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ベトナムの洋上風力発電|最新の動向と市場展望

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はじめに

ベトナムの洋上風力発電が発展するポテンシャルは高く、将来的には、外国投資家にとっては大きなビジネスチャンスとなりえる。しかし、事前の調査から運転開始に至るまで、法的な規定が不明確であったりし、外資系企業が直ぐに参入するにはまだリスクが高い。市場の動向とベトナム政府の政策の変更を注視し、適切な参入戦略を立てることが重要となる。

ベトナムの洋上風力発電のポテンシャル

ベトナムは2021年のCOP26において、2050年までにネットゼロを達成することを宣言し、再生可能エネルギーの導入を加速している。その中でも、洋上風力発電は特に注目されている。ベトナムの海域は、洋上風力発電に理想的な条件を備えており、そのポテンシャルは非常に大きいとされている。

ベトナムの洋上風力発電の潜在能力は約600 GWと推定されており、内訳としては、技術的に可能な固定式洋上風力発電が261 GW、浮体式洋上風力発電が338 GWとされている。特に、いくつかの地域では年間平均風速が10 m/sを超えることが確認されており、高い発電効率が期待されている。

ベトナム政府は、洋上風力発電を含む海洋エネルギーの開発を戦略的に進めている。特に、2018年10月22日に採択された第十二期党中央委員会第8回会議の決議第36号-NQ/TWでは、2030年までの持続可能な海洋経済発展戦略と2045年までのビジョンが示されている。この決議では、洋上風力発電の発展が経済発展の原動力として位置づけられている。

2021年に世界銀行が発表したベトナムの洋上風力発電ロードマップ報告書によると、良好なシナリオでは、2050年までに洋上風力発電の発電容量を70GWにまで発展させることができ、洋上風力産業で成功した国家として、ベトナムが世界で5位(中国、米国、インド、日本に次ぐ)にランクインできるとされている。

ベトナム洋上風力発電の開発状況

現在、ベトナムには運用中の洋上風力発電プロジェクトはない。2023年3月時点で、風力測定の許可を得たプロジェクトは2件ある。TLW Binh Thuanは2,700平方キロメートルで風力測定と総合調査を行っており、Ben Treは36平方メートルで風力測定のみを行っている。さらに、41件のプロジェクトが洋上風力エネルギー調査の許可申請を提出したが、まだ承認はされていない。

第8次国家電力開発基本計画(PDP8)によれば、2030年までに洋上風力発電の容量は6,000MWに達し、2050年までに70,000MW~91,000MWに達する予定である。PDP8には96件の洋上風力発電プロジェクトがリストアップされている。

No案件数総設備容量 (MW)
1Quang Ninh26,000
2Hai Phong16,200
3Thai Binh3,700
4Nam Dinh12,000
5Thanh Hoa5,000
6Ha Tinh1,050
7Quang Binh4,109
8Quang Tri3,600
9Binh Dinh8,600
10Phu Yen850
11Ninh Thuan1425,802
12Binh Thuan1030,200
13Ba Ria – Vung Tau63,760
14Tra Vinh710,300
15Soc Trang4,900
16Ben Tre5,255
17Bac Lieu105,255
18Ca Mau68,055
合計96156,286

2024年7月時点で、ベトナムには投資、或いは試験的投資が行われている洋上風力発電プロジェクトはない。商工省によると、2024年内に国会が洋上風力発電の発展に関する一部の試験的メカニズムや政策を認可する決議を出したとしても、2030年までにそのメカニズムに従って実施される洋上風力発電プロジェクトが運用に至ることは非常に難しいと考えられる。専門家によると、洋上風力発電プロジェクトの実施には調査開始から6〜8年が必要である。現時点では、2030年まで残り6年もない。そのため、国会の決議が直ちに出されたとしても、PDP8に基づく6,000MWの洋上風力発電の目標を達成するのは難しいかもしれない。

ベトナム洋上風力発電に関する法的課題

洋上風力発電プロジェクトの実現には様々な法的な課題がある。まず、現時点で洋上風力発電に関する具体的な規定を明確にした法的文書はほとんどなく、2023年に発行された第8次国家電力開発基本計画(PDP8)において言及されているだけである。

2012年のベトナム海洋法では、再生可能エネルギーのための海域使用に関する具体的な規定がない。また、「2015年天然資源、海洋環境および島嶼に関する法律」では、洋上風力発電を含む経済開発プロジェクトの調査、研究、建設について言及されていない。さらに、2020年環境保護法では、洋上風力発電のような特定の再生可能エネルギープロジェクトについて、環境への影響を評価する具体的な規定がまだ明確にされていない。

