はじめに
ベトナムの治安について、皆さんはどのようなイメージを持っていますか?
コロナウイルスによって厳しくなっていた行動制限が緩和され、渡航しやすくなったことでベトナムに旅行や出張で行く人が最近増えています。ベトナムは治安の悪そうな国というイメージを持っている人も多いと思いますが、実際は、そこまで治安の悪い国ではありません。
オーストラリアのシドニーに本社をおいている「経済平和研究所(IEP)」が、「社会の安全・安心のレベル」「進行中の国内・国際紛争の程度」「軍事化の度合い」という3つの項目に分け、測定し、ランキング化した「世界平和度指数(GPI)」という指数を毎年発表しています。その中で、2022年ベトナムは世界163カ国のうち、44位になりました。アジア22カ国の中では、8位となり、日本人が多く渡航している韓国はその上の7位です。指数の値自体は韓国と7しか違いはありません。ちなみに日本は、世界で10位、アジアではシンガポールに続き2位となっています。このように具体的な指数を世界の国々と比較しても、そこまでベトナムは治安の悪い国だとは感じられません。
出所:経済平和研究所(IEP)
しかしながら、日本人は世界的にみても、お金を持っていると思われているという理由もあり、日本人はスリや犯罪の対象として狙われやすい傾向があります。特に、旅行者はお金をたくさん持ち歩いていると思われるので、狙いの的にされやすいです。さらに、出張者でも綺麗なジャケットやシャツを着ていると狙われるかもしれません。そのため、比較的治安の悪くないベトナムでも、しっかりとエリアごとの特徴を理解し、防犯対策を行うことは非常に大切です。
本レポートでは、ベトナムの治安について解説・紹介していきます。まずはベトナムの主要都市ごとの治安を概観し、その後に具体的な犯罪と対策方法を解説していきます。
ベトナムの主要都市ごとの治安
ベトナムは縦に細長い国土で、北部・中部・南部で人の気質や文化が異なっています。そのため、治安事情についても少々異なります。今回は、北部の首都ハノイ・南部のホーチミン・中部のダナンという3つの主要都市を紹介していきます。どの地域でも注意するべきことには違いはありませんが、リスクのある場所を知っておくことは自分を守ることにもつながります。事前に調べ、知り合いに話を聞いてみるのも良いでしょう。
ハノイ
ベトナム・ハノイの治安として、やはり観光地の周辺は警戒すべきです。首都であるハノイには多くの観光地がありますが、最も有名なホアンキエム湖周辺の旧市街やハノイ大教会付近は、観光客が多いということもあり、スリやぼったくりが起こりやすい場所です。最も危険だと思われるのは、シクロという観光客を載せて周るおじさんです。基本的に料金は10万ドン程度と言われています。言い値ということもあり、人によっては値段をあげて、ぼったくりをしてくることもあるので気をつけましょう。また、観光に夢中になってしまい、財布や携帯などの貴重品を忘れてしまうと盗まれてしまうこともあるので、十分に注意が必要です。
また、旧市街周辺は、お土産屋やお店などが多く並んでおり、観光客や出張者もお土産を購入する機会があると思います。ほとんどのお店に値札がなく言い値なので注意が必要です。現地に詳しい人がいるのであればある程度相場を聞いてから購入するか、自分が納得できる値段で購入すると良いでしょう。
特に出張者が気をつけておきたいのは、日本人街の「Kim ma(キンマー通り)」などの飲み屋さんが並ぶお店周辺です。お酒を飲むと、酔っ払ってカバンを開けっぱなしで歩いていたり、お尻のポケットに携帯や財布を入れてしまったり、タクシーに忘れ物をしてしまったりとスキが多くなり、狙われやすくなってしまいます。夜間の時間帯は特に注意をしましょう。
ホーチミン
ベトナム・ホーチミンの治安については、ハノイと同じく、特に観光地周辺でのスリに警戒すべきです。ホーチミンで最もスリに合う場所は、ベンタイン市場というお土産ものや生活商品が売られている市場です。このあたりでは、カバンを切られて盗まれるという人もいるほどなので、身の回りに十分注意を払いましょう。斜めがけのポシェットは後ろに背負わず、前に常に置いておき、いつでも手が触れられるようにしておくと良いでしょう。お尻のポケットに貴重品を入れることが絶対にしないようにしましょう。
また、ホーチミンにも日本人街といれている「Le Thanh Ton(レタントン通り)」やバックパッカー街と言われている「Bui Vien(ブイビエン通り)」では特に注意が必要です。レタントン通りやブイビエン通りも、日本人が集まります。酔っ払って注意力が散漫しやすく危険です。男性は特に、この付近では接待の女性も多く気が紛れてしまいやすいと思いますが、携帯や財布、クレジットカードやパスポートを無くす、盗まれてしまうと、その後が大変になってしまいます。もちろん、男性のみならず女性も注意が必要です。また物によっては会社や周りの人の迷惑になってしまうことにもなりかねません。楽しむことは良いことですが、治安が悪くない国とはいえど、やはり危機意識をもっておくことはとても大事です。
