ベトナム市場調査を成功させるための確認ポイント
ベトナムでの市場調査を検討しているビジネスパーソン向けに、ベトナムで市場調査を成功させるための確認ポイントを解説していきたい。
筆者はベトナム専門コンサルティング会社のコンサルタントとして、これまで多くの日本企業のベトナム進出支援に携わってきた。ベトナム市場調査の必要性から、調査方法、分析ポイント、費用相場、実施期間など、市場調査を成功させるためのノウハウを惜しみなく、この記事に全て盛り込んだ。
市場調査というサービスは依頼する側も発注に関する知識を要する。市場調査会社やコンサルテイング会社に依頼事項や調査して欲しい内容を具体的に指示することで、依頼主側も満足の行く調査結果を得られやすい。
この記事では、ベトナムでの市場調査の依頼方法に関する基礎的な知識から丁寧に解説していく。また、ベトナムでの市場調査の事例も惜しみなく多数公開している。ベトナムでの市場調査を検討されている日本企業の読者様に少しでもお役に立てれば幸いである。
ベトナム市場調査の必要性と目的
そもそもベトナムに進出するために、なぜ市場調査が必要であるのか?
ベトナム市場調査が必要である理由は、ベトナム市場特有のリスクを事前に回避し、ベトナムでの事業展開を行うためのロードマップ・アクションプランを明確にするためである。
日本国内での成功事例を横展開してもベトナム市場で必ず成功するとは限らない。当然のことながら、ベトナム市場の環境は日本市場とは全く環境が異なる。以下ではベトナム市場調査の必要性を列挙した。
ベトナム市場調査の必要性①:ベトナム市場は環境変化が激しい
急速な経済発展が続くベトナムでは市場環境の変化が激しい。日本のように成熟した国では産業構造や業界構造が確立しており、法整備も進んでいるため、社会の変化にも限度がある。既得権益の関係も固定的である。
ベトナムを含め、アジアの新興国は市場の環境変化が非常に早い。ベトナムでは法規定や制度も未熟な部分が残っており、ベトナム政府は頻繁に法規定を改正する。ベトナムの業界構造も著しく変わり、企業プレーヤーの勃興も激しい。
日本国内からアクセスできるベトナム市場の情報は現状では少ない。インターネット検索から取得できる情報も新しい情報かどうか、信頼できる情報かどうか見定めなくてはいけない。
市場調査を通じて、ベトナム市場の最新動向を正確に把握する必要がある。
ベトナム市場調査の必要性②:ベトナム消費者の嗜好は日本と異なる
ベトナム消費者の嗜好は日本の消費者とは全く異なる。
ベトナムでは急速な経済発展に伴って、所得水準も急増している。中間層や富裕層が増加していることから、消費者の嗜好や消費行動も変化しやすい。ベトナム消費者の感覚も日本人とは異なる。
例えば、以前ある日本の食品メーカーがベトナムの富裕層向けに自社製品を販売するために、ベトナム消費者にその製品を見せたところ、包装形態がベトナム市場では一般的ではないタイプであったために、多くの消費者に「お菓子の袋」だと勘違いされたことがあった。
ベトナムは南北に長く、地域ごとの特性や特徴も異なる。また、都市部と農村部の発展の差は想像以上に大きい。都市部ではスーパーマーケットやショピングセンターでの購入(近代的な小売形態:モダントレード)を好む消費者が多い一方で、農村部では伝統的市場やパパママショップ(伝統的な小売形態:トラディショナルトレード)が好まれる傾向が強い。
ベトナム市場調査を通じて、ベトナム消費者の嗜好や消費行動を事前に明確に知ることができる。
ベトナム市場調査の必要性④:社内での承認手続きのため
ベトナムでの市場調査を行わないと、後々ベトナム事業の重要な局面で意思決定できない事態に陥る場合がある。
実際のところ、ベトナム市場調査を実施しない日本企業は多い。勿論、各社の方針次第であり、絶対的に必要ということではない。市場調査よりも、ベトナム現地パートナーの探索や販売をすぐに行いたい企業様も多い。また、ベトナム企業のM&Aに当たっては市場調査を行わずに、すぐに案件の検討を行いたいケースも多い。
