2025年6月12日、ハノイにて、NIC(国家イノベーションセンター)、JICA(国際協力機構)、およびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は共同で「ベトナムAI経済報告書」を発表した。報告書によれば、ベトナムにおけるAI(人工知能)は、2040年までに1200億〜1300億ドルの経済価値を創出する可能性があり、同国の経済成長の中核的要素となると見込まれている。
このうち、450億〜550億ドルはAI技術を活用した製品・サービスへの消費者需要によるものであり、600億〜750億ドルは生産性向上、自動化、予測分析によるコスト削減に起因するものである。グローバルでは、AIは2030年までに世界経済に5兆ドルの貢献が見込まれており、ベトナムはその流れに積極的に加わろうとしている。
NICのヴ・クォック・フイ所長は、AIを国家戦略の中核に据える重要性を強調し、ベトナムはこの分野で確固たる地位を築く覚悟があると述べた。JICAの久保義智代表も、報告書と戦略提言が政策立案者や企業、投資家の連携強化に寄与するとの期待を示した。

一方で、報告書はベトナムのAI活用には課題も多いと指摘する。現在、AIの応用は多くが試験段階であり、導入は一部の省庁や地方政府に限られている。全国展開には、持続可能な財政モデル、分野横断の連携、明確なユースケースの共有が不可欠である。
企業側もAI活用において、データアクセスの困難、AI人材の育成不足、費用対効果への懸念など、構造的な課題に直面している。ただし、ベトナムのIT人材は今後も年率9%で成長し、2026年には53万人に達する見込みであり、AI教育プログラムも10大学以上で導入が進んでいる。
今後の推奨事項としては、①高インパクトなユースケースを優先的に導入すること、②AIスタートアップのエコシステムを制度面・資金面から支援すること、③国際連携とオープンデータ基盤の整備、④AIガバナンスとセーフティのフレーム構築が挙げられる。
NICとJICAは、AIスタートアップを支援する加速プログラムの実施も表明しており、ベトナムが地域および世界のAI拠点となる基盤作りが始まりつつある。
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