ダナン
ベトナム・ダナンの治安に関して、ダナンはベトナムの中でもリゾート地として大変人気のある場所で、比較的出張者が少なく、より観光客が狙われやすいように思います。
ダナンには、ハン市場という市場があります。この周辺は治安が悪くないと言われていますが、油断は禁物です。また、ダナンの見どころである「ドラゴンブリッジ(Cầu Long)」にも人が集まりやすくなっており、ドラゴンブリッジのファイアーショーの最中は、鞄や身の回り品に注意を払うことを忘れず、特に気をつけましょう。
ベトナムで特に気を付けるべき犯罪と自衛方法
ベトナムでは外国人に対する殺人や強盗などの凶悪犯罪は比較的少なく、観光客や出張者などを狙う窃盗、スリ、ひったくり、ぼったくりといった犯罪が多いです。
日本は特に親切な人が多いため、忘れ物や失くし物は警察に届けられ戻ってきやすいかもしれませんがベトナムでは異なります。
ベトナムの公安は日本の警察ほど信用できません。公安が人のものを盗んだり、賄賂を要求してきたりします。万が一の時の為、自衛手段を考えとくことは、重要だと感じます。
本章ではベトナムの治安に関して、犯罪ごとに特徴と自衛方法を解説していきます。
海外で羽目を外してしまい、気が緩んで犯罪や盗難に巻き込まれてしまうかもしれません。ですが、あまりに気を張りすぎてしまうと疲れてしまいます。意識をしておくくらいがよいでしょう。
ひったくり
ベトナムでひったくりに遭遇するパターンとしては、バイクとのすれ違い時やに、観光地などの人混みの中で起こることが多いです。
観光客も出張者も、特に市場や人が多く集まる観光地での人混みの中、人通りの少ない場所、夜間は気をつけましょう。また、道を歩いている時にバイクに乗っている人にカバンを盗られたり、歩きスマホをしていて携帯を盗られてしまったりというようなこともあるので特に気をつけましょう。バイクに乗っていると追いかけても間に合わないことが殆どです。
ひったくりの自衛方法
ベトナムでのひったくりの自衛方法としては、空港からホテルに向かう時や、ホテルから空港に向かう際、カバンやキャリーケースを車道側で持たないようにしましょう。また、止むを得ず車道側にもってこなければならない場合は、万が一のためにも両手で荷物を持つようにしましょう。特に危険なバイクによるひったくりを防ぐことが期待されます。
また、観光地や人が多いところでは、荷物は常に目と手の届く位置しっかり身を着けましょう。しっかり身に着けないとより狙われやすく、なってしまいます。
また、スマホは盗みやすく価値も高いため、歩きスマホはには特に注意が必要です。街中でスマホを触るときは、周囲に十分に警戒しましょう。
スリ
スリはひったくりとは異なり、被害者が気づかない間にものを盗みます。観光客や出張者のみならず、在住者も危険です。起こりうる状況としては、ひったくりとほぼ同様で、特に人混みには気を付けましょう。とくに観光の場合は、見る街やものに気を取られてしまいがちなので特に注意が必要です。
スリの自衛方法
ベトナムでスリの被害にあわないためには、荷物を自分の目と手の届く位置に置いておくことがとても重要です。目に入る位置に置いておくことで、危険を察知することができます。また、観光時や誰かと話している時には、手で荷物を確認し、手に近い場所に置いていれば、スリをする側も盗めないと判断するでしょう。ナイフで鞄を切られ中身を盗まれるケースもあるので、万全を期す場合は、リュックなどは身体の前で持った方が安全です。
置き引き
ベトナムでは、置引きは特にシクロやタクシーの中、ホテル、カフェなどで起こりやすいです。目の届かない場所に荷物を置いておくと盗まれてしまうことがあります。
置き引きの自衛方法
ベトナムで、置引きに遭わないようにするためには、自分の荷物をむやみに放置ないことです。そもそも置いておかなければ取られる心配もありません。特に、タクシーから降りる時には必ず、座席に忘れ物がないかを確認することが必要です。さらに、カフェなどで注文に行く時やトイレに行く時はカバンなどの貴重品や購入品はテーブルに置かないようにするか、同行者に見張ってもらいましょう。日本では席の確保のために荷物を置いて行きますが、ベトナムでは絶対にしないようにしましょう。
ぼったくり
ベトナムでぼったくりは、特に観光客や初めてベトナムに来た出張者などが被害に逢いやすいです。
ベトナムで、タクシーを利用した際にお金の単位が分からず、運転手がお金を取られ「これでOK」というふうに言われ降りてから確認すると、多額の金額を取られていたということもあります。
また、ベトナムでは飲食店の店員が会計時、レジに打ち込みをせず、お皿でお金を計算することも多く、伝票もないので金額がわからないことがよくあります。ベトナムのお金の単位は0(ゼロ)が多く分かりにくいので今自分がいくら使っているのか、いくら分食べているのか分からなくなってしまうこともあります。
ぼったくりの自衛方法