ベトナムでの事業展開や投資、企業買収の意思決定をする際に、市場調査を行っていないと、なかなか意思決定ができないことが懸念される。社内の上層部で承認をとるためにも、市場環境やリスクを担当者自身が把握し、説明しなければならないからだ。
ベトナム市場調査の必要性③:ローカル市場への理解を深めるため
ベトナムでの事業を成功させるための最も重要な要素は「ベトナムのローカル事情を攻略すること」であると筆者は強く確信している。
インターネットでの情報や企業との会議からは見えてこない現地の事情を理解することが重要である。ベトナム政府が公表する統計やデータも簡単に鵜呑みにしてはいけない。時に汗をかいて泥臭く、現地で情報収集しなければならないこともある。
例えば、過去の事例では、ベトナムの廃棄物市場での事業展開を検討されている企業様向けに、弊社の調査員が現地エリア内のゴミ処理施設について1件ずつ現地調査を行ったこともあった。
また、商業施設の開発を検討されている企業様向けには、商圏に居住する消費者の所得水準や消費行動についてインタビュー調査を行ったこともあった。ベトナムでは統計が入手できないケースが多々あるためだ。
ベトナムの地方でのビジネスでは特に注意が必要である。ベトナムの地方政府(人民委員会)に問い合わせをしたり、統計の請求をしたりしても、正確な情報が提示されないケースもある。以前、ベトナムのある省政府に企業に関する統計を問い合わせたところ、全く更新されていない数年分のデータが提供されたこともあった。日本のようにきちんと統計が整備されていることは多くない。
ベトナム市場調査を検討されている読者の方は、ベトナム進出・事業展開の初期的な段階に位置すると想像している。
具体的な調査手法
ベトナム市場調査と一口に言っても、調査の種類に応じて複数に分類できる。自分の依頼事項がどの調査に属するのか事前に把握することを筆者は強く推奨する。
調査方法①:マーケットリサーチ
ベトナム市場調査と呼称する場合、殆どのケースではマーケットリサーチを指す。「マーケットリサーチ」はそのまま「市場調査」と呼ばれることが多い。
市場全体の動向を把握することを目的として、行われる調査のタイプである。マーケットリサーチでは、市場の規模(定量情報)から市場トレンド(定性調査)を含め、法規定や企業動向、消費者動向など、網羅的に調査項目を設計することが多い。
調査会社に依頼する場合、調査項目の量に応じて見積もり金額が提示されることが多いため、自社が要望する調査項目を明確にしてから、見積もりをとることをおすすめする。
マーケットリサーチでの調査手法は主に2つの調査手法に区分できる。
デスクトップ調査・文献調査
デスクトップ調査(デスクリサーチ)とは、既存の文献・統計・レポート・資料・Webサイトなどからデータを収集し、分析するリサーチ手法のことである。言語としては英語・ベトナム語で情報収取を行わなければならない。主にはベトナム政府の統計、業界団体の公表情報・レポート、ベトナム現地報道・メディアの記事、現地企業のwebサイトといった二次データから情報を取得していくことになる。
日本国内の動向を調べる場合と異なって、ベトナム市場の動向をデスクトップで調査する場合、十分に情報が得られないことがあることは事前に理解しておくとよい。ベトナム統計や企業の情報は断片的であることや論理的につじつまが合わないこともある。
そのため、デスクトップ調査では深入りせず、あくまで仮説構築のために行うと良い。
ヒアリング調査・インタビュー調査
ヒアリング調査とは有識者やキーパーソンに対して直接ヒアリングしてデータを収集して分析するリサーチ手法のことである。具体的には、ベトナム政府関係者、現地企業の経営者層・マネジメント層(競合企業を含む)、業界団体といった有識者に直接電話や対面でインタビュー調査をすることがある。
