ベトナムは多くの外国からの直接投資を集めている
ベトナムは様々な要因から多くの外国投資家に投資先として注目されており、近年の経済成長は、多国からの外国直接投資(FDI)によって牽引されている。
2023年の上半期には、約90ヵ国がベトナムに投資している。投資金額は韓国が最も多く、約810億ドルのFDIが行われた。次いでシンガポールの720億ドル、日本は約700億ドルとなっている。
アメリカは投資金額では7位であったが、ベトナムにとっては重要な貿易パートナーである。2022年には、ベトナムは対米貿易で約1100億ドルの貿易収支を得ている。2023年にアメリカは、中国、ロシア、日本、インド、韓国に続いて、ベトナムとの関係を「包括的な戦略的パートナーシップ」に格上げした。
格付け大手がベトナムの格付けを引き上げ
2023年12月8日、格付け会社フィッチ・レーティングスは、ベトナムの外貨・VND建て長期発行体格付を、BBからBB+に引き上げた。見通しは「ステーブル(安定的)」とし、ベトナムの発展を好意的に評価している。この引き上げは、外国直接投資(FDI)の流入が堅調に続くことで、中長期的な経済成長見通しが向上したことを反映しており、信用指標の改善が持続的に促進されると予測されている。
フィッチ・レーティングスは、ベトナムの中長期的なGDP成長率を約7%と予測しており、2023年の成長率は4.8%、2024年を6.3%、2025年を6.5%と考えている。これは、コスト面での競争優位性、人材育成、自由貿易協定への積極的な参加などにより、世界的にサプライチェーンが多様化している状況において、ベトナムがFDIを引き寄せる好条件を備えていることを示している。
ベトナムが外国投資家に注目される主な要因としては、ONE-VALUEは以下の通り考えている。
まず、ベトナムの人口構成が挙げられる。25歳未満の若い人口が全体の40%を占めつつ、教育水準も高く、ビジネスの拡大や技術発展の鍵となる。
ベトナムの地理的な優位性も投資の要因として無視できない。中国と国境を接するベトナムは、約14億人の中国消費者市場に対して、アクセス面で優位である。また、ASEAN加盟国として、ベトナムはASEAN域内における約8億人の消費者市場へも、関税無しでアクセス可能である。これらの要因に加えて、米中貿易摩擦によって、多くの企業が生産拠点を中国からベトナム等のアジア諸国へと移転している。ベトナムはアジアでの投資先として魅力的な要素が多く、多くの外国企業が、ビジネスを拡大するためにベトナムを選択している。
ベトナム経済は引き続き成長を続ける
一方で、不動産分野の緊張、外需の停滞、政策実行の遅れ等が、短期的には経済発展の懸念となるとしている。しかし、中長期的な展望は引き続き良好と評価している。さらに、2023年9月に、ベトナムはアメリカとの関係を「包括的戦略パートナーシップに」に引き上げたことは、アメリカによるベトナムへの貿易ならびにFDI活動にとって、さらに良い環境を作り出す可能性が期待されている。
また、近年台頭が著しく、日本政府も連携を強めているグローバルサウスの国々のひとつとしても、ベトナムは日本にとって重要な相手国である。ベトナムは成長力の高い市場をもつだけでなく、経済安保上、重要な相手国(日本はレアアースの16%を輸入している)である。また、国際秩序形成の鍵としても、日本とベトナムは今後とも関係強化が進み、さらなる投資が進むことが期待されている。