,n Bhd.社
集合住宅の形態
中級の高層住宅の場合:20,300,000 VND ~ 25,600,000 VND/m2
高級な高層住宅の場合:24,300,000 VND ~ 28,800,000 VND/m2
オフィス・商業施設の形態
中級の高層ビルの場合:23,400,000VND ~ 27,900,000 VND/m2
高級な高層ビルの場合:26,100,000VND ~ 35,100,000 VND/m2
ホテルの形態
3つ星ホテルの場合:35,2000,000VND ~ 45,200,000VND/m2
5つ星ホテルの場合:50,400,000VND ~ 60,300,000VND/m2
工場・生産施設・倉庫物流施設の形態
軽工業の場合:11,500,000VND ~ 23,000,000VND /m2
重工業の場合:23,000,000VND ~ 41,400,000VND/m2
建屋のみの場合:7,100,000VND ~ 8,900,000VND/m2
ベトナムのゼネコンリスト
本章では、ベトナムにおける国内企業及び主要な日系ゼネコンやサブコンを紹介する。
参考:Plus PM Consultant SD,n Bhd.社
ベトナム国内大手建設企業
• Vietnam construction import-export joint stock (VINACONEX)
• Bach Dang Construction (BACH DANG)
• Song Da Construction (SONG DA)
• Vietnam infrastructure development and construction (LICOGI)
• Construction Corporation NO.1
• HANOI CONSTRUCTION JOINT STOCK COMPANY NO.1
日系ゼネコン・サブコン企業
安藤大、安藤八、大林組、鹿島建設、IHIインフラシステム、熊谷組、鴻池組、五洋建設、清水建設、錢高組、大気社、大成建設、高砂熱学工業、TSUCHIYA、鉄建建設、東亞建設工業、東急建設、東洋建設、德倉建設、戶田建設、西松建設、NIPPO、三荾、日立造船、JFE エンジニアリング、前田建設工業、三井住友建設、横河 沐一 仁以
その他
• Bouygues(フランス)
• Vinci(フランス)
• 現代建設(韓国)
• ロッテ建設(韓国)
ベトナム建設業の代表的な企業
本章では、ベトナムの建設業界の中でも特に影響力のある企業を紹介する。
ベトナムでは工事を、土木工事、工業工事、交通工事、農業・農村発展工事、技術インフラ、国防・治安工事等に分類している。
本章では、総合建設、高速道路・橋梁・空港、港湾、石油関連プロジェクトという風にジャンル分けをし、各分野の動向と併せて代表的な企業を紹介する。その後、ベトナムに参入した日本の建設企業についても紹介する。
スーパーゼネコン、総合建設
住宅・マンション、商業施設、インフラや工場等を総合的に施工する巨大な総合建設業者は、ベトナムにある巨大なプロジェクトの施工を担っている。以下に紹介するCoteccons Group とHoa Binh Group は、ベトナムのスーパーゼネコンとして名高い。建設業界が急速に発展するベトナムには大手建設業者が多数ある。しかし、ベトナムでスーパーゼネコンと呼べるのは、Coteccons Group とHoa Binh Groupの2社のみである。
代表企業:Coteccons Group
社名 | Coteccons Group |
設立 | 2004年 |
本社 | ホーチミン |
HP | https://www.coteccons.vn/ |
Coteccons Group(コテコンズ・グループ) は、ベトナム最大のゼネコンである。また、Coteccons Group は、ベトナム建設業界唯一の「無借金経営企業」である。(日本語では「コテコンズ建設」と呼ばれることが多い)
2004年に設立されたCoteccons Groupは、現在のベトナムを代表する建設会社の1つであり、ゼネコンとして大規模なプロジェクトをベトナム全国で手掛けている。
具体的な事例としては、ベトナムだけでなく東南アジアで最も高いビルであるLandmark 81(ホーチミン市ビンタン区)、Vinfast(ビンファスト)自動車生産コンプレックス(ハイフォン市)、 Hoa Phat Group (ホアファットグループ)のDung Quat 鉄工所(Quang Ngai省)等はベトナムの工業・不動産産業の代表的なものになっている。
