はじめに
近年、ベトナムは急速な経済成長を背景に、スタートアップ企業の活発な活動が注目されている。特に、フィンテック、電子商取引、エドテック、ヘルステックといったテクノロジー分野におけるベトナムのスタートアップは、国内外の投資家にとって非常に魅力的な投資対象となっている。2021年にはベトナムのスタートアップへの投資額が過去最高に達し、ベトナムはASEAN地域においても重要なスタートアップ拠点としての地位を確立しつつある。
日本を含む海外投資家は、ベトナム市場において、資本提供に加え、技術移転や知識の共有を通じて、ベトナムのスタートアップエコシステムのさらなる発展に貢献できる可能性を秘めている。このような背景の下で、ベトナムは、今後もテクノロジースタートアップ分野における魅力的な投資先として注目され続けると予想される。
ベトナムにおけるスタートアップの概要
本章ではベトナムにおけるスタートアップの概要について解説する。
スタートアップ企業の数
2018年、ベトナムの革新的スタートアップ企業の数は4,460社であった。計画投資省企業登録管理局の統計によると、2016年から2019年の期間において、ベトナムでは毎年126,000社以上の新規企業が設立されており、これは2011年から2015年の期間と比較して1.6倍の増加である。
政府の通信サイトによれば、2023年までにベトナムには約3,800社の革新的スタートアップ企業が活動を続けている。ベトナム政府はスタートアップを支援し促進する多くの政策を実施しているにもかかわらず、ホーチミン市の科学技術進歩応用センターによると、スタートアップの90%以上が起業後失敗している。 一方で、失敗する企業だけでなく大きな成功を収める企業も多く、国としてのスタートアップ推進としては一定の成果を上げている。
ベトナム科学技術省によると、ベトナムには評価額が1億ドルを超えるスタートアップが11社存在し、その中でユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える企業)は4社(VNG Corporation、VNLife、MoMo、Sky Mavis)ある。2021年には、スタートアップへの投資額が過去最高の13.5億ドルに達し、ベトナムは地域内でもっとも魅力的なスタートアップの拠点となった。特に、Tikiが2億5,800万ドル、VNLifeが2億5,000万ドル、Sky Mavisが1億5,200万ドル、MoMoが1億ドル、Equestが1億ドルの資金調達に成功したことが市場に強い印象を与えた。
スタートアップ企業の資金調達フェーズ
Jobsgo(ベトナム初のモバイルアプリによる求人マッチングプラットフォーム)によると、世界と同様にベトナムのスタートアップ業界には5つの資金調達フェーズがある。
プレシード(Pre-seed)ファンディング:これはスタートアップ企業が最初に資金を調達するフェーズであり、通常、家族、友人、またはエンジェル投資家から資金を集める。このフェーズでは、企業は確固たるデータや十分な資金を持っておらず、主にアイデアの売り込みや創業者自身への投資を目的とする。
シード(Seed)ファンディング:スタートアップがビジネスアイデアを発展させるために非常に必要な資金を調達するフェーズ。このフェーズでは、エンジェル投資家、特定のファンド、インキュベーター、スタートアップアクセラレータープログラムが投資を行うことが一般的で、投資額は1万ドルから10万ドル程度。この資金は、製品の市場適合性のテスト、主要ポジションの採用、製品開発のために使用される。
シリーズA:このフェーズでは、投資家は過去の資金調達で得た実績データを確認し、プロジェクトの可能性を評価する。以前の投資家も引き続き参加する場合があるが、この時点では、スタートアップがさらなる成長を目指して、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家との協力を求めることが多い。
シリーズB:このフェーズでは、スタートアップはベンチャーキャピタルの支援を求め、既存の成功を基盤にしてチームの拡充、地理的な拡大、新市場の開拓、規模拡大に資金を使用する。このフェーズでは、数千万ドル規模の資金を調達することがあり、企業買収の決定が視野に入る。
シリーズC以降:企業の評価額は1億ドルを超える可能性があり、シリーズCでは5000万ドル、あるいは10億ドルに達することもある。
ベトナム科学技術省が実施したベトナムのスタートアップの現状と発展状況に関する調査によれば、2023年時点、プレシード(Pre-seed)ファンディングの企業は全体の45.1%を占めており、スタートアップがアイデアの準備や研究段階に集中していることが示されている。シードフェーズの企業は30.6%で、ベトナム市場では準備段階からアイデアや製品の実行段階に移行するスタートアップが多いことが分かる。しかし、シードからシリーズAへの移行率は大幅に低下しており、これはスタートアップが成長し資金調達を進める中で直面する課題を反映している。
ベトナムにおけるスタートアップ企業が受け取った投資資金
国家イノベーションセンター(NIC)およびベトナムと東南アジアのテクノロジー企業に特化した初期段階のベンチャーキャピタルファンドであるDo Venturesによると、過去10年間にわたるベトナムのスタートアップ企業への投資活動は大きな発展を遂げた。2013年には投資総額が約1,000万米ドルに過ぎなかったのが、その後の数年間で大幅に増加し、特に2019年以降に急成長し、2021年には165件の取引が行われ、総額14億4,200万米ドルに達した。
2024年版「ベトナムのテクノロジー投資とイノベーション報告書」によると、ベトナムのスタートアップ企業は2023年に総額5億2,900万米ドルの投資を受けており、前年と比較して17%の減少が見られた。一方で、取引件数は比較的安定しており、前年からわずか9%減の122件となった。2023年には、約100のファンドがベトナムのスタートアップ企業に投資しており、シンガポールからの投資家が最も多く、その次にベトナムの投資家が続いている。