次に、現時点で調査費用を負担する組織や個人の権限と責任に関する具体的な規定がない。PDP8における洋上風力発電プロジェクトは、総発電容量のみが記載されており、具体的な場所や投資者名は記載されていない。同様に、投資者の選定や洋上風力発電に関連する活動を実施するための海域使用に関する規定もない。国の海洋空間計画がまだ承認されておらず、電力計画の実施を難しくさせている。国防区域や航行の安全と重複する調査地域がまだ明確にされておらず、プロジェクトの実施に支障をきたしている。

また、洋上風力発電のための風力測定、地質調査、地形調査、環境への影響を評価する海域面積に関する具体的な規定がない。1つのプロジェクトに対する最大風力発電容量や調査のための予測容量に関する規定もない。また、経験や進行状況、品質に対する明確なコミットメントを持つプロジェクト開発者の選定基準も定められていない。洋上風力発電の開発が可能な潜在的な海域の面積や、輸出用の風力発電、グリーン水素の生産用海域の計画もまだ明確化されていない。

最後に、その他の課題として、外国の組織や個人による風力測定、地質調査、地形調査の実施許可に関する解釈が関連機関で統一されていない。調査、観測、評価の承認を得るための書類、手続き、処理時間に関する具体的な規定がない。また、風力測定、観測、地質調査、地形調査、環境への影響を評価・承認するための審査、承認にかかる期間に関する規定もない。最後に、調査結果の報告内容や報告書を承認機関に送付する時期についての規定もまだ明確ではない。

売電単価の見通し

ベトナム政府は国内の風力発電と太陽光発電への投資を促進するために、2 度にわたって固定価格買

取制度(FIT)を導入、改定した。「FIT1」、「FIT2」、FIT制度に代わる暫定的な対策」の概要は

以下の通りである。

FIT1:

開始時期:2017年

適用期間: 2019年6月30日以前に商業運転開始済みの案件に対して、買取価格は、プロジェクトが稼働を開始してから20年間適用される。

FIT2:

開始時期:2020年

適用期間: 2019年7月1日~2020年12月31日の間に商業運転開始した案件に対して、買取価格は、プロジェクトが稼働を開始してから20年間適用される。

FIT制度に代わる暫定的な対策

太陽光・風力発電の 2021 年 1 月 1 日以降に商業運転開始した案件については、商工省決定 No. 21/QD-BCT に基づき、EVN と電力価格を交渉中である。

2024年6月30日時点で、電力価格交渉のための書類提出済の案件のうち、72件が価格表の上限の50%を仮価格として提案(2023年1月7日の商工省第21号決定に基づく)し、63件がEVNおよび各発電事業者は臨時価格交渉を終えて臨時電力購入契約(PPA)を締結した。その中に、洋上風力発電プロジェクトはまだないが、技術の進歩や政策の変更、競争の激化などにより、将来的には売電単価が低下する可能性があると予想される。しかし、洋上風力発電の売電単価は他の再生可能エネルギー初電源と比べると、より高い傾向にある。

現在のところ、洋上風力発電の売電単価は陸上風力発電よりも高い設定となっている。洋上風力発電市場は急成長しており、外国投資家には大きなビジネスチャンスが広がっているが、ベトナム政府の動向や国際的な市場の変化を注視し続けることが重要である。

最後に

ベトナムの洋上風力発電は、再生可能エネルギーの導入促進において重要な役割を果たすポテンシャルを秘めている。広大な海域と高い風速を活用することで、ベトナムは2050年までに世界の主要な洋上風力発電国の一つとして位置づけられる可能性がある。しかし、現段階ではプロジェクトの実施に向けた法的・技術的な課題が多く、特に法的枠組みの整備と技術的な実施体制の確立が急務である。

政府の政策が整備されるとともに、実施経験が積まれることで、これらの課題は次第に解決可能となる。外国投資家にとっては、まだ未開発の市場であるベトナムの洋上風力発電分野は、大きなビジネスチャンスを提供している。市場の成長と政策の進展に注視し、適切な戦略で取り組むことが重要である。

将来的には、技術の進歩や政策の変化が売電単価にも影響を与える可能性があるため、柔軟な対応が求められる。ベトナムの洋上風力発電市場の発展がもたらす機会と挑戦に対して、投資家は慎重かつ積極的なアプローチを維持し、持続可能なエネルギーの未来に貢献していくことが期待される。

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