ベトナム市場調査レポート販売
ベトナムの不動産市場の調査分析:マクロ市況から都市別動向・将来展望までについてのレポートを販売しています。

レポート基本情報
– ページ数(企業紹介ページを除く)25 ページ
– 発行年月日:2025年6月
– 発行:ONE-VALUE株式会社
– ファイル形式:PDF形式
– 価格:ページのフォームからお問い合わせください
– 購入方法:
※最終的には請求書を発行し、銀行振込となります。カード決済にも対応しております。カード決済の場合、決済完了後1~3営業日以内にご連絡いたします。
※本レポート資料を用いたワークショップ開催、ベトナム専任コンサルタントへのベトナム市場・業界動向に関するご質問ができるスポットコンサルティングのサービスもご提供しております。
※対面またはオンライン形式にて、日本企業の皆様にベトナム事業展開に関するご質問にすべてご回答するサービスです。
※請求書払いをご希望の方は左の問い合わせフォームからお問い合わせください。
※ご注意ください
本レポートは、ご注文を受けてから最新情報を反映して作成する場合がございます。そのため、ご注文から納品までに2週間〜3週間ほどお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承のうえ、お早めにご相談ください。
ベトナムのマクロ経済動向と不動産市場への影響
ベトナムの経済は堅調な成長を続けており、不動産市場にも大きな影響を与えている。2024年にはGDP成長率 が7.09%に達し、政府目標を上回った 。政府・中央銀行は景気刺激のため政策金利を相次いで引き下げ、 住宅ローン金利の低下による借入環境の改善が購買意欲を後押した 。積極的な財政・金融政策と安定したマクロ経済環境は不動産市場の回復基調を支える要因となっている。また、対内直接投資(FDI)の増加も 不動産市場に好影響を与えた。2024年の新規認可FDI額は前年比10.0%増の約336.9億ドルとなり、業種別では製造業に次いで不動産分野が約50.9億ドルで第2位(前年の2.4倍)に急増した。政府による制度改革やインフラ投資も追い風となり、マクロ面の好調が不動産需要を下支えしている。
ベトナム不動産市場の全体像・最近の動向
近年のベトナム不動産市場は、急成長の後に一時的な停滞を経て、再び回復の兆しを見せている。2010年代後半には不動産投資ブームが起こり、主要都市でマンション開発が相次いでいる。しかし投機過熱に伴い違法な社債発行や詐欺的販売が相次ぎさらに新型コロナ禍もあって、2022年前後には市場が急減速した。当局の規制強化により多くの開発案件が資金難に陥り、一時はハノイ市とホーチミン市で約700件の建設が中断したとも報じられている。その後、2023年後半から政府の金融緩和策や規制整備を背景に市場は徐々に持ち直し、2024年には回復基調が鮮明になった。2024年の新規住宅供給戸数は約6.5万戸と前年の3倍に急増し、販売在庫も約8.1万戸と前年比2倍に拡大した。需要面では富裕層向け高級物件が市場の大半を占め、手頃な価格帯の住宅はほとんど姿を消している。2024年に発売されたマンションの約65%は1㎡あたり5千万ドン超の高級物件であり、低・中所得者向け住宅の供給不足が顕著である。住宅価格も2019年以降上昇が著しく、ハノイでは5年 間で約72%、ホーチミン市で約34%上昇している。市場は回復しつつあるものの高価格帯に偏重しており、 需給のミスマッチが課題となっている。
ハノイ市の不動産市場動向
首都ハノイの不動産市場は堅調な成長を示しており、住宅価格の上昇が著しい状況である。2024年には住宅需要が旺盛で、マンション価格は前年同期比で22.3%も上昇し、平均で1㎡あたり約2,547ドル(約6,000万ドン)に達した。これは他都市を上回る伸びで、高額帯物件への旺盛な需要を示している。郊外では大規模な都市開発プロジェクトが進み、新興エリアでの住宅供給が拡大している。一方、市内中心部では土地供給余地が限られる中、中古物件も含めて価格上昇傾向が続いている。ハノイでは、新都市区の形成に伴うインフラ整備が積極的に進められている。特に西部エリアのナムトゥーリエム区やハドン区は、行政施設の移転や新規商業施設の開発が相次ぎ、新たな経済圏を形成している。また、北部のドンアイン区では大規模なスマートシティ計画が推進されており、これに伴う住宅需要の急増が予想されている。住宅価格の高騰は、中心部から郊外への住民移動を促し、新たな住宅開発プロジェクトを活性化させている。