ヒアリング調査は特定の人物に調査のアプローチをして、行うため、費用と手間がかかるといったデメリットが存在する。ベトナム現地のネットワークやパイプが必要になる。日本のようにwebサイトからお問い合わせをして反応があるベトナム企業は少ない。ベトナム市場にネットワークがある調査会社に依頼することが推奨される。
ヒアリング調査の最大メリットは誰も知らないような新しい情報が得られることである。一般には出回らないような深い情報や価値の高い情報をピンポイントで入手することができる。
調査方法②:消費者調査
ベトナム市場で製品やモノを販売したい場合、消費者向けの調査(消費者調査)を行うことが推奨される。ベトナム消費者向けの商品開発、ベトナム消費者向けの販売方法・マーケティング施策を策定する際には消費者調査が有効な手段になる。
自社製品のターゲットとなるベトナム消費者の年齢、性別、家族構成、居住エリア、所得水準、使用履歴、嗜好やニーズを定量的かつ定性的に把握することが消費者調査の最終目標である。
ベトナムでは経済発展に伴い、国民の所得水準が向上している。直近の弊社の事例でも、食品メーカー、スポーツ用品メーカー、医薬品メーカーから消費者調査の依頼が増えている。日用消費財・小売市場の拡大に伴い、消費者調査の重要性はますます増していくだろう。
ベトナム消費者調査では複数の手法があるが、代表的な手法として定量調査とデプスインタビューを抑えておきたい。
定量調査
ベトナム消費者の多人数を対象に数値データとして分析する手法である。広く浅くのイメージである。具体的には、オンラインでのアンケート調査、電話聞き取り調査、会場調査、郵送調査等を指す。収集されたデータを数値化することを想定した上で設計された調査で、調査結果は統計学的に分析する調査方法でもある。
例えば、ベトナム市場向けに販売を検討している自社の健康食品に関する質問をアンケート形式により数百人規模で回答を募り、ターゲットとなる顧客の年齢、性別、所得水準を明確にすることができる。
ベトナム消費者向けの定量調査のメリットとして以下のようなメリットが挙げられる。
- 数値で把握するため全体像を把握できる。
- 統計的な裏付けのあるデータであるため施策の判断材料になり得る。
- インタビュー調査等の定性調査には明確な指標が存在しないのに対し、定量調査は一般的な指標、ある数値でデータ化するために裏付けられたデータとして活用しやすい。
- 比較的負担の少ない回答方法であるため回答協力を得やすい。
一方で、ベトナム消費者向けの定量調査のメリットとして以下のようなデメリットが挙げられる。
- 事前に調査票に盛り込んだ質問以外はできないので、回答の深堀りができない場合がある。
- 数値を読み解き、データから施策戦略の判断をするには、データを読む知識やスキルが必要になる。
定性調査(デプスインタビュー)
デプスインタビューとは、少数の消費者(ユーザー)に対して、商品に関するあらゆる質問を対面またはオンラインにて調査員が問いかけてインタビューを行う調査である。狭く深くのイメージである。
少人数に対して、数値化が困難なデータ(定量データ・非数値データ)発言録、行動、行動観察等の定性データの取得を行う。
定性調査では仮説の立案(一部検証)、仮説構築、原因把握が主な目的となる。
厳密に言えば、定性調査はデプスインタビューに限らず、調査テーマについて意見や感想を交わし、回答を集める手法であるグループインタビュー等、細かく分類できる。
ベトナム消費者向けの定性調査のメリットとして以下のようなメリットが挙げられる。
- インタビュー相手の深層心理や行動の背景を調査することができ、深い情報取得ができる。
- 会話の中で気になった内容についてその場で深堀りしたり、具体的なエピソードを聞くことで消費者を深く理解することができる可能性が高い。
- 会話の中から、思いもよらないようなユーザーのニーズや、インサイトを読み取ることができる。
一方で、ベトナム消費者向けの定性調査のメリットとして以下のようなデメリットが挙げられる。
