ベトナムのM&A市場の概要
本章では、ベトナムのM&A市場の概要について解説する。
不況は2024年末まで続く
全体として、世界的な合併・買収 (M&A) は 2024 年第 2 四半期も引き続き緩やかに増加する。長期にわたる高金利、不利な規制環境、過大評価につながる株式市場の高騰が、 2024 年第 2 四半期のM&A活動に重荷となっている。ディールロジックのデータによると、第2四半期に世界で締結された取引件数は21%減の7,949件となったが、取引総額は3.7%増の7691億ドルとなった。

世界の政治的不安定およびマクロ経済の不確実性に直面し、外国投資家も慎重になっているため、グローバルな取引活動と取引価値の両方が停滞している。
その中でも特に大きな影響を与えたのは、主要国での金融引き締め政策による高金利政策であり、これにより取引を行うコストが高騰している。さらに、為替の不安定さも、クロスボーダーの評価と投資判断を困難にしている。
ベトナムは、インフレを4%以下に抑え、GDP成長率も5.05%と安定した水準にあるが、世界のM&A市場の減速の例に漏れない。2023年の取引総額は前年同期比で33%減少し、また取引件数も2022年と比較して34%と大幅に減少した。しかし、昨年の取引額の平均は3,020万米ドルで、2022年と比べて1.1倍となっており、ベトナムでのM&A投資の状況は依然として低迷しているものの、回復の余地は残されていることを示している。

外国資本が引き続きM&A市場を席巻
2023年の流れを受け、2024年当初からもM&A市場における外国資本の活動が活発で、上位5件の大型取引も外国投資家によるものであった。ベトナム計画投資省のデータによると、昨年、外国投資家による資本拠出、株式または出資持分の取得に関する取引は3,450件以上あり、その総額は85億ドルを超えた。この数字は2022年と比較して約66%の増加を示している。
具体的には、2023年の最初の10ヶ月間に、M&Aによる資本流入は大きな変化を見せており、国内投資の減速が見られる一方で、外国投資家は市場への投資を積極的に進めている。この間、国内投資家は投資に消極的な姿勢に転じており、M&Aの取引額は1億6160万ドルに減少し、発表された取引総額の約4%を占めるにとどまった。一方で、外国投資家は取引額のトップ5を独占しており、日本、シンガポール、アメリカが市場で最も活発に活動する外国投資家として発表され、ベトナムにおけるM&A取引総額の70%以上を占めた。