NICとDo Venturesは、ベトナムが近年、テクノロジー投資の魅力的な目的地として浮上していると評価している。これは、2022年と2023年の2年間連続で東南アジアで最も高いデジタル経済成長を遂げたことが背景にある。世界的なベンチャーキャピタルの投資額が前年と比較して35%減少し、3,450億米ドルとなった一方で、ベトナムの市場は減少幅(18%)が小さく、スタートアップエコシステムが引き続き魅力的な投資先であることを示している。
スタートアップエコシステム
Startup Blinkによると、グローバルスタートアップエコシステムに関するデータを提供するプラットフォーム、「スタートアップエコシステム指標」は、スタートアップの数、投資額、技術インフラ、政府およびコミュニティからの支援といった要素を用い評価される。この指標は、スタートアップの成長を支援する国の活気や潜在力を示している。このランキングでは、ベトナムはアジア太平洋地域で12位、世界で56位に位置しており、ベトナムのスタートアップエコシステムの着実な成長を示している。
具体的には、2024年のグローバルスタートアップエコシステム指標ランキングで、ベトナムの順位は58位(2023年)から56位に2ランク上昇した。東南アジア地域では、ベトナムはスタートアップエコシステム指標で5位を維持している。また、ベトナムは世界でスタートアップの数が31位に位置し、1人当たりの平均所得が1,036~4,045米ドルの中低所得国グループで2位にランクインしている(世界銀行による)。
さらに、Startup Blinkによれば、ダナン市は初めてグローバルスタートアップエコシステム指標のトップ1,000都市に入り、896位にランクインした。また、ホーチミン市は111位、ハノイは157位にランクインしている。東南アジアでは、ホーチミン市が6位、ハノイが7位を維持し、ダナンは22位に位置している。ホーチミン市とハノイは東南アジアでそれぞれ2位と7位にランクインし、ブロックチェーン分野におけるスタートアップのグローバルトップ100に入っている。特に、ホーチミン市は金融テクノロジー(54位)、教育テクノロジー(62位)、電子商取引&小売(71位)、輸送(87位)の4つの産業で世界のトップ100都市にランクインしている。
2021年、ベトナム科学技術省は、国内のスタートアップエコシステムを構築する数百の組織、機関、企業を掲載した、ベトナムの革新的スタートアップエコシステムの地図を発表した。
地図の中心には、過去数年間で顕著な成長を遂げた30の代表的な企業が含まれている。スタートアップ支援団体は、(i) 資金源、(ii) スタートアップ支援、(iii) サービス提供、(iv) ネットワーク、(v) 人材の5つのグループに分けられている。
ベトナムにおけるスタートアップ企業のトレンド
NICによると、ベトナムはブロックチェーン、AI、メタバース、ヘルステック、フィンテック、エドテックなどの多くの新技術分野において、世界の中でも競争力を持っている。これを裏付けるデータとして、2021年にベトナムのスタートアップに投入された資金は、東南アジア全体の投資額の13%を占め、2020年の8%から増加し、インドネシアとシンガポールに次ぐ3位となっている。
アジア開発銀行によると、フィンテックと電子商取引は引き続き投資資金を最も多く集める業界であり、オンラインゲーム(ゲーミング)産業が3位に浮上した。
NICおよびDo Venturesによるレポートでも、新型コロナウイルス(Covid-19)感染症拡大が一部の新興産業における取引量の急増を引き起こし、それがこれらの分野における投資額の飛躍的な成長につながったことが報告されている。その新興産業には、主にフィンテック、電子商取引、ヘルステック、エドテック、ブロックチェーン、AI、メタバースなどが含まれる。
ベトナム政府の政策
ベトナムのスタートアップエコシステムの発展を目指し、ベトナム政府は多くの政策を制定し、スタートアップ企業を支援している。
2016年、ベトナム首相は決定 No.844/QD-TTg(2016年5月18日付)を承認した。このプロジェクトは、2025年までに国家のイノベーションスタートアップエコシステムを支援し、2020年までにスタートアップに関する法制度と国家の電子情報ポータルを整備することを目的としている。また、200社のスタートアップを支援・資金提供する予定であり、プロジェクトの実施資金は複数の資源から確保される。さらに、財務省の通知45/2019/TT-BTCにより、スタートアップ企業に対する資金支援の財務管理に関する詳細な規定が定められている。
中小企業向けのスタートアップ支援を目指し、ベトナム政府は、スタートアップ中小企業への投資を詳細に指導する政令38/2018/ND-CP(2018年3月11日付)を公布した。また、国家主催の研修に参加する際の費用支援や、スタートアップ中小企業の投資家を支援するために、政令04/2017/QH14(2017年12月6日付)が制定され、政令80/2021/ND-CP(2021年8月26日付)では手続き相談、研修費用、技術、融資に関する支援がさらに具体的に規定されている。
また、ベトナム政府は、若者のスタートアップ支援を目的とし、2022年から2030年の間、2段階で行われる「若者スタートアップ支援プログラム」を承認する決定897/QD-TTg(2022年7月26日付)を公布した。第1段階は2022年から2025年、第2段階は2026年から2030年までとなっている。
さらに、スタートアップ企業向けの科学技術を発展させるため、政府は技術移転法の施行に関する詳細を定めた政令76/2018/ND-CP(2018年5月15日付)を公布した。この法律により、免税措置が適用される科学技術開発基金を利用してスタートアップ企業に投資し、外国からの投資を呼び込み、コミュニティからの資金調達やピアツーピア融資(P2P Lending)の促進、そしてベトナム国内の投資家ネットワークの維持を目指している。
