はじめに
ベトナムではベビー用品市場の成長が見込まれている。その主な要因として、高い出生率、子育てにおけるZ世代の台頭、ECやMT販売チャネルの拡充が挙げられる。ベトナムでは消費者の間で利便性や安全性の高い製品への関心が高まり、高品質なベビー用品の需要が増加している。さらに、中間層の増加による所得水準の向上といったプラスの要因も市場の成長を後押ししている。これらの要因により、外資企業や日系企業がベトナムのベビー用品市場でのシェアを拡大しやすい環境が整っている。消費者の変化するニーズに応じた品質重視の製品を供給することで企業は有望なビジネスチャンスを掴むことができる。今回のレポートではベトナムのベビー用品市場について詳しく解説する。
ベトナムにおけるベビー用品市場の概要
本章ではベトナムにおけるベビー用品市場の概要について解説します。
市場規模
ベトナムにおけるベビー用品市場は、安定した成長と、特に外資大手企業との高い競争による大規模な市場になると考えられている。Euromonitorによると、ベトナムのベビー用品の売上は2023年に約65,807.4 Bil VNDに達し、2022年比6%の増加であった。年間成長率は、2018年から2023年の期間は3%であったが、これは主に新型コロナウィルス(Covid-19)感染症拡大後の厳しい経済状況が消費者の支出に影響を及ぼしたためである。ベビー用品産業における主な製品グループは、ベビーフード、ベビー用の化粧品、医薬品、子供服である。
市場の成長を促進する要因
ベトナムのベビー用品市場の主な成長要因として、子どもの人口規模が大きいため消費需要が高いこと、新世代の親の子育て意識や購買スタイルの変化、ECやMTチャネルを中心とした販売システムの充実などが挙げられる。
国連(UN)のデータによると、ベトナムでは毎年約156万人の子どもが生まれていると推定されている(東南アジアで最も子どものいる世帯の割合が高い国)。2023年には、ベトナムの18歳未満の子どもの数は2,600万人を超え(総人口の25%近くを占める)、そのうち5歳未満の子どもは700万人を超えている。
さらに、新しい消費者層であるZ世代 (1997年から2012年の間に生まれた人)が子育て世代に突入し、徐々に業界の主要な消費者層になりつつある。若い世代は、さまざまな情報源、特にインターネットからの情報源にアクセスする機会が多く、それに応じて育児に対する意識や知識も向上している。また、子育てをより楽に、より余裕をもって行えるように、さまざまな商品やサービスにお金を使うことを厭わない。
近年、(MT販売チャネルに属する)ベビー用品店舗チェーンは力強く拡大しており、小売チャネル全般の成長を牽引している。Wordpanel Division Household Panelがベトナムの4都市と農村部を対象に行った調査によると、2023年、ベトナムのベビー用品店舗チェーンの売上高は、2022年比で31%増加した。広範な店舗網を持つ企業は、毎年数Bil VNDの売上を達成している。最も有名なベビー用品店舗チェーンの一つがCon Cung社である。Con Cungは、地方に約700店舗のチェーンを所有しており、2025年までに店舗数を2,000店舗に増やすことを目指している。このチェーンは、①ベビー用品の原産地と品質を保証することで顧客に安心感を与える、②多くのおむつや粉ミルクブランドなどで多様な選択肢を提供する、③専門的なサービスと製品コンサルティングサービスを提供する、ことによって人気を博している。
MT店舗チェーンの発展に加え、ECチャネルもベビー用品市場で顕著な成長を記録した。Metricのベビー用品市場レポートによると、2023年第1~3四半期において、ベトナムの5大ECプラットフォーム(Shopee、Lazada、Tiki、Sendo、Tiktok shop)でのベビー用品市場の売上は、総売上高8,708億VNDに達し、2022年同期比で57%増加した。同時に、販売された商品数も5,660万点に達し、54%増加した。