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【M&A案件紹介②】ベトナム製薬業界で黎明期から活躍する老舗大手

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • A社はベトナムトップクラスの大手製薬企業で、株式の譲渡を検討している
  • ベトナムではライフスタイルの変化に伴い医薬品のニーズが増加しており、A社には伸びしろがある。
  • A社の買収は、日本の製薬企業がベトナム進出する手法として非常に有望である。

はじめに

本レポートは、海外企業からの買収(M&A)を求めるベトナムの製薬会社を紹介するものである。まずベトナム人の健康状態の背景、次に本案件の製薬会社について紹介する。秘密情報の観点から、本レポートでは件の製薬会社をA社と呼称する。 本レポートを読んでA社への投資を検討したいと感じられたら、レポートの最後にある問い合わせボタンからお問い合わせ頂けると幸いである。

ベトナムにおける疾病構造の動向

WHO(世界保健機関)の統計によると、人口10万人のうち 159.7人のがんである。ベトナムにおけるがんの発症率は世界でもやや高く、昨年に比べて7位上昇し、世界で92番目、アジアで16位となっている。現時点で特別高いということは無いが、既に上昇傾向にあることと、所得増加によるライフスタイルの変化を鑑みると、今後ベトナムのがん発症率は上昇していくと考えられる。

ベトナムは2018~2020年の期間で、182,563件のがん症例を記録した。これらのがんの内訳は多い順に、肝臓癌(14.5%)、肺癌(14.4%)、乳癌(11.8%)、胃癌(9.8%)、および直腸癌(9%)で、その他は、白血病がん(3.4%)、前立腺がん(3.4%)が多かった。

がん発症率上昇の要因として、「ライフスタイルの変化」という言葉を前述した。これはベトナムに現代的な生活様式が普及することを意味している。もちろん良い事ではあるが、一方でベトナムでは運動不足に陥る人が増えており、がん以前に生活習慣病が流行している。

このようながん発症数の増加や、生活習慣病の流行などを受け、世界中の多くの企業がベトナムの医薬品市場に注目している。本レポートで紹介する会社は、製薬事業における多くの開発計画を持っており、長期的な発展のためにパートナーを探索している。

A社の基本情報・特徴

A社は、ベトナムの製薬企業のトップ10に入る売り上げ規模である。 1970年代にベトナム中部に設立された国営企業として、業界で40年近くの経験があり、A社 は他のベトナムトップクラスの製薬会社より早くから操業している。

A社は大きな市場と競争優位性を所有している。特にA社は、医療用医薬品(ETC)のグループ3(※)ではトップクラスのシェアを誇る企業である。

医療用医薬品(ETC)のグループ3は、GMP-WHO基準を満たす生産ラインで生産された医薬品である。 ETCグループ1およびグループ2の製品はGMP-EU規格を満たす生産ラインで生産され、グループ4とグループ5は国内規格のみを必要とする。

A社は2つの子会社を有し、全国に18ヶ所の営業所を構える。加えてモンゴル、ラオス、カンボジア現地のパートナーと研究・生産における協力関係がある。 生産能力に関して、同社はベトナム中部に工場を1つ所有しており、この工場にある6つの生産ラインは全てWHO-GMP基準を満たしている。そのうち2つの生産ラインを、2022年の第1四半期と第2四半期までに、EU-GMP基準にアップグレードする計画がある。

同社は、抗がん剤、抗生物質、咳止め薬、解熱鎮痛剤など、約400種類の製品を製造している。この中で、抗がん剤はA社の主力製品である。

A社の経営状況

本章では2017年からのA社の業績と、売上構造を紹介する。

売上・収益

2020年のA社の業績について、全体の売上と利益はいずれも前期より増加した。 売上は1兆3,300億ドン近くに達し、コロナ禍であっても昨年比0.7%の成長を遂げた。

しかし、実際の生産量は20%以上増加している。この原因の1つとして、年間を通じて例年よりも商品開発に注力したからである。 さらに、輸入原材料の不足、運送費用の増加なども会社の収益性に影響を及ぼした。

A社の税引き前利益(営業利益)は1,930億ドン(11%増)に達した。このプラスの成長は、コスト管理の最適化によるもので、2020年のA社の一般管理費等は、予算と比較して9%削減された。

