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ベトナムのビルメンテ業界:外資系企業が進出する際の3つの課題と解決

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今回のレポートでは、ベトナムにおけるビルメンテ業界に日本企業が進出する際に直面する課題と、それらの解決策を解説していく。また併せて、ベトナムのビルメンテ業界における外資規制等の法規定についても見ていきたい。

外資系企業がベトナムのビルメンテ業界に進出する際の法規制

 ベトナムにおける不動産および不動産に関連する事業についての各種規制は「不動産事業法」において定められている。同法では不動産事業がいくつかの事業内容に分けられた上で、内資企業のみが可能な事業、外資系企業にも開放されている事業が決められている。

上記6つのうち、外資系企業が実施することができないのは「①販売、リース又は割賦販売用の建物取得」である。販売や賃貸を目的とした不動産の取得は外資系企業には認められていない。この規制は、外資系企業によって国内の不動産が買い占められ、価格が値上がりすることを防ぐ目的であると考えられている。

 それ以外の5つの事業内容については外資系企業にも開放されている。ビルメンテ事業については上の表の6番目「不動産サービス業」に該当する。また後半で詳しく説明するが、2番目の「サブリース用の住宅・建物の貸借」も外資系企業に認められていることを確認していただきたい。

 ビルメンテ業界についてのより細かい規定は、同じく不動産事業法の第75条にて定められている。まずビルメンテを含む不動産管理をサービスとして営むためには、法人を設立する必要がある。その上で、営む不動産管理サービスの内容は以下のように定義されている。

・土地所有権者、不動産所有者より委任を受けて不動産の売却、賃貸等を行うこと

・不動産の運営が正常に実施されることを目的とした管理の計画

・不動産の維持管理・修繕

・契約に基づいて不動産の管理・運営監督を行うこと

・土地所有権者、不動産所有者より委任を受けて業務を行うこと

 ここでは、不動産管理とは建物のハード面を維持管理する「ビルメンテ」だけでなく不動産運営などを含めた広義の「プロパティマネジメント」業務が想定されていることを確認したい。

ベトナムのビルメンテ業界に日本企業が進出する際の課題と解決方法

 以下では日本企業がベトナムのビルメンテ業界に進出する際の3つの課題と、それぞれの解決方法を解説していきたい。

ビルメンテ実務に関する法令・基準体系が複雑かつ不透明

 日本でビルメンテ業務を行っていくにあたっては、例えば防災・消防設備の定期点検に関する規定、給排水設備の品質に関する規定、ゴミの分別・回収方法に関する規定など様々な決まりが設けられており、それらに従って業務を行うことになる。ただしそういった規定や基準は同業界を管轄する政府機関や業界団体によって、ガイドラインのような形でまとめられていることが多く、各事業者はガイドラインを参照することによって基準に沿った業務を実施することができる。

 ベトナムでも上記のような各規定や基準が存在するものの、業界団体などもなく、またガイドラインのような形でまとめられている資料もないため、それらの規定・基準を全て網羅・把握するのが非常に困難である。

 これらの課題を解決するには、専門家に依頼をして詳細な法体系を調査してもらうことも一つの手段であるが、すでに同様の業務を行っているローカルパートナーを見つけ、ノウハウを共有してもらうことも解決の手段として考えられる。

コンプライアンスが未整備

 ベトナムでは不正競争や横領を防ぐための制度がまだ未整備である。これは法律がみ整備というよりもそれらを防ぐための企業間のコンプライアンス意識がまだ未成熟であると言える。ただし外資系企業が留意すべきは、「郷に入っては郷に従う」の意識でこれらの不正を見逃す、または関わっていくことは非常に危険であるということである。ベトナム政府も汚職、賄賂そして横領などの不正については今後とも厳しく対処していく姿勢を明確にしている。思わぬところで足を掬われないように、こうした不正とは明確に距離を取る姿勢が重要である。

ローカル企業との価格競争

 どの業界においても共通することではあるが、外資系企業がローカルの企業との競合になった場合、価格の面ではどうしてもローカル企業が優位になることが多い。ただし、現在は大型ディベロッパーによる不動産開発や外国投資家による不動産投資も活発になっており、そうした投資家は価格の安さよりも、ビルメンテの品質の高さをより重視する。外資系企業はローカル企業に対抗して価格を下げるのではなく、品質の高さによってローカル企業との差別化を図る方向を取るべきだと言える。

ベトナムの企業については、以下の記事で詳しく紹介しています。

3.サブリース業と結びつけたビルメンテサービスの提供

 ベトナムの不動産業においては、販売や賃貸を目的とした不動産の取得は認められていないが、転貸をするために不動産を貸借するサブリース業は認められている。

 サブリース業においては、まず事業者はオーナーより不動産の賃貸を受け(マスターリース)、事業者はオーナーより賃貸された不動産を、第三者に対して転貸する(サブリース)。

マスターリース、サブリースそれぞれに対して賃料が発生するというスキームである。

そのため、外資系企業は不動産のオーナーに対してビルメンテサービスを提供するとともに、それらを賃貸し第三者へと転貸するサブリース業を同時に行うことが可能だ。また不動産仲介も可能であるため、外資系企業はオーナーより委託を受けて管理・仲介・サブリースの全てを実施することができる。

 こうして見ると、一部規制があるもののかなり広い分野が外資系企業に対して開放されているということが言える。不動産業界に関する各種規定は前述の「不動産事業法」をはじめ「土地法」、「住宅法」および「投資法」などに定められているが、方向性としては外資系企業に対しては緩和される方向である。ただこれらの法律は最近7,8年に頻繁に改正されており、詳細な部分を定める関連法規定も整備されている最中である。そのため、一部法律同士で矛盾、不透明な部分が残っている。実際の進出の際には、法律の最新情報だけでなく、実務的な進出の規制、流れも確認することが必要である。

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