ホーチミン市の不動産市場動向
経済中枢ホーチミン市(HCMC)の不動産市場は、近年調整局面を経て安定化に向かいつつあある。住宅価格は依然高水準ですが、2024年第3四半期時点でマンション平均価格は約3,148ドル/㎡となり、前年比で2.5%下落した 。需要の一服により同時期のマンション販売戸数も前年比4%減少している。当局は土地価格評価方法の見直しなど透明性向上策を進めており、市場心理の改善を通じて2025年以降の緩やかな回復が期待される。供給面では、新規住宅供給量が大幅に減少し2024年は過去5年で最低水準となった 。特に中低価格帯の不足が顕著で、多くの新規プロジェクトが中高級以上に集中したため販売は伸び悩んだ。一方、都市東部のトゥードゥック市では大規模開発が進行中で、例えばビンホームズによる郊外大型マンションでは発売直後に数百戸が即日完売する例も見られた。このようにHCMC全体では供給不足と需要低迷が続く一方、信用力の高い大手デベロッパー案件には依然根強い購買意欲が存在する。
また、ホーチミン市では、新たな都市鉄道(メトロ)1号線の建設が進んだ結果、沿線地域の不動産価格に顕著な影響を与えている。特にトゥーティエム新都市区は戦略的開発地域として指定され、金融・商業施設の集積地として注目されている。トゥードゥック市におけるイノベーションセンターの設立計画も進展しており、住宅・オフィス需要の高まりが見込まれている。
その他注目都市の不動産動向(ダナン、ハイフォン等)
ハノイ・HCMC以外でも不動産市場が活発な都市がある。代表的なのは中部の観光都市ダナンと北部の工業都市ハイフォンである。2024年のダナンではマンション価格が前年同期比+32%と急騰し、土地価格も前年比約12%上昇した。観光業の回復に加え、自由貿易区や金融センター設立の構想が投資マインドを刺激し、高級リゾートやマンションへの需要が高まっている。 ハイフォンでは工業化に伴う人口・所得増で不動産需要が拡大中である。マンション平均価格は約 4,500万ドン/㎡とハノイより割安ですが、近年上昇基調にある。港湾・空港の拡張や高速道路整備などインフラ投資も奏功し、住宅や商業施設の開発に追い風となっている。
ビンズオン省やドンナイ省といったホーチミン市周辺の衛星都市は、都市間交通網整備の恩恵を受け、不動産市場が急速に拡大している。特に工業団地への投資が集中することで、これらの地域は物流・工業施設の開発拠点として注目されている。観光都市のニャチャンやフーコック島でも、外国人観光客の回復に伴いホテルやリゾート施設の開発が再活性化され、投資が盛んになっている。
不動産セクター別市場動向(住宅、オフィス、商業、物流、観光)
住宅(レジデンシャル):新規住宅供給の約7割をマンションが占め、富裕層向け高価格帯物件が大半である。一方、手頃な価格の住宅や公営の社会住宅は慢性的に不足している。政府は約120兆ドン規模(50億ドル)の 社会住宅向け低利融資を導入したが、2024年時点の融資実行率は1%未満と極めて低調である。住宅価格高騰と供給不足の是正が引き続き課題であるが、中長期的には都市化の進展と世帯所得の向上により住宅需要は増加すると見込まれている。
オフィス:オフィス需要は堅調ですが、新規供給増により空室率が上昇している。ホーチミン市では大型ビル竣工の影響でグレードA空室率が2024年に約20%まで上昇した。ただし都心好立地の物件では賃料は高水準を維持しており、近年は環境認証を取得したグリーンオフィスの供給も増えている。
商業施設(リテール):小売市場の活況を背景に商業施設への投資も堅調である。2024年の小売売上高は前年比 +9.0%と堅調で、国内外の小売業者の新規出店が活発である。日系イオンモールによる地方都市での大型商業施設開発など新規モール計画が進み、都市中心部でも高級ブランドの進出が相次いでいる。
