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【解説】コロナ収束後もベトナム市場は魅力的な投資先か?

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東南アジア諸国の中でベトナムは最も親日である 

近年、日系企業による進出が増えている東南アジア諸国は概して親日と言われますが、その中でもベトナムは特に日系企業が進出し易い国かもしれません。外務省が2019年に東南アジア10カ国含む19カ国に行った対日世論調査では、「次の国のうち,最も信頼できる国はどの国ですか。(一つ選ぶ)」という質問で、ベトナムの回答者の51%が日本を選んでおり、他の東南アジア諸国と比べてもその割合は高くなっています(2位はミャンマーの40%、3位はタイの39%)。また、「あなたの国と日本は現在どのような関係にあると思いますか。」という質問でも、「とても友好関係にある」を選んだ回答者は69%と、フィリピンの70%に続いて高い割合です。

東南アジア諸国の中でも特に、ベトナム人が親日である理由として、以下が挙げられます。

  • 日本はアジアで最初に経済発展を遂げ、世界各国に経済進出している技術先進国である。
  • 共に儒教の影響を受け文化的に類似しており、日本人は礼儀正しく協調性がある。
  • 日本のODA供与額がベトナムで一番であり、多くの日系企業がベトナムに進出している。これらのニュースはテレビや新聞などでよく紹介されている。
  • 進出している日系企業が生産・製造する製品の質が高く、安全性への信頼度も高い。
  • ドラえもんやドラゴンボール、コナンなど日本のアニメがベトナムでも人気である。
    南シナ海全域の領有権を主張する中国と対峙しており、同じく中国からの侵入に悩まされている日本に対しての漠然とした期待や、安全保障上での同盟国のような感情がベトナム国民には芽生え始めている。
  • 南シナ海全域の領有権を主張する中国と対峙しており、同じく中国からの侵入に悩まされている日本に対しての漠然とした期待や、安全保障上での同盟国のような感情がベトナム国民には芽生え始めている。

ベトナムは東南アジア諸国の中でも日本と文化的に似通っており、多くの日系企業が進出し、経済的にも安全保障的にも利害が一致することの多い両国の関係は、「緩やかな同盟関係」や「自然の同盟関係」と最近評されるようになっています。

日本ブランドの確立はベトナム進出のアドバンテージ? 

日系企業がベトナムに進出する際のアドバンテージとして、他の東南アジア諸国と比べても、日本ブランドが確立されている点が挙げられます。ベトナムでは、「日本製品=質が良い、安全」というイメージが出来上がっており、例えば、ハノイやホーチミンだけでなく、地方の都市部でもベトナム人をターゲットとした日本製品の販売店が進出しているのを頻繁に見かけます。これらの販売店は、全国進出のチェーン店もあれば、民家の1階に店舗を構え家族で経営しているケースもあります。輸送費がかかるため、通常日本での1.5倍~2倍くらいの価格で販売されていますが、この種の店は進出地域を拡大し、増え続けています。健康食品、赤ちゃん用ミルク、薬、化粧品などが人気商品です。  

下の図表は、ホーチミン(ベトナム)、バンコク(タイ) 、ジャカルタ(インドネシア)の市民を対象に、日本の加工食品、レストラン、アルコールの利用意向を尋ねた結果を示しています。東南アジアで最も大きな2つの都市であるバンコクとジャカルタの市民と比べ、ホーチミンの市民のほうが消費意欲が強いことが分かります。タイやインドネシア料理のように東南アジアでは辛い料理が多く、アルコールに関してはイスラム国であるインドネシアで消費量が少ないのは必然である一方、ベトナム料理は味付けが日本料理に近い、というのが人気の一因かもしれません。東南アジア諸国の中で、ベトナムは嗜好や好みが日本と近いという点からも、日本商品が受けいれられ、日系企業は進出し易いかもしれません。 

ベトナムでは電化製品、食料品、衣類、雑貨などの製品だけでなく、日本式教育のようなサービス業も日本ブランドが確立しており、日系企業が進出し販売するというだけで、消費者への一つのアピールになります。特に昨年、日本からベトナムへの農林水産物・食料品分野の輸出総額は2019年よりも17%増え、534億円に達し、ベトナムは、香港、米国、中国、台湾に続き、日本の農林水産物の輸出先上位5カ国にランキングされ、東南アジア諸国の中では1位でした。また、日本商品のターゲットとなる顧客層は購買力のある都市部の人が中心ですが、経済発展を遂げるにつれ、都市部から離れた地域にも進出していく店舗が増えることが予想されます。ただし、日本製品ほど高品質ではないものの、質は良く価格は安い製品を手掛ける韓国企業の進出によって、他の東南アジア諸国同様ベトナムでも競合が激しくなっており、高品質をアピールするだけでなく、プロモーションを含めた包括的な進出・販売戦略の構築が必要となっています。

