はじめに
世界経済がパンデミックや地政学的変動を経て再編される中、ベトナムはアジアで最も活気ある成長拠点の一つとして浮上している。製造業や輸出分野での急成長に加え、ベトナムは現代的な交通インフラ、再生可能エネルギー、ロジスティクス、先端技術分野など高付加価値分野への戦略的転換を遂げつつある。これらの分野は、急拡大するベトナム国内市場の需要を反映するだけでなく、ベトナム国内有力企業の長期的ビジョンも示している。その代表例が、ベトナム最大の民間企業であるVingroupである。
Vingroupは、未曾有の規模で戦略的分野への影響力を拡大している。たとえば、VinSpeedは北南高速鉄道プロジェクト(600億USD超)を提案し、さらに再生可能エネルギーとLNG発電システムに2030年までに25.5GWの総発電容量を持つ計画も進めている。これらの戦略は、ベトナム国内市場をリードするだけでなく、地域・世界市場への進出意欲も示しており、国内外の投資家から強い信頼を集めている。それは、Vingroup株の上昇という形で明確に反映されている。
市場変動にもかかわらず成長を続けるVingroupの株価
近年、世界的な貿易摩擦や金利変動といった影響にもかかわらず、Vingroup関連株(VIC、VHM、VRE、VPL)はホーチミン証券取引所(HOSE)で目覚ましい成長を示している。これらの銘柄は、市場の調整局面後の回復を牽引する存在となった。これは、事業の多角化戦略や大規模プロジェクトへの積極的な取り組みに対する投資家の信頼を反映している。
2025年5月20日の取引で、VICは2日連続で上限値に達し、終値は91,500VND、売り注文はなく、買い注文が約300万株に上った。VHMも上限まで上昇し62,900VNDで取引を終えた。VREとVPLも活発に取引され、いずれもプラスで終了した。

2025年初頭から5月20日までにVN-Indexは48.4ポイント(約3.8%)上昇し、そのうちVingroup株が93ポイントを押し上げた。VIC株は5か月で126%上昇し、過去3年超で最高値を更新。VHMは57%上昇し2023年8月以来の高値、VREも50%以上上昇し前年3月以来の高値を記録した。「新顔」VPLも上場から間もなく約16%の上昇を見せている。

Vingroup関連株はベトナム株式市場において大きな比重を占めており、特にVN-Indexの動向に大きく影響を与えている。Vingroup、Vinhomes、Vincom Retail、Vinpearlの合計時価総額は約850兆VNDに達し、HOSE全体の15%を占める。
このような著しい株価の上昇は、短期的な業績だけでなく、交通インフラとエネルギーといった戦略的投資分野における長期的な魅力を示している。これらのプロジェクトは、これまで主にベトナム国営企業が主導してきたベトナム国家規模のプロジェクトに、ベトナム民間企業が参入する新たな経済構造の変化を象徴しており、今後10年間のベトナム経済に新たな成長余地を提供するものである。
Vingroup、高速鉄道「北南線」プロジェクトで現代交通インフラへの投資を先導
Vingroup関連株の成長の背景には、同社の安定した事業運営に対する投資家の信頼と、将来的に有望な分野への積極的な進出がある。従来の不動産や小売にとどまらず、同社は現在、現代交通インフラと再生可能エネルギーという二大戦略分野への注力を明確にしている。
2025年5月14日、Vingroup傘下のVinSpeedは、国家重点プロジェクトである北南高速鉄道の投資を正式に提案した。このプロジェクトは2024年11月に国会で投資方針が承認されたもので、総投資額は約1,700兆VND(約670億USD)に達する。総延長1,541km、ハノイ・ゴックホイ(Ngoc Hoi)駅からホーチミン・トゥーティエム(Thu Thiem)駅まで、20省・都市を通過し、乗客駅23駅、貨物駅5駅を設置する予定である。移動時間は従来より大幅に短縮され、わずか5時間になる見込みである。
提案によると、総投資額は1,562兆VND(約613.5億USD)で、用地買収・移転費を含まない。VinSpeedは全体の20%(約312.33兆VND、約122.7億USD)を自己資金でまかない、残りを国家予算からの無利子融資(35年間)で調達する計画である。2025年12月までの着工、2030年12月までの全線運行開始を目指しており、ベトナム政府の当初計画より5年早い。
本提案は、科学技術革新とデジタル変革を促進する「第57号決議」や、民間経済発展を支援する「第68号決議」など、党・政府の発展方針と軌を一にしており、国家レベルのプロジェクトにおける民間の役割拡大を象徴している。
再生可能エネルギーおよびガス火力発電への進出
交通インフラと並び、Vingroupは再生可能エネルギーおよびLNGガス火力分野にも大規模な投資を進めている。2025〜2030年の間に300億ドルの投資を計画しており、持続可能な成長目標への貢献に加え、国際的パートナーにとって魅力的な投資機会となっている。
具体的には、Vingroupは電力開発計画第8(PDP8)次改訂案への複数プロジェクトの追加を政府に提案した。2025~2030年にかけて20,500MWの再生可能エネルギーを開発する意向を示しており、これは200〜250億USDに相当である。対象地域は、ソンラ、ダクラク、ニントゥアン、ビンフオック、ドンナイ、チャーヴィン/ソクチャン、カインホアの7省で、太陽光・風力発電に適した地理条件を備えている
これに加え、ハイフォン市には5,000MWのLNGガス火力発電所(約55億USD)を2025〜2030年に建設する予定である。このプロジェクトは、BOTナムディン1、クアンチ、ビンタイン3、ソンハウ2など、遅延している大規模火力発電所の不足分を補う戦略的な位置づけとなっている。
2030年までにVingroupが投資を予定している発電容量は計25,500MW、総投資額は250~300億USD。さらに2031~2035年には追加で27,000MWの開発が予定されている。PDP8では、2030年に15万MW、2050年には57.3万MWの発電容量を目指しており、石炭火力の割合を減らし、再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げることが掲げられている。

