はじめに
本レポートでは、ベトナムで使用されている言語、ベトナム語について解説していきます。
ベトナム語は、ベトナムの公用語であり、様々な出来事を経て確立された言語になります。例えば、ベトナム語はフランスや中国の影響を受けて変化していきました。そんな歴史や成り立ちがあります。
本レポートではベトナム語の基礎知識や成り立ち、日常会話で使えるフレーズなどを幅広く紹介します。
ベトナム語とは?
ベトナム語はベトナムの公用語です。北部、中部、南部の方言に分かれており、それぞれの地域で独自の発音や単語、表現があります。ベトナム語では、クオックグー( Quốc ngữ)と呼ばれており、Quốcは国、 ngữ は語を表し、国語として広く使用されています。ベトナムの少数民族のキン族の母語だったためキン語とも呼ばれています。またベトナム語は、日本、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フランス、中国など世界各地に移住している越僑と呼ばれる人達の間で使用されています。ベトナム語の使用人口は約一億人以上おり、話されている言語として世界で21位と言われています。
ベトナム語は、オーストロアジア語族に属しており、単音節型不変化語で、6つの声調をもつ音調言語です。ベトナム語の音節は、母音を中心に、その前に頭子音や介音、後ろには末子音、これらに加えて音節全体にかかる声調という要素から成り立っています。ベトナム語の母音の数は標準語であるハノイの方言では、単母音が11個、二重母音が3個あります。(二重母音は3つですが、現れ方は6個あります。)
ベトナム語の歴史・成り立ち
ベトナム語はもともと北部のソン・コイ川(紅河)デルタを中心に使用されており、中部・南部への発展が16世紀以降であったため、標準語とされるのは北部方言です。現在も標準語は北部の言葉とされています。「ベトナム」は漢字で「越南」の字音読みであるため越南語(えつなんご)ともいい、自称では「越(ベト)」語という言い方もしますが、かつては安南語、アンナム語とも呼ばれていました。当時15世紀頃からベトナムでは、チュノム(字喃:chữnôm)という漢字を元に作られた文字を使用していました。チュは「字」、「𡨸」と表記し「文字」を表しています。ノムは「喃」と表記され、「通俗の」を表します。つまり、「俗字」を意味していたそうです。
しかし、チュノムは漢字使用しており、画数も多く覚えるのが大変だったため、当時のベトナムでは、浸透していきませんでした。支配層、知識階級の人々が漢字・漢文を使用していたのに対し、チュノムは民衆のものとされることもありました。しかし、実際に使用をするには、漢字の知識が必要であったため、自文化意識の強い知識人達のものであったといわれている。また、当時はチュノムとは呼ばれておらず、「国語」「国音」と呼ばれていたとされる。ベトナム王朝時代のベトナム語を用いた詩「国音詩、国語詩」はチュノムで表記されていたそうです。
ベトナムで、現在使用されているベトナム語は、17世紀にフランスからベトナムにやってきた宣教師アレクサンドル・ドゥ・ロードがラテン文字を元に作ったものです。フランス語の発音、文字ルールを元に、ベトナム語の発音に文字を当てはめたものです。ベトナム語では「クオックグー( Quốc ngữ)」と言います。最初は、クオックグーも民衆には行き渡らず、カトリック教会などの限られた場所でしか使用されていませんでしたが、フランスの支配下でローマ字の教育が必要だったため、フランス語を勉強する補助的な言語として、クオックグーが使用されるようになりました。
ベトナム語の特徴
ベトナム語の特徴は声調です。また中国語とフランス語などの外国語の要素が含まれているとこが特徴です。
声調
ベトナム語の声調は6個あります。声調とは、意味を区別するための音節ごとの音の高低や音の上がり下がりのことを言います。話す時や聞く時は、音の高低などで言葉を使い分け、書く時には6つの音声記号を使用して区別します。ベトナム語を勉強する上では欠かせない要素で、一番難しい部分でもあります。最初練習するときには、 ma(マ)を使用して練習することが多いです。
・Thanh ngã (mã)ジャンプをしたような音。南部ではThanh hỏiと似ている発音になります。
・Thanh sắc(má)斜め上に上がるような音。
・Thanh ngang(ma)高低のない横に一直線の音。日本語は Thanh ngangで発音されます。
・Thanh huyền(mà)斜め下に下がるような音。
