2025年6月17日、ベトナム国会は「企業法2025年改正法(法第76/2025/QH15号)」を可決し、7月1日から施行した。本改正は2020年企業法の修正であり、環境改善、国際基準適合、透明性強化を目的とする。最も注目されるのは「実質的所有者(Beneficial Owner)」の定義導入であり、資本の25%以上を直接・間接に保有、または重要決定を支配する個人を特定・登録することを義務付けた。これにより、マネーロンダリング・テロ資金供与防止の国際基準に沿う体制が構築され、外国投資家の信頼向上が期待される。
定義面では「配当」が「税引後利益」と明確化され、財務報告の正確性が高まった。また「市場価格」も上場株式と非上場持分を分けて規定し、資産評価の恣意性を抑制する。さらに、個人証明書類として従来の住民証明書を廃止し、身分証明書やパスポートに統一したことはデジタルID政策と連動し、行政の近代化を促進する。
制度面では、公務員・職員が科学技術、イノベーション、デジタル変革関連分野に限り企業設立・経営に参画可能となった。これにより、知的資源を活用したスタートアップや研究成果の商業化が推進され、国家のデジタル経済戦略に寄与する。さらに、企業登録はVNeID電子IDアカウントでの申請が必須となり、虚偽申請や資本金虚偽申告を禁止行為として新設した。
ガバナンス・財務面では、株主総会招集請求に関する株主責任を強化し、資本金減少は設立2年以上かつ債務履行能力確保を条件とした。また、非公開会社の社債発行には「負債総額が資本の5倍以下」という規制を導入し、市場リスクを抑制した。
これらの改正は、透明性の確保、ガバナンス強化、デジタル化推進、金融市場の健全化を同時に狙う包括的改革であり、企業活動と投資環境に大きな影響を与えるとみられる。
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