ベトナムにおけるテクノロジースタートアップ市場の潜在力
フィンテック、電子商取引、エドテック、ヘルステックは、ベトナムで最も多くの投資家を引き付けている4つのテクノロジースタートアップ分野である。以下では、これら4つの分野におけるベトナムの強みを分析し、革新的なテクノロジースタートアップの急激な成長を促進する要因を探る。
一般的な潜在力
本章ではベトナムのポテンシャルについて解説する。
ベトナムの経済成長
ベトナム政府の通信サイトによると、2023年のGDP成長率は5.05%となり、目標を下回ったものの、世界の中では高い水準であった。経済規模は4300億ドルに達し、中所得国の仲間入りを果たした。インフレーションは抑制され、消費者物価指数(CPI)は年間平均で3.25%上昇した。通貨と外国為替市場は安定した。
2024年の初頭には、社会経済状況は引き続き回復しており、マクロ経済は安定している。2024年第一四半期のGDP成長率は5.66%に達し、2020年から2023年の中で最も高い水準である。消費者物価指数は前年同期比で3.93%上昇した。ベトナム政府は、成長を促進しつつマクロ経済の安定を維持し、インフレを管理し、経済のバランスを確保することに重点を置くと強調している。
デジタルインフラの発展
ベトナム情報通信省によると、移動通信ブロードバンドインフラはベトナム全土の99.73%の村にカバーされており、ベトナムの約2000万世帯が光ファイバーと接続し、全ベトナム世帯の72%以上に相当する。光ファイバーはすべての村や町、学校に展開されている。ベトナムには現在9,400万以上のスマートフォン契約者がいる。モバイルブロードバンド契約者は8,200万人に達し、これは人口の74%以上に相当する。さらに、4Gのカバー率は99.8%であり、高所得国の平均カバー率(99.4%)を上回っている。
ベトナムインターネットセンターによると、ベトナムには現在56万4千以上の「.vn」ドメインがあり、ASEANで2位、アジア太平洋地域でトップ10に入っている。ベトナムは、最新のインターネットプロトコルIPv6の導入率で57.6%に達し、2022年同期比で7.6%増加し、世界平均の1.6倍、ASEAN平均の1.7倍に相当する。ベトナムは、このIPv6の導入率で米国を超え、世界トップ10に入り、ASEAN(東南アジア諸国連合)内で2位、アジア全体では3位に位置している。このランキングは、国や地域ごとにIPv6(インターネットプロトコルバージョン6)の普及率を比較したもので、インターネットの先進性や技術導入の進展を示している。
ベトナム政府は、2025年までにインターネットがさらに広がり、速く、安全になると発表した。目標は、「2025年までにASEAN地域をリードする先進的なデジタルインフラを構築し、2030年までに5Gモバイルネットワークを全国にカバーし、すべての市民が低コストでブロードバンドインターネットにアクセスできるようにすること」である。
高いインターネット利用率
モバイル業界におけるデータや分析を提供する世界的な組織であるGSMAインテリジェンスの報告書によると、2023年のベトナムの人口は9853万人に達し、そのうちインターネットユーザーは7793万人、人口全体に占めるインターネット利用率は79.1%に達した。これは2022年から530万人(7.3%)の増加であり、ベトナムは世界で12番目にインターネットユーザーが多い国となっている。
ベトナムには7000万人のソーシャルメディアユーザーがおり、2023年にはベトナムのインターネットユーザーの89.8%が少なくとも1つのソーシャルメディアプラットフォームを使用していた。ソーシャルメディアの普及は引き続き拡大しており、その成長は今後も止まる気配がない。
各分野におけるポテンシャル
本章ではフィンテック、電子商取引、エドテック、ヘルステックの各分野のポテンシャルについて解説する。
フィンテック分野
金融安定理事会(FSB)の定義によると、フィンテック(Fintech)は技術のサポートを基盤とした金融革新であり、重要な市場や金融機関に対して新しいビジネスモデル、プロセス、アプリケーション、製品を生み出すことを目的としている。別の言い方をすると、フィンテックとは、革新的で現代的な技術を金融分野に適用し、従来の金融サービスに比べて透明性が高く、効率的で、便利な金融ソリューションやサービスを顧客に提供するものである。
前述の通り、フィンテックはベトナムで多くの投資家を引き付けている分野の一つであり、ここではベトナム市場におけるフィンテックのポテンシャルを示す。
ベトナムのフィンテック・エコシステム
Fintech In Asean Reportによると、ベトナムのフィンテック企業は2015年の39社から2020年には115社、そして2022年には260社に増加した。2017年から2020年にかけて、ベトナムのフィンテック分野のスタートアップ企業は179%の増加を示した。フィンテック分野の大手ベンチャーキャピタルであるNextransによると、2022年末時点でベトナムのフィンテック企業のうち、81社が決済サービス、42社がP2Pレンディング、31社がブロックチェーン/クリプトの分野で活動している。ベトナムのフィンテック企業は、電子ウォレット決済とP2Pレンディングの2つの分野に集中している。
ベトナム国家銀行のデータによると、2022年の現金を使わない決済取引件数は86%増加し、取引額は31.39%増加した。世界銀行の分析によれば、2022年にベトナム人口の約48%がオンラインショッピングのためにデジタル決済を利用しており、この数字は2017年の15%から大幅に増加している。Visaの調査によると、65%のベトナム人顧客がカードよりも少額の現金を持ち、76%が電子ウォレットを利用しており、カードの使用率が現金の使用率(82%)を上回っている。毎週少なくとも一度は80%以上の人がカード、QRコード、電子ウォレットで決済している。これにより、ベトナムはデジタル決済への適応が速い市場であることが分かる。