一方で近年、Coteccons Group 社内で大株主間の派閥争いが起こった。2021年にConteccons Group の創業者であったNguyen Ba Duong 氏の退職と共に、Duong 氏派のメンバーもConteccons社を退職し、「Newteccons」や「Ricons」等の、Duong 氏が新たに創業した建設会社に転職した。
Conteccons Group の現在の実際の所有者は東欧の「Kustoファンド」だとみられている。社内の派閥争いの影響で、2018年からCoteccons Group の売上、利益や受注した案件も以前より大きく減少し、現時点の業績では元々業界で2位だったHoa Binh Groupを下回っている。
代表企業:Hoa Binh Group
社名 | Hoa Binh Group |
設立 | 1987年 |
本社 | ホーチミン |
HP | http://www.hoabinhcorporation.com.vn |
Hoa Binh Group(ホアビン建設グループ)は1987年に設立された、ベトナムで2番目に大きいゼネコンである。
ホアビンは、ベトナムの発展に大きく貢献するだけでなく、マレーシア(Le Yuan Residenceプロジェクト、Desa Twoプロジェクト)やミャンマー(GEMSプロジェクト)などの海外市場にも参入した最初のベトナムの建設会社でもある。今後のホアビンの中期経営戦略には、東南アジア地域を超えて、中東、オーストラリア、カナダなどの海外市場に進出することが掲げられている。
現在、ホアビンによって建設された案件は、マレーシア・ミャンマー・クウェートなどの国外プロジェクトに加えて、ベトナム全国の63省市の内の40の省市に実績がある。ホアビンによって建設されたものには、住宅、文化・医療・教育施設、航空、ホテル-リゾートプロジェクトなど多くの種類がある。その中で、地域に対する代表的なプロジェクトとして、カントー国際空港の旅客ターミナル(カントー市)、タンソンニャット国際空港の旅客ターミナル(ホーチミン市)、アンザン省中央総合病院(アンザン省)、Phu My Hung 住宅街(ホーチミン市)などがある。
しかし、無借金経営という方針を徹底するCotecconss Groupに対して、Hoa Binh Groupは長年にわたって多額の負債を追っている。資本構成の危機感を持っている企業だとみられる。
高速道路・橋梁・空港
ベトナム政府は、交通インフラ、特に高速道路や空港の開発を促進している。
ベトナム政府は公共投資を監視および促進するために、2021年末に「公共投資監督委員会」を設立し、Pham Binh Minh 副首相が委員長に就任した。また、ベトナム政府の公式SNSでも、Pham Minh Chinh 首相、Le Van Thanh 副首相が全国の交通インフラ工事に訪問し、インフラプロジェクトの実施を促進する写真やニュースが頻繁に投稿されている。
ベトナム政府が特に注力している主要プロジェクトは2つある。
一つ目は「北南高速道路」である。北南高速道路は中国の国境と接するHuu Nghi出入国地点(ランソン省)からベトナム最南端のカマウ市までの1,811kmの高速道路である。
二つ目は「ロンタイン国際空港」である。ロンタイン国際空港はベトナム最大の空港となる予定であり、東南アジアのハブ空港としても期待される。ロンタイン空港の総面積は5000ヘクタールで、運営能力は年間1億人の乗客と企画され、空港の開港は2025年に予定されている。
2021年から2030年の道路網開発計画では、ベトナムの高速道路の全長を現在の約1,100kmから2030年までに5,000kmに延長されると決定されている。
道路交通インフラ建設への投資のための政府予算は、2025年には約222億USD、2030年には392億USD以上と企画されている。
代表企業:VINACONEX
社名 | VINACONEX Corporation |
設立 | 1987年 |
本社 | ハノイ |
HP | https://vinaconex.com.vn/ |
VINACONEX(ビナコネックス)(以下:VCG)はベトナムの不動産・インフラ建設大手である。VINACONEXは元々、ベトナム建設省傘下の国営企業であった。しかし、2004年ベトナム政府が同社を民営化して、現在はPacific HoldingsがVCGの発行済みの過半数以上(約63%)を保有し、VCG を支配している。ちなみに、Pacific Holdingsの会長は不動産大手のECOPARK社と親密な関係がある。
他のベトナム建設省の傘下企業と異なり、VCG は当初から多業種の会社として創業されていた。現在、VCGは、民間・公共の様々なプロジェクトのゼネコン、給排水システムおよび環境施設等を手掛ける建設業だけではなく、建設機械、設備、材料の輸出入事業も展開している。
