はじめに
ベトナムのカーボンクレジット市場は今後大きな成長が期待できる。森林資源の利点に加え、急速に発展する産業や温室効果ガスの排出に関する国際的な法規制などの客観的要因により、ベトナムのカーボンクレジット市場は高い潜在力と大きな成長余地を持つ市場と位置づけられている。その中でも、森林カーボンは温室効果ガスの吸収において最も一般的で重要なカーボンクレジット市場である。本レポートでは、ONE-VALUEがベトナムにおける森林カーボン市場とその潜在性を分析する。
カーボンクレジットの概要
カーボンクレジット(Carbon Credit)は、温室効果ガスの排出削減や吸収に対して発行される取引可能な証明書または許可証を指す。これにより、企業や団体が排出量を削減できない場合、他の企業が達成した排出削減量を購入して、自社の排出量を補うことができる。カーボンクレジットは、主に二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するための市場メカニズムの一部として機能する。
カーボンクレジット市場とは、温室効果ガス排出権の売買が行われる取引システムである。主にCO2排出権が取引されるが、企業や組織は温室効果ガスの削減または除去を行う団体からカーボンクレジットを購入し、自身の排出量を相殺することが可能である。
カーボンクレジットは、1トンのCO2または他の温室効果ガスと同等の量の削減または除去を意味する。このため、企業や団体がカーボンクレジットを購入することで、その企業や団体はお金を払ったため、1トンのCO2を排出する権利を得る。
ベトナムにおける森林カーボンクレジット市場の概要
本章では、ベトナムにおける森林カーボンクレジット市場の概要について解説する。
ベトナムの森林資源の現状
ベトナムは豊富な森林資源を有しており、これが大気中の温室効果ガスを吸収する重要な資源となっており、森林カーボンクレジット市場においてベトナムが大きな潜在力を持つ前提条件となっている。以下のグラフは、ベトナムの森林資源の潜在性を示しており、森林面積および森林被覆率が増加傾向にあることがわかる。2024年には、ベトナムの総森林面積は14,860.2ヘクタールに達し、2008年と比較して1.13倍の増加を記録している。
その中で、森林被覆率は42%に達し、2008年から3.3%増加した(2024年の農業、林業、水産業に関するベトナムのデータによる)。しかし、総森林面積に対して天然林面積はわずかに減少傾向にあり、人工林面積は増加している。天然林の減少は、主に森林伐採、違法な木材伐採、および気候変動による影響が原因である。海では海面上昇によりマングローブ林の面積が減少し、山岳地域では洪水によって上流域の森林面積が減少している。一方で、人工林面積の増加はベトナム政府の植林政策によるものである。
森林面積と森林被覆率は地域によって異なり、森林のカーボンクレジットの潜在性もまた地域によって異なることが示されている。現在の林業区分によれば、ベトナムは、北東部、西北部、紅河デルタ地域、北中部、南中部沿岸、高原地方、東南部、そしてメコンデルタの8つの地域に分類される。これらの中で、広大な山地を有する北東部、北中部、南中部沿岸、高原地方は、広大な森林面積と高い森林被覆率を誇る地域である。森林資源に関する利点があるこれらの地域は注目されており、ベトナムで最も大きなカーボンポテンシャルを持つと評価されている。
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