P2Pレンディングは、デジタル技術を利用して、金融機関を介さずに借り手と貸し手を直接つなぐ仕組みであり、ベトナム国家銀行によって定義されている。このデジタル技術の活用により、借入や融資の手続きが簡略化され、時間を節約できる。ベトナム国家銀行のデータによれば、2020年までに市場で480万人以上がP2Pプラットフォームを通じて融資を申請し、93兆ベトナムドン以上が融資された。P2Pレンディングは主にハノイとホーチミン市の2つの都市で利用されている。
銀行との強力な連携
ベトナム国家銀行によると、フィンテック企業と銀行の提携はベトナムで主要なトレンドとなっており、フィンテック企業の90%以上が銀行と提携している。決済分野のフィンテック企業はすべて銀行と提携しており、他の分野でも、フィンテック企業と銀行がそれぞれの強みを生かしながら緊密に協力し、より質の高い製品やサービスを提供し、コストを削減している。たとえば、現在、顧客は銀行に直接行かなくてもインターネットやモバイルデバイスを通じて多くの銀行サービスを利用できる。
フィンテック分野のスタートアップ企業が銀行と連携することで、大手パートナーに革新的なソリューションを提供し、スタートアップ企業の信頼性を高める機会を得られる。
高い投資誘致
UOB銀行、PwCシンガポール監査法人、フィンテックシンガポール協会の2021年の報告によると、ベトナムはASEAN地域でフィンテック資金調達額で第3位にランクインしている。ベトナム市場では、フィンテック企業への資金調達額が3億8,800万米ドルに達し、東南アジア全体の167件の取引の約10分の1を占めている。
この報告は、ベトナムがインドネシアやシンガポールに次ぐスタートアップの中心地として浮上していることを示している。ベトナムは活発な起業環境を持ち、フィンテック、電子商取引、企業ソリューションなどの分野に多くの企業家が参入している。東南アジア6市場で活動する50のベンチャーキャピタルを対象としたDo Venturesの調査によると、ベトナムは今後、教育、医療、金融サービスなどの新興分野で投資先として引き続き注目されている。
以上、フィンテック分野への投資誘致環境が整い、フィンテック分野のスタートアップ企業が最大限に成長できる土壌が整っていることが水津される。
電子商取引分野
世界貿易機関(WTO)によると、電子商取引とは、インターネット上で製品の製造、広告、販売、配送を行い、デジタル情報やインターネットを介して実物の製品を取引することである。つまり、電子商取引は、インターネット上のビジネス環境と電子的手段を通じて、グループや個人間で取引が行われることを意味する。ベトナムでは、電子商取引には次のような発展上の利点が以下がある。
電子商取引市場の急速な発展
ベトナム商工省(MOIT)の電子商取引・デジタル経済局によれば、2018年のベトナムのB2C電子商取引の売上は約80億米ドルであったが、2019年には100億米ドルを超え、2020年には118億米ドル、2023年には205億米ドルに達した。B2C電子商取引の売上比率は、国内全体の小売売上高および消費サービス収益の約7.8〜8%を占めている。
この成長率により、ベトナムはeMarketerによって世界で最も成長の速い電子商取引市場トップ5にランクされ、経済成長を促進し、企業のデジタルトランスフォーメーションを主導する要因となっている。(eMarketerは、ベトナムの主要なデジタルマーケティングソリューション企業であり、15年以上の広告業界の経験を持ち、2,000社以上の顧客を有する)。
消費者のオンラインショッピングトレンド
ベトナム財政アカデミーの電子商取引に関する調査によれば、一人当たりのオンラインショッピング件数およびその取引額は年々増加している。
ベトナム財政アカデミーの電子商取引に関する研究によれば、一人当たりのオンラインショッピング件数およびその取引額は年々増加している。
2024年4月に発行されたKirin Capitalの「電子商取引市場 – ショッピングとエンターテインメントの時代」レポートによると、ベトナムの顧客の50%がオンラインショッピングを好んでおり、従来のショッピングチャネルを好むのは30%に過ぎない。これは、ベトナムの電子商取引産業の急速な発展を示している。
統計によると、オンラインショッピングをする消費者の61%は電子商取引プラットフォームを利用し、55%はFacebook、Instagram、ZaloなどのSNSを通じて、34%は電子商取引ウェブサイトを利用している。特に、オンラインショッピングの91%が携帯電話で行われており、デスクトップやラップトップを使用する割合は、2022年の46%から2023年には18%に減少した。これらのデータは、携帯電話でのオンラインショッピングアプリの使用が急速に普及していることを示している。
ベトナムの2023年の電子商取引白書によれば、現在、オンラインで最も購入されている商品は主に衣類、靴、化粧品であり、オンライン利用者の63%がこれらを購入している。次いで家庭用品(53%)、家電・電子機器(39%)が続く。
これらのデータから、ベトナム人が必要な家庭用品をオンラインで購入する傾向が強まっていることがわかる。この成長により、電子商取引市場は中小企業やスタートアップ企業にとっても魅力的な市場であり続けている。
Eロジスティックシステムの発展
2020年と2021年は、世界経済全体およびベトナム経済にとって非常に厳しい時期であった。新型コロナウイルス(Covid-19)感染症の拡大とその複雑な展開が従来の物流活動に大きな影響を与えた。しかし、新型コロナウイルス(Covid-19)感染症拡大は、ベトナムの物流業界のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、それに伴う電子商取引の急速な発展がEロジスティック市場を活性化させることに繋がった。
