ベトナム電力小売価格調整の新ルールが5月より施行

電力小売価格の調整メカニズムに関する最新情報
1. EVNへの影響
2. エネルギー企業への影響

電力小売価格の調整メカニズムに関する最新情報

2024年3月26日、レ・ミン・カイ副首相は、平均電力小売価格の調整メカニズムを規定する、首相決定第5号/2024/QD-TTg号に署名し、公布した。この決定は、2017年6月24日付の首相決定第24号/2017/QD-TTg号に代わり、2024年5月15日より発効する。

新たな規定により、平均電力小売価格の調整間隔は、6か月から3か月に短縮される。他のASEAN諸国の調整期間は、1～4ヶ月（シンガポール3ヶ月、タイ4ヶ月、ラオス3ヶ月等）であり、この変更は妥当であると考えられる。

EVNへの影響

今回の改正により、ベトナム大手電力公社EVNは、マクロ経済の動向に応じて、より柔軟かつ効果的に電力料金を管理することが可能となる。

この改正は5月に施行される。2024年末までに、ベトナム電力公社（EVN）は、平均電力小売価格を3回まで（具体的には5月、8月、11月）、柔軟に調整できるようになる。この期間であれば、EVNは大臣の承認を必要とせず、3％から5％の範囲内で価格調整を行う裁量権を有する。そのため、EVNは最大15％の値上げが可能となる。しかし、過去10年間、電気料金が毎年10％を超えて値上げされたことはない。わずか半年でこの基準を超える値上げを実施することは、国会が抵抗する可能性が高い。そのため、電気料金の上昇は5％から10％が予測される。EVNは、5～10％の増加による収入増が見込まれる。

EVNは、2022年に26兆ドン、2023年に17兆ドンの損失を発生させている。さらに、投資と建設に莫大な資金を必要としている。この現状をふまえると、EVNにとって収入増は不可欠である。

長期的には、この変更によって、EVNがPDP8に則り、風力発電やガス発電等、高価格電力の比率を高めることにも貢献する。

エネルギー企業への影響

2023年のEVNの赤字により、発電所や建設会社の利益が圧迫され、発電所の出力を押し下げられている。さらに、競争市場での水力発電も制限されることとなる。電気工事・施工事業者にとっては、案件数が限られる、または保留中となることで、落札後も利益率が圧迫されている。

2022年および2023年には、EVNは発電所からの電力購入や、国内の石炭・ガス業者から石炭購入のために負債を抱えているため、運営のためのキャッシュフローが不足している。新エネルギー、特に再生可能エネルギーへの投資は、電力購入契約（PPA）の交渉が複雑かつ時間を要するうえに、電力購入価格も低いため、投資家にとって魅力的ではない。

今回の改正により、EVNの建設投資が再開し、建設会社に多くの機会がもたらされることが期待されている。また、再生可能エネルギーや電力会社への投資家にも明るい兆しとなる。

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