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外資規制

ベトナムの航空産業の外資規制:各国の外資規制との比較から

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はじめに

これまでは日本はANAやJAL、ベトナムはベトナム航空といった各国の代表的な航空会社がシェアの大部分を占めていたが、昨今はPeachやジェットスター、ベトジェットといった格安航空会社が台頭してきている。

2019年にはシェアでベトジェットがトップに立ち、ベトナム航空は2位となっている。また2019年1月に就航したバンブー航空は12カ月間でジェットスターパシフィックを抜きシェアで3位となった。

 今回のレポートでは、加熱しているベトナムの航空産業における日本企業の進出可能性を探るために、外資規制について情報を整理していきたい。尚、比較検討のために日本・米国・欧州の外資規制についても調査を実施した。

ベトナムの航空会社については以下の記事で詳しく紹介しています。

ベトナムの外資規制

ベトナムでは航空産業は外資規制を受ける分野として規定されている(根拠法:ベトナムにおける航空運送経営と一般航空活動について  政令第30/2013/ND-CP)。

外資の出資比率

政令第92/2016/ND-CPでは、航空運送事業に外資企業が出資を行う場合についての規定がある。外資側は定款資本金の34%を超えてはならず、少なくとも、1つのベトナム個人またはベトナム法人が最大定款資本金を有するとの条件を満たさなければならない。当該ベトナム法人が外資資本金を有する場合、外資資本金は法人の定款資本金の 49%を超えてはならない。

ベトナム航空産業における外資出資の事例

以下ではこれまでベトナムの航空会社に外資による出資がなされた事例を整理する。

ベトナム航空に対するANAホールディングスの出資

2016年に日本のANAホールディングスはベトナム航空に対して8.8%(約130億円)の出資を行った。現在ベトナム航空とANAは業務提携関係にあり、コードシェア便やマイレージの相互連携を行っている。

ベトジェットとエアアジアによる合弁事業計画

ベトジェットは2007年に設立された。当初はマレーシアの格安航空会社であるエアアジアとの合弁として設立される予定であったが、ベトナム政府の外資規制方針により承認されず、エアアジアは資本を引き上げた。現在外資としてはシンガポール政府が約5%の出資比率を有する。

パシフィック航空に対するカンタス航空の出資

1991年に設立されたパシフィック航空会社に対して、2008年 5月にオーストラリアのカンタス航空グループが出資を行い、株式の30%を取得、「ジェットスターパシフィック航空」と社名変更された。2020年にはカンタス航空は資本撤退した。

ベトナムの外資規制については以下の記事で詳しく紹介しています。

日本の外資規制

日本の航空産業における外資規制は航空法に定められている。

外資の出資比率

航空法 120 条の2では、日本の航空運送事業者およびその持株会社が規制の対象とされており、外資の割合は1/3以下であることが定められている。また外国人が役員の1/3以下であることも同様に定められている。

米国の外資規制

米国の外資規制は連邦航空法(The Federal Aviation Act of 1958, 49 U.S.C., Subtitle VII, Aviation Programs)および下位法である連邦航空規制(Federal Aviation Regulation)によって定められている。

外資の出資比率

米国の航空産業における外資比率は25%が上限とされている。これは合衆国法典49編第41103条にて「米国市民は運輸省長官に対し、全貨物航空運送を許可する認可証の発行を申請することができる。」という記載があり、ここでいう米国市民の定義は同第 40102 条にて下記に当てはまるものだとされているためである。

(A) 米国市民である個人

(B) 全てのパートナーが米国市民の個人であるパートナーシップ

(C) 代表者および取締役および経営幹部の3分の2が米国市民であり、かつ、株式議決権の75%以上が米国市民である人に所有または支配されている米国連邦法または州法(及び領域の法)の下に設立された企業または組合

欧州の外資規制

EU全体としては、航空産業における外資規制は定められていない。ただし公益性及び安全保障上の観点から問題があると思われる対内直接投資については加盟国が規制を加えることが可能であり、個別事例に応じて加盟国が判断する形となっている。

 ちなみに2021年をもってEUを脱退した英国については、航空産業における外資規制が定められている。EEC規則(EEC No.2407/92)の第4条では、EC加盟国が過半数を支配している企業のみに航空運輸の免許を付与すると規定されている。

今後のベトナムの外資規制の展望

以上、ベトナムを中心としながら日本・米国・欧州の航空産業における外資規制について見てきた。出資比率34%という制限は特段厳しい規制ではない。ベトナム航空についてはもともとベトナム政府が株式の大部分を有していたが、今後これらの株式を民営化に向けて外部に放出していく方針がある。また現在上場しているベトナムの航空企業はベトナム航空、ベトジェットの2社であるが今後バンブー航空などの航空企業も上場することが考えられ、その際に外資に対して株式を譲渡する可能性もある。

 世界的にみても航空産業における外資規制は緩和される方向へ動いている。今後もベトナムの航空関連の法案に対する注目が必要であろう。

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