ベトナムの乳業は、農業と食品加工産業の中核を担う分野として注目され、持続的な成長の可能性を秘めている。2017年に44億ドル規模だった業界売上は2023年に50億ドルを突破し、乳牛頭数は2014年の22.8万頭から2024年には33.5万頭へ拡大、原料生乳生産量も年平均8.4%成長で120万トンを超えた。しかしベトナム国内需要の60%を依然輸入に頼っており、とりわけ粉乳依存が課題となっている。
一方で、乳業構造には大きな変化が進んでいる。2008年には92%が粉乳から再構成された製品であったが、2023年には32.3%に低下し、逆に生乳使用率は67.7%へと拡大した。これは消費者の健康志向や品質重視の流れを反映し、今後の市場発展の方向性を示している。ベトナム人の年間乳製品消費は約27リットルと依然低水準であり、近隣諸国や欧米に比べて大きな伸びしろがある。
乳業発展のボトルネックは、国内原料供給の不足と規制・基準の不明確さにある。乳牛飼養規模は国際水準に比べて小さく、国産生乳は需要の約40%しか満たさない。また、消費者が生乳と再構成乳の違いを理解しにくい制度環境も課題である。中国が粉乳再構成の使用を禁止するなど各国で基準が厳格化する中、ベトナムでも制度整備が急務とされる。
業界ではTH True Milkが「生乳革命」を先導し、2008年に8%だった生乳比率を60%超に押し上げるなど成功例も生まれている。今後の成長シナリオとしては、2025年の市場規模45.9億ドル、年平均成長率8%以上を見込む。2030年までに国内自給率を60%に引き上げ、長期的には乳牛100万頭以上の飼養と生乳500万トン生産を目指す動きが加速する。FTAや国内政策を活用し、品質基準を国際水準に近づけることが、乳業の持続的発展と国際競争力強化に不可欠である。
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