ベトナム政府は現在、エネルギー産業への民間投資を積極的に奨励し、国際的な資本の誘致を推進しており、この分野は新たな産業化段階における柱と見なされている。Vingroupのような大手企業の参入は、ベトナムのエネルギー市場がいかに「開かれ」、かつ「成熟」しているかを明確に示す証左である。国際投資家にとって、これは急速に成長し、持続可能な発展を目指す経済とともに歩む絶好のタイミングとなっている。
2025–2035年におけるインフラ・エネルギー投資の戦略的拠点としてのベトナム
2025〜2035年の間、ベトナムは都市化の加速、ベトナム国内消費の増加、持続可能な成長政策の追求により、インフラ・エネルギー分野の投資先としての戦略的重要性を高めている。政府は2050年までのネットゼロ排出達成を公約しており、「第57号決議」や「第68号決議」などを通じてインフラ・エネルギーへの投資基盤を整備している。
交通インフラ分野では、高速鉄道、港湾、地域連携型ロジスティクス網など、数多くの大規模プロジェクトが推進されており、国内外の投資家にとってPPP(官民連携)モデルを通じた参入機会が広がっている。
また、エネルギー分野、特に再生可能エネルギーは急成長段階に突入しており、PDP8では、太陽光、風力、バイオマスが電力供給の中心とされている。小規模分散型から統合型エネルギー施設・スマートグリッドへの移行により、先進技術、グリーンファイナンス、高度人材への需要が高まっており、Vingroupのような技術・資金力のある企業にとって有利な市場となっている。
2025年2月14日のSKグループ会長チェ・テウォン氏のベトナム訪問でも、LNG電力インフラの構築を通じた戦略的協力の意思が示されるなど、国際的関心の高さも見られる。

出所:https://baochinhphu.vn/tong-bi-thu-to-lam-tiep-chu-tich-tap-doan-sk-han-quoc-102250214182909226.htm
若年層の多さ、中間層の拡大、安定した政策指針、2045年の高所得国入りという国家目標などを背景に、ベトナムは有望な消費市場であると同時に、長期投資の拠点としても注目されている。これは、今まさに投資家が先手を打ち、持続可能な発展と現代的工業化に向けてベトナムと歩調を合わせる絶好のタイミングであることを意味している。
終わり
インフラ交通やエネルギーといった重要分野における戦略的なビジョンと大胆な取り組みにより、Vingroupはベトナムの近代化と持続可能な発展において、民間経済部門の先駆者としての役割を確立しつつある。同社の飛躍的な成長は、経済成長に新たな原動力をもたらすだけでなく、2025~2035年の戦略的発展期において、ベトナム国内外の投資家に幅広い協力の機会を提供している。
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