・Thanh hỏi (mả)声調記号をなぞったような音。
・Thanh nặng(mạ)急に止まるような音。
文字
ベトナムの周辺の東南アジア地域、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーはインド系の文字(ブラーフミー系文字)の影響を強く受けていますが、ベトナム語は例外的に日本語・朝鮮語・チワン語などと同様に中国語と漢字文化の影響を受けています。もともと中国の支配下で漢字(チュノム)で書かれていたものが、フランスの支配になったことでローマ字に変わり、現在のベトナム語へと変化をしていきました。このように元々ベトナム語は漢字であったため、現在でも漢越語という漢字が由来の言葉があるので日本語と似た発音が複数もあることも特徴的です。
ベトナム語の地域間での違い
ベトナム語は北部、中部、南部の3つの地方ごとに発音や言葉、表現の仕方などが異なります。最も、中部方言が音韻や語彙の差異が大きく、北部、南部とも異なります。これは歴史的要因が要因となっており、鄭氏(ハノイ)と広南阮氏(フエ)が分立をし、対抗した歴史があります。南部は18世紀以降の「新開地」として成長をしたためです。
声調の部分では、北部・南部で大きく違いがあります。例えば、北部弁は Thanh hỏi と Thanh ngã は同じ音になります。さらに南部弁のThanh nặngはハノイほど強く発音されず、少々柔らかく発音されます。このように南部弁は北部弁からみるとかなり鈍っており、日本の東京弁と大阪弁の違いに似ているようです。ベトナム人の多くは、北部弁よりも南部弁の発音が可愛いとしばしば言われています。ベトナム人の人気Youtuberがそれぞれ北部弁・中部弁・南部弁を実際に比べた動画を見るとわかりやすく、表現する単語が全く異なっていることが顕著に感じられます。
Khác biệt giọng 3 miền Bắc – Trung – Nam | VyLog này đáng iu ep.15 Khánh Vy
ベトナム語の文法の仕組み
ベトナム語の並び、文法は主語述語目的語(SVO)の英語の並びと同じです。しかし、例外も多く、修飾語が被修飾語の後ろに置かれて物事の性状を捉えて、同類のものをひとつにまとめる(汎称|はんしょう)類別し名詞の前に置くことなどとも文法上の特徴とされています。同士の後ろに結果やアスペクト、感覚、移動方向などを表す同士を組み合わせて表現をすることもあります。また、ベトナム語は英語とは異なり複数形にsをつけたり、時制の変化がありません。時制の変化は時制を表す単語を使用します。
外国語の影響
ベトナムの歴史を振り返ると中国やフランスよる侵略や支配を受け、紛争が起こっていました。ベトナムは独立してから現在まで、約80年しか経っていないのです。そのため、ベトナム語は中国語、フランス語の影響を大きく受けて、現在の文字になっています。中国文化は、ベトナムの文化と言語に強く影響を残しています。ベトナム語は漢字由来の言葉があるため、日本語の発音に似ている言葉がお多くあります。フランス文化の影響も強く、コーヒーを cà phe(カーフェー)や、電話に出る時の「もしもし」がAlô(アロー)やフランス語と同じ単語が現在でも使用されています。
日本語と似ている点
ベトナム語はしばしば日本語と似ている言葉が多くあります。その理由は、漢越語という漢字がもととなってできた言葉が多いためです。
例)
- 注意(ちゅうい)はチュウイー(Chú ý)
- 結婚(けっこん)はケッホーン(Kết hôn)
- 同意(どうい)はドンイー(Đồng ý)
上記以外にもとても多くの漢越語が存在します。同意の同はĐồngと表します。 さらに、đồngという単語には、他にも多数の意味が存在します。ベトナムの通貨、ベトナムドン(VND)のドンもđồng。また、銅という意味や複数の意見や事が合う時や複数人で一緒に何かをしたりすることに対してđồngを使用します。このようにベトナム語は、一つの言葉を多様に使用しているのも特徴の一つです。
ベトナム語の代表的なフレーズ
ベトナムに行くならこれだけは覚えておきたいベトナム語を紹介します。ベトナム語を習得するにあたり、最初に人称代名詞に慣れるのが難しいポイントだと思います。また、ベトナム語を書く際には少々複雑な文法や並びがありますが、初級・中級の会話では単語さえ入っていればパズルのように組み合わせれば特に問題はありません。は簡単な人称代名詞や簡単なベトナム語のフレーズを紹介します。