現在、ベトナム政府が特に投資しているLong Thanh(ロンタイン)国際空港の建設は、技術や遂行能力が優秀なVCGがプロジェクトの元請である。
代表企業:DEO CA GROUP
社名 | DEO CA GROUP |
設立 | 1985年 |
本社 | ホーチミン |
HP | https://deoca.vn/ |
Deo Ca Group(デオカー・グループ)(以下:HHV)はベトナムで「トンネルの王様」と称されている。
HHVは1985年に設立され、ベトナムの建設業界で最初の民間企業の一つである。現在、HHVは先述の北南高速道路プロジェクトや、ハノイ市の国道4号・5号、ホーチミン市の国道3号・4号を建設している。また、2022年内に、HHV は以前受注したCam Lam – Vinh Hao 高速道路、Trung Luong – My Thuan 高速道路、Dong Dang – Tra Linh 高速道路等を完成させる予定だと発表した。これらの高速道路は、いずれも地域の連結性向上にとって重要であり、ベトナム政府や各地域の人々から、特に期待されているプロジェクトである。
「ベトナム国家重要プロジェクト」であるTrung Luong – My Thuan高速道路(ベトナム南部)の2021年の様子
港湾
ベトナム政府は、今後の中・長期的な国の発展戦略において、貿易を中心分野の1つとして促進させる方針がある。そのため、輸出に対応可能な国際港の開発が非常に重要となっている。
現在、ベトナムにはホーチミン市にある「Cat Lai 国際港」、ハイフォン市にある「Hai Phong 国際港群」等が中心となって輸出入のニーズに対応しているが、これらの国際港の殆どはキャパシティーオーバーの状態になっており、国際港が不足していると考えられている。ベトナム政府は今後、新たな国際港を建設する方針を発表している。
しかし、現在のベトナムには国際港建設のための、資金力と建設技術を十分に確保できている国内企業は居ない。現在ベトナムが開発中の国内最大国際港群である「Cai Mep – Thi Vai港群」(Ba Ria Vung Tau 省)は、ベトナム国防省系のGemadept社とフランスの会社が連携して開発している。
ベトナムが国際港を建設するためには、外国企業と協力する必要がまだあると考えられる。。
代表企業:Gemadept
社名 | Gemadept |
設立 | 1990年 |
本社 | ホーチミン |
HP | https://www.gemadept.com.vn/vi/ |
Gemadept(ジェマデプト)はベトナム国防省の傘下で、1990年に国営企業として設立された。30年以上操業しているGemadeptは、ベトナムを国際社会と結びつける港湾・ロジスティクスの大手企業である。
現在、Gemadeptはベトナムで8つの港を運営しており、総容量は500万TEUである。港開発の代表企業としてGemadeptを紹介したい理由は、ジェマデプトがフランスのロジスティクス大手CMAターミナル社と協力して、Ba Ria Vung Tau 省にあるCai Mep – Thi Vai(カイメップ-ティバイ)深海港群を建設・運営しているためである。この深海港群は、今後のベトナム南部の経済発展において非常に重要な役割を果たすプロジェクトである。
カイメップ-ティバ港湾群には最大200,000DWTの船が着港可能で、ベトナム最大の深海国際港かつ世界で10指に入る大きさの港湾である。現在、Cai Mep – Thi Vai港湾群はフェーズ1で稼働しており、同港のフェーズ2は建設中で、2024年に稼働開始する予定である。
これまでのベトナム南部およびホーチミン市に貨物を輸送する国際貨物船はCat Lai(キャットライ)港(ホーチミン市内)を利用していたが、キャットライ港は内陸深くに位置しているため、親船はキャットライ港へアクセスできない。そのため、ベトナム南部行きの商品を持つ国際貨物親船は常に、シンガポール港で商品を小型貨物船へ積み替えて、キャットライ港に輸送していた。その結果、ベトナム南部およびホーチミン市への海上輸送のコストは非常に高くなっている。ベトナム政府はこの課題を解決するため、ベトナム南部への国際船路を、キャットライ港ではなくカイメップ-ティバイ港湾群に移す方針がある。
石油関連
ベトナムでは、石油開発プロジェクトはすべて国営企業であるペトロベトナム(Petrovietnam)によって投資及び実施される。その中で、ペトロベトナムによって投資・共同出資されるプロジェクトの実際の建設業務は、ほとんどペトロベトナムの子会社であるペトロベトナム建設(Petrovietnam Construction)によって、実施される。
代表企業:Petro Vietnam Construction