- 全体像の把握には不向きな部分がある。
- 対象者の言葉や表情、態度等から本音を理解する、マーケティング担当者の知識やスキルが必要。
調査方法③:企業調査(競合調査)
一般的に企業調査とは、取引先企業の信頼性を確認する調査、競合調査を意味する。
ベトナム企業との新規取引においては、支払い能力があるのか、債務超過に陥ってないか等の懸念事項は尽きない。また、ベトナム市場参入の場合、ベトナム企業の競合調査のニーズは日本企業にとって非常に大きいと考えている。
ベトナム市場でも、上場企業でない限り、情報は殆ど公開されていないため、ベトナムの企業データベースを保有する企業に依頼することも手段の一つである。現地企業の財務情報は簡単にアクセスできないからだ。
競合他社の動向について、競合会社の経営者層・マネジメント層にヒアリング調査をすることが有効な手段である。勿論、自社が競合会社に直接コンタクトすることはできないので、ベトナム現地の事情に精通した調査会社といった第三者に依頼することになるだろう。
競合他社の方針や戦略、内部状況についてよく知る人物を特定してアプローチを行い、巧みにインタビューする必要がある。機微な情報や敏感な情報は直接的な質問をしても答えてくれることが少ないため、質問する側は巧みに質問をする必要がある。
調査方法④:現地視察調査
現地視察調査とは、ベトナム現地を視察して調査する手法である。足で稼ぐ調査の一種でもある。ベトナムを含め、統計やデータが整備されていない新興国では特に有効な手段となる。
例えば、過去にベトナムの農産物の現状の調査を行った過去の事例では、ベトナムの農家に1件ずつ電話でヒアリングして所在を確認し、現地に調査員を派遣して直接調査を行ったこともあった。ベトナムの本当のローカルに入っていくためには現地にいくしか手段がない。特に地方の農村部等、インターネットやwebサイトを通じた情報アクセスができない場合、現地を視察することは有効となる。
推奨されるベトナム市場調査の調査項目
ベトナムの市場調査を一口に言っても、対象となる市場や業界によって、調査すべき項目は異なる。自社にとって、市場の何を明らかにしなければ行けないのかを明確にしなくてはいけない。これは市場調査を発注する日本企業の依頼主にとっては頭の痛い問題である。
市場調査を通じて何を明確にしなければいけないのか、それを漏れなくダブりなく設計することは実際のところ、難易度は高い。しかし、市場調査会社や経営コンサルティング会社は基本的には、依頼主の要望に応じて見積もりを提示することが殆どである。
勿論、市場調査の項目を設計する業務は依頼を受ける市場調査会社や経営コンサルティング会社が本来行うべきことである。しかし、発注者である依頼主が調査項目の設計では主導権を握ることを推奨する。
調査会社に任せきりでは自社の思い描く理想的な調査会社から少しズレてしまう恐れがあるばかりでなく、不要な調査項目も含まれる可能性がある。調査会社は基本的には調査項目の量や業務内容に応じて見積もりをすることが通常だ。調査の設計を丸投げしてしまうと、調査項目がパッケージ化され、見積額も高く提示されてしまうことがある。
そこで、ベトナムで市場調査を行う場合に調査項目として含まれることが多い、項目について以下に列挙した。以下の調査項目を自社で検討しているベトナム市場調査に当てはめて、自社が明らかにすべき調査項目に抜け漏れがないかチェックして頂きたい。
市場規模
定量的にベトナムの市場規模を推計する。市場規模が成長しているのか、衰退しているのかを本来ならば見極めることが目的の1つであるが、国全体の経済発展が続くベトナムでは多くの市場が成長過程にある。
統計が集計されていないニッチな市場の場合、モデルを組んで市場規模を推定する必要がある。
過去の事例では、ある電気設備メーカーからベトナムの電気設備市場の市場規模の推計を依頼され、電気設備が導入されると予測される商業施設、官公庁、公共施設、一般住宅の数から電気設備の需要量を計算し、市場規模を算出したことがあった。