ベトナム商工省の2020年の物流報告書によれば、市場の物流サービスプロバイダーは、主に貨物輸送、倉庫管理、宅配便、通関手続きなどの17種類の物流サービスを提供している。50〜60%の企業が規模やサービスの特性に応じて、さまざまな技術を採用している。多くの企業は、傾向を把握し、倉庫や物流センターに投資し、輸送、注文履行、配送などのサービスを提供している。
オンラインで取引される商品量の増加により、輸送、物流、配送の需要が急増している。商工省によれば、Giao hàng nhanh社の取扱注文数は2015年から2020年の間に年平均45%増加した。
世界有数の統合物流サービスプロバイダーであるAgilityの「2021年新興市場物流指数」によると、ベトナムは世界で8番目に急成長している物流市場にランクインしている。これにより、ベトナムは電子商取引と連動して物流市場を活用し、重要な役割を果たしていることがわかる。発展を続ける物流基盤は、電子商取引分野のスタートアップ企業にとって重要なサポート要素となっている。
Edtech分野
ベトナム科学技術省によると、Edtech(教育技術)は、従来の書籍での学習をデジタル形式に変換する概念である。主な違いは、技術革新によって知識の伝達方法が改善され、より効果的な教育が可能になることである。要するに、Edtechは教育にテクノロジーを統合し、より良い教育体験を構築し、学習成果を向上させるプロセスである。
Edtechは、アニメーション、音声、ライブビデオなどのマルチメディアを通じて、多様な学習スタイルに対応することができる。Edtechがベトナムで多くのスタートアップを惹きつけている理由は、デジタルインフラの整備と教育への高い支出、オンライン学習の需要増加、政府の支援、そして市場成長の予測である。これにより、Edtech分野での革新が進み、スタートアップにとって魅力的な環境が整っている。
高い成長率
ResearchAndMarketsとStatistaの市場調査レポートによると、ベトナムのEdtech市場規模は2023年に約10億ドルに達し、今後年間成長率約20%で拡大すると予測されている。2025年までに市場規模は15億〜20億ドルに達し、オンライン学習ソリューションの需要が増加すると見込まれている。
市場動向を評価するためのデータと分析プラットフォームを提供するTracxn Technologiesによると、2023年までにベトナムには300社以上のEdTech企業が存在し、そのほとんどがスタートアップであり、昨年と比べて200社増加するとのことである。
Edtech 2024年ホワイトペーパーによると、ベトナムは世界で最も急成長しているEdtech市場のトップ10に位置し、東南アジア地域では3位にランクされ、この地域全体のEdtech企業の20%を占めている。2024年には1人当たりの平均収益(ARPU)は約42.69ドルであり、2029年にはユーザー数が1,180万人に達すると予測されている。
教育費の増加
ベトナムは、世界で最も高い教育費を支出している国の一つである。Bain & Companyによると、ベトナムの家庭は平均して可処分所得の約20%を子供の教育に費やしており、これは他の東南アジア諸国の6〜15%に比べて非常に高く、マレーシアに次ぐ高水準である。
ベトナム統計総局によると、教育への年間支出は10年間で2.3倍に増加し、2021年には子供1人当たり730万ドンに達した。ベトナム国家教育科学研究所(VNIES)の報告書によれば、ベトナムは2011年から2020年にかけてGDPの4.9%を教育に費やしており、この割合はカンボジア、シンガポール、ラオスなどの近隣諸国を上回っている。
FinnGroupによると、子供の学習への投資は、将来の成功のための最良の機会を提供するため、ベトナムの家庭にとって最優先事項の一つである。家計の節約が必要な場合でも、多くの家庭は教育費を削減せず、都市部の優れた教育環境を求めて引っ越す家族も少なくない。
これにより、ベトナムの親は子供の教育の質に特に関心を持っており、教育への投資は将来に向けた確実な投資とみなされていることがわかる。そのため、Edtech分野は、ベトナムのスタートアップ企業にとって、大きな成長の可能性がある市場である。
投資誘致の状況
ベトナムのEdtechスタートアップ企業は、国内外のベンチャーキャピタルからの注目を集めている。これらの企業は、オンライン教育市場とデジタルトランスフォーメーションに新しいビジネスモデルを提供している。
Nextransによると、2022年にはベトナムのEdtechスタートアップ企業は8件の投資を受け、総額4,680万ドルを調達した。中でも、英語教育スタートアップのEdupiaが1,400万ドルの投資を受けた案件が際立っている。2022年の投資額は、2021年のピーク(1億5,800万ドル)よりも少ないが、2019年や2020年と比べて依然として高い水準を維持している。
2023年には、この分野での投資案件が再び増加傾向にある。たとえば、ベトナム教育グループのEQuestは、2023年5月に1億2,000万ドルの資金を調達し、プログラミング教育企業のMindXは2023年4月に1,500万ドルを調達した。さらに、子供向けの教育技術企業Tekyは500万ドルの資金を調達し、学習教材プラットフォームのVuihocも600万ドルを調達している。これらの事例は、新型コロナウイルス(Covid-19)感染症拡大後の新たなスタートアップ世代が急速に成長していることを示している。
Healthtech分野
Healthtech(医療技術)は医療やヘルスケア分野で使用されるさまざまな技術を指す用語であり、医療機関の管理システム、健康相談アプリ、遠隔医療、AIによる病気の診断、健康を監視するスマートウォッチなどが含まれる。Healthtechは人々の健康の質を向上させるための手段となり、特に都市部以外の人々に医療サービスを提供し、ベトナムの医療機関の過負荷問題を解決する役割を果たしている。このため、Healthtechはベトナムのスタートアップ企業が注目する分野の一つとなっている。