ベトナムでのぼったくりを防ぐためには、自分に請求される金額をある程度予測しておくことです。それよりも「ん?ちょっと高いな」と感じる場合は聞き返してみましょう。相手が怒る場合もありますが、明らかなぼったくりと感じる場合はこちらが冷静に計算をすれば相手も諦めます。また、相手が明らかなぼったくりでしつこい場合は自分で計算し、正しい金額を置いて去りましょう。ベトナム人は日本人と比べ、気が強い人も中にはいたりします。その勢いに圧倒され提示された金額を払ってしまう人もいますが、自分が利用した料金、また食べた料金以上に支払う必要はないです。
その他ベトナムで気を付けるべき危険
ここまではベトナムの治安として、ひったくりやスリ、ぼったくりなど警戒すべき犯罪やエリアについて紹介してきました。本章では、治安に関すること以外で気を付けるべきことを解説していきます。
食あたり(水あたり)
ベトナムでは食あたりと水あたりにも気を付けましょう。日本では、浄水器をつけなくても水道水が飲めますが、ベトナムでは飲むことができません。また、料理にも使用しない方がいいでしょう。人によっては、外食時のスープなどでも水当たりしてしまい、何日間か休まないといけないということもあります。
ベトナムでは、食当たりにも注意が必要です。ベトナムに長期で滞在をしていると現地のベトナム人が美味しいと教えてくれたローカルフードを食べるという機会もあるでしょう。ローカルフードの全てが食当たりするわけではありませんが、ベトナムでは、まだ衛生環境が良いとは言えません。衛生感覚も清潔な環境で生活してきた日本人とは異なります。少し怖いなと思う食べ物はなるべく控えましょう。
また、食べるために使用するお箸やスプーンもしっかり消毒しておくと安心です。
自然災害
ベトナムの気候は、北部・中部・南部によって異なりますが、どの地域でも起こりうる自然災害は洪水です。ベトナムでは、雨量が多くスコールのように一気に激しい雨がふることがあります。ベトナムの道路の水捌けが良くないことも洪水の原因の一つです。また、ベトナムの災害被害者の8割は洪水や暴風雨などの水害によるものと言われており、ベトナムに滞在する、観光客や在住者の人々は警戒する必要があります。
天気予報をみて雨がひどくなりそうな場合は遠出を控え、雨が降る前に早めに帰宅をしておくということができると良いです。さらに交通の弁として便利なグラブなどの配車アプリは雨が降ると捕まらなくなってしまったり、値段がとても高くなったりと帰れなくなってしまうこともあるでしょう。
日本のように地震での災害ではあまりありませんが、洪水などの水害もとても危険なので大雨や暴風が吹いている時には十分に注意して行動をしましょう。
デング熱・狂犬病・B型肝炎
ベトナムの治安とは少し異なりますが、ベトナムに行く際には特定の病気にも注意する必要があります。
例えば、デング熱にかかってしまう人もいるので現地の蚊には気をつけましょう。特によく蚊に刺されやすいという人は蚊が多くいそうな場所では長袖長ズボンを着ることを心がけましょう。特に自然の豊かな場所では注意を払い、現地の虫除けを用意しておくのも良いかもしれません。
さらにベトナムに行く前には、あらかじめ狂犬病やB型肝炎のワクチンを打っておくことをお勧めします。
ベトナムでは道に野良犬がいる場合もあり、万が一のことを考えると接種しておくべきでしょう。また、現地の日系クリニックでも摂取できる場所もあるので長期滞在者の方で出国前に打てない場合、現地でも接種することができます。
まとめ
本レポートではベトナムの治安に関して注意しておきたいことを紹介しました。
ベトナムの主要都市ごとの治安、気を付ける犯罪と自衛法、スリ、置き引き、食あたりや病気など網羅的に解説してきました。
冒頭でも述べたとおり、ベトナムは治安の悪い国ではありませんが、どんな国でも危険や注意点があります。
ベトナムで日常的に生活していて特別治安が悪いと感じるような国ではありませんが、明らかに危険がひそんでいる場所、例えば飲み屋街や人の多い場所では注意を払うことは必要です。自分の所持品は自身で管理すれば、防げることも多いでしょう。
また、長期の出張者や在住者はその土地の治安や事柄を知ることは必要です。慣れてくると、ここはスリがありそうだな、このお店はあまり衛生面がよくないからアルコールでお箸やお皿を消毒してから食べるなど、自衛することもできるようになるでしょう。さらに食当たりや病気に効く常備薬を持っておくこともおすすめです。
【関連記事】ベトナムの生活については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
ベトナム市場の情報収集を支援します
ベトナム市場での情報収集にお困りの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
VietBizは日本企業の海外事業・ベトナム事業担当者向けに市場調査、現地パートナー探索、ビジネスマッチング、販路開拓、M&A・合弁支援サービスを提供しています。
ベトナム特化の経営コンサルティング会社、ONE-VALUE株式会社はベトナム事業に関するご相談を随時無料でこちらから受け付けております。