市場トレンド
定性的にベトナム市場のトレンドを調査する。それぞれの市場では必ず時期的なトレンドが存在する。
例えば、ベトナムの再生可能エネルギー市場では2019年当初は太陽光発電市場に開発が盛んであったが、ベトナム政府の優遇制度が拡充された結果、2020年はバイオマス発電市場に日本企業の注目が集まった。また、ベトナムの所得水準の向上により、健康食品やサプリメントの販売を検討する日本企業が2020年から急激に増加した。
法規定・ベトナム政府の方針
ベトナムの法規定は頻繁に改正される上に、複雑であることが多々ある。特に進出時に必ずチェックしなければならないことが外資規制の有無である。ベトナム政府によって外資規制がある分野でないか、条件付き分野ではないか、まずは確認する必要がある。
優遇措置、投資奨励制度についても是非調査しておきたい。ベトナム政府が歓迎する投資分野では税優遇が受けられるからである。
流通構造
ベトナム市場の流通構造・サプライチェーンに関する調査項目である。ベトナムの流通構造は一般的に中間業者が多いことが多々ある。
また、ベトナムでは伝統的な小売形態(トラディショナルトレード)が主流である。パパママショップや伝統的市場といった流通チャネルが大分部を占めている、スーパーマーケットやショッピングセンターといった近代的な流通形態(モダントレード)は都市部に限られる。
日本企業がベトナム市場でモノや製品を販売するにあたって、競合となる現地ローカル企業の流通構造を事前に把握することを推奨する。
販売チャネル
販売チャネルは一般消費者向けのモノの販売(BtoC)、マーケティング施策を行う際に明確にしなければならない項目である。
過去の事例では、サプリメントをベトナム消費者はどのようなチャネルで購入するのか調査した事例があった。近代的なドラッグストア、日本製品を専門に扱うショップ、ECサイトのほか、日本現地で購入してもらうケースが意外にも多かった。ベトナム消費者の購入チャネルは調査して初めて分かる意外な結果も多い。
消費者・ユーザーの動向(消費・生活習慣、嗜好)
ベトナム消費者の嗜好に関する調査が中心となる。繰り返しにはなってしまうが、ベトナムの一般消費者向けにモノや製品を販売する場合にぜひ実施しておきたい調査項目となる。
業界によって異なるが、ベトナム消費者の一般的な傾向として、価格よりも安全性、品質を重視する割合が近年の経済発展の影響で増えている。一方で、日本製品の多くが現地相場より高く、価格の高さが課題になることは多い。
競合他社の動向
競合他社を特定し、それぞれの競合企業が業界内でどのようなポジションにいるのか、強みは何か、事業方針は何かを明らかにしていく。
ベトナム企業は依然として国営企業が多い。また、Vin Groupやマサングループのようなコングロマリット企業(複合企業)、軍隊系企業が大きな資本力を持っており、ベトナム市場での存在感は大きい。
外資系企業では韓国、タイ、シンガポール、欧米系の資本が入っていることも多い。
市場の現状・課題・打開策・今後の見通し
特定の市場・業界の現状と課題、それに対して考えられる打開策を明らかにする。
ベトナムのような新興国では市場の課題を挙げたら切りがない。現状の課題に対して、どのような打開策を自社は実施できるか、将来はどうなるか。この点が市場調査を通じて、根本的に明らかにしていかなければならず、最重要な調査項目と言っても過言ではない。
市場価格
市場価格の相場に関する調査項目である。農産物やエネルギーといったコモディティでない限り、市場価格についても統計が存在しない場合が多い。
弊社では業界の関係企業や商社などにヒアリング調査を行って、市場価格を算出することが多い。ベトナムは値切り・交渉の文化が一般的である。ベトナム企業から提示される価格は通常よりも高く提示されることが殆どである。
現地ビジネスパートナーの検討