デジタルヘルス市場の成長
デジタルヘルスとは、健康やヘルスケアを改善するために使用されるすべてのデジタルソリューションを指す広範な概念であり、その中でHealthtechは、医療システムやヘルスケアに特化した技術ソリューションの開発に焦点を当てている。
Statistaのデータによれば、ベトナムのデジタルヘルス市場の売上高は2023年に7億8853万米ドルに達し、2023年から2029年の年間成長率(CAGR)は11.01%で、2029年には14億7500万米ドルに達すると予測されている。
Ken Researchによると、ベトナムのHealthtech市場は、人口の増加と科学技術の進歩により、今後さらに成長する可能性があるとされている。
デジタルヘルスの成長が続く中、ベトナムの医療市場はHealthtech分野のスタートアップにとって参入のポテンシャルがある。
ヘルスケア支出の増加
ベトナムの市場調査およびコンサルティング会社であるVIRACの報告書によると、ベトナムにおけるヘルスケア製品および医療サービスへの支出は、2011年から2021年のCAGRが11%であり、収入の増加と政府の医療政策の恩恵を受けて年々成長している。現在、ベトナムのGDPに占めるヘルスケア支出の割合は、東南アジア地域でカンボジアに次いで2位に位置している。
増加するヘルスケア需要は、ベトナムの公的セクターが主導する医療システムに対する財政的および能力面での大きな課題を提起している。ベトナムの病院の84%は公立病院であり、中央、省、郡、医療ステーションの4つの行政レベルに分類されている。
ベトナム保健省の統計によると、ベトナム国民1人当たりの病院外来受診回数は、2010年の1.89回から2020年には2.95回に増加した。しかし、ベトナムの受診回数は、タイ(3.5回/年)、中国(4.9回/年)、日本(12.2回/年)などの地域諸国に比べて依然として低い。
ベトナムでは、ヘルスケア需要の増加や医療システムの過負荷という課題があり、Healthtech企業には、これに応えるためのデジタル医療や遠隔医療の導入が期待されている。また、医療支出の増加と投資拡大により、成長の余地が大きいとされているため、多くの可能性が残されている。
投資誘致の状況
国立イノベーションセンター(NIC)とDo Venturesの報告書によると、2023年、ベトナムのHealthtechスタートアップ企業は1億8400万米ドルの資金を調達しており、前年より391%増加している。この分野は、2022年のフィンテック分野を超えて、最も多くの投資を集めた分野となった。
2023年には、多くの医療技術スタートアップが数千万ドルの資金を調達することに成功しており、世界の資金調達市場が停滞している中で成長を続けている。特に、卸売薬のスタートアップであるBuymedがシリーズBフェーズで5100万米ドルを調達し、遺伝子検査技術企業Gene SolutionsがMekong Capitalから2100万米ドルの資金を調達している。
DealStreetAsiaによると、2023年の世界的な資金調達市場の停滞にもかかわらず、東南アジアのHealthtechスタートアップは60件の取引で5億8000万米ドルを調達しており、ベトナムはシンガポール、インドネシアに次いで投資金額で3位となる。
Do Venturesは、ベトナムには有望な医療技術スタートアップ企業が多く存在しており、市場はまだ初期段階にあると評価している。
ベトナムにおけるテクノロジースタートアップ市場の課題
本章ではベトナムにおけるテクノロジースタートアップ市場の課題について解説する。
ベンチャーキャピタル投資の課題
資金調達のフェーズで分析したように、ベンチャーキャピタルは、特にリスクの高いが成長の可能性が大きいテクノロジー分野や、他の分野におけるスタートアップの発展において重要な役割を果たしている。
ベトナム科学技術省傘下のプログラムであるVietnam Silicon Valley(VSV)は、2019年時点でベトナムには約10のベンチャーキャピタルファンドが活動しており、ファンドの規模は合計1,000万USD未満であると報告している。2022年には137のベンチャーキャピタルファンドに増加したが、それでもスタートアップ企業の資金需要を満たすには不十分である。
また、ベトナム企業のベンチャーキャピタル獲得に向けた動きも低調である。主な理由は、ベンチャーキャピタルの資金がまだ一般的でないこと、またスタートアップがビジネスアイデアのプレゼンテーション方法を理解していないため、投資家を説得することが困難である点にある。さらに、革新的なアイデアを持つ企業とベンチャーキャピタルの連携を促進する支援は進んでいない。
Googleのベトナム担当国別ディレクターによると、初期段階のスタートアップがリスクの高い投資資金にアクセスするのが困難であることは、ベトナムのイノベーションエコシステムの発展に大きな障害をもたらす。そのため、初期段階のスタートアップがベンチャーキャピタルを通じて資金にアクセスできるよう支援を強化することが重要である。
高品質な人材の不足
FPT Digitalによると、ベトナムの総労働者数5,100万人のうち、IT人材の割合は1.1%に過ぎない。この割合は、米国、韓国、インドなどのテクノロジー重視の国々と比べて低い。具体的には、インドでは1.78%、韓国では2.5%、米国では4%である。
HSBCとKPMGによるレポートでは、ベトナムはアジアで最も活気のある若いスタートアップ環境を持つ国の一つであると評価されている。ベトナムのスタートアップエコシステムはまだ若い。規模に関係なく、人材不足はテクノロジースタートアップにとって大きな課題である。スタートアップは資金力が限られているため、優秀な人材を引き寄せ、維持することが難しい。