ベトナムの経済成長には安定感がある

ベトナムの経済は、ただ上向きというだけでなく、安定性が高いとも評されます。本章では、そんなベトナム経済の成長と安定性について解説します。

ベトナムは順調な経済成長を続けている

1990年代に本格的に市場経済を導入して以降、ベトナムのGDPは年6%~7%で安定して増え続けています。下の図表にあるように1990年に約82億ドルだったGDPは2020年には約3,408億ドル(推計値)に、1990年に122ドルだった一人当たりのGDPは2020年に3,499ドル(推計値)になっています。今後、2050年までの年間GDP平均成長率は5%前後と言われており、年間5%のペースでGDPが伸び続けたと仮定した場合、2030年のGDPは約5,800億ドル、一人当たりのそれは約5,700ドルに、2050年のGDPは約1兆4,700億ドル、一人当たりのそれは約1万5,100ドルに達します。

コロナ過でも力強く経済成長を続ける

最近は特に、東南アジアに進出を検討している外資系企業の中でも、ベトナムの安定した力強い成長の象徴として、コロナ過での経済成長が注目されています。下の図表は、東南アジア諸国のGDP成長率をコロナウイルス感染拡大前の2019年と感染拡大中の2020年とで比較した表です。2020年はGDP成長率がマイナスとなる東南アジア諸国が多い中で、ベトナムは一定の強制力を伴った国民の行動制限と感染者の追跡によって感染拡大の抑制に成功し、進出している外資系企業からも高い評価を受けています。経済成長率はミャンマーの次に高いプラスの成長率を達成しています。ただしミャンマーは、現在、国軍のクーデターによる政情不安のため進出中の外資系企業の経済活動にも支障が出ており、世界銀行は今年の経済成長はマイナス10%まで落ち込むと予測しています。一方、ベトナム共産党は強固で秩序のある集団指導体制を確立しており混乱が起こる可能性は少なく、東南アジアの進出を検討するにあたって、近年、ベトナムは最も安定した経済成長を遂げている国と言えます。

中間層の急増がベトナム市場を魅力的にする

 ベトナムに進出を検討するうえで、特筆すべきなのが消費市場のメインアクターとなる中間層の急増です。下の図表は、2000年と2020年のベトナムの世帯所得分布の比較です。中間所得層(世帯所得5,000~34,999US$)の割合が、2000年の11.7%から、2020年には51.9%にまで上昇しており、 特に上位の中間所得層(10,000~34,999US$)の割合が1.2%から17.7%に増加しているのが分かります。今後も経済発展とともに中間層がさらに増加し、内需拡大に期待する海外企業にとって、ベトナムは東南アジアの中でも魅力的な進出先になっていきそうです。

小売市場とEC(Eコマース)市場がベトナム市場の拡大を牽引する

ベトナムでは、日本と同じようにオンラインショッピングや電子決済が盛んに行われています。販売業でベトナムに新規参入する場合は、基本的にECが重要なチャネルになるでしょう。本章ではベトナムのEC事情を解説していきます。

小売市場での進出・出店が相次ぐ

一般的に1人当たりのGDPは3,000ドルを超えると、自動車や大型家電、家具といった耐久消費財の購入意欲が急速に高まると言われており、ベトナムでは2018年に3,000ドルを超え、小売企業の進出が加速しています。それに伴い、下の図表から分かるように、ベトナムの小売市場は急激に拡大しています。2008年から2019年までの1人当たりのGDPの年平均成長率は8.12%であるのに対し、小売市場の売上高の年平均成長率は15.3%とGDPの成長率よりも倍近い伸びを示しています。また、2019年時点で小売市場の売上高は約17兆円の規模に達しています。

 下の図表は、ベトナム全国に進出している大型スーパー店舗数、大手電機製品販売チェーン店舗数、コンビニ店舗数、ドラッグストアー店舗数の2018年~2020年の推移を示しています。ここ3年で、小売企業の積極的な進出によって各店舗の出店数は増えており、小売市場が拡大していることが分かります。特に、ベトナム最大のコングロマリット、ビングループがコンビニ(ビンマート)事業を積極的に全国各地に進出し、コンビニの店舗数が急増しています。日本と同じく、ベトナムのコンビニで売られている商品も、スーパーや家族経営の販売店の同じ商品より、同じか若干高い価格設定となっています。それでも、利便性や商品の保管状態が良いため、コンビニで商品を購入するベトナム人が増えています。ただし、ベトナム全体でみると、農村部の小売市場の進出が遅れており、まだまだ全国の消費市場拡大が限定されてしまっている側面があります。