本章では、ベトナム語を話す上での必要な基礎的な知識や簡単な人称代名詞を皆さんに紹介していきたいと思います。本章で紹介する基礎知識を知っていればで旅行でのコミュニケーションが取れるかもしれません。
人称代名詞
- Tôi (トイ):私として使用されますが、少々改まった表現です。通常の会話では、下記の Em ,Anh,Chịなどを私(一人称)として頻繁に使用します。
- Em(エム):自分が年下の場合(一人称)、自分が年下と話す時(二人称)に使われます。
- Anh (アイン) :自分が年上の男性で年下と話す時(一人称)、相手が年上の男性の場合(二人称)。
- Chị (チ) :自分が年上の女性で年下と話す時(一人称)、相手が年上の女性の場合(二人称)。
- Chú(チュー):一般的に中年の男性に対して使用されます。これも自分にも相手にも使うことができます。
- Cô(コー):一般的に中年の女性に対して使用されます。また、女性の先生のことも Côと呼びます。
- オン(Ông ):高年齢の男性に対して使用されます。
- バー(Bà):高年齢の女性に対して使用されます。
基本的に年上の人と話す時は語尾に ạ.(ア)をつければ敬語になります。
例文:Em là người Nhật ạ.(私は日本人です。)
役に立つフレーズ
ベトナムの挨拶は朝昼晩に分けて使用しません。分ける表現もありますが、ここでは基本の挨拶のみを紹介します。
- 自分が年下の時;自分 + chào +相手(二人称) / Em chào anh/chị ( ạ).
- 年下の人に挨拶する時やラフに挨拶するとき:Chào 相手
挨拶する時に最初は、自分と相手を混乱してしまう人もいますが、カードのように当てはめて考えれば分かりやすいです。
- さようなら: Byebye(バイバイ)、 Chào em〜(チェオエム)、 Hẹn gặp lại(ヒンガップライ)
- ありがとう:Cảm ơn (カムオン)
- どういたしまして: Không có gì.(コンカージー)
自己紹介
私の名前は佐藤はるかです。:Tôi tên là Sato Haruka.(トイ テン ラー サトー ハルカー) ※日本人の名前には声調がつかないので全て棒で伸ばしたような音になります。
- 私は日本の千葉県から来ました。:Tôi đến từ Chiba ở Nhật bản .(トイ デン トゥー チバー オー ニャットバン)
- 私は22歳です。: Tôi là 22 tuổi.(トイ ラー ハイムハイ トゥオイ)
- 私は1998年生まれです。:Tôi Sinh năm (19)98 . (トイ シン ナム (モッチン)チンタム)
- 私は日本語の先生をしています。: Tôi làm giáo viên tiếng Nhật.(トイ ラム ザェオ ヴィン ティン ニャット)
相手への質問
相手への質問
- あなたの名前はなんですか?:Em tên là gì?(エム テン ラー ゼィ)
- あなたは何歳ですか? : Em là bao nhiêu tuổi à?(エム ラー ベウ ニゥ トゥイ アー)
- 何年生まれですか?: (Em là)Sinh năm bao nhiêu?(シン ナム ベウ ニゥ)
- あなたの職業は何ですか?: Em làm nghè gì?(エム ラム ニェー ゼィ)
買い物やタクシーでなどで使えるフレーズ
- いくらですか?: Cái này bao nhiêu tiền à?(カイ ナイ ベウ ニゥ ティン ア)
- え、高くないですか?: Ôi đắc quá.(オーイ ダック クェー)
- これをください。: Cho em cái này (チャー エム カイ ナイ)
- 私はここに行きたいです。:Tôi muốn đi chỗ này .(トイ ムォン ディー チョー ナイ)
- これとっても美味しいですね!: Món này ngon quá(モン ナイ ゴン ワー)
まとめ
本レポートでは、ベトナム語について紹介をしました。ベトナム語は中国とフランスの影響受けた言語で、日本語や中国語に似ているところもあればフランス語に似ている部分もあり、興味深い言語のひとつです。これからベトナムに行く人や現地に住んでいるが、ベトナム語を話す機会がないという人も現地の人とコミュニケーションを取り、ベトナム語を話してみるのも面白いかもしれません。
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