ベトナムビジネス外信：最新の動向(6月第4号)

【再エネ】国家電力システム調整センター（A0）がEVNから商工省に移管

国家電力システム調整センター（A0）は1994年に設立され、国内の電力の生産、送電、配電システムの指揮を一手に引き受けている。

2018年に国家資本管理委員会が設立されて以降、A0の再編がこの機関に委ねられたが、現在までその承認および実行はなされていない。

商工省はA0を同省に移管する案を、首相に提出した。この移管は首相の指示のもと、2023年6月に実行される予定である。

A0はベトナムの電力システムの中心として位置付けられ、電力システムの運営、適切な電力源の動員、電力障害の最小化、公正で透明な競争力のある電力市場の運営、持続的で安全かつ高品質な電力供給の保証といった任務を担っている。しかしながら、過去にA0にはいくつかの問題が存在した。特に再生可能エネルギーの動員に関して課題があり、競争力のある電力市場の形成が長らく進展していない。

もしA0が商工省に移管されると、客観性はEVNに所属していた時よりも高まり、電力の動員はEVNの活動と完全に独立したものとなる。A0が商工省に移管されれば、EVNの発電所は民間企業の他の発電所と同様に運営されることになる。その結果、商工省は国内の電力供給に対する責任を負うことになるだろう。

A0を商工省に移管するという取り組みは、ベトナムが競争力のある電力市場を構築するための重要なステップとなる。

【再エネ】屋根置き太陽光発電に対する優遇政策が多く提案された

2023年6月13日、ベトナム商工省は、「住宅、オフィス、企業本部に設置される屋根型太陽光発電の開発を促進するための決定案」（Draft No. 74/BC-BCT）を発表した。この案は、住民や建築物の屋根型太陽光発電の開発に重点を置き、特に電力不足が懸念される地域に向けた政策導入を目指すものである。

当該案によれば、この電力源の開発を推進するメカニズムは、住宅、オフィス、企業本部に設置される屋根型太陽光発電システムに限定適用され、自家消費のために利用されるものとなる。これらの発電源は国内の送電ネットワークに接続せず、オフィスに設置される屋根型太陽光発電システムには予算優先配分が行われる予定である。このようなシステムを投資・利用する組織や個人は、電力事業の営業許可証や電力事業の登録証明書の手続きを免除され、各種の税金や料金を免除または減額されるとともに、規定に従って優遇金利での融資を受けることが可能となる。ベトナム商工省はこれらの優遇政策を具体的に指示する法的文書を作成する予定である。

さらに、上記特典に加えて商工省が草案で新たに提起した点は以下の通りである。

（1）屋根上太陽光発電の定義を明確化する。適用を容易にするため、草案では「屋根上太陽光発電システム」とは、「住宅、事務所、企業の本社の屋根に設置された光電パネルシステム」と明確に定義されている。

（2）各機関の責任を明確化する。提案された決定案では、省庁、地方自治体、ベトナム電力公社、投資家、屋根上太陽光発電システムの利用者の責任が明確化されている。

これらの優遇政策があれば、ベトナムは2030年までに太陽光発電の出力を推定で2,600 MW増加させるという目標の達成が可能となるであろう。

【カーボンニュートラル】ベトナムにおける炭素クレジット市場の発展

炭素クレジット取引市場は、ベトナムが将来のカーボンニュートラル（実質排出ゼロ）を達成するための重要な手段となると位置付けられている。この市場は、「汚染を引き起こす者」が自身の排出量に対する補償を支払う原則に基づき、炭素クレジットの売買や交換を通じて運営される。

現在、EUやアメリカをはじめとする先進地域が輸出入品に対して炭素関税を適用するという状況の中、近い将来には中国や日本などもそれに倣うことが予想されている。このような流れの中で、もしベトナムが炭素クレジット取引市場を構築できない場合、多くの困難に直面することとなる。しかし、同時にこれは問題であると同時に、管理機関、組織、企業が自身を改革し、研究を深め、環境に優しい解決策を採用することで排出を削減し、炭素クレジットを生成・蓄積するための対策を実施する機会でもある。

ベトナムで炭素クレジット取引市場を実現するためには、2023年に商工業、建設業、交通業、資源業などの約1,900の企業が、政府の指導に従って年度の温室効果ガス排出に関するデータや情報を提供することが求められる。そのデータを基に、炭素クレジット取引市場の構築が容易になるであろう。

【アパレル】「持続可能性」の未発達はベトナムアパレル産業の課題

税関総局のデータによれば、ベトナムのアパレル産業の輸出額は今年の上半期で126.4億ドルに達し、前年同期比で15.6％減少した。世界的な需要の低迷が続く中、ベトナムのアパレル製品輸出の売上は2022年に比べて約5％減少し、売上高は約7000億ドルになると予測されている。

一方で、アパレル製品の輸出が盛んなバングラデシュは、この需要の低迷の影響を受けていない。国際金融公社（IFC）によれば、バングラデシュは「緑化」戦略、つまり持続可能な生産の戦略を素早く取り入れていた。世界最大の持続可能な繊維工場の90％がバングラデシュに存在しているのである。

対照的に、ベトナムでは、再生可能エネルギーを活用しているアパレル工場の比率はまだ低い。繊維産業では約20％、衣料産業では約35％が再生可能エネルギーを利用しているに過ぎない。

バングラデシュの事例を挙げれば、ベトナムのアパレル産業の持続可能性がまだ不十分で、後退の危機に瀕していることが明らかとなる。このままでは、ベトナムは先進的な生産国に市場シェアを奪われ、また従来の競争力（低価格、安価な労働力、外国直接投資企業への優遇など）も徐々に失う可能性がある。したがって、持続可能な生産は、ベトナムのアパレル製品が再び市場を制覇するための必須条件となる。また、第8次国家電力開発基本計画（PDP8）による再生可能エネルギー発電能力と効率の向上は、ベトナムのアパレル産業がさらに「緑化」生産に取り組むための鍵となるだろう。

【医薬品】TikTokでの医薬品販売のポテンシャル

ここ数年にわたり、ベトナムでは多くの医薬品・化粧品・健康食品ブランド、そして大規模な病院が、TikTokを通じて自社ブランドを宣伝している。

TikTokの統計データによれば、現在ベトナムには4000万人以上（人口の41%）のTikTokユーザーが健康と美容に興味を寄せている。

ユーザーの健康意識が高まるにつれて、自己ケアに関するコンテンツへの関心も高まる傾向にある。TikTok上のハッシュタグは多種多様な健康関連のコンテンツを提供し、それぞれが比較的多くの視聴回数を記録している。

TikTokは、健康ケアについて検索したり、情報交換したり、学んだりするための新たなチャンネルとして台頭している。これは医薬品ブランドにとって、短時間動画のバイラルな力を活用し、潜在的なターゲットユーザーへのアクセスを拡大するためのプラットフォームである。これを通じて、医薬品業界のブランドはブランドイメージを構築し、創造的でユニークなコンテンツ戦略を展開することが容易になる。

また、TikTok上の広告はターゲットユーザーを直接刺激し、視聴者がウェブサイトや電子商取引プラットフォーム、あるいはブランドのランディングページにアクセスすることを促進する。

TikTokは医薬品産業にとって高い潜在能力を有するプラットフォームとして認識されている。

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