加速する日系小売企業のベトナム進出:生産・製造拠点から有望な市場へ

ここ10年くらいでは日本から、ファミリーマート、ミニストップ、イオンモール、高島屋、セブンイレブン、ユニクロ、良品計画、マツモトキヨシなどがベトナムに進出しています。これらの日系小売企業の共通点は、最初はホーチミンから進出し、出店していることです。ハノイ在住の日本人は、これらの日系小売企業がハノイに進出・出店するのを期待し待っていますが、現在のところ、ホーチミンから他の都市(ハノイあるいはハイフォン市)に進出・出店地域を拡大したのはイオンモールとユニクロのみです。ベトナムに進出する日系企業の傾向として、まずはホーチミンに試験的に小さい規模で進出し、事業が順調に拡大してきたら、次はハノイに進出するケースが多いようです。ベトナム全体で見ても、ホーチミンのほうがハノイよりも小売業の進出が盛んで、店舗数が多くなっています。

2019年12月、ベトナムに進出していたファーストリテイリングはホーチミンにベトナム・ユニクロ1号店を出店し、現在はハノイに3店舗、ホーチミンに5店舗を出店しています。世界にはユニクロの主要縫製工場が282カ所で稼働しており、その内ベトナムには16%にあたる46の工場があり(2021年3月31日時点)、以前は製造・輸出のみを行ってきました。元々、ユニクロ製品はベトナム人に広く知られており人気があったため、日本を訪問したベトナム人の多くがお土産として、或いは知人に頼まれ購入し、ベトナムに持って帰っていました。ユニクロがベトナム国内で出店を始めたことは、ベトナムへの進出が生産・製造拠点としてだけでなく有望な市場ともなりつつあることを、日系企業に改めて強く印象付ける出来事となりました。日本の同製品と比べてベトナムに進出したユニクロは若干高めの価格を設定していますが、今後は100店舗を目途にベトナム各地に進出し、店舗数を拡大していく方針です。

ベトナム政府のEC市場についての方針は?

ベトナムでは、スマートフォンやインターネットの普及に伴い、電子決済も浸透し、様々な企業がEC市場への進出を検討しています。2019年時点では、ベトナムの15歳以上65歳未満の生産年齢人口の78%がECを利用しています。ベトナム電子商取引協会(VECOM)の発表によると、2016年から2019年までベトナムのEC市場規模は平均30%で成長を続けており、2020年も引き続き30%以上の成長率となり市場規模は150億ドル(約1兆6400億円)まで拡大し、2025年には430億ドル(約4兆7000億円)までに達すると予測されています。特に最近は、新型コロナ拡大防止のため、国民は不要不急の外出を控え、レストランやカフェは持ち帰りのみとなるなど、企業がEC市場に進出する追い風となっています。

国策としてICTの発展を掲げるベトナム政府は、特に企業によるECへの進出、利用者数の増加に注力しています。2020年5月15日には、2021年~2025年のEC促進を目的とした国家マスタープランを承認し、EC市場の規模について次の中期的数値目標を設定しました(首相決定645/QĐ-TTg)。

・ベトナムの人口の55%が ECを利用し、1人当たりの年間利用額が600米ドルとなる。

・消費者向けの取引(B2C)の売上高は年平均25%成長させ、2025年には350億米ドル(約3兆8千億円)規模にすることで、小売・サービス売上高のうち10%をECが占める。

EC市場拡大は日系企業進出のアドバンテージとなるか?

ベトナムのEC市場の拡大は、日系企業が進出するチャンスになるかもしれません。下の図表は、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアの東南アジア主要4カ国で、ECサイトを利用して日本の商品を購入したいかを尋ねた回答です(回答者数6,714人)。「是非買いたい」と回答したベトナム人は59.4%で他の3カ国を大きく上回っています。日本ブランドはベトナムのEC市場でもしっかりと受け入れられており、日系企業がEC市場に進出し成功する可能性は、他の東南アジア諸国より高いかもしれません。

ベトナムの人口構造が市場への進出を喚起する?

