ホンダは、2030年までに電動バイクを年間350万台生産するという意欲的な計画を打ち出している。EVおよびハイブリッド分野には総額10兆円(約65億ドル)を投資し、その中核として「交換式バッテリー(swappable battery)」の普及を軸に据える。バッテリー交換によって、ユーザーの充電待機時間を短縮しつつ、車両価格も抑えられるという利点が期待されている。
同社は、インドや東南アジアなどの成長市場における圧倒的なシェアを背景に、EV分野でもリーダーシップを確立したい考えだ。特にベトナム市場では、ホンダは「King of Motorbikes」とも称される存在であり、現地法人Honda Vietnamは販売台数・サービス網・ブランド認知において圧倒的な存在感を放っている。
しかしながら、EV市場の拡大には課題も多い。現在、EVは構造上バッテリーが重く、高価であることから、価格に敏感な新興国市場では普及が進みにくいという実情がある。加えて、アジア各国では充電ステーションや交換ステーションといったインフラ整備も十分とはいえず、電動化への移行は一筋縄ではいかない。
こうした状況の中で、ホンダは製品開発だけでなく、地域ごとのエコシステム構築にも注力している。ベトナムを含むアジア諸国では、バッテリー交換拠点の整備や地場パートナーとの連携による運用モデルの確立がカギを握る。特に、配送業やデリバリーサービスを担う商用バイクの電動化を進めるには、稼働率を落とさずに運用可能なインフラ整備が必須となる。
現在、Hondaはすでに複数の電動モデルをアジア市場で投入しており、インドでは電動バイク専用工場の建設も予定している。グローバル戦略の中でもアジア市場の重要性は高く、今後は「ローカルフィット型のEVモデル」の開発とあわせて、インフラ構築やユーザー体験の改善をいかに進めるかが焦点となる。
100年の歴史を持つホンダにとって、このEVシフトは単なる技術革新ではなく、事業モデル全体を再設計するターニングポイントでもある。従来のガソリンバイクとEVの間で揺れ動く市場ニーズのなかで、ホンダがどのように新たな価値を提供していくのかが、次の100年の競争力を左右することになるだろう。
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