自社の最適な現地パートナーの定義づけを行い、現地パートナーの探索を行う。市場調査で得られた結果を通じて、事業方針、規模感、資本力、ベトナム市場での立ち位置といぅた観点から自社の理想的な現地パートナーの選定基準を明確にする。
現地パートナーのロングリストからショートリストに絞込んでいくことが一般的である。現地パートナーの探索は実施の難易度が高い。ベトナム現地のローカル事情に精通した会社を通じて情報収集を行うことが推奨される。
ベトナム市場調査の期間・スケジュール
ベトナム市場調査の実施期間・スケジュールは短くて1ヶ月、長くても3ヶ月程度である。但し、プロジェクトの規模や実施内容によって様々であるため、一概には言えない。
市場調査の実施だけであれば2ヶ月程度を見積もれば良いだろう。ヒアリング調査を実施する場合はヒアリング相手とのアポイントメント取得、インタビュー実施の工数が入るため、比較的長くなる傾向がある。
多くの日本企業にとって市場調査を実施すること自体が目的ではない。市場調査の実施後、通常は現地パートナーの探索やパートナーシップの締結、法人設立、事業展開といった実施フェーズに向けて企業は動かなくてはならない。事業全体のスケジュールはよく検討しなければならない。
ベトナム市場調査の費用感
ベトナム市場調査の費用相場であるが、数百万に収まることが多い。とはいえ、費用についても調査の内容や規模感、実施内容によって異なる。
業務の工程数が増えれば、見積り額も高くなることが通常である。業務の工程数はここでは調査項目の量や調査の難易度を意味する。
ヒアリング調査を行う場合は見積り額に影響するだろう。ベトナム民間企業の経営者やマネジメント層にアプローチ、インタビューが必要な場合は、見積り額に反映されると考えてよい。
いずれにせよ、費用感は依頼先である調査会社や経営コンサルティング会社によく相談することが推奨される。
市場調査会社・コンサルティング会社の選定方法
ベトナム市場調査をサービスとして提供する市場調査会社やコンサルティング会社は多く存在する。普段から付き合いがある調査会社や、紹介を受けた会社など、選定状況(相見積り先)は様々であろう。
根本的なことであるが、ベトナム市場調査の経験やノウハウ、過去の実績、現地事情への精通、現地ネットワークを加味して選定する必要がある。特にチェックしていただきたいことが以下の3点である。
ベトナム現地でのネットワークの有無
ベトナム民間企業、政府機関にネットワークが十分にあるか確かめて欲しい。調査会社のブランドではなく、ローカルのネットワークを持ち、どれだけ深い情報が取得できるかがポイントとなるからだ。
過去の調査事例が多かったり、M&Aを提供していたりする会社は、ベトナムの民間企業の経営者層ともパイプがあることが多い。トップダウンで動くベトナムの商習慣において、現地ネットワークは何よりも重要な要素である。
ベトナム市場に詳しいか
当然のことながら、ベトナム市場への理解、知見が市場調査の質を大きく左右する。
ブランドがある会社、知名度がある会社、過去の実績が豊富な会社でも、調査結果の質は調査業務を実施する個人のメンバーの能力次第である。市場調査の業務担当するマネージャー、コンサルタント、調査員、アナリストの経歴や過去の実績、ベトナムへの理解を発注前によくチェックして頂きたい。
ベトナム市場調査の実績
過去のベトナム市場調査の事例も確認すべきである。ベトナム市場のどの業界に詳しいか分かるからだ。過去に調査事例がある分野では、市場の動向をよく理解している可能性が高い。
近年は、民間企業だけでなく、政府機関・行政機関、業界団体もベトナム市場調査に関する業務を民間企業に委託している。国土交通省、経済産業省、総務省、JICAなどはベトナム市場調査関連の業務をよく発注している省庁・機関である。これらの政府機関の実績の有無もチェックされたい。
ベトナム市場調査の事例
