ベトナムの医薬品市場は依然として約95%を伝統的な小規模薬局が占めているが、Long Châu、Pharmacity、An Khangといった近代的チェーン薬局が急成長しており、流通構造の転換が進行している。2025年時点で全国に5万以上の薬局が存在し、チェーン薬局はまだ5%に留まるものの、都市部を中心に勢力を拡大している。
市場成長を支える背景には、人口の高齢化と所得増加がある。高齢化に伴う医薬品需要の増加、さらに中間層の拡大が購買力を押し上げ、ETC(処方薬)とOTC(一般薬)両市場の拡大を後押ししている。ETC市場は全体の60%を占め、年平均成長率8%で2025年に57億USD規模が予測される。OTC市場も40%を占め、18億USDに達すると見込まれる。
さらに、医療制度改革も市場を後押ししている。入札制度の透明化を定めた「入札法2023」や「通達06/2023/TT-BYT」により、病院への薬品供給が円滑化された。診療法改正(法15/2023)は、病院外で購入した薬品に対しても保険適用を認め、ETC市場の拡大を支援している。また、電子カルテや処方箋デジタル化の推進により、薬の購入と配送の利便性が飛躍的に高まりつつある。2025年7月施行の「改正薬事法」では、OTC薬のオンライン販売が合法化され、チェーン薬局のEC展開を後押ししている。
一方で課題も多い。医薬品原料の90%以上を中国やインドからの輸入に依存しており、供給リスクが残る。さらに、偽薬や品質不良品の流通は深刻であり、現行制度では行政罰にとどまり抑止力が不足している。規制の緩さが市場の信頼性を損ね、成長を妨げる要因となっている。
このように、ベトナムの医薬品市場は大きな成長余地を有し、近代的薬局チェーンやECの発展によって新たな局面を迎えている。ただし、制度整備や品質管理の強化が伴わなければ、真の意味での「黄金市場」として成熟することは難しい。企業には経営効率化と同時に社会的責任が求められており、透明性と安全性の確保が市場拡大の鍵となる。
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