物流・工業不動産:産業不動産セクターはベトナム不動産市場の成長エンジンとなっている。製造業への旺盛な国外投資(中国+1戦略等)に支えられ、主要都市近郊の工業団地用地賃料は2024年に四半期ごとに2~5%上昇するほど需要が高まった。入居率も軒並み90%以上に達し、新規の工業団地開発も各地で相次いでいる。総じて物流・工業不動産は製造業の発展とともに拡大が続く見通しである。 物流・工業不動産市場では、サプライチェーン再編や製造業の拡張が追い風となり、ベトナム全土で新たな工業団地開発が進められている。国際規格に準拠した物流施設の供給が特に不足しており、外資による投資が活発化している。
観光・ホテル(ホスピタリティ):観光客数は2024年にコロナ前の98%水準まで回復し 、ホテル稼働率も上昇している。外資ホテルチェーンや地場大手による高級リゾート開発が活発化しており 、政府のビザ緩和策も追い風となって観光不動産の成長余地は大きい。
不動産関連の政策・法制度と参入環境
ベトナム政府は不動産市場の健全な発展と投資促進のため、近年関連法規の改正を進めていまる。特に2024年8 月施行の新しい土地法・住宅法・不動産事業法の3法は市場に大きな影響を与える重要法令である 。例えば、新土地法では公定地価を市場価格に即して4~38倍に見直す改革 、不動産事業法では開発プロジェクト承認手続きの簡素化、住宅法では外国人の住宅購入枠の明確化 などが盛り込まれ、市場の透明性と公正性が向上した。これら制度整備や金融緩和策により不動産開発への資金環境が改善し、海外企業にとっても参入しやすい状況が整いつつある。
主要企業・競争環境
不動産開発業界は国内大手に市場が集中している。2024年に供給された新築住宅の約62%を大手および外資系デベロッパーが占め、ビンホームズ1社だけでシェア約20.5%に達した。次いでマスタリーゼが9.4%、サン・グループが5.5%となり、上位3社で約35%を占めまてた。残りも多くが大手グループや海外企業との合弁で占められており、市場は資金力・ブランド力のあるプレイヤーに握られている。実際、市場低迷期でも販売好調だったのは大手企業のプロジェクトに限られ、知名度に劣る中小開発では販売不振からプロジェクト中断や事業売却に追い込まれる例もみられた。競争環境は引き続き大手優位であるが、2024年には経営難企業のM&Aが増え始めており、今後さらに業界再編・寡占化が進む可能性がある。
不動産市場の課題とリスク
ベトナム不動産市場の主な課題・リスクとして、住宅価格高騰による住宅取得難と手頃な住宅の供給不足、開発業者の資金調達難(過去の違法社債発行や詐欺的販売事件を含む)、高級住宅や都心オフィスの一部過 剰供給による価格・稼働率調整 、制度運用の不透明さ・煩雑さ、そして世界経済の変動に伴う需要減 退や金融リスク(不良債権問題など) が挙げられる。これらへの対処として、政府・業界は社会住宅開発の 促進や融資健全化、法制度の細則整備などに取り組み始めている。
ただし行政手続きの非効率性は依然として大きな課題であり、開発プロジェクトの許認可プロセスに多大な時間がかかることが市場参入の障壁となっている。また、土地価格の急激な上昇は投機的リスクを伴い、不動産バブルの懸念を招いている。特に都市部での交通渋滞やインフラ未整備は、長期的な都市計画と開発効率を低下させ、市場の持続的発展を阻害している。
市場の機会と将来展望
今後のベトナム不動産市場は、中長期的に大きな成長余地がある。高い経済成長と急速な都市化によって住宅・商業施設への需要増が続くほか、2024年施行の新土地法・住宅法など制度改革で市場の透明性と投資環境が改善し、海外からの資金流入も拡大している。実際、2024年の不動産セクター向けFDI認可額は約56億ドルと前年から89%増加し過去最高水準に達した。今後も交通インフラの飛躍的整備やスマートシティ開発などが各地で計画されており、新たな市場機会が創出されることが予想される。課題を適切に解消しつつ持続可能な発展を遂げることで、ベトナム不動産市場はASEAN有数の有望市場としてさらなる飛躍が期待される。
日本企業にとっては、環境配慮型の都市開発や高機能物流施設などの分野で、持ち前の技術とノウハウを活用することにより、市場での競争力を高めることが可能である。