弊社は普段から日本企業や行政機関からベトナム市場調査の相談を受けているが、近年はエネルギー、環境、小売、ヘルスケア、食品、日用消費財、IT、アパレル、EC、医療、不動産、スマートシティ、教育、製造に関する相談が特に増えている。
Google検索の動向からベトナム市場調査のキーワードとよく検索されているキーワードは、建設、バイク、広告、生命保険、中古車、オフショア、自動車、レストラン(外食)、音楽、家具、電動バイク、電力、塗装、日本食、粉ミルクといったキーワードがセットでよく検索されているようである。
弊社もベトナム市場調査の一部をレポート記事形式で一般公開している。ベトナム市場調査を検討されている日本企業の皆様におかれては、ぜひ以下のレポート記事もご参照いただければ幸いである。
ベトナム市場の有望性と将来予測
ベトナム市場調査の依頼はコロナ禍でも大きく減少したとは認識していない。むしろ、コロナ禍に関わらず、ベトナム市場進出に関心を抱く日本企業の多さに驚いた。
ベトナムは2045年にかけて急速な経済発展が維持されると見込まれている。なぜ沢山の日本企業がベトナム進出に高い関心を寄せているのか、ここではベトナム市場のメガトレンドを考えてみたい、
ベトナム市場トレンド①:所得水準の増加による消費市場の拡大
1億人規模の人口を有するベトナムであるが、経済発展に伴い、所得水準の向上が続いており、2021~2022年頃にベトナムの一人当たりGDPが3,000ドルを上回る見込みだ。一般的に国民1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると、国民の自動車や大型家電、家具といった耐久消費財の購入意欲が急速に高まると言われている。
以下の図表はベトナムの一人当たりGDPと小売市場の売上高の推移を示したグラフであるが、一人当たりGDPが初めて1,000ドルを上回った2008年以降は、特に小売市場の売上高が急成長している
ベトナム市場トレンド②:環境への意識の高まり
ベトナムは東南アジア地域の中でも特に太陽光、風力エネルギーに恵まれた国である。特に中部から南部にかけて日射量が良好で、沿岸部は風況の条件が良い。また、農業と林業が盛んなベトナムでは稲わら、もみ殻、サトウキビ残渣、木質ペレットなど多種多様なバイオマス燃料が多く存在しており、アクセスが容易である。
将来的な電力不足の深刻化が指摘されている南部は気候条件やバイオマス燃料へのアクセス性から見て良好な条件が整っている。ベトナム政府は再エネ開発に積極的な方針を掲げているため、民間企業からの投資が進んでいる。
ベトナム市場トレンド③:デジタル化・スマートシティ開発
経済発展、工業化に伴い、ベトナムでは都市化が急速に進んでいる。国連の統計によれば、毎年100万人が農村から都市部へ流入しており、都市化率(都市部に住む人口の割合)は2020年予測で33.6%、2050年予測で53.8%まで進むとみられている。
2045年には都市部と農村部の人口が逆転する見込みだ。都市化が引きおこす様々な問題はベトナムに限らず、世界的な問題であるが、ベトナムも今後都市化に付随する様々な課題に直面していくだろう。
例えば、交通渋滞、環境汚染(排ガス、排水)、廃棄物処理といった衛生問題、自然災害対策(洪水、大雨、台風、干ばつ)などだ。こうした他分野にわたる課題に対して、ICTの活用を通じたスマートシティの開発を進める動きが政府、民間企業の間で近年になり広がっている。
結論:ベトナム市場調査の依頼方法
ベトナム市場調査の依頼方法について詳しく解説してきた。ベトナム市場調査と一言で言っても調査の手法は様々である。また、調査内容に応じて調査期間や費用も変わってくる。
ベトナム市場経の深い理解、広範な深いネットーワークを持っているベトナム特化の市場調査会社やコンサルテイング会社に一度相談を行うことを推奨する。調査会社との議論を通じて、自社の依頼事項も自ずと整理されてくるはずだ。
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