ベトナムの大手民間食品企業であるKIDO社は、2025年6月5日に開催された定時株主総会において、食品・調味料・製菓といった主力事業に加え、不動産開発と電子商取引の2大新規分野への本格参入を表明した。今後の経営戦略として、商業施設、複合都市、住宅、オフィスなどを含む統合型都市モデルを展開し、保有土地の最大活用を通じて中長期的な収益源の多様化を目指す。
経営陣は、「Whale Bay」や「Central Tower」「KDC Residence」など、数千億ドン規模の不動産プロジェクト構想を明かし、観光誘致や都市再開発も視野に入れている。中でも、8-12 Lê Duẩn地区など価値の高い不動産については法的調整が進行中で、政府との協議を経て再開発許可を得る見通しだという。
背景には、ベトナム政府が打ち出した**第68号決議(Nghị quyết 68-NQ/TW)**による私企業支援政策がある。KIDOのCEOチャン・レー・グエン氏は、同決議が民間企業のデジタル転換や大規模投資の後押しとなっており、KIDOの事業拡張にも大きな追い風であると強調した。
また、不動産分野だけでなく、**自社商品の販売を支える新たな電子商取引基盤「E2E(End to End)」**の構築も発表された。このE2Eプラットフォームは、生産者・供給業者・最終消費者を直接つなぐもので、初期段階では社内グループの販売チャネルとして稼働し、将来的には外部パートナーにも開放される予定である。
同社はM&A戦略も並行して進めており、2024年にはフンヴオン(Hùng Vương)社の株式75.39%を取得。これにより、同社が保有するショッピングセンターの運営権も確保し、現在では約100%の稼働率で安定的に年間120〜150億ドンのキャッシュフローを創出している。今後はホーチミン市の大型商業施設「Vạn Hạnh Mall」のグループ統合も検討中である。
さらに、KIDO Foodsの残り49%株式や、「Celano」「Merino」などのブランド戦略に関する株主承認議案も提出され、ブランド統合による収益効率の最大化にも注力している。
KIDO社は今後も食品分野を中核としつつ、不動産・EC・M&Aという三本柱を戦略的に展開し、民間企業としての柔軟性と資産活用力を武器に、ベトナム経済の変化に適応していく構えである。
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