Navigos Groupの調査によれば、ベトナムのスタートアップ企業の人材需要は急増しており、53%が設立から最初の3ヶ月で採用を希望し、17%が3〜6ヶ月後に採用を希望している。特に経験豊富な専門人材の需要が再び高まっている。Navigosによると、専門人材の給与は非常に高く、スタートアップにとって彼らをリクルートし雇用し続けることは困難な課題となっている。
スタートアップ企業の増加に伴い、高品質な人材の供給は不足している。新興企業だけでなく、既存の企業も人材採用に苦労している。
法的手続きの制約
ベトナムの科学技術市場開発局長によると、ベトナムのイノベーションスタートアップエコシステムは、官民の協力を促進する多くのイニシアチブが存在し、持続的に発展している。しかし、依然としてイノベーションエコシステムの発展を阻むいくつかの障壁が存在する。
投資法、技術移転法、中小企業支援法に関連する文書は、3〜5年前から施行されているが、企業支援が実際に効果を発揮しているかどうか、またスタートアップを支援する人々への支援が十分であるかどうかが問題となっている。ベトナムの企業支援は非常に少なく、手続きや制度は複雑であるため、企業や支援者にとってあまり魅力的ではない。
Googleのベトナム国別ディレクターによると、スタートアップ企業に対する法的枠組みも不十分である。特に金融や医療分野では、手続きが複雑である。世界中で成長している新しいビジネスモデルには、ベトナムではまだ法律が対応していない。多くの国では、スタートアップには特別な制度が設けられ、不要な法的手続きを減らしている。
ベトナム司法省によると、スタートアップ企業向けの法的支援は、一般的な企業向けの法的支援と同様に行われており、焦点が定まっていない。今後、司法省はスタートアップ企業向けの法的支援を強化し、企業のニーズに応じた法律の専門家を派遣するなど、具体的な支援を行う予定である。
ベトナムの有望なテクノロジースタートアップ企業
本章では、ベトナムの有望なテクノロジースタートアップ企業について解説する。
Timo
Timoは、ベトナム初のデジタルバンキング体験を無料で提供する企業であり、簡単で便利なサービスを提供している。Timoのデジタルバンキングソリューションは、ユーザーに無料のATMカードや、Timoモバイルアプリを通じて請求書やモバイル決済を行うサービスを提供している。その他、クレジットカードや「今すぐ購入、後で支払う」オプション、ローン、さらにはパートナーが提供する投資商品や保険商品も提供している。Timoは、ベトナムの長い歴史を持つViet CapBankと提携しており、デジタル変革をリードしている。Timoは2022年1月に2,000万米ドルを調達した。
会社名 | TIMO VIETNAM JOINT STOCK COMPANY |
設立年 | 2015 |
所在地 | ホーチミン市、ベトナム |
ウェブサイト | https://timo.vn/ |
TIMA
TIMAは2015年に設立され、ベトナム初のP2P(ピアツーピア)レンディングテクノロジープラットフォームを提供する企業であり、初期投資は1,500億VNDだった。2016年6月にTIMAは、全国の顧客に対して簡単、迅速、信頼性の高い金融アドバイザーおよびファイナンス接続サービスを開始した。2018年10月、TIMAはBelt Road Capital Managementから500億VND相当のシリーズB投資フェーズで300万米ドルの投資を受けた。
現在、TIMAは1日約5,000件のローン申請があり、約800万人の登録者が94兆VND以上の資金を融資している。TIMAは2018年のVinasa主催のSao Khue Top 10や、2019年のベトナム最速成長企業Top 5など、多くの賞を受賞している。
会社名 | TIMA GROUP JOINT STOCK COMPANY |
設立年 | 2015 |
所在地 | ハノイ、ベトナム |
ウェブサイト | https://tima.vn/ |
Loship
Loshipは、1時間以内のデリバリーサービスを提供するベトナムのフードデリバリーおよびEコマース企業である。Loshipは現在、フードデリバリー、オンラインショッピング、スーパー、ライドシェア、ペット用品購入など、11のサービスを提供している。Loshipは8万以上のドライバーと25万の店舗パートナーを持ち、ベトナムの12都市で400万人近くの顧客を抱えている。2015年にLoshipはGolden GateとDesignOneから100万米ドルの資金調達を行い、2021年にはPre-Series Cフェーズで1,200万米ドルを調達した。
会社名 | Công Ty Cổ Phần Lozi Việt Nam |
設立年 | 2017 |
所在地 | Thành phố Hồ Chí Minh, Việt Nam |
ウェブサイト | https://loship.vn/ |
Coolmate
Coolmateは、D2C(Direct-to-Consumer)モデルを採用した男性向けファッションブランドであり、オンラインプラットフォームを通じて商品を販売している。
2020年1月に500 Startupsから15万米ドル、2021年2月にSTICから50万米ドルを調達した。2022年にはAccess VenturesなどからシリーズAフェーズで200万米ドル、GSR Venturesから230万米ドルを調達した。CoolmateはForbes Asia 100 To Watch 2023にも選出され、2023年の売上は3630億VNDに達した。
会社名 | FASTECH ASIA LIMITED COMPANY |
設立年 | 2019 |
所在地 | ハノイ、ベトナム |
ウェブサイト | https://www.coolmate.me/ |
Teky
