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ベトナム医薬品市場:製造拠点としての設立手順と消費市場の拡大

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ベトナムを医薬品の製造拠点として、外資企業がベトナム進出する事例が増えている。これに加え、近年になり、現地マーケットの内需を狙った進出も増えている。医薬品企業にとって、ベトナムは製造拠点、消費市場の両面で魅力的な市場になりつつある。事実、ここ数年になって、日本企業を含む外資企業による地場製薬会社への出資や販売での業務提携も加速している。

背景として、外資企業は資金や技術、経験、マネジメントなどで地場企業より優位性を持つ一方で、地場企業は外資が弱い市場把握、流通網で強みを持つ。そのため、地場の持つ流通網を活用したい外資企業と、製造に関する技術やマネジメント能力の向上を期待する地場企業の利害が一致し、こうした動きが拡大している。

この記事では、まずベトナムが製造拠点として有望である具体的な理由を考察し、設立拠点の手順についても述べていきたい。その後、医薬品の消費市場に外資企業が参入するための具体的な手法について、ベトナム法規定及び実態に関する両面から分析していきたい。

ベトナム進出のメリット

ベトナムを医薬品の製造拠点として考える場合、いくつかのメリットが挙げられるが、ここでは、人口、工業団地の面を特に強調したい。

人工面のメリット

ベトナム統計総局によれば、2020年時点でベトナム総人口は9,648万人となっており、間もなく1億人に達する見込みだ。東南アジア域内ではインドネシア(2億6,770万人)、フィリピン(1億670万人)に次ぐ3番目の規模。人口減少が続く日本とは対照的で、ベトナム人口は増加が続いており、2040年頃には1億1,000万人まで増加し、日本人口を上回る見込みである。

人件費も依然として安価な水準である。近年、高成長が続くベトナムでは賃金の上昇が指摘されているものの、近隣諸国と比較しても依然として人件費は低い水準である。JETROが現地に進出している日系企業に対して毎年実施しているアンケート調査によれば、日系製造業の作業員・月額基本給でベトナムは236ドルとなっており、これは中国(493ドル)、タイ(446ドル)、マレーシア(414ドル)、インドネシア(348ドル)、インド(278ドル)、フィリピン(236ドル)を下回る数値である。

工業団地のメリット

次に、工業団地であるが、ベトナムの工業団地の賃貸料(ドル/㎡/月)は80ドルで、この賃貸料は中国、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアといった、製造拠点としてベトナムとよく比較検討される国々よりも低い賃貸料だ。特に、ベトナム国内を見ると、中部に位置する工業団地の賃貸料は北部や南部と比較しても低い水準である。

一方で、医薬品の製造拠点としての工業団地の立地に当たっては、水・電力としたインフラ整備が進んでおり、管理系の人材を確保できる南部が推奨される。事実、ベトナム現地マーケットでも商品を展開している、久光製薬、ロート製薬は南部に製造拠点を構えている。久光製薬の「サロンパス」はベトナム国内でも湿布の代名詞となるほど広く普及しており、街中のドラッグストアで購入できる。また、ベトナム進出から20年程度が経過するロート製薬の目薬「V・ロート」もベトナム人であれば誰もが知っている代表的な目薬の地位を獲得している。このほか、アメリカ、スイス、ドイツなどの欧米系製薬メーカーも南部を中心に進出している。

最後に、近年になって、ますます多くの日本企業がベトナムを有望な市場として考えるようになったという調査結果もある。JETROが毎年日本企業に対して実施しているアンケート調査、「日本企業が事業拡大を計画する国・地域」において、中国を挙げる企業の比率が減少するなか、ベトナムを挙げる企業の比率が増加している。2019年には初めて40%を超え、タイを上回る結果となった。

外資系参入の手順

外資企業がベトナムにおいて医薬品に関する製造、輸出入、試験、販売事業を展開するためには、国内企業と同様に法規則で定められた条件をクリアするとともに、「薬事許可証」を取得する必要がある。

資本と原料

医薬品の製造については、投資法に基づいて、100%外資の参入が可能であり、日本企業を含めた、外資企業による投資がこれまで実施されてきた。原料の調達においては、自社工場で生産用に使用する原料は輸入可能であるが、ベトナムで未登録の原料については別途輸入許可証を取得する必要がある。実際のところ、ベトナムでは原料の殆どが現地調達できず、輸入に依存しているのが現状だ。

流通権

現地マーケットで製造販売事業を展開する場合であるが、外資企業は2009年より輸入権を認められたものの、流通権は未だに認められていない。そのため、外資 100%で設立できるのは製造会社のみとなり、法規定上、製造した商品は、流通機能を持つベトナム企業に販売しなければならない。但し、実態として法規則の運用は曖昧な部分があり、製造から販売事業まで行う現地企業に対して外国企業が出資することも、事実上可能となっている。実際には、外資企業は様々な形式で実質的に流通事業にも参入しており、現地企業との業務提携や出資を拡大している。

現地企業との連携

一般的に外資企業は資金力、技術力を有する一方で、ベトナム市場への理解や流通面での競争力がなく、これらをカバーするため現地企業との協業を加速していきたいという考えがある。現行の法規定で外資企業に医薬品の流通が認められていない以上、内需をターゲットとする場合、地場企業との協業は非常に重要になり、株式取得も可能である。

こうしたことから、外資企業による物流の機能を持つ製薬・流通、小売企業の買収や出資は考えられるだろうし、資本参画を行うことも考えられる。しかし、直接的な資本参画が難しい場合もあり、この点はベトナム市場に精通したコンサルタント等に相談をすることが推奨され、ストレートに実施することは難しいことは留意が必要だ。

日本企業によるベトナム製薬会社のM&Aや進出の動き

近年になり、日本の製薬会社がベトナム現地の製薬メーカーを買収する事例も見られるようになった。例えば、大正製薬ホールディングス株式会社は2019年に地場最大手のハウザン製薬(Hau Giang Pharmaceutical)を連結子会社とした。大正製薬は2016年5月にハウザン製薬と資本業務提携を締結し、同年7月にはハウザン製薬の株式24.5%を取得していた。その後、2019年3月にハウザン製薬の発行済株式総数の21.7%を対象とした公開買付けを行い、最終的に50.78%を保有することとなった。ハウザン製薬は上場企業で、流通システムを自前で持ち、医薬品メーカーとしては最大手で優良企業の1つとして知られていた企業であった。

また、医薬品受託製造大手のニプロファーマは海外における初の生産拠点としてベトナムの北部ハイフォン市に進出している。100%子会社のニプロファーマ・ベトナムを設立し、同社の工場は日米欧の当局が規制する製造管理、品質管理に関する基準「3極GMP」に対応した品質保証体制を完備しているという。以下の図表はベトナムにおける主要な製薬会社の外国株主の所有比率を示したものであるが、近年の外資企業によるベトナム製薬会社のM&Aの動きを受けて、外国企業への株式売却を検討する企業も出始めている。以下のテーブル中におけるNo.7~10等の企業はまさにそのような企業群である。

まとめ

以上をまとめると、ベトナムは医薬品の製造拠点として有望な国であると考えられる上、内需拡大を受けて消費市場としてもポテンシャルが高い国であると考えられる。一方で上述したように外資規制の運用では曖昧な部分があり、近年では現地企業の買収を通じて実質的に医薬品の流通にも参入する外資企業が増加しているため、現地市場の動向をよく理解し、戦略的な手法で進めていく必要があるだろう。ベトナムを医薬品の製造拠点または消費市場として検討される企業があれば、ぜひご連絡いただければ幸いである。

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