ベトナムにおける太陽光発電の動向
東南アジア諸国と比較して、ベトナムは日射量の条件が良好な国の1つである。ベトナムの太陽光発電開発に適する土地面積は、タイ、ミャンマー、カンボジアに次ぐ第4位の規模である。ベトナムで太陽光発電開発に適する土地面積は約79,000平方キロメートルと推定される。
ベトナムは国土の中部から南部にかけて、太陽光発電に適した日射量に恵まれている。特にビントゥアン(Binh Thuan)省とニントゥアン(Ninh Thuan)省は日射量の条件が良く、多くの太陽光発電プロジェクトが集中している。
これらの一部の地域では、送電線の容量不足といった問題も生じており、ベトナム電力公社(EVN)による出力制御も想定されている。
ベトナムで太陽光の電源開発が進んだのは2019年である。ベトナム政府が2019年6月末までに運転開始することを期限に電力の買取価格9.35セント/kWh(FIT制度)を定めた。その後、ベトナム政府は太陽光発電のFIT制度を地上置き、屋根置き、水上置きの3つのタイプに分類し、2020年12月末の運転開始を期限にFIT制度を改定した。
改定後のFIT制度においては、屋根置き太陽光発電が、他のタイプと比較して高い買取価格(8.38セント/kWh)に設定されたため、屋根置き太陽光発電への投資が特に進んだ。国営ベトナム電力公社(EVN)の公表情報によると、2020年初めには運転開始済みの屋根置き太陽光発電は1GWにも満たなかったが、2020年11月末には2.8GW、12月末には9.2GWと年末にかけて急速に開発が進んできた。
国営ベトナム電力会社が太陽光発電からの購入価格を引き下げ
2024年1月9日、国営ベトナム電力会社EVNは、2024年に太陽光発電システムからの電力買取価格を調整すると公表した。
具体的には、2017年6月1日から2019年6月30日まで運用された、屋根置き太陽光発電に対して、2024年の電力買取価格は9.35セント/kWであった。一方、2019年7月1日から2020年12月31日までに運用された場合、2024年の電力買取価格は8.38セント/kWとする。
これらの価格には付加価値税(VAT)が含まれていない。また為替レートは、ベトナム国立銀行が2023年12月29日に公表した1ドル=23.866ドンに基づいている。2023年の買取価格と比較して、2024年の太陽光発電システムの電力価格は、米ドル換算では横ばいであるが、ベトナムドンレート換算ではわずかに低下している。
2024年の再生可能エネルギーに関する政府方針
ベトナム商工省は、2024年も電力価格管理を続けるとしている。発電量と事業コストをふまえ、発電所に対する電気料金プランを検討する。さらに、電力小売における料金体系の決定草案を完成させ、年内に首相に提出する予定としている。
さらに、商工省はEVNならびに関連部門に対し、再生可能エネルギー発電(風力、太陽光)での発電容量を拡大するよう、年内に指示する予定としている。エネルギー資源を最大限活用することで、生産と日常生活に十分な電力供給を確保し、電力不足の回避を目指す。