社名 | Petro Vietnam Construction |
設立 | 1990年 |
本社 | ハノイ |
HP | www.pvc.vn |
ペトロベトナム建設(以下:PVC)は、ベトナム国営石油ガスグループ(ペトロベトナム、Petro Vietnam)の子会社である。 PVCが実施するエネルギー、石油、ガスに関連するプロジェクトのほとんどは国の主要プロジェクトであり、ベトナムの経済発展にとって特別な意味を持っている。
PVCが実施した代表的なプロジェクト:
- 石油: Phu My肥料プラント、Ca Mau 肥料プラント、Dung Quat石油精製所。
- 石油火力発電:Thai Binh II石油発電所、Nhon Trach II火力発電所、Phu Tho Ethanol Biofuel 工場、Dinh Vuポリエステル合成繊維工場、Vung Ang火力発電所。
- 石油・ガス掘削事業:Dai Hung掘削リグ、Moc Tinh 1リグの土台とBienDongプロジェクトの上部構造。
- 石油ロジスティクス:Cu Lao Tao石油倉庫、LPガス貯蔵庫、Dung Quat工業団地の石油タンク、Ba Ria Vung Tau省沖・Dong Naiの工業団地へのガスパイプライン。
ベトナムで事業展開している日本の建設企業
ベトナムで事業展開をしている日本の建設企業は多数ある。
大林組
大林組は、1992年にホーチミンとハノイに駐在事務所を設立し、ベトナムの建設市場に進出した。
ベトナムで大林組は、在ベトナム日本領事館(ホーチミン市)、タントリ橋(ハノイ市)、タンソンニャット国際空港旅客ターミナル(ホーチミン市)、サイゴン川トンネル道路(トゥーティエムトンネル、ホーチミン市)、ホーチミン東西高速道路(ホーチミン市)など多くの巨大プロジェクトでゼネコンとして活躍した。
特に、ホーチミン市の1区と2区を結ぶサイゴン川トンネル道路は、日本によるODA案件として有名である。また、川底を通るトンネルとしてはベトナム初であり、この点でも有名である。
清水建設
清水建設は1992年にベトナム市場へ参入した。清水建設はベトナムで多くの大規模プロジェクトを実施しており、その中で代表的なプロジェクトとされるのは、バイチャイ橋(クアンニン省・ハロン市)である。また、清水建設はホーチミン市初の地下鉄(メトロ)の建設請負企業の1つである。
鹿島建設
鹿島建設は、ベトナム現地のIndochina Capitalと連携して、Indochina Kajima Development合弁会社を立ち上げ、ベトナムの不動産及び建設業界に参入した。
現時点で、鹿島建設がベトナムで実施した案件の殆どは、合弁会社を出資する案件である。その中で、「Wink Hotels」と、フーイエン省にある「バイノムラグジュアリーリゾート」は鹿島建設によって施工されている。
ベトナム建設業界が直面する課題
本章では、ベトナムの建設業界が抱える課題を考察する。
原材料価格の高騰
近年の原材料価格の高騰は、ベトナム建設業界の大きな問題である。世界各国の金融政策の緩和や、ロシア・ウクライナ問題により、燃料と建設資材の価格高騰が続いているため、建設会社は建設用の鉄・鋼・石材等建設資材の調達が困難になっている。また、建設資材の価格高騰による、建設会社の利益率低下の可能性もある。
原材料価格が急増している背景を受け、ベトナム政府は2022年、公共投資によるいくつかのインフラプロジェクトの建設を中断することを決定した。
ベトナムの雨季
ベトナムの建設工事は、雨季になると実施が難しくなる。ベトナムは年間降水量が多い熱帯気候にあり、ゲリラ豪雨も多い。
ベトナムの雨季は、毎年5月から10月である。雨季には数日連続して雨が降ることもあり、建設会社にとっては雨季に工事を行うことは非常に難しい。
まとめ
ベトナムの建設業は、ベトナムの全国的な都市化により、依然として大きな成長の余地を残している。ベトナムの民間建設工事の市場規模は、2015年から2021年の間で約2倍にもなっている。
また、今後の数年間では、民間の建設工事よりインフラ開発の方が早く成長すると予測されている。ベトナム政府は景気回復を支援するため、国際深海港、ロンタイン国際空港、南北高速道路等に注力する方針を示している。
そのため、インフラ分野を始めとするベトナムの建設業界には、まだまだ日本企業が参入する余地がある。
ベトナムにはスーパーゼネコンが2社しか存在しておらず、これまで日本企業を始めとする外資系の建設企業の進出も進んでいる。
一方で、ベトナムの建設業界は建設資材の高騰やベトナムの雨季などの課題にも直面している。
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