Tekyは、4歳から18歳までの子供を対象に、アメリカ標準のSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育プログラムを提供するイノベーション教育企業であり、2016年に設立された。Tekyで教えられている主な科目には、プログラミングとアプリケーション開発、ロボティクス工学、3D技術、マルチメディアなどが含まれている。
2017年3月、Tekyはオーストラリア政府が2000のプロジェクトを審査した結果、東南アジア全域で社会的影響力がある10のプロジェクトの1つに選ばれ、ベトナムから唯一のプロジェクトとなった。2019年12月、Tekyは世界経済フォーラム(WEF)により、スイスのダボスで開催された経済フォーラムで、グローバル教育モデルとして選ばれた。2023年5月、Tekyはシンガポールの投資ファンドSweef Capitalから500万米ドルの資金調達に成功した。
会社名 | TEKY ALPHA HOLDINGS JOINT STOCK COMPANY |
設立年 | 2020 |
所在地 | ハノイ、ベトナム |
ウェブサイト | https://teky.edu.vn/ |
MindX
MindXは、シリコンバレーのハイテク技術拠点を模倣した技術トレーニングセンターのシステムであり、小学校から大学までの一貫教育プログラムを提供している。正式に設立される前の2015年から、Mindは無料のプログラミングクラスを開催していた。現在、MindXはベトナム全土に40以上の拠点を展開し、約40,000人の学生、社会人を対象にトレーニングを行っている。
2021年、MindXはシリーズAの資金調達フェーズで、ベンチャーキャピタルWavemaker Partnersから300万米ドル以上を調達した。2023年4月には、シンガポールの投資ファンドKaizenvestからシリーズBフェーズで1,500万米ドルを調達し、これまでの総調達額は1,850万米ドルに達している。
会社名 | MINDX TECHNOLOGY SCHOOL JOINT STOCK COMPANY |
設立年 | 2022 |
所在地 | ハノイ、ベトナム |
ウェブサイト | https://mindx.edu.vn/ |
Gene Solutions
Gene Solutionsは、アメリカで教育を受けたベトナム人科学者によって2017年に設立され、技術を活用して遺伝子検査をベトナムの人々に近づけることを目的としている。現在、Gene Solutionsはベトナムにおける遺伝子解析のリーディングカンパニーであり、遺伝子検査の研究、開発、応用を専門としている。遺伝子検査は、スクリーニングや病気の診断、遺伝子に関連する治療方針の策定に役立てられている。Gene Solutionsは、世界的な癌治療の提供を目指しており、彼らのプロジェクトの一つは細胞療法による癌治療であり、2028年に商業化を予定している。
2023年9月、Gene SolutionsはMekong Capitalが主導するシリーズBフェーズで2,100万米ドルを調達した。以前、Mekong CapitalはGene Solutionsに1,500万米ドルを投資している。
会社名 | Gene Solutions Joint Stock Company |
設立年 | 2017 |
所在地 | ホーチミン市、ベトナム |
ウェブサイト | https://genesolutions.vn/ |
Medigo
Medigoは、ホーチミン市で初めて24時間365日対応の薬剤師による相談付き薬の即時配送サービスを提供するアプリケーションである。このアプリは、GPP(Good Pharmacy Practice)基準を満たした信頼できる薬局と提携している。ユーザーは薬を購入したい場合、配送先を選ぶだけでシステムが最適かつ最寄りの薬局を探し、薬剤師が丁寧に電話で相談を行う。その後、薬を確定すると、すぐに届けられる。
2019年から現在までに、Medigoは50万人以上のユーザーを獲得し、ハノイ、ダナン、ホーチミン市で約1,000の薬局パートナーを持ち、2023年にはビンズオン、ブンタウ、ハイフォンなど他の都市へも拡大を開始する予定である。
2023年3月、MedigoはEast Venturesの主導により、Pavilion CapitalおよびTouchstone Partnersの参加を得て、200万米ドルの資金調達に成功した。この資金を活用し、Medigoはリモートドクター相談、24時間薬配送サービス、在宅検査など、ヘルスケアエコシステムのさらなる発展に注力する予定である。
会社名 | MEDIGO SOFTWARE COMPANY LIMITED |
設立年 | 2019 |
所在地 | ホーチミン市、ベトナム |
ウェブサイト | https://www.medigoapp.com/ |
まとめ
ベトナムのスタートアップ市場は、テクノロジーを基盤とした革新的な発展モデルにより、国内外の投資家にとって非常に魅力的な潜在力を持っている。特に、Fintech、電子商取引、Edtech、Healthtechといった分野は、急速に成長しており、今後も引き続き投資の対象となることが期待される。
ベトナム政府のスタートアップ支援政策も、投資環境の改善に大きく寄与しており、企業に対する支援やインフラ整備が進んでいる。政府のこうした支援により、特にテクノロジー分野のスタートアップは、資金調達や成長のチャンスを拡大させている。
さらに、日本企業を含む海外の投資家がベトナム市場に投資することで、資金不足という課題が解決されるだけでなく、技術移転や人材育成の支援も可能となる。これにより、ベトナムのスタートアップは、グローバルな視点を持った革新的なプロジェクトを展開し、さらなる成長が期待できる。
結論として、ベトナムのスタートアップ市場は、引き続き海外投資家にとって有望な投資先であり、今後もその発展が注目される。
【関連記事】ベトナムのM&A動向については、こちらの記事も合わせてご覧ください。