国の経済を語るときに、人口構造は絶対に欠かせない要素です。本章ではベトナムの総人口、労働人口、都市人口比率を紹介します。

人口が多く進出先として内需拡大を期待できる

 2020年時点でのベトナムの人口は約9,760万人で、進出先として有望な6億人という巨大市場の東南アジアの中で3番目に多い人口を抱えています。平均年齢は約32歳で、労働人口比率(全人口に占める15歳~64歳の割合)は約70%で、人口ボーナス期を迎えています。特に購買意欲の強い25歳~34歳の層が多いことも、ベトナムに進出する外資系企業が内需拡大に期待しできる一因です。今後2060年頃までに人口は1億1,500万人に増加し、その後はゆるやかに減少していくことが予想されます。

都市人口の比率が増えている

2020年時点でのベトナムの都市人口は全人口の37.7%を占めています。下の図表にあるように、今後も都市人口は増加し続け、2035年までには都市人口が農村人口を上回り、2050年には都市人口の比率が60%を占めることが予想されます。進出先として有望な購買意欲の強い都市部の人口比率の上昇も、国内消費を後押しする要因として期待されています。

ベトナムには物流の国際中継地点となる地理的アドバンテージがある

 ベトナムは日本と約5時間のフライトで行き来でき、距離的にも進出し易い地域にあります。また、ベトナムから中国、カンボジア、ラオス、タイへと大型トラックが往来できる道路も整備されており、貿易中継地点になり得る地理的位置にあります。以前、ベトナムは東南アジアの製造の拠点として位置づけられていましたが、現在では例えばタイで日系企業が製造した商品がベトナムに輸入され、販売されているケースが見受けられるように、他の外資系企業が周辺国で製造したものをベトナムに輸送し販売するといったケースも増えてきています。また、東南アジアの東側沿岸部に位置するベトナムの海岸線は縦に長く伸びており、北部、中部、南部の各港に日本から物資を船舶で輸送し、進出することが可能です。関税に関しては、日本とベトナムの間には複数の協定が締結されていますが、今後も引き下げられていく傾向があり、日本からの進出や輸出がさらに容易になることが予想されます。

多くの日系企業がベトナム市場の拡大に魅力を感じている

現在、2,000社近くの日本企業がベトナムに進出しており、今後もこの数は増え続けることが予想されます。JETROが2019年に行った調査では、「海外に拠点があり、今後さらに拡大を図る(複数回答)」と答えた企業のうち、中国を進出・拡大先として挙げた企業の比率が最も高く 48.1%で、ベトナムは41.0%の2番目でした。しかし、同質問で2011年の時点では中国を挙げた企業は67.9%、ベトナムは20.3%であることを考えると、この差は確実に縮まっています。順位という点でも、2011年の時点では、中国(67.9%)、タイ(27.9%)、インドネシア(24.7%)、米国(21.1%)、インド(21.8%)に次いでベトナム(20.3%)は6位でしたが、このままのペースで上昇すれば、今後は中国を追い抜いて、全体でも進出・拡大先の1位になるかもしれません。

また、ベトナムを進出先として考える時の魅力・長所として、「市場規模・成長性」を挙げている企業が最も多く、2013年度の75.0%と比較して2019年度は86.1%で、11.1%と上げ幅としても最も高くなっています。多くの日系企業がベトナムの経済成長による市場の拡大を進出チャンスと捉え始めています。さらに、日系企業の進出が増えることで在留邦人数も増え、日本食関連や教育、ホテルなどの日本人を対象としたサービス業の市場も拡大していくことが予想されます。2011年は、ベトナムの在留邦人数は9,313人でしたが、2018年には22,125と7年間で2倍以上も増えています。現在は、コロナの影響で減少していますが、コロナ終息後は再び増え続けることが予想されます。

まとめ

 他の東南アジア諸国と比べても、日系企業にとってベトナム市場が有望な進出先である理由を述べてきました。これまで進出してきた日系企業の多くは、ベトナムを生産・製造拠点と考えての進出でしたが、今やベトナムは自社製品を販売する進出先としても検討され始めています。ベトナムでは既存の市場が活性化する一方、発展途上のため、まだ開拓されていなかったり、消費者のニーズに応えきれていない、進出可能な潜在的市場が多分に存在します。特に都市部では安心・安全な商品のニーズが高まっていますが、原材料の入手から生産・製造、加工、商品化、流通チャネル、顧客サービスに至るまでの一連の流れが整備されていない現状があります。顕在化されていないニーズを掘り起こし、ベトナムの消費者の特徴、既存の産業形態、ベトナムの弱み、自社の強みを分析して、今がベトナムに進出し、ビジネスを起こす絶好の時期とも言えます。特に日系企業の主な競合相手になり得る韓国や中国企業は、競争構造が固まっていない間に進出し、将来の消費市場を先占し、市場拡大時に競争相手が進出してくる機会を抑える戦略をベトナムで取っています。日系企業もスピーディーな対応、動きが求められています。

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