2020年の税引き後利益も、前年度より増加しており、コロナ禍であっても後退していない。

2020年の売上構成

A社の売上構成の92%(2020年)を占めるのは医薬品の製造・流通・販売であり、そのうち主な製品は抗生物質と癌治療薬である。これらは医薬品の売上の半分以上を占めている。 また、呼吸器疾患・心臓血管薬、ペニシリン系の製品が、A社医薬品セグメントの売上高のそれぞれ15.6%、12.3%を占めている。

今後の投資および研究開発の計画

A社の2025年までの経営目標として、収益が3兆ドンを超えること、平均の年間成長率で25%を目指す等がある。

将来の大きな投資計画

2021年にA社は、以下の投資項目に基づいて、工場・設備に対する大きな投資を計画している。

  • ダナン市、ホーチミン市、ティエンジャン省の支店に設備投資する。ビンディン省には賃貸オフィスと医療設備ショールームを建設する。
  • GMP-WHO基準を満たす抗がん剤の製造工場への設備投資を実施する。(約700億ドン)
  • 現在の工場・生産ラインへの追加投資または改修を実施する(約90億ドン)
  • GMP-EU基準を満たす抗生物質と無菌医薬品の製造工場2カ所の建設に投資する。(総投資額は約3,018億ドン)(※)

(※)製薬工場をGMP-EU基準にアップグレードした後、売上が増加した事例を紹介する。

前述のIMEXPHARM社は2016年末に工場をGMP-EU基準にアップグレードし、2020年には売上を35%伸ばした。PYMEPHARCOは2018年に工場をGMP-EU基準にアップグレードし、2020年には売上が20%増加した。

ベトナムの医薬品業界の平均成長率は8%/年なので、両社とも非常に大きな成長をしたと言える。

新たな医薬品開発への投資

  • GACP-WHO基準に従って、「Ba Kich」、「Ha Thu O Do」の2つの薬用植物を原材料とする新製品を開発している。
  • ティーツリーから製造する健康食品の開発可能性も研究中である。

SWOT分析

SWOT分析とは、企業を分析する際によく用いられるフレームワークである。企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)という4つの要素を網羅し、企業を評価する。強みと弱みは内部要因、機会と脅威は外部要因として考える。

強み

ます、前述した医療用医薬品(ETC)のグループ3で最大のシェアを誇る点が挙げられる。このセグメントは特別成長率が高いわけではないが、安定した大きな市場であり、A社は今後も安定した売上を出すことが可能だろう。

次にA社が直接運営する18の販売拠点と、ベトナム全国をカバーする流通システムが挙げられる。

A社は医療用医薬品の製品ラインを主力とし、全国のほとんどの地域に製品を供給している。小売の一般用医薬品(OTC)を主力する他社よりも、A社の販売コストは低い。

最後に医薬品の製造販売について、40年のノウハウを持つことが挙げられる。A社はベトナムで最初の製薬会社の1つであり、市場の理解、病院や医療施設との長期的な取引関係を持つことには大きな競争優位性がある。

弱み

弱みとして、まず海外から輸入する原材料への依存が挙げられる。新型コロナウイルスの蔓延は、A社の生産と経営状況に大きな影響を与えた。 医薬品の原材料​​のほとんどは、海外から輸入されているため、(中国とインドで80%以上を占める)コロナ禍で運送コストが大きく増加し、生産に大きな影響を与えている。それにより、生産計画と利益が大幅に削減している。

次点で、新工場の設立に係る金利の圧力が大きいことが挙げられる。工場の新設と生産ラインのアップグレードに投資する資金の大半は銀行からの貸付金、いわゆる有利子負債である。もしコロナ禍等によって操業開始が遅延すれば、定期的に発生する金利が同社のキャッシュフローに大きな圧力をかけることが懸念される。

機会

機会としては、ベトナム経済と国民所得の向上・それに伴うライフスタイルの変化により、ベトナムの癌患者の数と抗がん剤の需要が増加することである。抗がん剤はA社の中で2番目に大きな売り上げを計上しているセグメントなので、大きな恩恵を受けられるだろう。

脅威

脅威として、やはり新型コロナの存在は無視できない。新型コロナの流行により、外国人研究者のベトナムへの渡航が制限されたため、工場の操業スケジュールが遅れ、生産の開始ができない。新工場の稼働の遅れは、前述の弱みの通り、企業の業績や経営計画に大きな影響を与える。

