医療現場が止まったコロナ禍の2年間
皆さま、こんにちは。ONE-VALUE株式会社の代表のホアです
ベトナムの医療業界では、2022年から2023年にかけて、非常に動きづらい状況が続いていました。特に印象的だったのが、コロナ禍の最中に発覚した検査キットに関する不正です。価格の水増しや品質偽装といった問題が社会的に大きく報道され、多くの関係者が処分を受けるという事態になりました。
こうした出来事を受けて、病院の現場では調達活動や入札業務が著しく停滞しました。制度的に禁止されていたというよりも、担当者レベルで「今は何か進めるべきではない」という慎重な空気が広がっていたように思います。特に公立病院では、責任を問われることを恐れて新規プロジェクトを控える動きが強まり、設備更新や外部委託の話が止まってしまった、という声を複数の関係者から聞いています。
このような状況は、ベトナム全体の医療投資の流れにもブレーキをかけました。動きたくても動けない、判断ができても承認が下りない、という空気がしばらく続いていたというのが、率直な印象です。
政治の安定と公共支出の再開が医療再投資を後押し
2024年に入り、新しい書記長が就任したことで、政治的な安定感が戻ってきた印象があります。医療不正に対する処分の流れも一段落し、病院の現場でも徐々に通常業務が再開されつつあります。最近では、調達や入札が動き出したという報告も増えており、止まっていた計画がようやく前に進み始めているように感じます。
また、もう一つの大きな背景として、ベトナム政府が公共支出を増やしている点も見逃せません。特に、アメリカのトランプ政権による関税措置が再び注目されており、ベトナムの輸出には一定の下押し圧力がかかっています。それを補うため、政府としては内需主導の成長を志向し、医療や教育、インフラといった分野への投資を強化しているわけです。
病院の新棟建設や医療機器の導入、システム更新などの案件が公的資金を伴って再開されているのは、まさにこの流れの一部です。弊社にも医療分野のM&Aや投資に関するご相談が増えてきており、現場レベルでも「投資が戻ってきた」という実感があります。
このように、2022〜2023年の慎重な2年間を経て、2024年以降は医療分野での再投資が進み始めています。今は、まさに日系企業が動き出すのに良いタイミングだと考えています。
ONE-VALUE株式会社
代表取締役 Phi Hoa(フィホア)