加えて、社内人材だけでなく国際機関の専門家とパートナー会社の技術者もベトナムに入国できず、GMP規格の評価・承認と生産技術移転プロセスも停滞している。

ロックダウン中のベトナム市街(出典:BBCnews) https://www.bbc.com/news/world-asia-53690711

2つ目には、ベトナムの医薬品市場における競争激化が挙げられる。

ベトナム保健省の入札制度の変化により、医薬品の価格競争が激化している。また、GMP-WHOを満たす生産ラインを持つ国内企業は200社以上存在する。このような価格・競合の多さの2点から、ベトナムの医薬品市場における競争はより激しくなると考えられる。参入前には入念な調査と事業計画の立案が必須である。

A社株主のパートナー探索戦略

A社の株主構成において、とある国営投資開発組合は13.35%を占めている。その他、社内外の個人株主が発行済み株式数の86.65%を保有している。A社の個人株主グループは、同社の発行済み株式の約65%を一括売却する相手を探索している。

A社にとって最適なパートナーは日本の製薬会社で、特に抗がん剤や医療用医薬品類を開発する会社と想定される。A社はベトナム大手の抗がん剤製造企業である。A社の抗がん剤の生産量と売上高は、過去3年間で平均50%増加している

最新の評価によると、A社の株式の価格は約47,500 VNDである。今回の取引の規模は、約1兆7,888億VND(85億円)と推定される。 A社は以前、2020年に韓国のパートナーに株式を譲渡することを発表したが、投資家との最終合意に至らなかったため失敗した。しかしこのAの株主グループは依然株式売却に前向きである。そこで、この案件は日系企業にとってポテンシャルの高い投資機会であると考えられる。
ベトナムの製薬企業のM&A案件は、実は今回紹介したA社だけではない。もう一つの案件を紹介しているレポートがあるので、是非見比べていただきたい。

まとめ

本レポートではM&A案件の紹介として、ベトナムの大手製薬会社であるA社について解説した。

まずポイントとして、ベトナムにおける医薬品市場の拡大はほとんど間違いがないものである。ベトナムの経済が発展し、いわゆる先進国のような現代的な生活がより一層ベトナムで広がれば、これまでベトナムでは少なかった生活習慣病の増加など疾病構造は変化する。
実際に、ベトナムでは肥満率の上昇、特に子どもの肥満率の上昇が大きな社会問題になっている。ベトナムの現代化が逆行することは考えづらいので、今後のベトナムではより医薬品のニーズが増加するだろう。

A社はベトナム大手の製薬企業で、抗生物質や抗がん剤の製造販売に長けている。40年操業している老舗の元国営企業であり、実際に市場における影響力は大きい。
今回のコロナ禍によって、A社の成長はかなり停滞しているが、後退はしていない。アフターコロナを見据えた投資に動いており、ポジティブな展望が見られる企業である。

本レポートを読んで、A社についてもっと知りたいと感じた方は、是非ページ下部の問い合わせボタンからお問合せいただきたい。

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ベトナムでのビジネス成功のコツ

将来の成長ポテンシャルが大きいベトナム市場。ベトナム市場の有望性は感じていても、「実務上は様々な課題がたくさんある」という意見も少なくありません。

ONE-VALUEはベトナム特化の経営コンサルティング会社として、日本企業の抱える課題解決を行います。

ベトナムの市場調査を行いたい、消費者向けの調査を行いたい、ベトナム企業の情報を収集したい、現地パートナーを探索したい、ベトナムでM&Aを行いたい、その他ベトナム進出や事業拡大、投資に関する日本企業の課題をONE-VALUEは解決します。

メリット① ベトナム特化のコンサルティング会社

ONE-VALUEはベトナムだけに特化しています。ベトナム大手企業役員、有力未上場企業マネジメント層、地方政府・中央政府の高官、有識者、ベトナム消費者にアプローチ可能です。

メリット② 日本企業のニーズに柔軟対応

市場調査やM&Aから、スポットでの情報収集(スポットコンサルティング)まで幅広いニーズに応えたコンサルティングサービスを柔軟に提供します。

メリット③ 今後の有望セクターに注力

ベトナムはこれまで製造拠点として見られてきましたが、経済発展に伴う中間層・富裕層の拡大に伴い、消費市場として注目されています。ONE-VALUEはエネルギー・環境、ヘルスケア、IT、日用消費財、小売、食品、教育といった有望セクターに注力しています。

最後に

ベトナムビジネスの課題解決のプロフェッショナル集団であるONE-VALUEは日本企業のベトナムビジネスを支援します。ベトナムビジネスで課題をお持ちの方は是非ご連絡ください。随時相談はこちらから受け付けております。

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